18.武器への魔法付与
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バルトだけじゃなくみんな頑張ってるなぁ。夕飯後、ベッドに寝っ転がってぼんやりと俺は俺は考えていたが、ふと気付いた。
俺、なんにも強くなって無いじゃん!いや、サボってた訳じゃない。低級マナポーションは絶対にギルベルトやユリアの役に立つし、ひいてはパーティ全体の強化になるけどさ!
足手まといなんて思われたらどうしよう…ベッドでゴロゴロ行ったり来たりしながら懊悩してた。
そうだ!旅に出よう!じゃ無くて…現実逃避してもしょうがない。現状のパーティの戦力分析から始めよう。
バルトは重戦士として防御と継戦能力を高めた。ギルベルトは魔法の威力や弾数を増やして瞬間火力を増した。ユリアはパーティ全体の支援を盤石としつつある。
うーん、俺の目指すべき方向は…壁役になって手数の減るバルトに代わって直接打撃力の強化かな…
そう思いながら自分の体をペタペタと触ってみる。槍を振るうようになって筋肉が付いてきたが、バルトのようにガタイがいい訳じゃない。
だいたいバルトのヤツはずるい。なんでアイツはガンガンでかくなってるんだ?いや、考えが逸れた…
打撃力の強化、それ自体は間違って無いだろう。だが体格に恵まれてる訳じゃない。そうなると魔力か?
俺は錬金術師でもあるが、もっぱらポーション作りで戦闘に活かそうとはしてこなかった。何か錬金術で戦闘に役立つものは無いのか?
ウンウン唸ってたらバルトとギルベルトが頭大丈夫か?と聞いてきた。失敬だな君達は!
ついでにさっき悩みだした事を切り出してみる。するとバルトが立ち上がり。
「俺、ユリアを呼んでくるぞ。こういう事は皆で話し合う方がいい」
なんだかんだリーダーだなぁ、バルトのヤツ。
「僕は無理しなくても良いと思うけどね」
ギルベルトは優しいね。だけど俺自身が足手まといは嫌なのだ。
バルトがユリアと一緒に戻ってくるが、頬に手形がクッキリついている。おおかたノックもせずにいきなりドアを開けたんだろう。鍵をかけないユリアも不用心だぞ。
「なにかお悩みと聞いて…」
「ああ、みんな成長しようと頑張ってるのに俺だけ考えが足りなかったなぁ…と」
「ゆっくり考えても良いんじゃねぇか?」
「まあなぁ、ただバルトが重戦士になって手数が減るだろ。ギルベルトのマジックボルトが増えてもいきなり手数が増える訳じゃない。俺の戦力強化は必要だろ」
「俺と走り込みするか?」
「ポーション作りも有るんだぞ。殺す気か!?」
「ポーションと言えば、冒険者ギルドに刃物の切れ味を増すポーションがあるよね」
よく知ってるなギルベルト。俺なんか前に調べたのにすっかり忘れてたぞ。
「ユウトはあれは作れないの?」
「多分作れるな。でも不意を突かれたら悠長に塗ってる暇は無いし、俺達少人数パーティでは微妙かもなぁ」
とはいえ、基本的な考え方は悪くない。
「魔力を流したら瞬時に切れ味が増すとか出来ればなぁ」
「魔剣じゃねぇか」
「ちょっとやってみるか…」
『シャープネス』『武器に付与』と検索をかけると刀身に魔法陣を魔力で焼き付ければ出来るらしい。
最近出番の無い短剣で試してみると刀身を意識して魔力を注いでみる。うっすらと刀身が光を帯びる。
「出来たのではないですか?」
「できたな…」
画像検索しても『魔力強化されて切れ味が増した短剣』と表示される。
「本命の槍でやるか!」
同じように魔法陣を焼き付けて魔力を注ぐが短剣のように穂先は光らない…
「おっかしいなぁ…」
穂先を手繰り寄せ刀身を見ても魔法陣の焼付は成功している。頭をひねってると、ギルベルトが。
「その状態で魔力を注いだらどうかな?」
おお、穂先が光った。教授?これは一体?
