第25話 よし、次に行っちゃおう
「ワンちゃん、おめでとう」
「やはりマスターは最高ですぅ」
従魔の2人だけじゃない。ギルドメンバーも僕の昇格を喜んでくれている。
「久しぶりのAランクの排出だよ。この町の自慢がひとつ増えたな」
「やっぱ、ワンダ様にはオーラがあるもん、こんなの朝メシ前さ」
「そうですよ、ワンダ様の実力なら、明日にはSランクになっているかもしれませんね」
とカミラさんも乗ってきた。
ちょっと言いすぎだよと、心の中で呟くけども、顔が緩んでしょうがない。
「もう、やめてよ。運が良かっただけだよ~」
自分でも軽薄かなって思うけど、やっぱり顔が。
「いえ、実際にこの街にもAランクなんて、5組しかいないですし、やっぱ、ワンダ様は別格ですよ」
手揉みをしてくるカミラさん。いつも持ち上げてくれる。
「これもエブリンとイオナのおかげですよ」
「またまたぁ、ご謙遜を~。Aランクのいない街だってザラにある事を考えれば、ワンダ様はこの街リーガンの光です」
「は、恥ずかしい……」
特にギルドは僕のジョブを把握している。
「テイマーが単独ソロでの昇格を果たした事だけでも、その価値は高いですよ。それに将来的にSランクを期待しておりますよ、へへへへへっ」
僕へのアプローチがグイグイある。
「マスター、心中お察しいたします」
「ははっ、ありがとう」
乾いた笑いになったよ。
確かにSランクは貴重な存在だ。各国で数組程度しか登録されていない。
数が少ないため、会えることがほとんどない。
「Sランクなんて会える事が幸運だし、遭遇した人はみんな自慢をしていて、半ばラッキーアイテム扱いらしいよ」
「ワンちゃんは元から幸運の主ぎゃ。だって、これがいい証拠だぎゃ」
そんな照れている僕に手渡されたのは、金色に光る新しいギルドカードだった。
「うぎゃ、キラキラしてキレイだぎゃ」
「ええ、お似合いですよ、マスター」
Aランクのギルドカード。その色とともに重みがある。
「そうだね。これからはどんな難しいクエストも、失敗が許されない。僕はここまで来れたんだね」
いや、失敗しない人だからこそ、誰もが憧れるAランクとしていられるんだ。
それに自分がなるだなんて、身が引き締まる思いだよ。
「マスター、さっそく高難度のクエストを見てみますか?」
イオナの問いにこう答える。
「いや、数日後に飛空挺に乗るから、クエストは受けないよ」
「…………えっ、まさか?」
この言葉に皆一様に驚いている。
特にギルマスはショックのようで、口をあんぐり開けたままだ。
「ワ、ワンダ様も、この街リーガンを出て行ってしまうのですね。あっ、異論があるのでなく、ただ……ハイ……スミマセン」
ギルマスはさっきの恫喝から、まだ立ち直れていない。視線をあわさず、よろめきながら聞いてきた。
ランクアップした他の人たちと同様に、僕が王都センターメガラに進出すると思ったようだ。
ギルドメンバーたちも騒ぎだして、泣いている人もいる。
「ワンダ様、行かないで下さい。せっかくこのリーガンの街にも楽しみができたのに、オレ……オレェ」
「それだったら、俺も一緒についていくぜ」
「いや、王都に取られてたまるかよ。センターメガラの奴らが、また調子に乗ってきやがる」
「そうよ、ワンダ様をとられるくらいなら、ヤツラと戦争よ」
思っていたより大ごとになってきた。ヤバいよ、ちゃんと訂正しないと。
「いやいや、勘違いしないでください。僕が行くのは、ジョブ判定都市『グリハラ』なんですよ。決して拠点を変えるためじゃないんです」
「えっ?」と、ギルドメンバーさんたち。少し静かになってくれた。
グリハラとは、満10歳になった者のジョブ判定が行われる都市だ。
そこでは身分の隔てはなく、1人の例外もなく行われる。
「僕も久しぶりだし、楽しみなんだ」
僕も10歳の時の判定で、ユニークジョブを発現し、そこでテイマーギルドの前ギルマスにスカウトされたんだ。
「おお、美味しいモノとかありそうぎゃ。でもそこに何の用だぎゃ?」
エブリンが疑問に思うのも当然だ。
自分の特性は、ステータスオープンすれば確認できる。
でも、詳しい内容や成長度合いになると、都市にある神殿で診てもらうのが1番だ。
「僕もスキルレベルが上がってきているし、自分の能力を完全に把握したいからね」
この答えで他の人たちも安心してくれた。
「マスター、ありがとうございます。私嬉しいです」と、イオナ。
「んん、改まって何?」
「サプライズで、ハネムーンを用意して下さるなんて、うふふ」
イオナの急ハンドルにはビックリさせられる。訂正する声も届きそうにない表情だ。
「私としては海も良かったのですが、マスターのご意志に従いますわ」
「イオナ、妄想中すまないぎゃ、その相手は私だぎゃ。続きは1人で遊ぶがいいぎゃ」
――バキッ!!!!
「イッター、叩いたぎゃ。あれ以来手を出さなかったのに! ワンちゃん、イオナは誓いを破ったぎゃ。今すぐ破門するのがいいぎゃ」
半笑いのエブリン、どちらにしたってタチが悪い。
「何言っているの。オヤツでいつも取っ組みいをしてあるのに。2人とも解消がいい?」
「「はい、スミマセン。猛反省しておきます」」
黒目を小さくして、うつむき加減でいる。手間のかかる子達だよ。
「話を元に戻すよ。もし馬車で行こうとしたら、一カ月以上はかかる道。だから1日でいける飛空挺にするつもりさ」
「飛空挺ってそんなに速いのですね。私も楽しみです」
空の事なので、イオナが食いついてくる。
「1度目の時はね、行きは馬車、帰りは前ギルマスに乗せてもらったんだ。その時ね、すごく感動したよ。それまで見上げるばかりの街が、眼下に小さくなっているんだもの」
孤児の僕には信じられない光景。
だって、綺麗な服を着た大人や、カッコいい騎士たちも、全ての人たちがチリのようになっていた。
「僕もあの光景をもう1度見てみたい。
誰が誰だか分からない。みんな同じに見えてくる、そんな光景を。あっ、喋りすぎだね」
「いいえ、マスターの心の声を聞けて嬉しいですわ」
それに僕は微笑み返す。
「あの時、空が僕に夢を与えてくれたんだ。僕も頑張れば、彼らと一緒のステージに立てるって」
そして、言葉を続ける。
「その飛空挺にもう1度乗るんだ。今度は夢を叶えた者として、自分の未来をもっと明確にするために、あの街に行くんだよ」
「はい、マスターは立派です。そしてこれからもっと大きくなりますよ」
エブリンとイオナも、落ち着いたトーンで話してくれる。それが嬉しい。
「準備ができ次第、出発するよ」
頷く瞳の輝きが、僕に勇気を与えてくれる。この2人となら何処までもいける。よし、ここから僕は羽ばたいていくよ!
【ここまでお読み下さり、ありがとうございます】ここで一旦区切りとさせて頂きます。
ただ、より多くの方が読んでくださったり、
「エブリンの暴れっプリをもっと読みたい」や
「ワンダーボーイの神の領域ってどうなる?」
とかの声がありましたら、書き貯めをして、すぐに始めさせて頂きます。
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それでは。




