56.初めてのダンジョン
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再び4人パーティに戻ってしまった俺達だが、ハーヴィに触発された訳ではないがCランク昇格について相談していた。
「Cランク昇格の条件ってなんだ?」
「ゲーランの街からしばらく行ったところにあるダンジョンは知ってるか?バルト」
「ああ、聞いたことがある」
「そのダンジョンで上層の階層主を倒すことだよ」
「パーティとしての信頼も加味されますが、そちらは大丈夫でしょう。でもダンジョンの敵は今の私達で相手出来るでしょうか」
「魔熊と同じくらい手ごわい相手が出るそうだよ」
「マジかー」
バルトが嫌な事を思いだしたとばかりに天井を仰いでいる。
「それに小物でも数が多いみたいだよ」
「…」
「冒険者ギルドで情報収集してみるか」
・・・・・・・・・・
「ダンジョンへの挑戦ですか」
困ったときの受付のお姉さんでダンジョン攻略について相談してみた。
「はい。Cランクを目指そうと思いまして」
「そうですね。ダンジョンの魔物は死骸を残さないのが大きな違いでしょうか」
「じゃあ、どうやって倒した魔物の報酬を受け取れば良いんでしょうか」
「死骸の代わりに魔石を落としますので、冒険者ギルドの鑑定の水晶で判別しますよ。ダンジョン内で見つけた宝箱のお宝なども、それで鑑定します」
「そんな便利な物があるんですか」
「ダンジョンで見つかる魔石やお宝しか鑑定できませんけどね。それでも鑑定の水晶自体がダンジョンでごく稀に見つかる貴重品ですよ」
「地上の魔物でも魔石を持っている物がいますが、それは鑑定できないんですか?」
「いいえ、鑑定できますよ。地上の魔物はダンジョンから迷い出た物と言われていて、多くは能力が下がっています。弱い魔物では魔石を失ったりしますね。ゴブリンの左耳などの討伐証明部位は魔石で鑑定できないので、言ってみればその代用ですね」
同じ魔物でもダンジョンの中で出会うのは地上より手ごわいって事か。ゴブリンでも舐めてかかれないな。
冒険者ギルドで情報を仕入れた俺達は、ダンジョンに挑戦すべく、カラドの街を旅立った。通常であれば馬車でゲーランの街まで2日、ゲーランから5日の距離だが、俺達はマジックバッグのお陰でポーション類の資材に食料の類、それに馬に食べさせる牧草のロールに水樽などを山ほど詰め込んでも荷は軽い。
その上、大きめの一頭立て馬車を二頭で引いている。しかも馬車は鍛冶師ギルドが技術を投入しまくって高性能化を繰り返している代物だ。ゲーランの街まで1日、ゲーランからダンジョンまでは3日でついてしまった。
ダンジョンの入り口から少し離れた所には小さな村が出来ていて、ダンジョンに挑戦する冒険者相手に食料や水を売ったり、馬車や馬を預かって生計を立てていた。俺達も馬車と馬を預けるとダンジョンに潜る。
「じゃあ、『トーチ』を点けるよ」
「頼むギルベルト」
「慎重に行きましょう」
「ああ」
そう言ってダンジョンに潜った俺達だが。
「思っていたより狭くはないな」
俺が真っ先に確認したのはその広さ、天井の高さだ。槍を振るうのに邪魔になる事は少なそうだ。
「狭所が少ないといいね」
「そうだな」
ダンジョンに潜って数時間もしただろうか、前方の岩陰から犬の鳴き声の様な音が聞こえてくる。バルトが俺達を手で制して。
「様子を見てくる。待機してくれ」
そう言うと、足音を忍ばせて岩に身を隠して様子を伺う。やがて俺達のところまで戻ってきた。
「ゴブリンだな。だが数が多い20以上は居る」
「どの程度の強さか分からないな」
「冒険者ギルドの話では地上のゴブリンより強いらしいね」
「数も問題ですね」
「当たってみなけりゃわからん。まずは一当たり行こう。
ユリアは『鼓舞の奇跡』、続いてギルベルトが『フラッシュバン』だ
俺とユウトは吶喊してレジストしたやつ優先で殲滅。
ユリアとギルベルトは追撃だ」
俺達は黙って頷くと、ユリアが静かに『鼓舞の奇跡』を唱える。それを確認してギルベルトが岩陰の向うに『フラッシュバン』を発動させる
ィィィ……ン
『フラッシュバン』がダンジョンの中に残響を響かせるのを聞きながら、バルトと俺が岩陰から踊りでる。
レジストしたヤツが8匹、結構多いな。対象を視界に納めずに『フラッシュバン』を使ったせいか、それともゴブリンが強いか。
俺は身体強化した棒立ちになっているゴブリンを槍で薙ぐ。肉を裂く手ごたえで止めを確認すると。次の相手を刺殺する。
視界の隅のバルトも次々とゴブリンを切り伏せていく。
