7.ポーションと錬金術師
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翌朝、ギルベルトの調子も戻ったようなので、冒険者ギルドでポーションを買おう。
「すいません。低級のヒールポーションと解毒ポーションください」
受付のお姉さんが試験管の様な細長いガラス瓶に入った液体を見せてくれながら、にこやかに対応してくれる。
「昨日は大変でしたね。低級ヒールポーションは銀貨1枚と銅貨50枚、低級解毒ポーションは銀貨2枚になります。後、容器が割れるといけませんので専用のポーチはいかがですか?10本入って銀貨2枚になります」
おおう、なかなかの出費になるな。ちょっと作戦会議だ。
「どのくらい買えばいいと思う?」
「俺はよく分からん」
うん、バルトはそう言うと思った。
「ポーチは各々が持って低級ヒールポーションが2本、解毒が1本ずつ持ったらどうかな?」
うん採用。
「じゃあ、それで行こう。ポーチは各自購入、ポーションは貯金から買おう。いざって時に使い渋るとまずいからポーションは共有って事で」
「「異議なし」」
受付のお姉さんに話し合った結果を伝えて、ポーチとポーションを購入。ポーションの代金はギルドに預けた貯金から引いてもらった。さっそくポーション用のポーチを腰のベルトに通して低級ヒールポーションと低級解毒ポーションをポーチの中の隙間に挿していく。
「あとギルベルトの革のズボンを直さなきゃな」
「ナイフで切り裂いちまったからな」
「あれで僕は軽症で済んだんだから武器屋の親父さんに感謝だね」
そのまま武器屋の隣り『角笛の音』の親父の娘さんの店でギルベルトのズボンを直しに出す。
ズボンの直しが終わるのを待ってる間に、昨日調べたポーションの作り方についてギルベルトに聞いてみると驚かれた。
「どこで知ったのそれ?錬金術師ギルドが管理してるはずだけど」
「いや…まあ、なんとなく思いついたというか…」
インターネットで検索しました。なんて言えるわけ無い。
「まあ…良いけど……僕達魔術師は魔力を魔法に変換する方法は分かるけど、魔力を注ぐのは錬金術師の領分だね」
「錬金術師ギルド…ね」
「行ってみたいの?お金は必要だろうけど教えてはくれるはずだよ」
「素材は自分たちで採取してるんだから自分で作れれば節約になるかなって」
「もう今日はもう休みにして行ってみようぜ」
バルトの一声で、これから錬金術師ギルドに行くことになった。
錬金術師ギルドは街の中央付近に建っていた。冒険者ギルドと違ってちょっと気後れする荘厳な雰囲気がある。尻込みしてても仕方ないので正門をくぐった。
冒険者ギルドとは勝手が違うが、受付カウンターらしきものがあった。受付のお姉さんがいるので聞いてみる。
「ポーションの作り方を教わりたいんですけど」
「錬金術師ギルドへの加入と作成したいポーション毎のレシピ代が必要です。加入には年会費として銀貨30枚です」
むむ、なかなかの出費だがなんとか払えるな。将来的に低級ポーションが使い放題と考えれば回収もできるか?いや微妙かもしれない…
「加入をお願いします。それから低級ヒールポーションのレシピをお願いします」
「かしこまりました。こちらが錬金術師のギルドカードになります。有効期限内に更新に来て年会費を払うのを忘れないでください。失効すると処罰と罰金が課せられますので気を付けてください。レシピは銀貨5枚ですので奥の部屋で講師に教わった後に払って下さい」
なんだか意外と簡単に教えてもらえるんだな。
「お連れ様は奥へは入れませんが、ここでお待ちになりますか?」
そりゃそうか、どうする?とバルト達を振り返る。
「俺達は宿屋に帰ってるよ」
付き合って来てくれたのに、すまんね。
講師の部屋をノックすると中から、「入りな」と老婆と思しき声がする。中に入ると猫背で鍋をかき混ぜるいかにも魔女然とした老婆が居た。
「それで?作りたいポーションはなんだい?」
「低級ヒールポーションを作りたいんです」
「じゃあ教えるよ。鍋で水を煮立ててブマキア草を入れる。それから鍋に手をかざして魔力を注ぐんだがやった事はあるかい?」
「いや、ありません」
「じゃあお前さんの背中に手をあてて、魔力を操作するから感覚を掴むんだよ」
そう言うと婆さんは背後にまわり、掌を背中に押し当てた。しばらくすると温かい何かが体を流れるいて、頭の中に紋様のようなものが浮かぶ。やがて手のひらから放出される感覚に気が付いた。これが魔力ってヤツかな?
