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7話目 訓練という名の拷問

 次の日もメイドのスエノルさんが起こしてくれたが足の疲労感が酷かった。朝食をとり昨日の魔法の説明をしてくれたところへ行った。


 そして授業が始まる。


「まず初めに勇者様方には魔力を知覚して貰います。体に流れる気を感じて下され。

 これは瞑想することで感じることができますので瞑想を始めてください。」


 クラス全員で外の庭へ出て芝生の上で瞑想することになった。瞑想とは難しいもので別のことを直ぐに考えてしまう。


 どうやら魔力を感じる時は体の底から何かが湧き上がってくる感覚らしく、初めてでも絶対にわかるらしい。


 「流石ですぞ如月殿。まさかこんなにも直ぐ魔法を感じれるなんて歴代の勇者でも早々にいませんぞ。」


 如月は1時間もせずに魔力を感じていたのだ。それから直ぐにエリザベスが魔法を感じ、エリザベスに続く形で続々とクラスメイト達も魔力を感じていっていた。


 魔力を感じた生徒は授業を受けていた部屋へ戻り呪文を覚えて、訓練場で使う練習をしているらしい。しかし俺はここでもまた魔力を感じることが出来なかったのだ。


 少し焦っていると一人の若いローブを着た魔法使いがやって来て次の訓練になりますので昨日の訓練場へ向かってください。そう言われたので俺は昼ご飯を食べることなく次の訓練場へ向かった。


 訓練場に着くと皆はもう剣術の訓練を始めていた。訓練は剣の振り方などらしいがそんなに練習をしていなくてもす直ぐに振れるようになっていた。


「勇者様、あなた様はアルベラ様から走るように言われているのでここの外周をずっと走っていてください。」


 まじかよ。そう俺の心の声が漏れてしまった。俺が思っていた練習とは全く違ったのでとてもガッカリである。


 仕方が無いので走ることにした。俺は幸運なことに倒れることはなく、日が落ちるころまで走り続ける。

 そしてようやく兵士が終わっていいと声をかける。周りの目はとても痛く心にとても刺さっていく。


 そして一日を終えて寝る。朝が来てメイドさんと少し会話をして、瞑想とランニングのみをしていく事が俺の日常となった。


 何度もこの羞恥の目と終わりのなく続く単純な訓練に心が折れかけるがゴブリンとの闘いを思い出して俺は何とか持ちこたえた。


 ここら1か月の訓練をしているがクラスメイトと話した記憶はない。

 何か意図的に隔絶されていた気がしたが理由が漠然としていたので気のせいとすることにした。


 ある日いつも瞑想の訓練時間に呼びに来る魔法使いが急に話しかけてきた。


「貴方は何故そんなに心が折れずに拷問ができるんです?」


「拷問、とは?」


 俺がそう聞くとこの世界では他のことをしているだけで体力は付くらしく、瞑想も基本みんな1日で終わらしてしまうので意味のないことをやり続けるので拷問というらしい。


 ていうと俺は1カ月間拷問を受け続けていたドMってことになるんだよな。だから最近美人騎士のエミリさんも俺をゴミを見るような眼をしていたのか。べ、別に少し興奮したなんてことないんだからね。


 取り敢えず俺は次の訓練だからと早々にこの場所を去っていった。しかし最近俺を見てクスクスしている人がいる気がした。これは王城の人間とクラスメイトでもあった。


 クラスメイトには廊下でたまにすれ違う時に笑われている気がした。


 俺はなるべく気にしないようにしていたが日に日にこの誰にでも馬鹿にされているという感じ方が強くなっていく。

 ある日俺は早く目覚めてしまったので鏡をふと見てみると、死人のような顔をしており生気を感じなかった。


 過度の疲労と精神的な負担なのかはわからないが俺はすこぶる体調が悪かった。

 そしてこの国の兵士は俺を休ませてくれることはなく、他のクラスメイトが休日で街へ買い物へ行っている時も訓練を続けていた。


 そんな顔色の悪さにメイドのエミリさんが気付いて声をかけてくれていた。


「誠さんはさ気負いすぎなんだよ。あんたは頑張っているしそのうち報われるよ。今はつらいけど頑張りな。」


 あんたにこの気持ちはわかんないんだろうな。と思っていたら、また語り始めた。


「私もね農民の身分で王城のメイドをやっているからね。周りから浮くんだよ。

 けどね世の中は残酷だ、それで休んでいたら陰でやられちゃうんだよ。

 私はそんな農民出身のメイドを見てきたからね。強くならなくちゃいけないんだよ。」


 今日のメイドのスエノルさんは少し元気がなく、この話をし始めたら一段としんみりしていた。だが、この言葉で俺は少しは楽になった気がする。今日も1日頑張っていけそうな気がした。


 そして魔法使いも、また俺に話しかけてきた。そして身の上話を始めたのだった。


「私も最近何もうまくいかなくてですね、けど勇者様を見てると不思議とやる気がわいてくるんですよ。勝手なお礼ですけど今日の夜にでも図書館へ行きませんか?」


「勝手に出歩いてもいいのか?」


「はい、もちろんです。もう既に許可を取っており好きにしてよいとのことでした。」


 少し怪しかったが、信じてみて付いていく事に決めた。どうやら夜に訪れてくるらしい。

 そして俺はランニングを始めた。しかし最近分かった事だが、ばてる速さが遅くなったので少し成長を感じられたので無駄じゃないと証明できて嬉しかった。


 けれどランニングがきついことは何一つして変わらなかった。

 

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