第3話 ネームドのワンパン
衝撃どころの話じゃない!
突然のネームドモンスターの出現に、僕はアタフタするばかりだ。
「待て待て、なんで今なんだ? あんなに探し求めてきた存在が、急に目の前にいるよ」
「ご主人様、どうしたぎゃ?」
その問いに戸惑ってしまう。
「君って本当にゴブリンなの? どう見たって人間じゃないか。普通に喋っているしさ」
「うぎゃ?」と、キョトンとしている。
「しかも、従魔契約者がこの僕になっているなんて、信じられないよ」
「イヒヒ、ご飯くれたぎゃ」
マジマジと見ると、かわいく微笑み返してくる。
「ねぇ、エ、エブリンは僕の従魔なの?」
いきなりの展開に興奮して涙が……。それに手も震えている。
「うん、一生ついていくぎゃ。えへへ、はい、んーーーーっ」
エブリンは柔らかく笑い、目を閉じて寄ってくる。
『一生ついていく』か、なんて素敵な響きなんだ。も、もう一度聞きたい。
「本当に僕でいいの?」
「ご主人様だからいいんだぎゃ、んーーーーーーーーーっ」
嬉しい、僕はこの事を一生忘れないぞ。いや、忘れろって言われたって忘れられないよ。
「でも目を閉じて、どうしたの?」と、不思議に思い聞いてみた。
「キスしていいよ。身も心もご主人様のモノだぎゃ」
「ば、ば、バカな事を!」
からかわれているのに、そんなセリフにもドギマギしちゃう。
自分でも顔が真っ赤になるのが分かるよ。
それに気づいたのか、エブリンは調子にのって更に寄ってきた。
「照れなくていいぎゃ、はい、んーーーーーーーっ。んん? あれれ、さっきのイノシシがまた来たぎゃ」
僕のクラクラしていた頭が、その言葉で現実に引き戻された。
「ちょっと待って。この森でイノシシって言えば、〝無限追跡者〞のギガントボアしかいないよ」
あれに追いかけられたら、逃げ切れない。
祈る気持ちで振り向くと、3㍍はある興奮したギガントボアが、こちらを睨んでいた。
「ウソでしょ、なんでこんな浅いエリアにいるのさ!」
ネームドをテイムした感動とエブリンのイタズラで、まだちゃんと考えられない。
でも、ギガントボアは前のめりだ。
「ギガントボア、静まるんだ。僕の話を聞け」
「ぶっふーっ、ふごっふごっ!」
ダメだ。こちらの声が届いていない。でも、あそこまで怒り、怨みがましい目つきだなんておかしい。
「エブリン、あの怒っている理由に心当たりはないかい?」
「うぎゃ、お腹空いていたから、ちょこっと噛ったぎゃ。暴れるから食べ損ねたぎゃ」
テヘッと笑っている。
「それだよ、それ! それが原因で、無限追跡者のスイッチが入ったんだよおおおおぉぉ」
僕の叫びに、エブリンは『えっ!』って顔をしている。
ギガントボアは前足を蹴り、勢いをつけて突っ込んできた。
それをエブリンは間一髪で避けている。
「ぶっふーっ、ふごっふふふごぉぉぉおおお」
木々をなぎ倒しても、ギガントボアの興奮は収まらない。
向きを変え、今度は逃がさないと言わんばかりに、ゆっくりと睨んできた。
「エ、エブリン構えて、迎え撃つよ!」
こうなったら、この子の能力を信じてサポートするしかない!
僕は支援スキルをエブリンにかけた。
唱えるスキルのエフェクトで、エブリンは少し震えている。
「身体能力アップ《1/神》」
「スキル効果アップ《1/神》」
「会心率アップ《1/神》」
これに加護【ラケシスの寵愛】が自動で重なり、最大200%の威力を発揮できるようになった。
「おぉおぉ、ご主人様スゴいぎゃ。ちからが沸いてきて、なんでも出来そうぎゃ」
エブリンは自分の拳を、マジマジと見ている。
「過信しないで、相手は格上だ。正面に立たず、向こうの攻撃は避けるんだよ」
「お腹いっぱいの私なら、あんなイノシシ敵じゃない。さっきのようにはならないぎゃ」
イタズラっぽく笑い、手招きをして挑発をする。これにギガントボアも乗ってきた。
「ああ~、自分に酔っているダメなパターンだよ」
焦る僕をよそに、エブリンはギガントボアの顔めがけ、大きくジャンプした。
エブリンがニヤリ。
そして振りかぶった拳が、あれっ、なんか光っている?
「エブリーン·パーーーーーーンチ!」
ゴッチーーーーーーン、ベッコーーッ! と凄い音。
「ぷぎぃぃいいいぃぃぃいーーーっっ!」
繰り出した拳は見事に眉間にヒット。そして、ギガントボアはぶっ倒れた!
「ご主人様のパワーすんごいぎゃ。ご主人様のサポートがあれば、私はこの世で最強ぎゃーーーーーーー!」
ギガントボアに足を乗せ、勝利の雄叫びをあげている。
あの岩石より硬いと言われる額が陥没して、その奥が見えていない。
か、確実に死んでいる、す、凄いぞ。
「や、やったーーーー。エブリン、偉ーーーーーい!」
嬉しさのあまり抱きよせ、エブリンの頭をナデナデした。
「やったー、やったー、こんなに強いなんて、ぼ、僕はぁ、僕は幸せだよ」
ちからいっぱいナデナデ、ナデナデ、ナデナデ、ナ……ハッ、しまった、やり過ぎたかも。
仮にもエブリンは女の子だ。急に抱きつかれたら、嫌がっているかもしれない。
嫌われたらどうしよう。
そう心配をしながら、エブリンを見ると。
「えへへへへへっ」
あれ、嫌がっていない、むしろ喜んでいる。
手を離そうとしても、逆に頭を押しつけてくるよ。
仕方なく、そのまま頭を撫でて褒めていると、うっとりとした目でしなだれてきた。
こういうのは、他の従魔と同じだな。
「ご主人様を守れて良かったぎゃ」
うっ、これこそが従魔なんだ、感激だよ。
人生初めてのテイムと戦闘、そしてウルルン。一気に全てが動き出した。
「それでねご主人様、お願いがあるんだけどいいぎゃ?」
さっきとはまるで違う真剣な表情のエブリン。何を言ってくるのかと構えてしまった。
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