第17話 装備と服の違い
次の朝。充分な栄養と睡眠で、体調は万全に整った。
「「おはようございます、愛しいご主人様」」
「2人とも元気だね。今日は買い物を楽しもう」
鼻歌まじりで街へ出た。
まずは服装からだ。だって2人とも着たきりスズメなんだもん。
普段の服から日用品まで、全てを揃えなくちゃいけないんだ。
でも僕はもちろん、2人も何が必要か検討すらつかない。
「ということで店員さん、すべてのことをお願いしたいんです」
と、レディースの洋服屋で頼み込んだ。
「えっ、2人分の全てをって、50万Gはかかりますよ?」
と、店員さん。でもこの際だ、気前よくいっちゃおう。
「ええ、大丈夫ですよ。その10倍でも構いませんので、お願いします」
「じゅっ、10倍! ……まいどありー」
店員さんは下卑げびた笑顔だ。でもその気合は本物だった。
上から下、靴にいたるまで、いろんな組み合わせを持ってきてくれる。ちょっとしたファッションショーが始まった。
「ワンちゃん、これはどうだぎゃ?」
ジャーンとカーテンを開けて出てきたエブリン。
「おお、可愛いTシャツにショートパンツか。うん、ボーイッシュでいい感じ、似合っているよ」
「えへへっえへへへ」
よっぽど嬉しいようで、くるくる回って笑っている。
すると今度はイオナが、にんまり笑顔で登場した。
「私はこれが気にいりましたわ」
「ペールカラーのワンピースで、大人のイオナにぴったりだ。だけどさ、背中がざっくりと空いていて、ちょっと大胆すぎない?」
少し目線を外して言う。
「もうマスター、どこ見ているんですか。これはちゃんと実用性を兼ねているんですよ」
そういうと、隠していた翼を一瞬にして広げた。
「ほらね、こうするためのものです。見せるためじゃないんです。でもマスターなら、いくら見てもいいですよ」
またイオナにからかわれているよ。
でも、さっき兼ねているって言っていたし、多分イタズラの方が強いかも。
その後もとっかえひっかえ着替えてゆき、どれも気にいったと悩んでいる。
「それだったら、全部買っちゃいなよ。ただし使い方はちゃんと聞いておくんだよ」
「「「キャーーーーーーー、ステキー!」」」
んん、喜びの悲鳴が、3人分だったような気がするけど、まぁいいか。
◆ピコーン(ステータスアップのお知らせです)
見ると、テイマーの愛《3/神》。
本当に喜んでくれた証拠だね、僕も嬉しくなるよ。
「支払いを済ませたし、今着る分以外は宿に届けてもらうよ」
だってまだまだ買うものはいっぱいだ。
荷物が少しでも少ないほうがいいからね。
「マスター、次はどこに行くのですか?」
「ふふふ、それは冒険者用デパートさ」
そこは大きなビルで、沢山の武器、防具、そして様々なアイテムを売っている。
各階層に品揃えが別れていて、一階の初心者用から始まるんだ。
二階の中級を経て、どんどん登っていけば、最上階は超高級品が並んでいる。
「キラキラしたのがいっぱいだぎゃ」
僕らは迷わず最上階にあがり、まずは武器から選ぶことにした。
「スゴくいっぱいのアイテム、宝箱の中身もこれだけ沢山出たらいいのにー」
そうなるよとフォローをいれる。
「ワンちゃんはどんな武器にするぎゃ?」
「テイマーの武器といえば、中長距離用が定番かな。だけど、僕はレベルが低いし、強化したい部分があるんだよね」
「ふむふむ」
「だから、連続してスキルを使うためにも、魔力を上げる装備がいいんだ」
「さすがマスター、よくお考えで」
「はは、そこで僕が選んだのは魔導アームガンだ。これならダメージも稼げるし、魔石を組み込めるから、僕の魔力の底上げもできるんだ」
イオナも納得して手をたたいた。
「いい具合に、ワイバーンの魔石もありますし、是非使いたいですものね」
僕が使えそうなアームガンを探していると、……あった!
「こ、これください!」
初めて使うので、1番高いものを選んでみた。
魔力との親和性が高く、重量も申し分ない。
内部に魔石を組み込んでもらい、僕オリジナルの武器が出来上がった。
「腕を振っても、しっくりとくる。クゥ~いいの見つけたよ」
「おお、ワンちゃんカッコいいぎゃ」
「惚れ惚れします、最高です」
「ありがとう。あれ、2人は何も選んでないの?」
「う~ん、どれもイマイチですの」
「うん、ガラクタばかりだぎゃ」
半目になって、本当につまらなさそうだ。
「うそ、これなんかどう、ミスリルクロー。デザインとかが嫌なのかい?」
エブリンはミスリルクローの爪をつまみ、クチを尖らせている。
「だって、脆いし素手の方がいいぎゃ」
そういうとエブリンは、グニャンと爪をねじった!
これにはびっくり。戦闘力Sってこれほどなんだ。
「もしかして、イオナも同じ理由?」
「ええ、だいぶモノ足りません」
これには笑うしかなかった。
個人の戦闘力を上げるため武器が存在するのに、それが足かせになるなんて考えてもみなかったよ。
続いて防具でも2人は同じこと言い出した。
「2人とも本当に、普段着で戦うつもりなの?」
「はい、買ってもらった服は沢山ありますし、それ程構えることじゃありませんよ」
「えんうん、動きやすいが一番だぎゃ」
僕は目がテンだよ。だって、敵との戦いを、おつかい程度の感覚で捉えている。
「なんか張り切って選んでいる僕が、バカみたいだよ」
ショートパンツにTシャツのエブリンと、セクシーなドレスのイオナ。
「マスターも普段着にしたらどうですか?」
「それがいいかもね。軽装の2人の後ろで、ガチガチの防具はありえないよな、うん」
僕も防具は揃えずに、風よけ用のマントだけ買っておく事にした。
その分予算が浮いたから、アイテムやテントなどを充実させるかな。ちょっと意外な買い物になったよ。




