29話目 交渉前
本当に遅れてしまい申し訳ありませんでした。
7月いっぱいは投稿頻度が遅くなってしまいます。すみません。
そしてシャルルさんは魔物興奮剤を見せてくれた。
魔物興奮時は5cmほどの小さい瓶に入った赤色の液体で、瓶のふたを開けてみると何故か一回嗅いだことのある匂いがした。
この臭いは転移してきた時女子が作っていたご飯の臭いだという考えがふとよぎった。
しかしそんな事は無いと即座に否定して、自分に考えすぎだと言い聞かせる。
魔物の説明が終わり少しの間、葉っぱが風でカサカサと揺れる音が響いてくる。
そうして悪魔のシャルルさんは少し悲痛そうな顔をして、死んだ魔物の死体を眺めていた。
その顔は何処か慈愛に満ちており、子供を眺めるかの様な神妙な面持ちをしていたのだ。
ハアッと長いため息をついて何かを飲み込んだようにしてこちらを向きなおす。
「なるべくですが、魔物たちを殺すときにはなるべく苦しまさせずに殺してやってください。」
分かりましたと答ええると、紳士的な笑みでありがとうございますと言う。
多くは語らずにシャルルさんは歩いて何処かへ行ってしまった。
俺たちはシャルルさんが見えなくなるのを確認すると、安堵の溜息をついてヘナヘナと地べたへと座る。
いくら敵意が無いとは言え、その身からかもし出る強者の風格に圧倒されていたのだ。
敵意が無いとは言え何か怒っているようにも感じられた。
その後はいつも通りの仕事をして砦へと戻った。
亜人たちを地下へと戻して自室へと向かっていると
「道を開けろ!」
そう大声を発したのは、大きな荷台を運んでいる兵士であった。
台車が大きいためか数人で運んで行っている。
荷台には白い布がかぶされており、腕がブラーんと垂れさがっている
この光景は最近見慣れたもので、砦の中では最近沢山の人達が運ばれて行っている。
しかし布の下側は見たことが無い。
これはこの前ルドルフさんが言っていた流行り病で命を落とした人たちなのだろうか?
そうした中ある一人の兵士が、躓いてこけてしまう。
そして死体は台車から転がり下ちて、辺り一面に散らばる。
死体の肌は人族であっても、真っ白であり普通では考えられない白さである。
更に死体には紫色の膨れ上がった腫瘍が幾つもあって、所々10cmほどのさけた傷口が体の至る所にあった。
殆どの死体は干からびているかのように見えた。
そして俺は転がった死体と不意に目が合ってしまう。
死んでいるはずなのに死体は何か怖れているかのように見えた。
目が合ったからだろうか、得体のしれない何かに睨まれ恐怖の念に支配されてしまう。
俺はその場所からそそくさと立ち去って、自室へと戻る。
「まこと、お帰り。」
ロイが俺を出迎えてくれた。
メイもマリナもまだ目が覚めていない。
取り敢えず俺は魔物の燻製をロイに渡して食べさせた。
そして俺は余計なことを考えないでいいように表記魔法の札を描き始める。
この時は特に恐怖なども感じることが無かったので、心が安らいでいく気がした。
気づいた時はご飯の時間であった。
俺は食欲がわかなかったのでこれもロイにあげた。
そこから俺は狂ったように表記魔法の札を描いたので、気絶していた。
俺は周りが煩かったので目が覚める。
気持ちよくは無い目覚めを迎えたが、そこにはマリアとメイが目を覚ましていた。
「おはよう、ございます………」
マリナが目を覚ましたのだが、どう接していいのかが分からずに唯々見つめることだけしかできなかった。
とても気まずい。
「まこと、やった!メイが目をさましたよ!」
「あ、ああ。良かったな。」
ロイのおかけでこの微妙な空気感から逃れられたので、心の中で感謝しておく。
それにしても急に大声出したり、ジャンプしたり忙しい奴である。急に話しかけてくるものだから驚いてしまった。
