第19話 昇格試験開始
「本当にすみません。たまたまBランク以上の冒険者が彼しかいなくて、こんな事になりました」
昇格試験には見届け役として、ギルド職員とギルドメンバーの、双方から1名ずつ出すのが慣わしらしい。
「ですが、職員がしっかりと監視しますので、ご迷惑にはならないかと思います」
うーん、昇格試験自体が不定期だし、たまたまランクアップする人達が重なったようだ。
「しょうがないですよね。じゃあ当日に門に集合ですね。僕はそれまで準備します」
受付嬢さんも安堵し、これでまた仲良くなれたかも。そっちの方が嬉しいかな。
そしてあっという間に当日を迎えた。
メンバーは時間通りに集まり、目的地へと歩いて向かっいる。
今回の内容は、大量発生した100匹ほどのオークの村の討伐だ。
「オークなんて、遊びにもなりませんわ」と、イオナが言う。
「そうだね、それを受験者6パーティで攻略するし、成功は当たり前。その内容が問われるはずさ」
戦力的にも無理はなく、現場でどう動くかが見られるのだろう。
「ただ内容的には不安はないけど、いかんせ試験官があの人だ。ちょっとどころか、だいぶ不安だよ」
「おい小僧、チンタラするな。シャキシャキ歩け」
ギサンは睨みながら、大声で叫んでくる。
だけど僕ら3人はどこ吹く風。相手にしないようにしている。
というのも、さっきもギザンが絡んできて、あわや戦闘力Sの威嚇が発動しそうになったんだ。
それは。~
「小僧、昨日は変な手を使いやがって、俺様が失神なんてありえねーんだよ。今日はバッチリ暴いてやるからな」
最初僕らは何を言っているのだろうと、目をパチクリさせていた。
そして、エブリンが思い出したとしゃべりだした。
「あー、やっと分かったぎゃ。昨日のコジキのクズだぎゃ」
そしてイオナが合いの手を入れる。
「エブリン遅いですよ。でもまぁ、これだけのザコです。覚えていないのも、仕方ありませんね」
「そうだぎゃ。でも逆になぜ前に出れるのかが不思議ぎゃ」
「う~ん、だからザコなんですよ。周りに紛れてぼやけるの」
「なーるほどー」
とことん馬鹿にした会話。でもそれは仕方ない。だって、僕が見ても大したことがない。
「テメェら、Bランクをバカにしやがって、覚悟出来てるんだろうなぁ?」
このセリフに2人は鼻で笑っている。いや、内心はかなりイラついている。
でもギザンはそれが分からず怒り、見かねたギルド職員さんが間に入ってくれた。
「ちょっとギサンさん、私たちの役目を忘れないで下さい。揉め事は厳禁ですよ」
「チッ、分かっとるわい」
ギルド職員さんにギザンの方が助けられた。
こんなやりとりで済んだのは、事前に2人に言い聞かせたからだ。
口は動いたけど、それ以外は言いつけどおりにしてくれている。
僕が言ったのは。
「いいかい。同行者を失神させない、傷つけない、それと殺しもダメ。この3つを守ってね」
コクンと頷いて、とっても可愛かった。
うん、最初の1件以来、本当に素直でいい子たちだよ。
ということなんだ。~
「誰も気づかなかったけど、もう少しで先日の二の舞になる所だった。よく我慢したね、えらいぞ」
これに対して笑ってくる。
「よし、気持ちを切り替えていこうか」
「はい、マスター」
向こうでどう動くかを考えるため、同行するメンバーを確認してみた。
「マスター、あの人達の実力はそれ程ですが、実に幅広いメンバーですね」
「そうだね、バランスの良い6人パーティのところもあれば、前衛だけで固めた集団もいる。
他には女性のみとか、僕らより少ない2人のところもあって、すごく多様性に富んでいるよ」
そう話していると、声をかけてくれる人がいた。
「どうも、ワンダ様ですよね。一緒に試験だなんて光栄です」
気さくな感じの人だ。
話している間にお互いの緊張も解け、だいぶ打ち解けた感じになれたんだ。
「いやー、先日の噂を聞いたからさ、構えちゃったよ。でも君、普通にいい人だね」
「そうそう、前の印象と真逆だもん。お姉さんそのギャップに萌えちゃうわ」
「ねぇー、カワイイよねぇ」
エブリンがビキッてしたのが分かる。頼むからおさえてね。
「それに女の子2人も美人だし、羨ましいパーティーだよ」
この言葉に2人はニヤけた。いや訂正、デレデレだ。
「エブリンちゃんは元気印だし」
「うん、うん」
ギルドメンバーの褒め言葉に、エブリンが食いつく。
「イオナちゃんは清楚で綺麗だよ」
「ええ、それが売りですから、ポッ」
負けじとイオナも反応した。
なんて簡単に攻略されているんだ。それがまた2人の魅力かも。
周りが褒めるので、エブリンは調子に乗ってきた。
ワイバーンを倒したときのことを、身振り手振りで説明し、ウケるとより一層激しくなった。
「そこで私の一撃だぎゃ! 構えたときから分かていたよ、これで決まるぎゃってね」
「おおーー、凄いね。エブリンちゃん」
アゴをしゃくらせて、キメポーズ。
その一方でイオナは、おとなしく他のメンバーと話している。
「あなたは魔力の才能がありますね、今は剣士ですが、それを活かしてみてはいかがですか?」
「おお、ありがとうございます。これで踏ん切りがつきました」
「いえいえ、またいつでも、いらしてくださいね」
うはっ、人生相談を受けているよ。
仮にもBランクを狙う人たちに、よくアドバイスできるよな、感心するよ。
イオナはこちらを見てニヤリ。すごい得意げだ。
「チッ、くそが!」
僕らが笑って話し合っているその向こうで、ギザンが地面を蹴り、舌打ちしているのが見えた。
他のギルドメンバーも眉をひそめる。
「あんなヤツ、放っておけぱいいよ」
それには僕も賛成だ。今回に限っては、僕から動くつもりもない。
最初の出会いも一方的だったし、今のところ、こちらに非があるとは思えないからなんだ。
逆にきちんと謝ってくれれば、水に流すつもりではいる。
それもこれもあの人が、自分で動いてくれるかだよね。




