77.白鉄と装備の一新
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再び、ダンジョン攻略と輸送依頼の毎日に戻ってきた俺達だが、冒険者ギルドの副ギルド長アンドルーさんが度々訪ねてくる。
「また、Fランク、Eランク冒険者を受け入れてくれないか?」
アンドルーさんは頭を擦りつけんばかりだ。
「頭を上げてください、アンドルーさん。そんなに希望者が多いですか?」
「希望者もだが、行商人や村からの陳情も多くてね。君達が育てたDランク冒険者が真面目に護衛依頼や納品依頼をこなしてくれるおかげで、必須の業務になってしまった」
「あいつ等迷惑かけてないですか?」
「一部の古株Dランクが鬱陶しがってるくらいだな。まあ、彼等は討伐依頼とかで食ってるようだが」
「そのうち、Dランク昇格試験の試験官を受けてくれる冒険者が居なくなりそうですね」
「それについては冒険者ギルドの規定を改定予定だ。君達のクランではEランクでもほとんどが護衛依頼の経験があるだろう?」
「そうですね。もちろんDランクのパーティの『おまけ』で付いて行かせて経験を積ませていますが」
「実質、Dランクの実力はあるようなものだ。新しい規定では、Dランクの先達に試験官をやらせるのではなく冒険者ギルドから試験官を出そうと思う」
「『光の止まり木』以外のEランク冒険者から不満が出ませんかね」
「『光の止まり木』のパーティとそれ以外のパーティで組ませて試験をするさ」
「それで問題なければ、こちらとしてはクランを拡大するのは構いません」
またまた、クランハウスの増設だ。俺はクラン経営よりも金策に奔走している方が多い気がする。クランハウスの発注にトマーゾさんに頭を下げに行ったら、逆に頭を下げられてしまった。
「たのむから、輸送依頼をもう少し受けてくれ。付加価値の高い割のいい荷物を頼みたい」
現状の所、輸送依頼を実質的に受けられるのは大容量のマジックバッグと馬無しの馬車を持つ『光の翼』だけだ。そりゃあ大量に手配した荷物がその日の内、遠くの街でも翌日には届く。その早さに大商人も価値を見出したと言う訳だ。
「鍛冶師ギルドに紹介状を書きますので、トマーゾさんの所でも馬無しの馬車を持ちませんか?」
「だが、高くてなぁ…しかも大荷物を乗せられる物となると…」
トラックの開発が必要になりそうだ。
「まあ、極貴重品用に一台…なんとか手配するか」
「ところで、それで稼いだ何%を紹介料として納めてくれますか」
笑顔で聞くと、トマーゾさんが参ったと諸手を上げた。
順調にクランの拡大と輸送依頼、ダンジョン攻略と忙しく過ごしていたら、エリルが成人16歳になっていた。
「もう!私の成人のお祝い忘れてたなんて信じらん無い。ユウト!」
エリルがお冠である。
「仕方ないだろ、誕生日なんて知らなかったんだから…」
ゲーランの街に連れて行って劇場に連れて行ったり、高くはないが、珍しい服を買ってやったり。ご機嫌取りに必死だ。
「それは、それとなく聞き出しておくのが良い男ってものよ」
エリルのくせに知ったような口を利く。
「俺にそんな気遣いを要求するな…自分で要求してくれ…」
「分かったそうする。今のエリルのお願いはね…」
宝石やアクセサリーでも欲しがるんだろうか?エリルも年頃の女の子だ。
「ユウトのクランにこれからも居させてね。それからちゃんと帰ってくること!」
「エリル…」
「あ!お給料上げてくれても良いよ!」
「…毎日銀貨2枚だ」
ちょっとウルッとしたのに現金な娘だ。まあ、クランの厨房や掃除の総監督だ賃上げにも異論は無いが…
「ありがと」
『光の翼』のみんなと合流して、夜は少しお高いレストランでお祝いをした。エリルは買ったばかりの服を着て笑っている。エリルが笑っていられるなら、俺はもっと戦える気がした。
・・・・・・・・・・
今日の俺は錬金術師ギルドに呼び出されていた。
「預かっていた鉱石の解析が済んだよ。それから軽鉄の改良もだ」
「婆さん、ありがとう」
「止しなよ。半分は錬金術師としての興味さ」
「もう半分は?」
「…優しさ…かねぇ」
「はあ?」
「何でもないよ!まずは軽鉄の改良だ更に魔法抵抗力を高めた物が出来たよ『白鉄』だ。それに軽鉄で問題のあった脆さも解決した」
