3.ランクアップとパーティ結成
カルチャーショックを受けながらも、二ヶ月ほどしたころ俺は冒険者ギルドでランクアップを言い渡された。
「おめでとうございます。ユウトさんはFランクからEランクに昇格ですよ。真面目に薬草採取したかいがありましたね」
受付のおねえさんに告げられる
「Eランクってどの位の扱いなんですかねぇ?」
聞いてみると、Fランクは見習いでEランクからが駆け出し冒険者って扱いだそうだ。ランクを上げるには強い魔物を倒す実力が必要だという。同時に依頼を確実に達成する信頼も加味されると教えてもらった。
「そうですねEランクならホーンラビットや群れからはぐれたゴブリンの討伐あたりに手を出す頃合いでしょうか。それからパーティを組むのもおすすめですね」
ほーん、そろそろ魔物退治もしなくちゃならないレベルか…でも実戦経験なんて薬草採取の時に野犬に出くわしたくらいしかないぞ。しかもお互いに出会い頭でムチャクチャに振り回した短剣が運良くかすって野犬が逃げ出した程度だ。
ホーンラビットにゴブリンね、どんな魔物なのか予め検索しておこう。
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ホーンラビット
角の生えたウサギの魔物で、ただのウサギより一回りおおきい
草食だが好戦的、攻撃手段はほぼ角による突進
討伐証明:角
備考:肉は食用にもなる。冒険者ギルドで買取可能
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ゴブリン
10歳の子供くらいの体格で緑の体表をした魔物
群れを作って暮らしている。群れからあぶれて徘徊している個体も多い
ある程度の知恵があって拾ったり倒した相手の武器や
簡単な弓や槍など武器をつくって使用する
数匹で連携して襲って襲ってくる
討伐証明:左耳
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うーん武器持って数で攻めてくるゴブリンは怖そうだな…
「本格的な討伐依頼を受ける前に装備を整えてはいかがですか?今まで薬草採取だけでしたから」
なるほど言うとおりだ。以前教わった武器屋『角笛の音』に早速足を運ぶことにする。
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「久しぶりだなあボウズ」
武器屋『角笛の音』の相変わらずのマッチョな親父が歓迎してくれる。
「冒険者ギルドでランクが上がったんだ。討伐依頼も受けられるように装備を整えたいんだけど、銀貨25枚くらいで!」
「おっ!結構頑張ったじゃねぇか。よーし待ってろ」
親父が装備を一式見繕ってくれる。
身長の1.5倍ほどの槍と丈夫そうな堅い革鎧に革の手袋と篭手、膝下まである編み上げブーツそれからレザーヘルム。革だらけだ。
「こんな所だな」
「小剣じゃないの?」
「おめぇ剣の扱いに覚えはあるのか?」
「いや…」
「だったら離れた所から攻撃出来る槍の方が怖くないだろ。自信が付いてから剣に変えても良いぞ」
なるほど親父の言うとおりだろう
「あと森に入るだろうから、服屋に行って丈夫な長袖長ズボンを揃えな。ズボンは出来れば革製が良いぞ、上は衝撃が吸収出来るようにキルトがおすすめだな」
「服まで予算を考えて無かったよ。まけてくれよ親父」
「しかたねぇなぁ、隣が娘のやってる服屋だ。そこで買ってくれれば装備と合わせて銀貨25枚で良いぞ」
わーい、しっかりしてやがるぜ。親父大好き!
