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※加筆修正した物を別で投稿し直し始めました※ 破壊神と呼ばれた私は  作者: 米田いすき
第一章 幼き母と子守唄
22/81

21 また変な女が現れた…



さてこいつ、一見ただの小娘に見えるが…言動、立ち振る舞い全てにおいて隙が無さすぎる。ただこちらに対して敵意はないらしい。それが救いというべきか、それとも何かあっても対処する方法を持っているのか。食えない娘だ。


街中と言って良いかわからないこの場所。昔はもっと荒れていた。ゴミか何か分からない物で埋め尽くされていて、異臭が立ち込めて、人だったらしきものがそこらに捨てられている。家の形をしたものも殆ど無く、瓦礫の下で雨風を凌ぐガキが飢えた獣の目をしている。そんなマトモな神経してりゃ近づく者なんぞいるわけがない無法地帯。人はここを〈見えないゴミ箱 ノットシー〉と呼んだ。

それが今は骨組みに布を張っただけの物だとしても、家のような形のものがひしめいている。大人も子供も布切れであっても衣服を身に纏っているし微かに異臭はするものの見てわかるほどの溢れんばかりのゴミがあるわけではない。

良くも悪くも変わっていく途中。そんな印象を受けた。

目の前の少女も歩く最中、色んな者に声をかけられている。こんな掃き溜めでしていて良い格好ではないというのにこの女に誰一人として不満をぶつけていない。…一体こいつは何者なのやら。


「着きましたわ。」


街中を突っ切り、色んな人々に声をかけられ、本当に長いこと歩いてようやく着いたのは今まで見た中では一番まともな建物だった。

外のスペースは木の骨組みのみではあるものの屋根があり一応まともな形をしているし、奥の場所はしっかりとした食堂らしきものが見える。食べ物の匂いが立ち込め沢山の人が居る。実際に食事している人は大人が多いものの働いているその大半は年端もいかない子供だった。


「マーテル様、申し訳ないけれど上の部屋、借りても良いかしら?」


食堂の奥、ガシャガシャと大きい音をしている所に少女が声をかける。一際大きかった包丁の音が途切れ顔を出したのはここらでは珍しく恰幅の良い中年の女性だった。


「おやおや、ロゼ様こんにちは。珍しいね、お客様かい?…ふんふん、なるほど…。あがって左にふた部屋目のとこなら空いてるはずだよ、好きに使いな!」


声の大きさと不思議な迫力に少々気圧される。まるで絵に描いた母親像そのもののような人だ。珍しいほど覇気のある人だとなんとなく思った。

そのまま上に向かう少女に着いて行く。あまり良い材質では無いものの、この建物は作られてからそれほど時間の経っていないのだろう。汚れも埃もなく手入れが行き届いている。


「どうぞお掛けください。」


狭い部屋に粗末な寝具が二つと単純な椅子が二脚という簡単な宿のような部屋だった。二つ並ぶベッドのうち少女がかけていない方に腰を下ろす。


「貴女も、背中の子を下ろして差し上げて。長時間同じ体制では流石に辛いでしょう。」


やはりマントで隠れていたにも関わらず女がサーシャを背負っていた事にも気がついていたらしい。抜け目ない娘だ。


「向こう向け、降ろすぞ。」


一人で降ろせないのでワタワタしていた女に見かねて手を貸す。マントの下で更に毛布に巻かれていたサーシャだが、汗一つかかずに快適そうな顔をしている。包んだ毛布に施した風を循環する魔法はうまく作動してくれていたらしい。

頭を撫でてもほんの少し顔を緩めた程度で起きる気配はない。この話し合いの時間だけでも眠り続けてくれることを願う。おそらくあまり良い内容にはならないだろうから。


「さて、では…何からお聞きしたいのでしょうか?」


サーシャを寝かせたベッドに再度、女と共に腰をかける。

目の前に座ったロゼと言った少女は真っ直ぐこちらを見つめている。その射抜くような目線は中々に居心地が悪い。


「…とりあえず現状の全てを。俺らはカナロムが花の都と呼ばれていた当時しか知らない。何があったのか、今のこの大陸。ガイアの常識だけでいい、教えてくれ。対価に…そうだな、食料で、どうだ?」


