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第24話 報酬と賠償

 あれからは何事もなく、無事にギルドについた。

 中は相変わらずの盛況ぶりで、顔見知りも何人かいて、声をかけてくれる。


「おぅ、ワンダくん。試験はどうだった?」


「ええ、完璧です」


「君ならそうだろな。あれっ、後ろにいるのってギザンだよな、何かやらかしたのか?」


 ギザンは縄で縛られたまま、顔を背ける。


「ええ、ちょっと殺人未遂を何件かです」


 その答えで、ギルド内が一瞬静寂に包まれた。そして。


「えええぇぇぇええ、遂にやらかしたか!」


 みんな驚いているけど、意外ではなかったようだ。

 ヒソヒソ話で聞こえてくる声も、ギザンをかばう話は聞こえてこない。


「てめぇ、ワンダくんに何しやがった……うっ、クッセェェエエェェェエエエ!」


匂いのオーラがバリアを張っている。


「気をつけてください、メスオークの唾液まみれですよ。ちょっとやそっとじゃあ、匂いは取れないですよ」


「グヘッ、口紅もついているし、もしやオークとそんな関係なのか?」


「ち、違うんだぁぁああぁ!」


 ギザンは否定しようとするが、後ろから職員さんに押さえ込まれる。

 だからギザンの叫びも空しく、話はそのままの内容で伝わっていった。


 そこへいつものカミラさんがやってきた。

 この状況に驚きながらも、同行した職員さんと話をして、頭を抱えだした。


「ワンダ様、しばらくお待ち下さい。責任者を呼んできますので」


 そう言って、奥の方に引っ込んでいった。

 ギザンを引き渡したあと、僕らはその言葉に従い待つ事にした。


 しばらくして、カミラさんは大柄なエルフと一緒にやってきた。


「おっ、ギルマス登場か。いつものアレが見られるな」


 周りのギルドメンバーがニヤついている。


 そのエルフは威厳たっぷりのゴリゴリタイプで、目力のある視線を僕に向けてきた。

 そして、グアッと一気に距離をつめてきた。


「ワンダ様、この度は重ね重ねの不祥事、大変申し訳ございませんでしたああぁぁぁあああ」


 出会った瞬間での、(おお)土下座。


 あまりの勢いにひいちゃったよ。逆に怒られたのかと思ったくらいだ。


「出たよ、ギルマスの名物〝フライング土下座〞。今日もキレッキレッで気持ちがいいね」


 これを見たギルドメンバーが爆笑している。見慣れた光景なんだろう。

 でも、やられる側はたまったモノじゃない。


「頭をあげてください。みんな無事なので問題はありませんから」


 僕が慌ててそう言うと、ギルマスはニッカリ笑って立ち上がった。


「ですよねぇ、さすが大物。ではこれで決着がついたって事で、イヤー良かったぁ」


「へっ?」


 その切り返しであっ気に取られる。そして、また後ろで爆笑がおきている。


「もうギルマス、そうはいきませんよ。今回はギルドの信用にかかわります」


 カミラさんに注意をされてギルマスは、少し不服そうだ。


「え~、いいじゃんか、本人は許してくれているよぅ」


「ギルマス!」


「はい、ご免なさい」


 変なやりとりに巻き込まれたよ。僕は息を殺して、成り行きに任せることにした。


「えーっと、改めて申し訳ありませんでした。ギルドとしましても、犯人への厳重な処罰を行い、ワンダ様には出来る限りの償いをさせていただきます」


 受付嬢さんに言われてからは、普通に喋りだした。


「まず、オークジェネラル討伐報酬と、賠償の話をさせて下さい」


淡々とした口調。


 その内容はギルドランク昇格試験の結果に、報酬を上乗せする形となった。


「現金で1千万Gと、各諸施設の使用料の免除、そして1年間の税金の肩代わりをさせていただきます」


 破格の内容にびっくりした。

 特に税金に関しては、国に対しても許可がいるので、そう簡単にできることじゃない。


「それとBランクへの、昇格の手続きは終わらせました」


 あまりの厚待遇にポカンとなる。

 でもそこへ割って入ってくる者がいた。イオナだ。


「ちょっと待ってください。私の記憶が正しければ、Aランクから1流と呼ばれていたはずです。本来マスターは超一流。Sランクだけが相応しいですわ」


 言葉は丁寧だが、顔が怒りで崩れている。

 これを聞いたエブリンも畳み掛け、威圧のオーラを全開だ。


「おうおう、あれだけ迷惑をかけておいて、これっぽっちで済ませる気なのぎゃ? それはちっとムシが良すぎるぎゃ」


 どこで手に入れたのか、サングラスをかけてオラついている。これじゃまるでチンピラのたかりだよ。


「ヒィイイッ、エ、Sランク以上は本部と国が決めるものなので、わ、私では……はっ、す、すみません」


 職員さんたちは失神し、ギルマスだけが踏ん張っている。

 いや、逆かも。いい加減そうな人でも、2人の威圧の前では逃げられないと悟ったようだ。

 強者からの重圧が、気絶さえも許さないのかもしれない。ちょっと可哀想だよ。


 でも、イオナは容赦ない。


「だったらAランクはどうなのよ。あなたの考え答えなさいよおおおぉぉぉおおぉぉお!」


 イオナの恫喝で、建物全体が揺れている。

 これは注意しないと。


「コラ2人とも。これはもともとBランクへの昇格試験だよ。それに報酬も充分にもらっているんだから、これ以上変な事言わないでよ」


「でも、マスタ~、不平等な関係は、健全な未来を作りませんよぉ。それにマスターには、最上のものが似合いますから~」


 甘い声色に変えてくるイオナ。その後すぐに周りを見渡し睨みをきかす。


「そうみなさんもそう思うでしょ?」


 とばっちりで、同意を求められたギルドメンバーには申し訳ない。

 あの眼光にはうなずくしかないよね。


「そうだぎゃ。なんだか分かんないけど、その通りだぎゃ」


 のんきにエブリンが合いの手を入れている。


 僕を想ってくれる気持ちは嬉しいけれど、この2人には困ったよ。どうやって納得させればいいんだ。


「お、お待ち下さい。それは誤解です」


 諦めの境地で踏みとどまっているギルマスが、なんとか話を続けた。


「あ、あくまで今のは、討伐報酬と試験の結果でして、賠償は他を考えております」


 ギルマスの思いがけない言葉に、僕は絶句した。これ以上ってことは?


「ですから、ワンダ様には金1億GとギルドランクAを授与させて頂きたいのです!!!! これで勘弁して下さいいいぃぃぃぃぃっっっ」


 フライング土下座。


「ええええ、マジですか!! はるか高みのAランク、それが自分のものに?」


 降って湧いた幸運に実感できないまま僕は、胴上げをされて宙をまっていた。


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