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異世界でスキル『インターネット』をもらいました  作者: ゆうじ
第9章 ダンジョン攻略に向けて
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67.ダンジョン攻略に向けて:悠斗の場合

ブックマークならびに評価レビュー、誤字指摘いただきまして、ありがとうございます。

更新は基本的に毎日10:00前後です。


累計110,000PVを越えました。日頃、ご愛読いただきましてありがとうございます。

 俺達は商業ギルドの長、トマーゾさんから紹介してもらった輸送依頼をこなしつつ、各人のダンジョン攻略の準備を進めていた。


 輸送業と言えば、俺達があーでもないこーでもないと鍛冶ギルドにムチャ振りばかりしていたら。馬車がいつの間にか思ってもみなかった進歩を遂げていた。


 従来のように車軸の両端に車輪が付いているが、前輪だけは車軸自体が中央である程度回転するようになっていて前輪の向きを変えられるものや、後軸だけ車軸の両端に車輪が付いていて前輪は椅子のキャスターのように基部が回転して自由に車輪の向きを変える物など色々なパターンが作られた。

 最近、俺達は後輪は前後方向に固定されて、前輪は自由に向きを変えられるものを愛用するようになった。前輪の基部が回転する分、構造が複雑だし四輪が独立してサスペンションを持つ分高価だがどうせレンタルだ。それに軽鉄をふんだんに使った特別仕様だ。


 なお、一般には最初に挙げたタイプが普及したようだ。あまり大きく向きを変える事は出来ないが、俺達のようにムチャなスピードを出しながら曲がろうとする方がおかしいのだ。

 やはり車軸の両端に車輪が付いている方が技術的にもこなれていて、メンテナンス的にも優れているようだった。進歩の過程の馬車を買ってしまったブライアンさんが、深刻な顔で馬車を買い替えるか悩んでいたが。本当に申し訳ない。


 今まで、カラドの街からゲーランの街まで野営をしながら、まるまる2日かかっていた行程だったが。特別仕様の馬車のおかげで、夕方までには諸々用事を済ませて荷を積んで出発すれば、交代で睡眠をとりながら夜間移動することで翌朝には到着するようになった。ああ、また世界を縮めてしまった…


 これには、疲れた馬に『賦活の奇跡』の助けも必要で、ユリアは。


「本来、人の疲れを癒すものなのですが…」


 と、不満そうだったが、早く着けばそれだけ何回も荷を運べるのだからと、ギルベルトから説得して納得してもらった。


 そうやって輸送依頼などを受けつつ、俺個人の課題をこなしていたが、


・・・・・・・・・・


「あだだだだだだ」


 バルトから借りた魔法剣に付与された魔法陣を解析しようとして、猛烈な頭痛に襲われていた。


「これは、個人の脳が処理できる規模の魔法陣じゃないな…」


 悩んだ末に画像検索で魔法陣を詳細検索してみたら、あっさり構造が表示された。拍子抜けである。さっそく羊皮紙に魔法陣を描きだしてみると、分厚い本が出来そうなくらいの量の魔法陣が描きだされた。


