8.マヨネーズと次の領域へ
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翌日からは、Eランクの常設依頼ケレナ草の採取依頼も受けた。森に入っては薬草採取をしながら、時々ホーンラビットやゴブリンを狩る毎日だ。冒険者ギルドに報告して宿屋に帰ったら槍の稽古とポーション作りも欠かさない。
裏庭の隅に小さな竈を作らせてもらい、小鍋でちまちまとポーションを作っていく。
最近はバルトやギルベルトも触発されたのか素振りや木に吊るした的に矢を射ってる。
毎日低級ヒールポーションを作ってたらいつの間にか、俺は日に4本つくれるようになっていた。それに気付いたギルベルトが聞いてくる。
「いつの間に作れる本数が増えたの?」
「毎日やってたら魔力量が増えたらしい」
「増えたってなんで分かったの?お師匠様とかに見てもらわなくちゃ」
「えっ?」
「えっ?」
どうやら自分のステータスを自力で把握するのは一般的では無かったらしい。俺?俺は自分の体を見てインターネット画像検索したらステータスが数値化されて見えた…
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その後も順調に薬草採取と常設討伐依頼をこなすが、ホーンラビットはともかくゴブリンは今でもひやりとする事がある。
基本は弓や投石器などの遠距離から攻撃するゴブリンをバルトが小楯で防ぎながら肉薄して、素早く倒す。
俺は近接武器や小槍を持つゴブリンを槍を振り回してとにかく足止め。
ギルベルトはバルトや俺の手が足りない方に矢を射かけたり、混戦になったらマジックボルトを撃って援護。マジックボルトは威力は低いが確実に敵に命中して誤射が無いそうだ。
「混戦でも弓と違って使いやすいんだ」
と、ギルベルトが自慢してた。
それでも危険が無い訳じゃない。ギルベルトが伏兵のゴブリンにやられた時もそうだが、手槍を投付けて来た時は冷や汗をかいた。
ホーンラビットで繰り返した動作が活きて、とっさに短くもった槍を振って叩き落とせたが何本も飛んできたら危なかった。
バルトも小楯で受け切れず、篭手や革鎧に何本も矢が突き立っている事がある。一度なんか頭に投石を食らってたたらを踏んだりしたが、レザーヘルムのお陰でたんこぶも無かったと笑ってた。
それでも概ね、かすり傷で済んでるって事だ。俺が低級とはいえ、ヒールポーションを作れるからな。怪我したら遠慮なく使うように2人にも言い含めているからすぐに治療できる。
装備を充実させたお陰で、まあまあ安全に討伐を達成出来てる。3日おきの休日も毎回武器屋に装備を持ち込んで傷付いた箇所を繕ってもらったりバルトの剣や俺の槍の穂先を研いでもらう。なかなか順調じゃないか。
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安定して稼いで、休みも十分とれるようになった。そんなある日、俺は野望を抱いて食材を買い集めてきた。マヨネーズを作るのだ。
異世界転移といえばマヨネーズ。マヨネーズで一財産稼ぐのだ。
俺は宿屋のおばさんに頼んで、厨房を借りて食材を持ち込んだ。市場で買った卵と酢とオリーブ油…卵は高かった。いつも昼飯に屋台で買うホットドッグみたいな軽食や串焼きが銅貨1枚、手軽な食堂でも銅貨5枚で十分おつりが来るのだが。なぜか生食用の卵は銅貨20枚もした。
だが、マヨネーズの作成に成功すれば宿屋のおばさんに売りこんで、皆が味の虜になってお金ががっぽり儲かるビジョンが浮かんでいた。
一抹の不安要素といえば、昨夜マヨネーズの作り方を確認しようとインターネットで『マヨネーズ』を検索したが、『検索結果はありません』の無情な文字。いろいろ検索キーワードを変えて試したが結果は変わらず『検索結果はありません』。それでも俺はなんとか材料を記憶を頼りに思い出し材料を準備したのだ。
「さて、作るか!」
「何か作るのか?」
「まあ、見ていろ」
