アロサウルス
「兄さん後ろ! 」
エメラルドがそう言うと、 青龍は後ろを振り向いた。 すると、 あの狼が追いかけて来ていた。青龍は舌打ちをして狼を睨みつけた。
「どうするのお兄ちゃん! 」
ルキナは青龍にそう聞いた。
「ルキナはこのまま走り続けろ! 」
ルキナにそう命令する青龍。
「わかった! 」
ルキナはさっきよりも速く走った。
「兄さん私はどうすれば…」
エメラルドは青龍を見つめる。
「ルキナと一緒に村に戻れ! 」
青龍がそう言うと、 エメラルドは虚ろな目をした。
「おい…私は役に立たないて事か? 」
エメラルドは少し怒っていた。
「そうじゃなくて! 何だろう…お前にケガさせたく無いから…」
青龍は少し照れてたような感じそう言った。 それを聞いたエメラルドは頬を赤くし急に後ろを振り向いた。 そしてまた青龍の事を見て、
「行ってらっしゃい! 」
エメラルドは青龍を抱きしめキスをした。
「行ってきます…」
青龍はそう言うとエメラルドの頭を撫でて、 小声で「フェーズワン」と呟く。 すると青龍の足元に緑色で巨大な時計の様な魔法陣が出現した、 青龍はその場から跳び降り着地した。 追いかけてきた狼もその場でたち止まった。
(このガキ…ただもんじゃないな…)
狼は青龍を警戒する。 青龍が狼を睨んだ瞬間、 青龍の足元の魔法陣から大量の赤い液体が勢いよく噴出し青龍を変形させ静かに消えた。
狼は青龍から少し離れる。 狼が離れた瞬間空が赤くなり、 パソコンのメッセージボードのような物が空から出現した。 その出現したメッセージボードようなものにはこう書かれていた「かつてジュラ紀を支配した死神がいた」と。
そのメッセージボードが出てきた後、 青龍が居た場所には、 肉食恐竜のアロサウルス・フラギリスが佇んでいた。 特徴は体色は青色、 爪は濃い黒色、 歯は透き通った水色、 口の中は薄いピンク色、 肌は羽毛では無く、 鱗で覆われていた。 全長約35m
少し時間が経つとそのアロサウルスは戦闘態勢に入り、 雄叫びを上げた。
(クッククックまさか本当に実在するとはな…捕食種最強と謳われたあのデータファイルが…)
狼はニヤける。
「初めまして…私はフェンリル…」
青龍達を追いかけていたのはフェンリルと言う狼だった。 フェンリルも口を使わずテレパシーで声を発しそのうえ、 声にもエコーがかかっていた。
「お前…フェンリルって言うのか…」
青龍も口を使わずテレパシーで声を発し尚且つ、 声にもエコーがかかっていた。
「すまないが私はお前と戦いたい」
「やだ」
「私は闘う事が趣味なんでね…」
フェンリルは不敵な笑みを浮かべた。
(シランガナ! 他所でやれ! )
青龍は口を開けながらそう思った。
「せめて人の話を…」
青龍はしょぼんとした顔を浮かべる。
「冥土の土産にいいものを聞かせてやろう…」
「どうでもいいから他を当たれよ! 」
青龍はドタバタしながらツッコミを入れる。
「貴様はもう人間じゃない! 」
フェンリルは笑いながらそう言うと、 青龍に噛み付こうとした、 だが青龍は軽々と避けた。 青龍が避けたとき赤黒い残像が生じていた。
「卑劣すぎだろお前! 」
青龍はまたツッコミを入れた。
「実にくだらん…」
呆れるフェンリル。
「しらんがな」
退屈そうにツッコミを入れる青龍。
「まぁいい…」
『氷尾刀』
狼の尻尾が一瞬で氷を纏い刀みたいになった。
(えっ…氷…)
少し驚く青龍。
「俺のメインスキルは変幻自在。 1日1回自分の属性が変えれる。 」
フェンリルは調子に乗っている。
「それ言っちゃダメだろ! てかよくわからん事言うな! 」
「わからない…お前まさか…異世界から来たのか! 」
「そうだよ! だから何だよ! 」
青龍は何度もツッコミを入れる。
