第13話 これが本当の愛なのです
「おの~マスター、これを開ける前に、言っておきたい事があるんです」
イオナがモジモジして言ってくる。
「改まってどうしたの?」
すごく言いにくそうにしているので、僕は笑顔で促してみた。
「実はその中身なんですが、あまり期待しないで欲しいのです」
「えっ、こんな立派な箱なのに?」
「ええ、それにドロップ率もそんなに高くないんです」
しょぼんと落ち込むイオナ。
「ゴメン、責めてんじゃないよ。ただどういう事かなって思ったんだ」
これが言いにくい原因だったのか。それからイオナはポツリポツリと話し出した。
「相手が強ければ、その分出現の確率は高いのですが、開けても開けても、中身はガラクタばかりなんです」
「ガラクタって?」
「ヒノキの棒や薬草、たまに石コロなんかもあって、その度にガッカリするし、不安になるんです」
せっかく出た宝箱なのに、毎回それでは自分自身を否定されている気分になるらしい。
誰だってそうなるよ。従魔がいなかった僕だって、毎日が不安でしょうがなかったよ。
でもさ。
「何言ってんの。これ自体、他の誰にも真似できない事なんだよ。もっと誇っていいよ。そうさ、これは奇跡だよ。君は神から、アイテムをもぎ取れる唯一の存在さ」
「マスター」
「も、もしかして、今までの分は取ってあるよね?」
「えっ、捨ててますよ」
イオナは『どうしたの』って顔で驚いている。そこですかさず。
「ウソっ、勿体な~~~い。神の石がそこらに捨てられたなんて、人類の最大の損失だぁ」
大げさにおどけて感じで、天を仰いで嘆いてみる。
イオナが笑った。
「笑ってくれた。ねっ、僕も同じだったよ。どんなに才能を持っていても、自分が信じなきゃ始まらない。明日へと繋がらない。だから自信を持って、ねっ」
イオナはコクリとうなずいた。自信はまだ持てなくても、心の整理はついたみたいだ。
「ありがとうマスター。じゃあ、チャチャッと開けちゃいますね。私のお宝を見て下さい」
そう言うと、イオナは慣れた手つきで箱を開けた。
「おおー、中から金色の光が。カッコいいじゃん」
不思議な光のせいで中身は見えない。これで石ころなんて信じられないよ。
イオナは目を見開いて固まっている。
「どうかしたの?」
「い、い、い、い」
「胃?」
「い、い、いつもと違います。こんなの初めてです!」
驚いているイオナをよそに、光の波はおさまった。そして、中には1つのアイテムが。
「薬草……じゃないよね。革製品?」
取り出してみると、それは鈍い黒色の袋だった。
「鑑定してみます。セイントアイズ」
すると。
「レ、レ、レ、レ」
「んん、レで1文字の単語はないよ」
「レ、レ、レ、レ」
イオナは顔がこわばり、震えている。
「レアアイテムですううううぅぅぅううう」
「「ウソッ!!!!」」
「正真正銘〝ワイバーンのマジックバッグ〞と銘もあるレアアイテムですよ!!!」
何かが3人の中で弾けた!
「やったじゃないかぁ、おめでとう」
「愛だぎゃ、ワンちゃんの愛が届いたんだぎゃ」
「ええ、確かにマスターの濃い愛を感じました」
「愛の強さは世界一だぎゃ、嬉しいぎゃ誇らしいぎゃ」
「あははは、良かったけど、僕の愛は関係ないでしょ、面白いなぁ」
すると、2人は頭を大きく振って訂正してきた。
「間違いないです。私は確かに感じました。アレは紛れもないマスターのモノでした」
「うぎゃぎゃ、私も感じたぎゃ。それに〝テイマーの愛〞に愛の深さで奇跡は起こるってあったぎゃ!」
その言葉を頭の中で反芻する。
仲間になった大事なイオナを信じ、自信を持ってもらいたいと願ったよ。イオナも僕の想いを感じ取ってくれた。
それが形になって現れたってことか。
それがもし本当なら、これこそがまさに〝神からの贈り物〞だよ。
「だから、これはマスターが使ってください」
イオナがマジックバッグを差し出してきた。
「いや、これは君のものだよ。僕が貰っちゃ悪いよ」
「いえ、マスターがいなかったら、出ていないアイテムです。この先もレアが出るとは思えません。だから、これだけじゃなく、出たものは全部使って下さい」
1歩も引かないという表情で見つめてくる。
「分かったよ、大事に使っていくね」
笑顔でぎゅうっと強く抱き締めてきた。そして僕も2人を撫でた。
さて、薬草採取に出掛けて採れたモノは、
薬草1袋。
ギガントボア31匹。
そしてワイバーン1匹だ。
さすがマジックバッグ、まだまだ余裕。
だけど、ここに用もないので、街に戻ることにした。
ただし、ちょっと心配なことがある。それは街での従魔の2人の事だ。
「何がでしょうか?」
「そらはね、2人がネームドである事は、いずれバレるだろうけど、ワザワザ言いふらしたくないんだ。希少な従魔やアイテムに、群がる輩はたくさんいるからね」
だから町に入るだいぶ手前で、イオナには翼を見えないよう小さくしてもらい、エブリンにもアレコレ言い含めた。
「ラジャー、ワンちゃんに恥は絶対かかせないぎゃ」
根拠のない自信が、余計に不安を与えてきたよ。君ら本当に大丈夫?