軽鉄は軽くて硬い良い素材だ。だが、問題もあった。耐えられる以上の力が加わった時に歪むのではなく砕ける。使用用途次第だとは思うが、装備の素材にするには不安でもあったのだ。
「ありがとう、婆さん。インゴットを売ってくれ。さっそく武器屋に仕立ててもらう」
「あーそれなんだがねぇ、暫くは鍛冶師ギルドのアルフレドに頼みな。魔石を使った特殊な炉でないと加工できなくてね」
「そ、それは凄いな」
「それから、コイツが本命だ」
ヒルデガード婆さんがズイッと碧い鉱石を押し出す。
「コイツも魔石炉でないと加工できないが、問題はそこじゃぁない。魔法との親和性がべらぼうに高いのさ。ミスリルなんて比じゃないくらいにね。試しに爪の先ほど採取した欠片にあたしら総出でが付与してみたが、ざっとミスリルの10倍は付与が乗るねぇ」
「これを武器にしたりワンドにすれば…」
思わず唾を飲む
「どれだけの物が出来るか分からないよ」
「助かったよ婆さん。ダンジョンの攻略が進められる」
「鉱石にしろ白鉄にしろ装備にするには金がかかるだろう?錬金術師ギルドで貸してやるから鍛冶師ギルドにはそれでツケておきな」
「また借金か…」
「『命には代えられない』だろう?」
婆さんがいじわるそうに笑う。
「まあ、その通りだ」
・・・・・・・・・・
鍛冶師ギルドに装備の作成を頼みに行ったら、お馴染みの顔に出会った。『角笛の音』の親父である。
「よう、ユウト」
「親父、どうしたんだ。鍛冶師ギルドで」
「新しい素材が発表されたと聞いてな。研修を受けに来た。しかし魔石炉が必要なんじゃ俺の店では直ぐには扱えないな」
「なあ、鍛冶師ギルドとは話をつけるから。俺達の装備を作ってくれないか?」
「おいおい、俺もまだ研修中だぞ。満足のいく物が作れるか分らんぞ」
「それでも、俺達の癖を良く知ってるのは親父だ。作成を頼みたい」
「そこまで言われちゃな。良いだろう引き受けよう」
鍛冶師ギルドの長、アルフレド爺さんを説得して『角笛の音』の親父を全面的にバックアップしてもらい。俺達の装備を作ってくれるよう、渡りをつけた。
「それで作ったのがこの装備なんだな」
「そうだバルト」
見た目はあまり変わっていない。軽鉄を編み込んだ鎧下にズボン、白鉄の鎖帷子に魔物の革鎧に白鉄の小片を打ち付けたラメラアーマーに白鉄の胸甲、兜に籠手や脛あても白鉄製。大盾も総白鉄製だ。
「重さもあんまり変わらないな」
俺も可能な限り白鉄製に置き換えた。白鉄を打ち付けたラメラアーマーだが、動きやすさを重視して胸甲は無い。それに白鉄の籠手の左腕に、小楯よりも一回り小さな盾を付けてもらった。
ギルベルトはほとんど変わらない。軽鉄を編み込んだ鎧下にズボン、革鎧に白鉄の籠手と脛あて。それに白鉄で出来た金属矢。
ユリアは白鉄の鎖帷子に軽鉄を編み込んだ神官服、籠手と脛あてはギルベルトと同じだ。
「ランクが上がってお前等も魔物を倒して、装備を作るようになったと思ったんだがな」
「命を守る選択をしてるだけさ」
「そうだな白鉄は魔物素材にも劣らない、良い素材だな」
「スゲー高いけどな」
「装備に金をかけるのはお前等の十八番だろ」
「違いない」
そして、アダマンタイトの鉱石は俺の槍の穂先とギルベルトのワンドに加工してもらった。ギルベルトは自前の魔法を使うから『魔力増幅』だけだが、それでも付加可能な容量があまりに膨大でめげそうになりそうになりながら付与していった。
最後に俺の槍だ。『シャープネス』『火炎属性付与』に加えて『ウインドカッター』を付与した。もちろん空いた容量は『魔力増幅』を限界まで付与した。『ウインドカッター』は対空戦力がギルベルトだけでは荷が重いので俺も手を増やすためだ。
「それじゃあ、ダンジョンに挑むか!」
俺が宣言する。装備が新しくなれば、気分も変わる。心機一転、再出発だ。
「俺達まで借金を背負わされるとは思わなかったぞ」
「バルト、ダンジョンで稼げるよう努力しようよ」
「当分、寄付ができません…」
心機一転、再出発だ!
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新作、「お人好し大賢者と借金取り~大精霊に気に入られた俺は国を作る~」の更新を再開しました。
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