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駐輪場のお兄さん  作者: カナタハジメ
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第1話「春の香り」

桜の香りがする。ジリジリと自転車のチェーンが音楽を奏でる。どこかの家のシャッターが開閉音がする。それは、いつもどこかで感じているものと同じだ…だけど、今日はなぜか心に染みる。心を温かく包む。これがざらに言う春の訪れとでも言うのであろうか。


「はぁ……はぁ…」


息を乱しながらも上り坂に挑む。ある程度の距離まで自転車で頑張ったが、さすがにキツいので僕は足を止め一度止まる。疲れでうつむいていた顔を上げると目の前にはまだ坂が続いている。そして、もう一度ペダルに足をかけ回す。ジリジリと自転車のチェーンが音を立てている、ハンドルがミキミキとうなっている。ここまで頑張ったのだ…この先に何かがあると淡い期待をよせ僕は立った。

視線が上がる。それと同時に追い風がさっきよりも強く感じられる。でも、そんなことより僕は少しピンクがかった坂と坂の終わりを告げる境界線が見えた。僕の中にある何かが跳ね上がる。あともう少し…あと少しと思い僕は前かがみになり風の抵抗を少し軽減させるそして、今まで以上に強くペダルに力を込め回す。


「あと…少し!」


この期待が、欲望が満たされる確信したと同時に僕は声を漏らしてしまう。

そして、重かったペダルが軽くなる。坂を登りきったのだろう…衝動的に胸の奥から達成感と共に喜びがこみ上げる。それよりだ、あるのか分からないものが本当にあるのかを確かめるべく、力を入れるために倒した姿勢をもとに戻す。そして、目に入った。


桃色の白く輝く桜の木々の道。背景がとして存在する澄み切った薄暗い青空。この、一種のパネルアートとでもいえる景色にさらに、この宇宙に自由にのびのびと流れている流れ星のように桜の花びらが風にのり舞い散る。その中にちちくりあった二匹の雀が飛んでいる。


「……」


僕は固唾をも飲み込んでしまう勢いで息を飲んだ。これが世が言う神秘的。この世にあったのかと僕は胸が踊った。疲れなどを忘れて僕は自転車を降り足を進める。

いつも聞きなれている地面を踏みしめる音でさえ今の僕には神秘なる芸術だと感じている。僕は水に流れるように風が吹くように流されポケットからスマホを取り出した。


 カシャ


この、神秘的世界に電子音がなる。つまり、写真を撮ったのだ。この世界を留めておきたいという願望…いや、欲望が僕にそうさせた。写真を確認する。肉眼で見ると写真で見ると違うと言われているが、まったくその通りだ。でも、これはこれでよい。写真は写真で何か味を感じさせるものであるから。これを確認している僕の顔はおもちゃを貰った子供のようにニヤついていると思う。それはまぁ、自分でもキモイと分かる。でも、この景色はそれだけすごいと言うことだ。


ピロン


さっきとは違う電子音がなる。僕は携帯を見た。通知だ。


"もう病院の時間だよ、早く帰宅すべし"


と書かれていた。


もう、そんな時間か…帰るか。


"わかりました。急いで帰ります。"


名残惜しい気持ちが大半を占めていたが、僕は自転車にまたがり必死かいて登った坂をいともたやすく下った。


***


「ふうー」


病院が終わり帰宅した僕は自室の布団に倒れ込むように寝そべった。


「病院、疲れんるだよな~」


ひとりごとにしては大きな声で言った。僕も人間羞恥心の一つや二つ持っている。だから言い直そう。僕はぼそっと呟いた。何事もなかったように寝返るとカレンダーが目に入った。


''3月25日"


僕は枕に顔をうずめる。


もう、25日か…どうしよう…もうそろそろで高校の入学か~てか、もう僕高校か…


僕は、若干16歳にして時の流れの速さにため息をつく。その時だリビングの方からから声がした。


幸輝(こうき)くんー!」


名前で呼ばれている。呼ばれているので返事した。あたりまえだけど…


「なんですか~」


と言ったら、声の主は切羽詰まった声で叫ぶ。


「いいから!早く降りてきて!」


と、命の危機でもやって来たかのようにせかされたので僕は速足でリビングへと向かった。ここで補足を入れるとすれば、こう補足をしよう。僕は色々訳あって今、おたけびチックな声の主 山見美智留(やまみみちる)さんの家で居候させて頂いている。本人は、僕のより親だと言い張り優しくしてくれている。無条件で愛を伝えてくれる親のように。あ、ちなみにさっきのメールの相手も美智瑠さんです。


「なんですか~美智瑠さん~」


そこには腰を抜かし美智瑠さんが座り込んでいた。


「え、え!?本当にどうされたんですか!?」


僕は状況を理解できず少し取り乱してしまった。そして、美智留さんは涙目と弱い声と震えた手で冷蔵庫の方を指さした。そこには全人類と言っていいほど敵…ゴキブリがいた。そして、さっきの取り乱しは後かもなく消えていった。


