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7話 居酒屋で三人

活動報告に「投稿できるようになる!」みたいなことを書いたにもかかわらず、更新の間隔空いてしまって本当にすみません!(汗)

裏で色々と画策してしまして……。あ、悪い意味でじゃないですよ! 健全な意味です!


とにもかくにも更新なるべくガンガンやっていこうと思ってますので、よろしくお願いします! 

「じゃあ今日は久しぶりに三人集まれたことだし、盛大に飲もーっ! カンパーイ!」


「はいはい。乾杯」「か、かんぱーい」


 カチーンッ。


 ビールの入った大きさの異なるグラスを合わせ、僕と勇成と秋津さんは乾杯した。


 オカルト研究部に顔を出し、秋津さんと談笑していた最中、久しぶりだからということで勇成を呼び、三人で飲もうという話になったのだ。


 呼びだされた勇成は、気だるそうにしながら、


「別にいいけど、金はあるのか? おごったりしねーぞ?」


 なんてことを言ってくる。


 僕はまあ……ぶっちゃけるとあんまり持ち合わせがないから、ちびちびと自分で払える分くらいで料理やらを楽しもうと思ってた。


 だから、どうにかなりはする。


 けど……、


「いやぁ……実はですね勇成さん……。そう言われちゃうとちょっと厳しいと言いますかー……今月はオカルトグッズ買い過ぎちゃってて……」


 冷や汗をかきながら視線を別の方向へやり、気まずそうに言う秋津さん。


 どうやらお金がないらしかった。


 それを見て、勇成は深いため息をつく。


「……だろうと思ったよ。仕方ねえな。今日だけだぞ?」


「え、い、いいの!?」


「まあ、こうなることは大体予想付いてたからな。久住、お前も今日は俺が払うからいーよ」


「えぇぇ!?」


 なんという太っ腹。びっくりして普通に大きめな声を出してしまった。


「ていうか、成美。お前、今月の俺のバイト代が多めだったの見越して飲みに行こうとか言ったろ? バレバレだっつの」


「ギクッ! ……な、ナンノコトカナー……?」


「ったく……。まあいい。じゃあもう時間も時間だし、居酒屋行こうぜ」


「お、おーっ!」


 ――というわけで、僕たちは今居酒屋にいる。


 一応居酒屋に向かう前にアパートへ寄り、猫の様子を確認した。


 猫は僕が玄関を開けるとすぐさま奥の部屋から走ってき、足元でにゃあにゃあ鳴いた。


 寂しい思いをさせてたのかもしれない。


 けれど、今から居酒屋に行くし、連れて行くこともできないしで、仕方なく申し訳ない思いを込めて頭を撫でてやった。


「ごめんな。すぐ帰って来るから、もう少しだけ待ってくれる?」


「にゃ~……」


 なんかちょっとガッカリしてる感。


 一緒に連れて行きたい気持ちが沸々と湧き上がってくるものの、それを振り切り、外へ出たわけだ。


 楽しみたい気持ちはあるものの、やはり家で待つ猫のことを考えるとすごくソワソワしてしまう。


 複雑な気分でビールの入ったグラスに口を付けていた。


「それにしてもさ、春架君。ちょっとさっきは部室で聞けなかったんだけど、最近前世の記憶はどう?」


「え?」


「あ、勇成と違って私は茶化すつもりとかないからね? ほら、オカルト少女的にもちょっと気になっててさ」


 あたふたと訂正する秋津さんに対し、隣で唐揚げをつついている勇成は「ふっ」と鼻で笑う。


「何がオカルト少女だっつの。成人してそろそろおばさんのくせに」


「んなっ!? ちょ、ちょっとそれ言っちゃいけないやつなんだけど!? まだ少女でも許されるでしょ! 二十歳なったばっかだし!」


「いやいや、キツイキツイ」


「もぉぉぉ!」


 言い合う二人を、僕は苦笑しながら眺めるしかなかった。


「もういい、この人無視。それで春架君、どうかな?」


 秋津さんは勇成へ嫌そうな顔を向け、やがて僕の方へ向き直って問うてきた。


「どう……っていうのは、つまりどういうことなんだろ?」


「うーんと、その前世の記憶をもとにして……え、えと、だ、誰かに会った……とか、記憶のことをその人に話したとか、そういうことなんだけど……」


 秋津さんは申し訳なさそうに声のボリュームを落として聞いてくる。


 彼女もまた、奈冬のことに関しては知ってる人の一人だ。


別に僕も努めて必死に隠そうとしてるわけじゃないし、すごくいい子だから、このことを告げた。


 そしたら、泣きながら話を最後まで聞いてくれて、それに釣られて僕も泣いてしまったという何とも言えない思い出もあったりする。


 ともかく、テンションも高いし、ちょっと変わってるけど、すごくいい子なんだ。


 信用を得るには、その涙だけで充分だった。


「ごめん。特にそういうことはなかった。いつも通りボーっと過ごしてたよ」


「あ、そ、そっか。……うん、そうだよね! 猫も最近拾ったって言ってたし」


「うん」


 僕が微笑交じりの表情で頷くと、秋津さんは焦った様子で枝豆を皮ごと口にし、びっくりしていた。


 そんな様を心配しつつ、苦笑していると、勇成がビールを飲みながら問うてくる。


「悪い久住。それについては俺もちょいと疑問に思うことがある」


「なに?」


「覚えてるのはその女性に関することだけらしいけど、それつながりで彼女の親とか、今でも頼れる人とかいたりするんじゃないのか?」


「……まあ、いるにはいる。覚えてるよ。奈冬のお父さんもお母さんも」


 僕がそう言うと、勇成の隣に座っている秋津さんは「えっ」と小さく声を漏らした。


 それもそのはず。このことはまだ二人に話してはいなかった。


「会ったこと、あるのか?」


「いや、ない」


「……そうか」


 言って、勇成はまたグラスに口を付ける。


 その理由を聞いてこない辺りがこいつらしい。


「……なんかさ、今さら僕がどの面下げて会いに行けばいいんだって思いが強いし、たぶん向こう側も『僕です』なんて言いながら会いに行ったところで、『何しに来た?』って感じだと思うんだ。だから、会ってないし、会うつもりもない」


「会いたいとは……思わないの?」


 秋津さんが問うてくる。


 僕は軽くうつむいて首を縦に振った。


 彼女も勇成と同じく、「そっか」と呟くだけだ。


「ま、まあ、それで僕はいいと思ってるし、普通に生活できてるから、不幸とかそういうことは一切思ってないよ! 今日もこうして二人と居酒屋に来れて幸せだし!」


「……俺のおごりでな」


「そ、そうそう! って、そうじゃなくて! ほんと、ありがとうございます……」


「ああ。感謝しろよ」


「ははぁ……」


 大袈裟にお辞儀して見せる僕。


 秋津さんはそれを見て笑っていた。


次回、割と大きめな動きを見せる予定です! お楽しみに!

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