アイテムボックスに目一杯入っている食料を半分渡しただけでもここらの人間全員が3食ひと月は食える量があるはずだ。情報を売る対価としては妥当なはずだろう。話の中身を聞いてそれに見合う適度な量だけ渡そう。

とりあえず嘘ではないとしてマジックバックを一つ渡す。魔力操作がある程度出来るやつなら中身の量もわかるはずだ。子供の俺の顔のサイズもないバックなので入っていると言ってもイビルラビットが15匹分程度…いや、女が食いまくるから常識が崩れてたな。結構な量だなコレ。案の定目の前の小娘の顔が不穏になる。思っていたよりも多かったのだろう。


「…食料はありがたいですが…お節介な助言をさせて頂くとすれば、貴方方はこの先の道のりで潤沢な食にありつくのは難しくなるでしょう。今この周辺国は物資が足りないのです。どれだけのお金があろうと買えるほどの食べる物が無い今、この先貴方方が困ることになりますわ。」


開け放たれた木の窓の向こう。下の食堂の賑やかな声に耳を向ける。この声を聞いているだけならばそれ程深刻そうには思えないのに。


「とにかくまずは現状をお教えしましょう。判断は、貴方自身がするのですから。」


座り直した少女が目を瞑り、小さく語り始めた。


「…カナロムの木が枯れて、国政が崩れて、グズリア国に攻め込まれて、カナロム国は終わりました。」


にっこりと淡々と少女は語る。


「…は?」


「以上です。」


にっこりと微笑む。

なんだこいつ、冗談…でもないか?隣の女ですら固まってるじゃねぇか。


「ふふ、冗談ですわ。ちゃんと頂いた対価に見合うお話をしなくてはね。…今の流れを聞いただけでもあまり良い話ではない事はわかると思いますが、詳しくお聞きになられますか?」


ニコニコと冗談だと言っているが本心はそこまで話したくないことなのだろう。碌な話じゃないのは誰でもわかる。


「…ガイアは、今だに混乱が収まり切っていません。13年前先代のガイアの神子様が代を変え、突如カナロムの葉が異様に落ち始めた時から、カナロム国は少しずつ変わったと聞いております。葉が落ちる度に木は黒ずんでいき、国の花々は枯れて、国民の心も荒みました。どこから来たか分からぬ噂で王達は国民の批難を浴び、国の形が崩れたのを見計らうかのようにグズリアに攻め込まれたのです。もう、10年ほど昔のことですわ。」


窓の外に目をやりがら何でもないことのように淡々と語る。この少女にとってそれが当たり前になるまでの月日が、もう流れてしまったのかもしれない。

神子の単語が出てきたからか隣の女の挙動が少しおかしくなる。それ以上そわそわしながらサーシャの方を見るなボケ。


「…カナロムの国民はどうなった?」


女から意識を逸らそうと咄嗟に出た質問。そんなことくらい想像がついていても聞いてしまったのは自分も動揺していたのかもしれない。


「ほとんど、…グズリア国で奴隷になりましたね。その他はここに逃げ込んだものも居れば、他国の国境を目指したもの、森に入り獣に襲われて命を落とした者も多いでしょう。

…グズリアの者は異常とも呼べるほど、カナロムの国民を狙うのです。ここに逃げ込んだ民も何割か連れていかれました。私の目も、全てを見ていられるほど多くはないのに。」


向こうを向いて見えない少女の表情に明るさなど残っていないんだろう。こいつが何者なのかの情報は…決め手にかけているが、少なくともこの地を守りたいのは本意らしい。


…おい、


「何か言いたいことでもあるのか?」


隣でソワソワしていた女が閃いた顔をした後に更にソワソワし始めている。鬱陶しい。


「え、あ、その、最初に犬君が、言ってた"残ってない"と、"壊しに来た"って、もしかして、私達がここの人達を攫いに来たと勘違いしてたのかって、その、納得したというか、スッキリしたというか…すいません。それだけです。」