そうしてしばらく経つと鍋の水が薄っすらと水色に発光しだす。
「これで出来上がりだよ。瓶に詰めたり使いやすいように小分けにすると良い。今度は一人でやってごらん」
お湯を沸かしてブマキア草を煮立てて、さっきの温かい感じを思い出しながら手をかざす。ぐ、意外と難しいな。
「さっきあたしが魔力を操作してやった時に頭の中に魔法陣がうかんだだろう。それを再現するように意識してごらん」
最初は何回か失敗して、魔力が切れたのだろうか全身がだるい。
「魔力の量は人並みにあるようだね。あたしの魔力をお前さんに注いでやるから、つづけてごらん」
また婆さんが背中に掌を押し当てる。掌から温かいものが体に流れ込んでくる感覚がある。それから、再び魔力の操作を手伝ってもらうと感覚が掴めてきた。
「できた…」
「できたねぇ。まあ、これくらいは誰でも出来るようになるもんさ」
うん、異世界人だから特別魔力があるとかじゃなかった様だ。
「ところで頭の中に浮かぶ魔法陣ってなんなんですか?」
「あれは錬金術師が魔力をこめるときの手順みたいなもんさ、低級ヒールポーションだとあんな簡単な図形だが、上級ともなると魔法陣を維持するのも魔力の消費が大きくて難しいよ」
「レシピによって魔法陣って違うんですか?」
「そりゃそうさ、錬金術師ギルドが高い金をとってるのも用途別の魔法陣を秘匿しているからさ。でなきゃおまんまの食い上げだよ」
「じゃあ、低級解毒ポーションを作りたいなら別の魔法陣を教えてもらわないといけないんですね」
「そうだよ、でも年会費を払えば錬金術師ギルドに付属の図書館が使えるから、レシピと魔法陣が公開されているものは自学でも習得できるのさ。要領の悪い奴は、毎回私ら講師に体に叩き込まれるがね」
なるほど、帰りに図書館にも寄って低級解毒ポーションの魔法陣をしらべるか。
「さてレシピ代は銀貨5枚だよ。それから自分達で使う分には良いけど、低級ヒールポーションを売る時は最低でも銀貨1枚の値段は付けな。安値で流すとポーションで生計を立ててる連中が迷惑するからね。ま、緊急事態の時は仕方がないがね」
なんにでもルールってのはあるようだ。こうして俺は低級ヒールポーションと低級解毒ポーションの作成をマスターした。
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「と言うような事があって、無事に低級ヒールポーションと低級解毒ポーションが作れるようになったぞ」
「何がと言う訳なのか分からんが、よかったな」
「でも、ユウトが作れるようになったのなら冒険者ギルドでポーションを買ったのは間違いだったのかな」
「いや、俺の魔力では日に3本がやっと作れるくらいだそうだ。買ってよかったと思うぞ」
「ま、何にしてもあんな傷をまた喰らう危険は減ったって事だな」
「油断は禁物だよ」
「そうだぞ」
何にしても明日からまた森に入って薬草採取兼討伐を再開できそうだった。
それにしても、魔力を増やすのは急務の様だなぁ。俺は寝る前にインターネットっで検索することにした。
『魔力量』『増やす方法』っと
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魔力量の成長
魔法などで魔力を使用するほど成長する
ただし生来の量からはなかなか増えない
また、魔物を倒すことでも若干の成長が期待できる
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一朝一夕には増えないって事か、まあ低級ヒールポーションはあって困らないし、暇があったら毎日作ろう。
読んでいただきまして、ありがとうございました。
引き続き読んでいただければ幸いです。