「ゴキブリですね」


少し冷たいと言われる言い方だが気にしない。僕は机の上にあったの新聞で黙々と山折り谷折りを繰り返しハリセンを作った。その勢いでベジ!と叩いた。

そうすると後ろからプルプル震えた声が聞こえてきた。


「幸輝くん…あでぃがどう!」


涙をぼろぼろ流し鼻水がジュクジュクさせながら美智瑠さんが僕を見つめていた。


「まぁ、これくらいはやりますよ…居候の身なんで…」


美智留さんはそう言った僕を今さっきまで号泣していた人なのか?と思ってしまうほどのまじめな顔をした。


「そんなこと、言わないの、幸輝くんは私の家族だよ…大切な大切な人…もう、居候とは最も遠くなった存在…でも、例えこういっても納得いかないんだったらそれはそうさせてしまっている私の責任、でもね…幸輝くん…私そう線を引かれちゃうと…私はすごく悲しいかな?」


そして、美智瑠さんは僕の頭を優しく撫でた。大切なものを大切に包むように優しく。だからこそ僕はこれを温かく感じる。


これだ…これが僕をポカポカさせる。すごく心地いい…と。


だから、僕は多分ニヤついているだろう…いや、表情筋の感じ…ニヤついている。だからこそ、こんな顔を見られたくないためうつむく。美智留さんからかい癖あるから…


「あ!」


美智瑠さんが何か思い出したときのテンションで叫んだ。


「そういえば幸輝くんは高校までなにで通うのの?」


あ、考えてなかった。嘘、考えてはいた。だから今朝あの桜の木の所まで行った。でも…あそこはさすがに遠いいしな…あ、


「とりあえず最寄りのだから…えー松駅まで自転車で行って電車に乗ろうと思っています」


そうすると美智瑠さんはカバンからお金を取り出した。


「はいこれ、これで駐輪所と電車の定期買っておいで」


僕はさすがに甘えすぎだと思った。


「いやいや自分でそれぐらいは自分で…」


僕の言葉に噛み付く勢いで美智瑠さんは言ってきた。


「もう、そんなこと言わないの黙って受け取りなさい!怒っちゃうよ?」


最初の言葉は少し棘のある言葉で僕の心に刺さりかけたが、最後の「怒っちゃうよ?」は少しぶりっ子が入っていたかもしれないけど…と、言うより…僕は…


「でも…少し僕…美智瑠さんに甘えすぎ…」


また美智瑠さんは僕の言葉に噛み付いてきた。


「でも、じゃありません!…と言うか私は幸輝くん君に甘えて欲しんだよ!」


美智留さんは笑みを浮かべた。と同時に背中を押された。


「はい!お金もって今から行ってらっしゃい、善は急げだよっと!」


僕はもう何も言っても聞いてくれないことが野生の感でわかった。だからこそ僕も美智瑠さんの気持ちに答えるべく満面の笑みで言った。


「行ってきます!」


そうすると美智瑠さんも僕の気持ちに答えてくれたのだろ。満面の笑みで言ってくれた。


「行ってらっしゃい!」


僕は行き良いよく玄関を飛び出した。


***


「はぁ……はぁ…」


僕はまた疲れが声に出でしまった。僕は少し自分の体力の無さに少し虚しさを覚えた。それはそうだ!だって!体育の成績はペーパー野郎だから!!


僕…ランニングしようかな…


今後の体力について考えているうちに松駅の看板が見えた。そこは少し大きめと言っていいと思う駅で駅の近くには色んな店がある。例えばファミレスやコンビニがある。それとちょっと人を寄せ付けないような食べ物屋さんとかがる。でも、こういうとこに限ってうまいところがたくさんある。少し、僕は匂いにつられたが我慢した。


「それはそうと駐輪所を探さないと…」


僕は気持ちを切り替えて辺りを見回した、どこかに駐輪所がないかと、だが…そこには選びようがない程の駐輪所の数があった。


「多すぎないか?」


ついつい本音を口に出してしまった。恥ずかしい。


「あ、」


僕は思い出した。それは…僕が通う高校の入試の時この駅まできた時のことだ。僕は自転車のチェーン外してしまいオドオドしていた。そんな時あるお兄さんに出会い、助けてもらった。


********


高校入試当日


僕は自転車で駅に向かっていた。だが、チェーンが外れた。そしたらだ、コンビニの袋片手にジャージ姿の男の人に声をかけられた。


「お、外しちまったか…どれ見してみろ」


僕は知らない人に話しかけられてさらにオドオドする。肩にかけている鞄の紐を強く握る。


「何オドオドしてんだ少年?…あ…少年…もしかして今日受験か?」


僕はオドオドしていて声が出なかったためコクコクと頷いた。これが今できる最善の策だと僕は強く心に誓った。


「そうだな~これ多分絡まってるから結構時間かかると思うんだ…だから俺そこの角の駐輪所で働いてるからおれが直しといてやるよ」


ジャージ姿の男性は小さい小道を指した。そして張り上げた声で激励を含めた言葉を贈ってくれた。


「行ってこい少年!」


こう言う時は戸惑う場面だか僕は僕で焦りを感じていたた僕は深く礼をして駅に走って行った。


「頑張れよ!少年!」


********


とまぁ、この後自転車を治してくれてて、しかもお金はいらねと言ってすごく親切な人だった。だから多分…僕はあの日から決めていたのであろう。いや、決めていた。だから…


僕は大きく空気を飲み込み足に力を込めた。

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