何故謝る。空気をぶち壊すのが毎度天才的な女だなコイツ。


「ふふ、いいですよ。こちらも少し神経質になりすぎていますから。…ガイアは今だ混乱の最中なのです。最大多様国家だったリスタールが崩れるきっかけになったのも10年ほど前です。なのに神子様がどこにも居られない。どこの国も神子様を手にしようと躍起になっておられます。…神子様にそのような扱いをしてしまえば、この大陸の国々は一晩で消し去ろうものでしょうに。」


微笑みは崩さないが端から漏れた感情をひしひしと感じる。これほどの女が上手く感情をコントロールできないほどツラい現状なのだろうか。


「…おい待て、リスタールも…どうにかなってんのか?」


聞き流すにはあまりにも重要すぎる言葉だ。リスタールには多様の種族と数多の人間が入り乱れ暮らしており、この大陸一番の国力を誇っている。それが崩れるイコールこの大陸の均衡も崩れるってことだろ。


「…10年以上前のことしか知らないのでしたら、貴方の知るリスタールは、もうどこにもないのです。先代、123代目リスタール国王が死ぬ間際に遺したもので…どれだけの人が涙を飲んだでしょうね。」


話しにくいのか話す気がないのか、しばしの沈黙が流れた。123代目が先代のまま…ならば先代国王は確かもうかなりの年のはずだ。50〜60年前に20代の若さで王座についてから長い間かけて国を広げ豊かにした賢王と呼ばれている人。俺の記憶上では聡明な王だったと思うが…


「…リスタール先代国王は、国と民を三つに分け、王位を継ぐ権利のある三人の者に…王位をかけた国取合戦を行わせたのです。」


ぐるぐる回っていた脳みそが急に停止してしまったのか全く言葉が頭に入って来ない。は?数多の種族と民が暮らす国で、王を決めるためだけに、国民を使って…?


「その宣言が出されたのは先代が亡くなる前でしたので10年ほど前。戦争が本格的に始まったのが7年前。今から5年ほど前には決着がつき、今だに大きな傷跡は数え切れぬほどありますがこれでも落ち着いた方なのです。」


娘の漏れ出た怒りよりも、俺の感情が追いつくよりも先に、恐ろしい殺意が隣から溢れた。


「…おい、落ち着け。」


この女はどうも感情の起伏が激しいらしい。怒り狂った獣の表情で何もない宙を睨んでいる。この威圧で小動物なら殺せるかもな。


「王様を決めるためだけに…国民を、使って…戦争したってこと…?王様がどんなものなのか、私はよく知らない。でも、王様は…国が、国民がいてこそじゃないの…?人を…自分の国の民を…なんだと思ってるの…?」


そのおかげで俺の感情もどこかに行った。にしても知らぬ土地の見てもいない他人によくもここまで怒れるものだ。


「はぁ…落ち着けバカ。もう昔の終わってしまったことだ。お前が今ここで怒ってもどうもならん。精々サーシャが怯えて起きる程度だ。抑えろ。」

 

怒りすぎてか女の首元に赤い血管が浮き出ている。こいついつか血管切れねーだろうな。

深呼吸を何度かしてある程度落ち着いたのだろう。荒い呼吸音が静かになった。

チラッと横を見てサーシャがまだ眠っていることに安心をする。


「…この大陸東部には、まともな統治者がいなかったのかもしれませんわね。戦争が落ち着いた今でも隣国であるノーメラ国もマリンナ国も要らぬ割りを食わぬよう国衛を固め鳴りを潜めております。蜘蛛の森を越えた西部がどのような状況なのか、今現在の情報が無いのでわかりませんが…もしかすれば、この大陸は…終わりを迎えるかどうかの瀬戸際に、いたのかもしれないですね。」