バルトよ、俺は大金持ちになって冒険者を引退するかもしれないぞ。意気込んで作り出す。
数時間後…おかしい…一向にマヨネーズにならない。手順を変えたりがむしゃらにかき混ぜたりするが目の前に有るのは卵と酢とオリーブ油が混ざったもの…けっしてマヨネーズではない…
アイエエエェェナンデェェ!頭を抱えるのであった…
「ねぇ、ユウトこの不気味な液体は何?」
「ナンダロウネ…」
マヨネーズの失敗から数日後、薬草採取に精を出しながら考えたのは塩だった。
ファンタジーなら真っ白な混じり気のない塩や貴重な胡椒が定番だよな、そんな事を考えながら早速検索を行う。
検索!『塩』
結果は目を疑うものだった。
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塩
ソルトスライムの核から採取される調味料
安定した供給のためソルトスライムは養殖されている
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ファッ!?海水とか岩塩じゃないの?作り方までファンタジーでじゃん。
そういえば宿屋の飯は塩が効いてて美味かった。この世界では塩は貴重品でもなんでもなかったとは…
なお、胡椒はある虫の卵でこちらも大規模農園で生産されていた。
うそーん…さすが異世界、異世界きたない、生産方法もファンタジーであった…
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今日も薬草と討伐証明を冒険者ギルドに納品した後だった。パーティ結成の時にお世話になったパーティ『明けの星』のアランさんに声をかけられたのだ。
「やあ、バルト。君達は最近調子が良いみたいだね噂になってるよ」
「アランさん、どうもッス」
「俺達が噂になってるって本当ですか?」
「ああ、Eランクの駆け出しだけじゃなく、Dランクの一部でも噂になってるよ。君達を引き合わせた俺の所にどうやったんだ?って聞きに来るから間違いない。まあ、連中にはなかなか真似出来ないようだがね」
「そうなんスか?そんなに特別な事はしてないと思うんスが」
バルト…俺たちはインターネットで薬草の群生地を探したり、ちょっとしたズルをしてるんだ。
「彼等には金が入ったらパッと使い切ってしまうのが癖になってるからね。薬草採取で安全堅実に金を稼ごうって考えは無いようだ。君達は相変わらず薬草採取メインだろ」
「そうッスね。常設討伐でホーンラビットやゴブリンのおまけがついたらラッキーぐらいッス」
「最近は解毒の素材のケレナ草の採取も受けるようになりましたよ」
「相変わらず堅実だな。君達らしくて良いんじゃないか」
「でも、ケレナ草を採るために活動範囲を森の奥に広げようと思うんですが何が出るんですかね」
「ゴブリンの次となるとフォレストウルフかな」
「俺達で倒せますか?」
「だいたい3,4匹の群れだから装備を良くするのと、もう1人くらい仲間を増やしたらどうだい?」
「装備だと金属鎧スか」
「いや、足元だな見てごらん」
アランさんが自分のブーツを見せて来る。なるほど金属板でつま先や踵まわりが強化されてる。
「フォレストウルフはまず足止めするために、踵を狙って噛みついて動きを邪魔して来るんだ。あとゴブリンと違って混戦になる事が多いから相手を分断させる足止めしての手段があると良いな」
アランさんの話は参考になるな。実戦に則しているからだろう。
「「「ありがとうございました」」」
俺達は感謝してお礼を言うと、アランさんは手を振って去って行った。
「新しい仲間はおいおい探すとして、今のアドバイスを元に武器屋に行こうと思うんだが、どうだ?」
「ユウトに賛成だ、俺の剣もそろそろ新調したい」
「僕も新しい魔法を習いたいな、次の休みに魔術師ギルドに行ってみたいよ」
「よし、次の休みは武器屋と魔術師ギルドだな」
俺達は次の領域を目指すべく次の休みを楽しみにして過ごした。
読んでいただきまして、ありがとうございました。
引き続き読んでいただければ幸いです。