「面白くなってきた…」
フェンリルはにやつき始めた。
「何がだよ」
青龍は、嫌そうな顔をした。
「戦いが…」
「しょうもなさすぎだろ! 」
青龍は疲れてきた。
「油断禁物だ…」
フェンリルはそう言うと、 高く飛び氷を纏った尻尾で薙ぎ払うように攻撃した。 だが青龍は頭を少し下げて回避した、 フェンリルはまた高く飛び上がり、 尻尾で突き刺すに青龍に攻撃したが、 またしても避けられてしまい、 今度は尻尾で足の方を薙ぎ払う様に攻撃したが飛び跳ねて回避した。
(クソっ…何故当たらない…)
フェンリルは疲れてきた。
「何でお前、 口とか使わないんだよ馬鹿! 」
青龍は尻尾で薙ぎ払う様に攻撃したがかわされてしまった。
「遅い! 」
フェンリルは青龍の左腕を嚙み千切ったが、 青龍に首を嚙まれ投げ飛ばされた。 その後青龍の腕はグチュグチュと音を立てながら再生した。
(ヤバいなこれ…)
フェンリルはその場を去ろうとしたが、
「なんだこれ…」
フェンリルの目には多くのアロサウルスが映っていた。 そのアロサウルスがフェンリルに襲い掛かる幻覚を見ている。
「これは…幻覚…だが油断はできない…」
フェンリルは青龍から逃げた。
「逃がすか! 」
青龍は全力疾走で走った。
幻覚の中逃げ切るフェンリル、 だが青龍はすぐそこまで迫ってきていたのだ。 青龍はフェンリルに追いつくと、 頭で押しのけるように攻撃し、 フェンリルの体勢を一時的に崩させた。 また走り出すフェンリル、 だが少しだけ青龍との距離が縮まった。 青龍は口を大きく開き、 上顎を手斧のように振り下ろし、 フェンリルの背中を何度も何度も切り裂いた。 するとフェンリルの背中は血だらけになり、 白い毛も段々赤く染まっていった。
(なんだ…めまいが…)
その場に倒れるフェンリル。
「アッやべ! 」
青龍はその場で転けて、再び立ち上がり。倒れたフェンリルの所まで戻った。
(それに再生も出来ん…)
すぐさま異変に気づくフェンリル。
「一体何が…」
青龍がそう呟くと、 フェンリルは口から泡を吹いていた。
「私の負けだ…青龍よ私を殺せ…」
フェンリルは微かな声でそう言った。
「どうして俺の名前を…」
青龍はフェンリルにそう聞いた。
「お前は…データファイル…捕食種最強の青龍だから」
フェンリルは死にそうだった。
「どういう事だ? 」
青龍はフェンリルに詳しく聞こうとしたが、 そこまで話せそうになかった。
「私のファイル名はフェンリル…種類は好戦種、 ベース個体はホッキョクオオカミ…」
フェンリルは血を吐いた。
「よくわからんが…お前のその一言で何かがわかりそうだ…だからもう喋るな…ゆっくり休め…」
青龍はそう言うと泣きながらフェンリルの首を全力で嚙み砕いたするとフェンリルの首がへし折れた。
「楽しかった…ぞ」
フェンリルは、 涙を流しながら灰のようなものになりながら死んでいった。 その灰のようなものの中に狼が描かれたガイドストーンが入っていた。
「あんなしょうもない戦いが楽しかったか…一人ボッチで寂しかったろうに…」
青龍は自分の姿を元に戻した。 戻る際青龍の身体から灰のようなものが出てきた。
「疲れたな…」
青龍はその場に倒れ込んだ。 それを遠くで見ていたエリスはすぐさま青龍を助けに行った。
「龍さんしっかりしてください! 」
エリスは青龍を担いだまま村に戻った。
「エリス…二人は戻ったか? 」
青龍は微かな声でそう言った。
「二人って? もしかしてあの少女たちですか? 」
エリスは青龍にそう聞いた。 すると青龍は頷いた。
「虎さんと雀さんが何とかしてくれてます…」
エリスがそう言うと青龍は静かに目を瞑った。
「寝るな! 」
エリスはそう言った後、 ため息をつき病院まで運んだ。