…終わりね。生を育む大陸が終わるとはなんとも滑稽なことで。


「この場所にある食べ物も底が尽きかけております。崖に囲まれた硬い土のこの場所は作物を育てることはできません。今現在は1日に一度のこの食堂での配給と、大人達が他国に出稼ぎに行くことで成り立っております。ですが元カナロム国から来たと分かれば多くの民が出入りを断られる現状です。せめてここの子達皆…大人になってほしいと願っているだけですのに。」


戦だ国取りだと躍起になっていたこの大陸内では最早まともな作物が無いということか。5年ほど前に終わったとは言えそこまで大規模な戦争を二つも行えば情勢が立ち直るにはそれなりの時間を食うだろう。

…リスタール前国王は何故そんな無意味な内乱を行なわせたのか甚だ理解ができない。大国がそんなことをすれば大陸全土に余波が広がることくらい想像しなくてもわかる。仮に国王が本当にその御触れを出したとしてもその周り、時期国王候補共はそのことに疑問を持たないのか?ほんの多少でも支持があるやつがその戦争に異議を唱えて国民を煽動すれば民も領土も…いや、俺が口を挟めるほど簡単な話ではないな。現に今この状況になった。裏があろうとなかろうと終わったことだ。


考え事に没頭していたせいで息がかかる距離まで女が顔を近づけていたことに気が付かなかった。気配を消すなアホ!真横を見た瞬間見開かれた目と目が合って心臓が一瞬止まっただろバカ!

ランランと輝く目が全てを物語っている。分かっている分かっている。お前が言いたいことは残念ながら良〜〜〜く分かる。


「マイくん、食べも[食料渡すと言いたいんだろアホ。]」


小声の女が言い終わる前に思念で遮る。だからビクッとすんな怪しいだろバカ。


[何も知らないやつに俺らの食糧を大量に分けてやれるほどお人好しじゃ無い。それにこれからどれほど長いこと国に居座るか分からない。軽率な行動は控えるのが常識だろ?]


グゥの音も出ねぇだろ。言いたいことがあるなら言いやがれ。


「…その食糧採ったの9割9分私。」


羽虫なら殺せそうな睨みが更に近づいてくる。なんだ、何が言いたい。


「マイくんは世界のこと教えてくれて、衣と住整えてくれて、荷物持ちしてくれて、作戦考えてくれて、サーシャちゃんの問題も解決してくれようとしてる。」


だからなんなんだ早く言え。


「私は食糧調達で護衛で乗り物。」


あ、なんか嫌な予感がする。すっごく疲れる事になりそうな嫌な予感。


「食糧半分くらい…とは行かなくても三分の一くらいは私の物じゃない???」


よし、分かった。お前自分の取り分だけでもあげたいとか言うんだろお人好しかボケ。」


やべ、途中から声に出てた。まぁいいか事実だし。


「私さっき道端で出会った変な動物もどきとか食べるからーーー、お願い!私の分だけでもあげてよ〜〜〜〜。」


ごねるように肩を揺さぶるなアホ!!!あ゛ーーーーーーーーーっ


「元々話によっちゃぁ三分の一くらいなら渡すつもりだやめろ!」


張り倒すように跳ね除けたつもりだったのだがコイツびくともしねぇ。ガーーーっ腹立つ!!!!!

その声を聞いて小娘が立ち上がる。


「…貴方方、まだ食料を譲る気ですか?流石にそれは考え無しと言われてもしょうがない行為ですよ。先程いただいた分だけでもとても助かります。対価としては充分です。こうしてお話をする事になったのも何かの縁。これ以上の無謀はおやめください。私達のせいで犠牲となるものが増えるのは流石に後味が悪いですので。」


ほう、この小娘も存外お人好しか。普通は都合良い世間知らずのカモがいたら骨の髄までしゃぶりそうなもんで…いや、ちげぇな。この女、何一つ俺らに期待してない、怪しんだまま…って感じか。そりゃこんだけのやつだ。はじめっから俺が[嘘発見器 ブザー]使ってんの気付いてんな。気付いた上で話しやがった。そりゃ表情読ませねえためにそっぽ向いたまま話するわけだ。

