16.大規模討伐の後:ギルベルトの場合
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僕はゴブリンソードマンと戦った以降、自分の力不足を感じていた。上位個体相手にアースバインドが効かなかったり。マジックボルトの撃ち過ぎでダウンしてしまったり。
バルトも『明けの光』のアランさんを探してたり、何か考えてるようだ。
僕だけ悩んで足踏みして、バルトの足を引っ張りたくない。手がかりを探して魔術師協会を訪ねて見る事にした。
魔術師協会のカウンターで受付のお姉さんに相談してみる。
「魔法を強くする方法はありませんか?ゴブリンの上位個体にアースバインドが効かなかったんです」
「知恵を持つ相手には効きにくい時がありますからね。レジストされたんでしょう。杖を持ってはどうですか?魔法の成功率や威力を上げてくれますよ。それに魔法を使った時の疲労も軽減してくれます」
杖か、村で魔術を教わった時には教えてもらえなかったけれど、確かにお師匠様は長い杖をもってた。あれがそうだったのかな?
でも、僕は弓も使うから杖を持つとどうしても邪魔になってしまう。その事をお姉さんに伝えると。
「それでは杖でも長いスタッフではなく、短いワンドにしてはどうでしょう?持ち替えたり隠し持つのが楽なのでこちらを選ぶ方も多いですよ」
なるほど、杖にも種類があるのか。僕は魔術師協会の奥の売店を案内してもらい、小さな魔石の付いたワンドを購入した。
ワンドはなんと金貨1枚、銀貨にして100枚もするのだが大規模討伐で受け取った分前を全部つぎ込んでしまった。
こんな無茶な買い物が出来るなんて駆け出しになったばかりでは考えられなかった。ユウトには後で感謝しておこう。
その帰り道、雑貨屋に寄ってワンドを腰に差すホルスターを購入した。魔術師協会で売っている物では弓と両立しにくそうだったのだ。
足を棒にしたかいがあってそれなりに納得のいくスタイルになったように思う。
ワンドで魔法の強化は出来たけれど、僕自身の強化も課題だった。魔力量を増やしたかったのだ。そうすれば魔法を連発してもダウンせずに済む。
幸い、これには身近に参考になる人物がいた。ユウトだ、ユウトは前に魔力量が増えて作れるポーションの数が増えたと言っていた。
「ねえ、ユウト。魔力量を増やす方法を知りたいんだけど。教えてもらえるかな?」
「俺のやってる方法で良ければ、教えるぞ」
「教えてほしい」
「限界まで魔法を使うだろ」
「うん」
「そしたら疲れてヘトヘトになるだろ」
「そうだね」
「そしたら寝る」
「は?」
「いや、本当なんだって。魔法を使って疲れた状態に慣れるというか。俺がポーションを作ってるのは知ってるだろ」
「うん」
「1日の終わりに余力分、全力でポーションを作るのを繰り返してたら作れる数が増えてた。魔力量が増えてる」
「そうなんだ…」
「あと、魔物を倒しても少し増えるらしいけどギルベルトは止めを刺す機会が少ないしな」
「それなんだけど杖を買ったんだ。魔法の威力や成功率が良くなるみたいだから戦力になるかもだよ」
「ほーすごいな。杖を見せてもらっても良いか?」
「どうぞ。銀貨100枚もして大規模討伐の報酬が丸々消えたよ。それでユウトには感謝してるんだ」
「??なんかしたっけ?」
「だってユウトとパーティを組む前はこんな大金稼げるようになるとは想像もしてなかったよ」
「なるほどね、俺もギルベルト達とパーティを組んだから大規模討伐も成功したんだしお互い様だろ」
「そうかい?」
「そうさ」
言いながらユウトはワンドをまじまじと見ている。
「弓の威力もワンドみたいに上がればなぁ。僕の力じゃ長弓は引けないし」
弾かれたようにユウトが僕を見ると、コンポジットボウ…とか、いや滑車でとかブツブツつぶやくと、いきなり。
「コンパウンドボウ!有るのか!?」
いきなり叫んだかと思うと、同時にガッカリしてる。
「なあ、ギルベルト。武器屋に行ってみないか?」
そう聞いてきた。怪訝に思いながらも同意して武器屋『角笛の音』を訪ねると。
「親父『コンパウンドボウ』はあるか?」
ユウトがいきなりそう尋ねている。
「おう、有るぞ。待ってろ」
奥から武器屋の親父さんが機械仕掛けの弓を持ってきた。
「コイツだ長弓よりとはるかに軽い力で引けるが射程と威力は長弓に勝るとも劣らない。機械部品があるぶんメンテナンスが要るけどな」
「ちなみにいくらだ?」
「銀貨300枚」
「「…それは…買えないな…」」
「ボウズ共の今後の活躍に期待だな」
結局、僕らはトボトボと武器屋から帰って行った。道すがらユウトはカヤクがなんとかとかブツブツ言っていたがよく分からなかった。
ともかく、僕の目標は決まった。魔力量を増やして戦力となることだ。当面、矢とワンドを素早く持ち帰られるように練習しよう。
読んでいただきまして、ありがとうございました。
引き続き読んでいただければ幸いです。