「穂先から手の位置を離したらどう?」
魔力の光が弱くなる。
「柄を握る位置が問題のようですね」
「ダメじゃねえか…」
デスヨネー。
「いいや、解決方法があるよ!」
ギルベルトが自信有りげに胸をはって自分のワンドを取り出した。
「杖には魔力の伝達の良い素材を使うそうなんだ。このワンドは魔法鉄で出来てる」
「つまり魔力の伝達の良い柄で出来た槍を使えば…」
ギルベルトが深く頷く。また、武器屋の親父にお世話にならねば。
・・・・・・・・・・
「重い…」
魔法鉄で出来た槍は無かったが棍があると言うので持たせてもらったのだがとてつもなく重くて俺では振り回せない。バルトでも持てるが実戦じゃ無理だなというお墨付きだ。
「そりゃそうだ。こんな武器ベテラン冒険者用だぞ。お前ら駆け出しにゃ到底無理だ」
「そこをなんとかならないか親父?」
俺が食い下がると。
「魔力の伝達が良くて軽い柄となると伝説級の代物にミスリルなんかがあるが、金貨が何枚かかるか分かりゃしねぇし、そもそも手に入るかが分からねぇ。金属にこだわらなきゃあるには有るんだが」
「親父!教えてくれ!」
「わーったよ。トレントを素材にした柄なら魔法鉄と同程度には魔力の伝達が良いって話だ」
「親父!売ってくれ」
「あのなぁ…この店は武器屋だが鍛冶屋でもあるんだ。金属以外に扱ってる魔物の素材にゃ限りがある」
「つまり素材を調達してくれば作ってくれると?」
「まあ、ボウズ達には儲けさせてもらってるからな…」
手がかりを探して冒険者ギルドに行ってみると、Dランクの依頼にトレントの素材回収依頼があった。
「Dランクかぁ…」
「依頼自体は受けられますね…」
「やっちまえばどうだ?」
「でも僕らで倒せるかな…」
えーい困った時の受付のお姉さんだ。
「すいません。この依頼なんですけど」
「トレントの素材回収ですか?みなさんEランクですよね」
「「「「はい…」」」」
「ちょっと厳しいですね…」
「どの位が目安ですか?」
「そうですね相手は動かないトレントですのでそんなに厳しくは無いのですが、単体のホブゴブリンやトロールを余裕を持って戦える位は必要ですね」
「「「「そうですか…」」」」
おまけに依頼主は魔術師協会だった。スタッフの材料として定期的に依頼が出るのだと言う。
「つまり、魔術師協会から購入も無理そうって事か…」
「そうだね…」
ダメ元で錬金術師ギルドに行ってみるか。相変わらず荘厳な象牙の塔である建物に入ると、早速受付へ。今日はお姉さん、ではなくお兄さんだった。
「錬金術師ギルドでトレントの素材を扱っていたりしませんか?」
「申し訳ありませんが…触媒として少量扱う事は有るのですが…」
「そうですか…」
錬金術師ギルドのエントランスで俺達は即席の作戦会議だ。
「どうします?」
「どうしようか」
「冒険者ギルドで依頼うけるか?」
「僕はあんまり…」
そんな俺達に声をかける人がいた。
「ユウトじゃないかい」
錬金術師ギルドのギルド長ヒルデガード婆さんだった。
「今日はどうしたんだい?また何か面白いものでも作ったのかい?」
本音が漏れてますよギルド長…
「いえ、自分の戦力強化をしたくてですね…」
槍の穂先にシャープネスをかけたが魔力が伝達しなくて、トレントの素材を探していた事を相談していた。
「あいにく、素材はないけど強化方法にはアドバイスできるかもしれないねぇ」
「教えてくれ!婆さん!…いや、教えて下さいギルド長」
「婆さんでいいよ…あんたにギルド長なんて言われると鳥肌が立つよ。それで?あんたは身体強化は覚えてるのかい?」
「身体強化?」
「知らないようだね、魔力を体にまとわせて力を強化するのさ。魔力を操作できるのなら誰にでも出来るがこう言うのは錬金術師の得意分野さ」
なるほど、何かに魔力を注いだり込めたりするもんな。
「やり方なら公開されているから、図書館に寄って行きな」
錬金術師ギルドの図書館は部外者お断りなので、みんなには謝って先に帰ってもらった。その後、俺は本の虫になる。
なるほど、心臓に魔法陣を意識して魔力を込めるんだな。ちょっと、やって見たが確かに体が軽くなった気がする。
注意点としては魔力を込め続けないといけないから何かをしながらは慣れが必要と魔力の枯渇に注意と、それから全身万遍なく強化することとあった。でないと筋肉の負荷に耐えられなくなった骨が砕けたり。強化していない部分を痛めたりするらしい。
俺は早速、星屑亭までの道を身体強化し続けながら帰ってみる。魔力消費もさることながら強化を意識しながら体を動かすって難しいな…
その日から夕飯前の鍛錬には、俺が身体強化しながら槍を振るい。ギルベルトが木の的に走りながらマジックボルトを撃ち込むようになった。
バルト?アイツはフル装備で市壁の周りをランニングだ。
いろんな人に相談してみよう思わぬ発見があるものだ。
読んでいただきまして、ありがとうございました。
引き続き読んでいただければ幸いです。




