4話目 王都到着
「君たち大丈夫か?」
「はい、助けてくださったおかげで何とか」
そう全身よろいを纏っている騎士らしき人が声をかけてきたので如月が対応している。
他に50人くらいの人が周りを取り囲んでいた。
しかし、女はいなかった。俺はオスになんて興味はねえ。
「そうか、それは良かった。所で君たちは何でこんな森にいるんだ?」
実は…と如月が転移のことについて説明する。
「これは失礼しました。あなた方が勇者様方なのですね!? ご無礼をお許しください!」
「え、ええ、大丈夫です。所で貴方はいったい誰なんですか?」
「名乗り上げるのが遅れてしまい申し訳ありませんでした。私はアルベラ=カイマンと申します。
アルベラとお呼びください。この国の騎士団団長をしています」
アルベラと名乗ったその人物が鎧を脱ぐと、顔にいくつもの傷が付いた歴戦の戦士の風貌をした40代ぐらいの男の人が現れる。
「所で勇者とは、どういう事でしょうか?」
「そのことについてですが我が国、サンペルトス王国の王城にてお話しさせて頂きたいので………
宜しければ私共に付いてきてもらってもよろしいですか?」
突然アルベラさんが提案し始めるので、少し動揺していたように見える。
「すみません。一回ここにいる皆に聞いてみてもいいですか?」
「もちろんです。」
如月がそう言うとみんなを集めて少しアルベラさん達から距離を取り、意見を聞き始めた。
「聞いてもらった通りのことなんだけど………
僕達はこれから行く当てもないし、アルベラさんに付いていってもいいんじゃないかなって思ってる。
皆は何か意見は無いかい?」
「アルベラさん達が本当に良い人たちなのか? 俺はもう少し慎重になって判断したほうがいいと思う。」
影野が口にし周りの皆も動揺している感じがした。
確かにタイミングといい、完璧すぎてとても怪しい。
「いいえ、アルベラさんが悪い人だったら断っても強引にでも連れていくわよ。
今の満身創痍の私達じゃ太刀打ちすることおろか、逃げることも難しいわ。
だからどっちにしても私達はついていくしかないのよ。」
「ああ、確かにそうだな。すまん。」
エリザベスが言うと少し顔の表情を暗くして謝った。
「影野君、一ノ瀬さんありがとう。
影野君のみんなのことを心配して意見してくれたことに感謝するよ」
如月が感謝の意を示すと「いや別に」と少し照れていた。
きちんとフォローしているあたり凄いなと思う。
「一ノ瀬さんの言う通り、僕らはアルベラさんについていこうと思うけどいいかい?」
クラスの皆は頷いて賛成の意思を示している。
そして如月はアルベラさんの元へ行き、ついて行く旨を伝える。
「アルベラさんのお言葉に甘えさせて頂いて、ついていかせてもらいます。」
そして俺たちはアルベラさんについていくこととなった。
休憩を挟みながら道を進んでいったが、初めての闘いに疲れたのか皆は話すこともなかった。
日が落ちるころには森を抜けていた。
そこには20台くらいの馬車が並んでおり、その馬車に乗るように指示されたので皆乗りこんだ。
全員問題なく乗り込めたので、程なくしてから馬車は走り始めた。
2・3時間馬車に揺られているうちに俺は眠りに落ちてしまった。
そして次目を覚ますときは日が昇り始めた時間だった。
板で寝ていたため体の節々が痛い。
あたりは車輪音と馬が走っている音のみ聞こえており、静寂がこの場を支配していた。
そして完全に日が昇るころにはみんな起きており、話し声が聞こえてきた。
俺も友達と他愛のない話をしていると、王都が見えてきた。
王都は円形都市で周りを10Mくらいの防壁がそびえたっていてとても壮大である。
高い塔なども遠目からしてしっかりと見えたので、かなり建築技術が進んでいるように感じる。
12~14世紀頃の中世ヨーロッパの印象があった。
それから1時間もしないうちに王都の門へ着いた。
そこには沢山の人が並んでいたが兵士用の別の入り口あるらしく、アルベラさんが少し話すとそこからすぐに門が開く。
門番の衛兵は直立不動のまま、お手本のような敬礼をして場やを見送っていた。
門をくぐるとそこには、石造りで三階建てのカラフルな街並みがあった。
道路も石で舗装されていて歩道と、馬車の通る道とで分かれていた。
町は活気があり生き生きとしている。
その街に魅入られていると遠目に見ていた王城が、目の前に堂々と立っていた。
王城はモンサンミッシェルを大きくして、周りに塔が囲んでいる様相である。
そして城門の前で馬車から降ろされ、場内に案内された。
案内された先は大きなホールだった。そこでアルベラさんが
「今から国王陛下に謁見してもらいます。なので最低限度の無礼は無いようにお願いします。
皆様には国王陛下のご準備が終わりになるまでここで、遅くなりましたが朝食をお召し上がりください。
準備ができ次第私が呼びに来ます。」
そう言って目の前には沢山、豪勢な食べ物があった。
不思議な事にカツや唐揚げなど現代日本の料理が並べられており、バイキング形式だった。
そして懐かしい味がした。
「エリザベスこのご飯についてどう思う?」
影野がそうエリザベスに聞いた。
「やっぱり、他の転移者がいるんじゃないのかしらね。まあ、そんなのは後で聞けばわかるはずよ。
今はご飯を食べましょう。昨日の夜から何も食べてないからね。」
そして皆は凄い勢いでご飯にがっついていた。1日とはいえ久しぶりのまともなご飯なのだから無理もないだろう。
それにしてもこの唐揚げ旨すぎてやばいな。
1時間近く皆朝食楽しんでいたら、アルベラさんが入って来た
「国王陛下の準備がもう間もなく整いますので、皆様もご準備ください。」
そう言って空気は張り詰め、皆の顔に緊張が走った。
お前はどうかって? もちろん冷静にふるまおうとしてるけど内心ブルブルですよ。