「…この魔法陣を個人が再現するのは無理じゃないか?」


 膨大な魔法陣の模写の前に挫けそうになる。1人で考えても良い知恵は浮かびそうにないので錬金術師ギルドのヒルデガード婆さんに相談してみる。


「これがダンジョンで見つかった魔法剣に付与されていた魔法陣かい…」


 婆さんも呆れ気味である。


「読み込もうと思ったら頭痛がして脳が破裂するかと思った」


「そうだろうね。これを理解できるのは、今よりずっと力を持っていたと言う古代の錬金術師でも難しいだろうよ。この魔法陣を描き出したって事はアレかい?」


「ああ、スキルを使った」


「そうだろうねぇ…再現は難しいね。少なくとも数十人での儀式魔法で再現できるかどうかだねぇ」


「まあ、やれるだけやってみてくれ」


「はいよ。ところで魔法剣の魔法陣が描き出せたなら、マジックバッグの魔法陣も出来るんじゃないかい?」


「羊皮紙だけで床が抜けそうだ」


「それなら、この紙を使いな」


 俺は渡されたペラペラの紙をまじまじと見た。和紙みたいだ。


「婆さんこれは?」


「最近開発した、植物の繊維で作る紙さ。薄くて丈夫だよ」


「…優秀だな。錬金術師ギルド」


「そうだろう。みんな研究が大好きだからね。羊皮紙じゃあ書類棚がすぐいっぱいになっちまうんで、作ってみたら好評でね」


 その日は、一日がかりでマジックバッグの魔法陣を書き出させられた…腱鞘炎になりそう…


・・・・・・・・・・


 バルトに宣言した手前、槍の鍛錬も疎かには出来ない。動画検索で槍の形を見てはマネして体を動かして覚え込ませていくがなかなか上達は実感できない。槍の師匠が欲しいぜ。


 そんなある日、錬金術師ギルドから魔法剣の再現が出来たと連絡があったので休みの日にヒルデガード婆さんを訪ねる。


「どうだ?出来たのか」


「出来たけどねぇ…」


 婆さんは渋い表情だった。


「上手くいかなかったようだな」


「魔力が無くても発動する所までは出来たのさ、でも『シャープネス』の効果がね…」


 俺が見ても一目瞭然だった。魔法の光は弱々しく、しかも明滅している。


「ダメだな」


「ダメかねぇ」


 やはり『明けの星』が快く譲ってくれるレベルの物でもダンジョン産。一筋縄ではいかないようだ。


「そう言えば、燃える水を使った鏃はどうなったんだ」


「そいつは上手くいったよ。これさ」


 婆さんは慎重な手つきで俺に1本の矢を渡してきた。


「鏃をぶつけないように気をつけておくれよ」


 鏃を見るとガラスで出来ているようだった。


「婆さん、ガラスで出来てるようだけど。2つに中が別れてないか?」


「気が付いたかい。燃える水と混ざると高熱を発する薬剤を開発してね、ガラスの鏃が砕けると混じって猛烈に燃え上がるって寸法さ」


「だけど、ガラスだから取り扱いが難しいと?」


「そう言う事さ。ガラスの強度は調整中だから、普通に構えて射る分には問題も解決するだろうが保管や輸送で乱暴には扱えないね」


「…マジックバッグを使えないかな。この間、マジックバッグの魔法陣を描き出しただろ。それで矢筒が作れないかな」


「だけど、革や木は魔法陣を付与するには向かないよ」


「魔物の革やトレントの素材で作ってみるのはどうだ?」


「そうだね。色々試してみよう。進展があったら連絡するよ」


 婆さんが考え込む。

 

「ところでユウト、お前さん自身のスキルは研究してないのかい?」


「今のところ、何も調べて無いな」


「あたしにゃ、ユウト自身が研究対象として興味深いよ」


「解剖とかしないでくれよ」


 俺がおどけて言うと。


「そんな勿体ないことするもんか。死んだら研究出来ないじゃないか」


 研究できるなら解剖もするんだろうか?婆さんが怖いことを言う。


「そうさね。スキルの使い方で頻繁に使うのは何だい?」


「そうだなぁ地図を見たり、人や物なんかの見たものを検索することかな」


「まず地図だがどんな風に見えるんだい」


「簡単には自分を中心にした周囲の地図が見える。街や街道なんかも表示されるから道に迷う事が無くて便利だ。ただなぁ…」


「ただ、何だい?」


「自分以外の人の居場所を地図の上で探しても、今現在の場所とは違う所に表示される。動きの無い物なら問題ないんだけど」


 俺はそう言いながら地図を表示させていた。すると変な事に気付く。


「なあ、ソトリの村って知ってるか婆さん?」


「ゴブリンの氾濫で壊滅した村だろう。領主が廃村を決めて、村への街道も封鎖されたと聞いてるよ」


「俺の見えている地図では村があるし、街道も続いている…」


「ツラルドの街への街道は分かるかい?ゲーランの街とは反対方向だ」


「ああ、山をぐるっと迂回して普通の馬車なら3日くらいの距離か?」


「それは古い街道だね。先月、トンネルが開通して1日半の距離だよ」


「俺の地図じゃトンネルなんて無いな」


「古い地図のままか、しばらく経たないと変化が反映されないんじゃないかい?」


「…たぶん、しばらくすれば反映されると思う。そう言えば俺の世界の地図(マップ)もそうだった」


「まあ最新の地図なんて国が管理してるものだからね。便利は便利そうだねぇ」


「まあな、でもこれで今現在の情報が分からない理由は分かったな」


 どうりで山賊を避けたり、魔物の感知に使えない訳だ。


「次は人や物、見たものの検索だね。あたしはどう見える?」


「今、54歳だな。そろそろお迎えが来てもおかしくないぞ」


「まだまだ生きるつもりだよ!まあ、歳はあってる」


 その後、婆さんと俺は経歴や最近出かけた街なんかを質問しては答えを繰り返した。


「凄いもんだね。それじゃ名前だけ知ってる相手でも分かるのかね?」


「分かると思うぞ。…ヨルゲン・アンディションの亡くなった場所も分かったし…」


「じゃあ、あたしは今から事務官のオロフに誰かに何かに指示を出すように言ってくる。もちろん、あたしはその内容は指示しない」


 婆さんは研究室の外に出た。オロフに指示を出したのだろう、直ぐに戻ってきた。


「さあ、オロフが誰に何を指示したか当ててごらん」


 『オロフ』『最近の行動』『指示』で検索をかけてみる。


「リディアにこの部屋に水差しを持っていくように指示してるな」


 ちょうどドアがノックされる。


「リディアです。ヒルデガードギルド長よろしいでしょうか」


「入りな」


 ドアの前でリディアと名乗った女性が水差しを持って入ってくる。


「水をお持ちしました」


「水差しを持ってくるように指示したのは誰だい?」


「オロフさんですけど…なにか?」


「いや、ちょっとした実験だよ。ありがとう」


「はい。失礼します」


 リディアは研究室から退室していった。


「なるほど、便利な使い方が出来るようだ。他国の機密でも探れるんじゃないかい?」


「怖い使い方だ。あんまりやりたく無いな」


「…そうだね」


 自分で言っておきながら婆さんはうすら寒い表情をした。言わなきゃ良いのに。


「今日の所はこのくらいにしておくかね」


「あんまり、探られるのは好きじゃないんだが…まあ、良いや。マジックバッグで出来た矢筒の件頼むよ」


「そうだったね、忘れる所だったよ」


 研究対象に夢中になるのも大概にしてくれと言いたかった。

読んでいただきまして、ありがとうございました。

引き続き読んでいただければ幸いです。


新作、「お人好し大賢者と借金取り~大精霊に気に入られた俺は国を作る~」を投稿しました。

読んでいただければ幸いです。

https://ncode.syosetu.com/n4637gn/


面白かった、先が気になると思って頂いた方がおられましたら

ブクマや下の☆☆☆☆☆から評価を頂ければ幸いです。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 洋紙の発明 一歩先ゆく錬金術ギルド [一言] ようやく自分のスキルに目を向けた(向けられた)ユウト君でした
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