下の食堂と左右隣の部屋にも普通の人に紛れてそれなりのやつが何人か紛れてる。そしてこの建物自体何かしらの魔法が練り込まれているしまぁ最初っから疑ってかかってるわけだ。

はぁ…仕方ねぇな。


「わが…「おやおやなんだい、あんた達そんなとこで突っ立って!話に熱が入ってるとこ悪いけどね、とりあえず落ち着いてこれでも食べな!腹が空いてちゃ見えるもんも見えないさ!!」


勢いよく扉が開いて全員びくりと体がすくんだ。隣の女どころか目の前の小娘まで肩がすくんだのは少々面白いが話は分断されてしまった。


マーテル氏…だったか?先程の食堂にいた恰幅のいい中年女性。その手には平たい板が乗せられていてその上に木の椀らしきものが三つ乗っていた。


「マーテル様…ありがとうございます。ですが私よりも子供たちにそれは差し上げてください。」


小娘が椀を返そうとしたがマーテル氏は動かなかった。


「何を言ってんだい!あんたも食べるんだよ!全くいっつもそう言うんだから。ほら、置いておくから絶対お食べ!」


あまりの圧に小娘も言い返せてない。このマダムは案外すごい人かもしれない。


「全く。あんたら2人もこんなもんしかないけど食べなね。もう1人のお寝坊さんにはこれ渡しとくよ!」


お椀を押し付けられた後茶色い油紙の小さな包みも手渡された。中身は黒っぽく小さい焼き菓子のようなものだった。

サーシャは今だに起きる気配がないので断ろうとはしたが断り切れない圧に押されてありがたく受け取る。それを見て満足そうにマーテル氏は外に出て行った。


「…ひとまず話は置いてありがたく頂きましょう。」


再度腰を下ろした小娘に続き俺らも匙を掬う。琥珀色のスープに微かな野菜らしき屑と穀物らしき物が浮いているだけの粗末なものだったがどこか優しい味がした。


「…貴方方には物足りぬ物でしょうが現状はご理解していただたでしょう。これを一日に一度、口にできるだけまだマシなのです。」


小娘の匙を持つ手が震えているのは気のせいではないだろう。


「いや、現状は大体理解した。この環境でここまでの食い物があるだけ凄いことだ。それも全部あんたの力量だろう。」


その言葉の後震えた手の感情をぶつけるように無言の拳がベッドを叩いた。先程とは全く違う真っ赤な目が合った。


「わたくしに、力量が足りないからここまでしかできぬのです。」


絞り出すような言葉は誰が聞いても震えている。


「わたくしに、もっと力があれば。わたくしがもっと、わたくしが!」


その瞬間地響きと建物の揺れ、なによりも少女の言葉を掻き消す金切り音がつんざいた。


「なっ!何故こんなところまで!」


少女が慌てて窓に近寄るよりも速くその窓から女が飛び出す。何かわからんがまぁあいつなら大丈夫だろ。はぁ…さっきから何かわからんが真面目に何かに邪魔されているとしか思えん。この小娘に言いたいことも聞きたいことも山ほどあるというのに。


「これほどの気配…一人で向かってはいけません!速く!貴方のお連れ様を止めねば…」


この小娘も焦ることがあるらしい。少し人間味を見れて安心した。


「あー…多分あの女は大丈夫だ。それよりもお前に言いたいことがある。あいつもいないしいい機会だろ。」


一切驚かない俺に、向いていた疑問が疑惑に変わっていくのを身に沁みて感じる。いやなんかわからんがこの騒ぎに俺は関係ないからな。そんなことをしてる暇はない。それよりも…ふぅと小さく息を吐いた後一口息を吸った。


「…我身は大地、大地は民、民は国、国は我身。民なくして国と呼べず、人無くして大地と呼べず、大地無くして王は無し。我らは大地と共に生く。」


美しい少女人形の顔がただの驚いた年相応の小娘の顔に変わった。その顔をみて確信に変わる。


「当たりだな。」 


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