「地上のゴブリンより手ごわかったか?」
「そうかもしれない。だが『フラッシュバン』が効くなら脅威ではないな」
俺はゴブリンからドロップした魔石をマジックバッグにしまうと。バルトに答える。
「進んでみるか」
「ああ、行こう」
俺達はダンジョン行を続行するが、一時間もしないうちにオークの一団と遭遇する。先制がととれず。双方にとっても不意の戦いだ。
「ユリア、鼓舞と守護。ギルベルト近い『アースバインド』、ユウト1匹頼む」
「「「了解」」」
ゴブリンの上位個体を上回る体格だ。もっている棍棒で殴られればただでは済まないだろう。1匹は『アースバインド』で拘束した。ゴブリンの上位個体相当と考えればギルベルトの『アースバインド』も、随分洗練されている。
俺は1匹の棍棒を持った腕を『シャープネス』も上乗せして切り飛ばす。2撃目で胴体を貫くと、バルトの援護に走る。
バルトは1匹を相手に大盾を縦横無尽にかざして、攻撃を反らす。1匹はユリアがひきつけてギルベルトが弓でダメージを与えている。
「今行くぞ、バルト!」
「おう!」
たった今、バルトに体勢を崩されたオークの頭を刺突で止めを刺す。その間にユリアとギルベルトのコンビが止めを刺して、拘束された最後の1匹をバルトと俺で止めを刺す。
「敵に遭遇するのが多いな」
「確かになこのペースはキツイ。ギルベルトとユリアは後、どの位魔法が使えそうだ?」
「僕は3回か4回だね」
「私は2回位です」
「安全策をとるなら引き上げる所だが、どうする?バルト」
「行けるまで行ってみよう。さっき休息が取れそうな小部屋が有った。最悪、野営だ」
「分かった」
ダンジョン行を続行した俺達だが3度目の遭遇は奇襲をうける。
「ユリア、鼓舞と守護!ギルベルト『アースバインド』、ユウトは俺と前線を組め」
現れたのはオーガ3匹。オークよりも小柄だが締まって筋肉質の体躯で額には角、2匹は手には片手剣を奥の1匹は杖を持っている。
「『アースバインド』が効かない!奥のは魔術師だ。僕が封じる」
「任せた!ユリアは俺のフォロー」
「了解です!」
俺とバルトは並んで、それぞれオーガ1匹を相手どる。数合、槍を突き入れるが剣で捌かれてしまった。相手もそれなりに剣術を使うらしい。先ほどから浅く切りつけられているが『守護の奇跡』で防いでいるのだろう。ならばと身体強化に『シャープネス』を上乗せして剣自体を破壊に行く。
『サイレンス』
ギルベルトもオーガの魔術師を無力化したらしい。弓に切り替え俺達の頭越しに矢を放ち魔術師を追い詰める。
俺の相手のオーガの剣がキンッと高い音を立てて折れる。折れた剣の柄元で槍を捌こうとするが逆に俺はオーガの手を切り飛ばす。
バルトは大盾で殴り、攻撃をそらしてオーガの体勢を崩すとユリアと共に攻撃を叩き込む。
俺の槍がオーガを傷だらけにして動きが鈍ったところに止めを刺す。
「ギルベルト、俺も魔術師を殺る。連携だ」
「了解」
オーガと言っても魔術師、あまり動きは良くない。俺とギルベルトの連携で屠る。
バルトを振り返るとユリアと共にオーガに止めを刺すところだった。
「厳しかったな」
「ああ、俺も身体強化に『シャープネス』の使い過ぎだ魔力が厳しい」
「僕はまだ行けるけど…」
ユリアの消耗が激しい。戦闘の度に支援魔法をつかっているのだ。これ以上は無理だ。
「低級マナポーションは飲んだので動けますが、気力が…」
俺達は見つけておいた小部屋に撤退して、野営をとることにする。
「とにかく食べよう」
俺達は野営食をとると警戒を立てて交代で休憩をとる。なんとか回復した俺達は、初めてのダンジョン行を帰還する。
帰還途中にグレムリンの一団と遭遇したが、ギルベルトがとっさに放った『フラッシュバン』で先手を取ると無難に殲滅してダンジョンを脱出した。
課題の多いダンジョン挑戦だったが、最大の難敵はパーティハウスに戻って来てからだった。
俺達はゲーランの街を経由する気分にはなれなかったので直接カラドの街に帰ってきたのだが、エリルに…
「ユウト達臭い!お風呂に入って綺麗になるまで家に入れたげない!」
俺達は裏庭の井戸で返り血や汗で汚れた装備を洗うと、そのまま銭湯に向かって汚れを落とした。
ようやくエリルのお許しを貰って家に入れてもらったがユリアが。
「臭い…乙女の尊厳が…」
違う部分にダメージを受けていた。
読んでいただきまして、ありがとうございました。
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