格好だけは一丁前の駆け出し冒険者になって、冒険者ギルドに行って依頼ボードを睨む。畑を荒らすホーンラビット駆除くらいならできるかなぁ…
「おーい!そこのニュービーちょっとこっち来い」
ボードを眺め続けてたら受付カウンターと反対側、テーブルに陣取るベテラン冒険者の一団から声をかけられた。すわ!駆け出し冒険者への洗礼か?とビビりながら呼ばれた方に行くと。
「おまえ、こいつらとパーティを組む気は無いか?」
気の良さそうな兄貴風の冒険者が、そばに立っている二人組の冒険者を指して言う。見た所、俺と同じ駆け出しといった感じだ。
えー?どうしよう?とか思ってたら、指さされた駆け出し冒険者二人も同じような表情をしてる。
「俺はCランク冒険者のジェフリーだ。まあ、説明してやるからみんな座れ」
テーブルを囲んでイスに座ると、ジェフリーとは別の爽やか青年風の冒険者が話し出す。
「俺はこのパーティ『明けの星』のリーダーを務めるCランク冒険者のアランだ。実はこの二人からパーティに入れて欲しいってお願いされて困ってたんだ」
「お願いします入れてくださいっス。雑用でもなんでもしますから!」
駆け出し冒険者の戦士風の方が言いつのる。
「まあ、待ってくれ。君達をパーティに入れられないのには訳がある。君達はEランクになって間もない駆け出し冒険者だね」
「「はい…」」
「理由は二つだ。
第一に、君達には我々パーティが活動しているレベルの依頼について来れるだけの実力は無い。むろん我々も君達を庇いながら戦える訳じゃない。
第二に、我々はCランク冒険者…そこそこベテランだが駆け出しのレベルに合わせて依頼のランクを落とせるほど財布の余裕は無い。
分かってくれるかな?」
「「はい…」」
駆け出し冒険者二人も素直に頷く。
「そこでだ、駆け出しは同じ駆け出しどうしでパーティを組むんだ。俺としては身の丈にあった依頼を受けた方が堅実だと考えるんだがどうだろうか?」
「でもこいつは薬草採取くらいしか依頼をこなして無いんじゃ…」
駆け出し冒険者の戦士が、やや見下した様子で俺を見やる。はっはっは、薬草採取くらいじゃないぞ。薬草採取だけしか受けた無いぞ。荒事なんて未知の世界だ。
アランは構わず続ける。
「いいかい?彼の装備をよく見てごらん、君達よりずいぶんしっかりしているだろう?駆け出し冒険者の実力なんて、装備の差で簡単にひっくり返る。薬草採取でこれだけの装備を整えられるって事は、薬草の目利きか金を貯めるのが上手いって事だ」
俺を呼んだ兄貴風の男、ジェフリーも口をはさむ
「何もパーティを組んで、こいつから金をたかれって訳じゃない。こいつは見たところ実戦経験は無さそうだ、だからこいつが一人で入れねぇ森の浅い箇所で、お前らが警戒をしながら草刈り(薬草採取の事らしい)をして金を貯めて装備を整えろ。そしてこいつには戦い方を教えてやれ。そうすりゃ良いパーティになれるだろうよ」
不承不承といった感じで二人の駆け出し冒険者が頷く。
「じゃあ、お互いに自己紹介すると良い」
二人の内、背が高く小剣を下げた戦士風の方が
「俺はバルト、片手剣と短弓を使う。こっちはギルベルト、魔術師だが短弓も使う。田舎の村じゃみんな狩りくらいはやるからな」
「僕の使える魔法は、明かりの魔法『トーチ』と魔力の矢『マジックボルト』だよ」
ギルベルトと紹介された方が自分の使える魔法も説明してくれる。
なるほど魔物と本格的に戦って無くても戦闘経験はあるって事か。俺も名乗ろう。
「俺はユウト、薬草採取のみでEランクになった。戦闘経験は皆無だ」
開き直ってドヤァとばかりに名乗ったが、バルトにギルベルトだけじゃなく『明けの星』のメンバーもちょっと引いていた。いや、だって戦闘経験無さそうって言ってたじゃん…
話がまとまったようだとアラン達『明けの星』メンバーが去って行った、だが俺達はまだやる事がある。パーティ名を決めなくては…
「と、とりあえず冒険者ギルドにパーティ結成報告するか」
バルトが不慣れな感じで受付カウンターで新パーティ『光の翼』を申請してました。
読んでいただき、ありがとうございました。