第20話 オーク討伐以外にも
目的地近くまでやってきた。
そしてギザンがニヤリと笑い、一喝してきた。
「おめーら、いつまでクッチャベッてんだ。黙りやがれ!」
それに対して周りが冷たい反応。
「いやだ、感じ悪ぅ」
「俺Bランクに上がっても、奴とは一緒にやらねーよ」
「セコそうだしね、アハハハ」
まぁ自業自得かな。
ただ職員さんもいるので、その後はてきぱきと進んだ。
「では、班別けをします」
まずギザンと職員さんの2方向に分かれ、3組ずつの包囲網戦だ。
ちなみに僕は、嫌だけどギザンの方に入ってしまった。
「ツイていないや」と僕。
エブリン達から文句が出るかと思っていたが、もう相手にすらしていない。完全な無視だ。
だから僕も気にしないでおこうと、心の中で念じた。
そして定刻。所定の位置にいき、ギザンがそれぞれに指示を出す。
「よし、お前はそちらのルートだ。で、小僧は俺と来い。ズルをしないよう、しっかり監視してやる」
僕は2人を見習い反応しないでおく。
とにかく今は試験に集中。僕もエブリンとイオナに念を押す。
「いい? たった100匹とはいえオークの集落だ。他のメンバーもいるし、慎重にいくよ」
「はい、オークは豚の顔に似合わず、戦法とかも使ってきますし、特に今回の地の利は向こうにありますもの」
イオナの言葉にエブリンもコクリと頷く。
そのあたりを考えてか、ギザンはかなり迂回したルートをとっている。
「それにしても、全くの反対方向へ進んでいるよ。かなり変則的の作戦だなぁ」
なにか違和感。
するとひらけた場所へたどり着き、ギザンが立ち止まった。
「ここで一旦休憩だ。楽にしていいぞ」
「いまここで?」
おかしい、ギザンはニヤつきながら話している。
それにそこには銀髪の先客がいて、石の上に座っていた。
「遅いぞ、追加料金をもらうからな」
その先客は黒装束で身を包み、ナゼか苛立っていた。
「はははっ、そう言うな。コイツらが獲物だ。じゃあ、あとは頼んだぞ」
ギザンは立ち去ろうとするので、驚いたよ。
「ちょっと待って、これはどういうこと?」
これにヘラヘラと笑い、ギザンが答えてくる。
「その男に、お前らの殺しを頼んであるんだ。あー、心配するな。ギルドには逃げたって報告しといてやるからよ。それじゃあな、ヒャッヒャッヒャッー」
ギザンは高笑いをして奥へ消えていった。
「呆れましたわ、あのクズはここまでやるのですね」
「今はそれどころじゃない。殺し屋が目の前にいるんだ。まずは相手の戦力を確認をするよ!」
ターゲットステータスオープンで、相手の能力を見た。
名前:※※※(※※※)
ジョブ:光の※※※
物理戦闘力:S
魔法戦闘力:C
スキル:光の暗黒技 ※※※ ※※※
一瞬止まってしまった。……名前がない。そして、表現できないおかしさを感じた。
光の暗黒技って聞いたこともないし、きっとユニークスキルだろう。
出ているオーラも重苦しく、警戒度を最大限に上げないと。
「おいおい、人のステータスを勝手に覗くとは、躾がなっていないな」
乾いた声で冷たい目を向けてくる。
「ん~ん、あーはっはっはっ、これは良い。たまには安い仕事も受けてみるもんだぜ。趣味と実益が一気にできるなんてよ」
こちらのステータスも覗かれた。
そして男は心底喜んでいるように、高笑いを続けた。
「あー、お前らから見ても、俺の名前は見えないだろ? うん、そのままだ。俺には名前がないんだよ」
隠蔽させているのではなかった。
でも、それが意味する所が分からない。
わざわざ伝えてくるという事は、何かあるということだ。
「だからよ、お前らが誰に殺されるのか、教えてやろうと思ってな。ただそれはあだ名だ。それだけでも知って死ね」
相手が刃物を抜いた、くる!
