第21話 窮地の昇格試験
「あーはっはー、私を恐れて逃げたぎゃ」
「それにしても、あの名前のない男。噂通りの凄腕だったよ」
と、周りを警戒しながら〝ネームド喰い〞を思い返す。
「ええ、敵わないと判断したら、逃げるための布石が、憎たらしいほど上手でしたわ」
「そうだね。煙幕の前に強気のやり取りをして、心の揺さぶり方は見事だったよ」
「だからあんな簡単に、引っかかってしまったのですわ。せっかくの宝箱ゲットのチャンスを、ミスミス逃してしまいましたわ」
「……へっ?」僕はクチをポカーンと。
「あの強さだったら、確実に出現していたはずです。次こそは仕留めてマスターに捧げますね」
「暗殺者を、そのくくりで捉える人を初めてみたよ……」
エブリンも高笑いしていて、『次は両手を先に潰せばいいんだぎゃ』って、笑っている。
「でも、もう気が抜けたし帰るぎゃ」
「いやいや、オーク討伐が残っているよ。エブリンたら忘れっぽいよ」
そうだったというハッとした顔で、僕を見る。
「いいえ、マスターこそギザンのことを忘れていますよ」
ハッ!
「ザコ中のザコですから、マスターが忘れるのもしょうがないですよね」
「ははは、そういう事にしてもらえたら助かるよ。うん、忘れてないって事で」
少し冷めた目の2人。
でも、ホントよくよく考えたら大変な事件だ。
殺人依頼をした人間が、今回の試験官だなんて、前代未聞だ。
「あのギザン、他にも何か企んでいるかもしれないよ」
僕の考えを2人も分かったみたいで、キッと表情を引き締めた。
僕らは全力で走りに走った。
集落へ向かう道、オークの死骸はあったけど、かなり数が少ない。
「個別撃破が出来ていないんだ」
オークの罠にハマッたのかと頭をよぎる。
「ワンちゃん、悲鳴が聞こえてきたぎゃ」
エブリンの五感は頼りになる。
そして集落に着くと、メンバー全員がオークの群れに囲まれていた。100匹どころじゃない、その5倍はいるよ。
「間に合ったけど、ワンランク上のオークウォーリアーが混じっているよ」
死人はいないようだけど、全滅寸前だよ。
それに何やら揉めているようだ。
「おい、お前が盾になって俺様を守るんだ」
「あんた試験官だろ、しっかりしろよ!」
「うるせぇぇえ、俺様は生き残るんだよぉぉおぉぉお!」
ギザンめ、この期に及んであんな事を。でも、いまはみんなを助けるのが先決だ。
「イオナ、あの集団の所を頼む」
「かしこまりました、セイントサンダー」
バリバリと雷がはしり、一気に10匹以上を葬った。
「エブリンはあのデカイのをやっつけて!」
「任せるぎゃ、うしろからドーーン!」
バゴンとオークの体を突き抜けて、そのまま5匹をペッシャンコ。
囲われた輪の中に入れて、みんなと合流できた。
「た、た、助かった~」
「ワンダ様、神です」
「まだだよ、次がきている」
さっきのデカブツ、オークウォーリアーが何匹もやってきた。
だけど、みんなは僕のことを見て、少し希望を見つけたみたいだ。
でもその時、後ろからギザンの声が聞こえてきた。
「お前が囮になって道を作れ、オリャ!」
こともあろうかメンバーの1人を突き飛ばし、ウォーリアーの前に差し出したんだ。
「エブリン!」
「OK、間に合うぎゃ」
バシュッ!
裏拳いっぱつだ。
「ありがとう、ギザンの野郎め。あれ、アイツどこ行った?」
ギザンはみんなの注意を逸らし、とっくに逃げていた。
「ギザンはあと。オークを殲滅するよ」
「「はい、ご主人様」」
イオナが大量に葬ると、負けじとエブリンも猛進撃。
2人の活躍であっという間に、向こうはズタボロだ。
そして僕にも出来る事をしよう。
すり抜けてきたオークが目の前に。
でも、焦らない。以前より僕は強くなったし、オークごときに負けないよ。
「エイッ!」
新調したアームガンで脳天直撃。1発で討ち取れた。
「ワンちゃん、ナイスだぎゃ」
「ありがと、2人も気をつけて」
それと、立てないギルドメンバーも何とかするか。
「みんなさん、これでキズを治しますね、慈しみの風《1/神》」
HPリジェネの効果で、やさしくみんなを治していく。
◆ピコーン(ステータスアップのお知らせです)
あっ、慈しみの風もレベル2になってくれた。
「おお、これがワンダ様のちから。す、素晴らしい」
「エブリンちゃん、ガンバレー」
「イオナちゃん、エレガントですぞぉ」
2人は声援に手を振る余裕まである。ますますペースが上がってきた。
「よし、このまま気を抜かずにね」
「「はい」」
順調にいっていたが、
――ぎゃーーーーーーっ!
突如、奥の方から人間の悲鳴が聞こえてきた。
他に誰かいるかもしれないが、今はここから動けない。
しばらくすると、他とは違う重量感のある足音が聞こえてきた。
ズシンッ、ズシンッ、ズシンッ。
ざわめくオークが道を開ける。
僕達も緊張し、その足音の主が登場するのを待った。
そのオークはウォーリアーよりも、更にふた回りも大きな体。
全身をきらめく鎧でかため、堂々とした振る舞いだ。
そのオークが身動きする度に、他のオークがかしこまる。
「あの個体は、レア種のオークジェネラルだ」
ギルドメンバーの1人が絶叫。
「なるほど、オークジェネラルは、戦術に長けた相手だ。だから今回のメンバーでも、こんな窮地に陥ったんだね。これは誰も責められないよ」
「敢えていうならば、情報封鎖したオーク達の手柄ですわ」
珍しくイオナが相手を褒めた。
そのオークジェネラルは片手に〝何か〞を持ち、それにクチをつけ、歓喜の声をあげている。
――ブチュッ、ブチュッ、ベロベロ~ン
「ぷはぁ、あー、こんないい男いるなんて、やっぱ人間ってサイコーだわさぁ」
メンバーの1人が〝その何か〞に気がついた。
「あ、あの装備はギザンだ、捕まったのか」
「本当だ、顔が血で真っ赤に染まっている。嫌な人だったけど、殺されるなんて」
それをオークがなめ回し、見るに耐えれないよ。メンバーにも目を背ける人がいる。
しかし、何かこのオークジェネラル、なんか違う。
はっきりとはしないけど、何かが引っ掛かるんだ。
すると、メンバーの人がウェッと吐き、叫んだ。
「もしかして、あれはメスじゃねぇ?」
「んんん、本当だよ。頬にちょっとチークいれているし、オクチも紅をひいているよ」
それと、もうひとつビックリしたのが、ギザンだ。
「うっ、うっ、もうやめて、た、たすけて……」
い、生きている。よく見るとキズのひとつも負っていない。
それと、血だと思っていた赤いものは、なんとジェネラルのキスマークだった!
「ぶちゅっ、ぶっちゅう~、この味を知ったら、止められないだわさぁ」
怖すぎる。さっきのギザンの悲鳴はこれだったんだ。
止めてあげて。それ以上グロいの禁止で、お願いします。
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