「よく聞け、俺のあだ名は『ネームド喰い』だ」
「えっ、あのネームド喰いなのか?」
僕が知ったのは偶然で、ネームドモンスターのことを調べているうちに、何体ものネームドを倒している凄腕がいるって聞いたんだ。
素性がわからないって、これが原因だったんだ。
「ほう、俺を知っているのか。ハハハ、運が悪かったと諦めな」
言い終わる瞬間に男の姿が消えた。
――ガキンッ
男が叩き込んだ一撃を、エブリンが弾き返した。かなり速い。
出遅れてしまったけど、支援効果を2人につける。
「能力アップ《1/神》」
「スキルアップ《1/神》」
「会心率アップ《1/神》」
「状態異常付与率アップ《2/神》」
「慈しみの風《1/神》」
男は抜いた刃物を、舌で舐めづり回している。
「この男、アホだぎゃ。食べられないのにベロベロって。『アホ喰い』に名前を変えるぎゃ」
「うん、僕もこれをする人初めて見たよ。ちょっとカッコ悪いよね」
イオナも僕らと同じ反応だ。
「ははは、心配するな。食うのはお前らの命だからよ」
またしても男が消えた。
「させません、セイントスロー」
イオナの魔法で、男の動きが極端に遅くなった。
ただ驚いたことに、男は僕のすぐ目の前にいたんだ。
「クソが、こんなにも阻害魔法が効くのかよ」
男が唾棄する。
「ワンちゃんを狙うたぁ、いい度胸だぎゃ」
エブリンが間に立ち、渾身の一撃を入れる。
「エブリーンパーンチ!」
――ドゴッ!
少しずれて当たったが、その威力は大きかった。
男の腕を粉砕し、ほぼ千切れかけている。
「な、な、なんだこの威力、S級の力じゃねぇぞ」
男は目を見開き、動揺を隠せていない。
しかも腕に当たったのに、その衝撃は全身に広がって、男はガタガタ震えだした。
「ぐおおぉおおぉぉぉおお!」
それでもポーションを取り出し、傷口の回復にかかる。
「ぎゃ、腕がくっついたぎゃ!」
あれは最高級のHPポーションだ。
「ふざけるな、ふざけるな、ふざけるなぁぁあぁ。どんなイカサマをしやがったんだ。それにこのポーションいくらすると思ってんだ。クソー、この代償はその命で払ってもらうからな」
目は血走り前のめり、まるで獣のようだ。
「ふん、手も足も出ないのくせに、偉そうですわね」
イオナが横に回りこみ圧力をかける。
「はははー、2匹だから勝てると思ったのか。俺がナゼ『ネームド喰い』と呼ばれているか分かるか? 数多く倒しているだけじゃねぇ、俺にしか出来ないことがあるからだ。それを今から見せてやる。ひっひっひつ」
僕は緊張し構えるが、2人は余裕の表情。
「ふん、ガキのくせに。その慢心が命とりだ。これでもくらえ」
男は大きく振りかぶり、地面に何かを叩きつけた。
そしてすぐさま、辺り一面は煙で充満した。
「煙幕だよ、気をつけて」
「うぎゃ? 匂いも魔力の気配も効かないぎゃ」
この煙の色からして、全ての索敵を潰すタイプだよ。
「エブリン、マスターを守りますわよ」
「らぎゃ!」
両脇2人が構えていて、これ以上の安全はない。
でも向こうもタイミングを計っているはず。
耳をすませ、目を凝らし探す。
時間が流れるけど、まだ来ない。焦らす作戦なんだろう。
そして風が煙を追い払い、視界がだんだん広がってきた。
「……誰もいないですわ。やられましたわー」
殺し屋は逃げたようだ。
そうか、強敵のS級が2人相手では、それが賢明な判断だよ。
ふぅ~、緊張をしていた分、力が抜けるよ。
何にしても、みんな無事で良かったよ。