朝から騒がしく、体は痛むけれど悪い寝起きじゃない。
「まこと、ロイ、ありがとう!」
「うん、元気になってくれて良かった。」
メイがとても元気な声で、お礼を言ってくれた。ロイは何処かへと顔をそらしていた。
マリナが後ろでフフフと笑っていた気がする。
「それとマリナとメイたちももう少しここで休んでもらうから。暫くはロイとここにいるように。」
困惑気味に彼女たちは頷いていた。
色々と聞きたいこともあったが、俺は亜人たちと狩り、及びレベルアップをしに行った。
マリナ達が回復したと亜人族たちに伝えたら、とても喜んでいつもの倍以上の働きをしていた。
仕事がいつも通り順調に終わり、亜人たちを地下室に戻して自室へと向かう。
その途中に、大きな台車が目の前から近づいてきており、布もこんもりと膨らんでいる。
更に脚や腕などがはみ出している。多分、今日も例の病気で沢山の死者が出たのだろう。
そして俺は昨日の死体を思い出して一瞬頭が真っ白になり、石の様に固まってしまう。
何も考えることが出来ずに、馬車が俺の視界かから消え失せるのを待った。
別の事を考えようとしても、例の死体から何か呪われたかのように考えさせられてしまう。
これ以上考えたら危ない、そう思った時にルドルフさんが話しかけてきてくれた。
「あの死体の数はひどいだろう。
最近になって流行り病が酷くなってきてな、1日100人くらい死んでいるらしいぞ。」
やはり最近台車の行き来が激しいので、合点がいった。
「この病の原因は何ですか?」
「すまねえな、それは俺も良く分からねえんだ。」
原因がわからずに上の人たちも混乱しているとの事であった。
「それと明日の事なんだが、明日の会合は朝早く行くって事と、人族だけで行くから気を注意しておいてくれよ。
それとこの事は亜人族にもう伝えてあるから、わざわざ行かなくて良いぞ。」
ルドルフさんはじゃあなと言ってまたどこかへ行ってしまった。
それにしても良くルドルフさんに出会うしフラフラしているように見えるので、本当に仕事をしているのだろうかと疑問に思う。
ルドルフさんに話しかけてもらえたおかげで落ち着いたので部屋へと向かう。部屋の中ではメイとロイが仲良くベッドの上で眠っていた。
更にマリナがメイたちの頭を撫でていた。
「誠さんお帰りなさい。
メイちゃんたち結構お話ししてて、疲れちゃったみたいで、眠っちゃいました。」
「それは良かった。
それよりマリナは大丈夫なのか?」
「ええ、大丈夫ですよ。
この通り、どこも悪い所が無いので。」
エッヘンと胸を張ってそうマリナは言っていた。
こんなキャラだったかなと疑問に思いつつも俺は、何で頭を撫でていたのか聞いてみた。
「何かこの子たちの寝顔を見てるととてもかわいくて、ナデナデしてあげたくなっちゃうんですよ。
しかもこの子達ふさふさでとても気持ち良いんですよ。」
えへへと少し変態っぽい顔をして、にやけていた。
そんな訳ないと思って俺もロイたちの頭を撫でると、シルクを触っているみたいでとても気持ちが良かった。
多分俺の顔も変態さんになっていたのだろう。
にやにやしながらマリナが俺の方を向いてきた。
「ほら、気持ちいですよね?」
「あ、うん。」
そう言って俺たちは暫くの間、モフリ続けていたと思う。
それにしても、何故だろうか少し心が楽になった気がした。
マリナ達といると癒されるのだろうかと自問自答する。
まさかと思い、俺は悪魔でも亜人族を利用しているだけだと自分に言い聞かせる。
そのまま寝てしまい、次起きた時はロイの頭に手を置いた状態であった。
それにしても、ロイは長い期間小さいのによく頑張るなと感心する。
ここまで妹もいの10歳は滅多にいないだろう。
そう思うと無性に頭を撫でたくなってきた。
更には、何とも言い表せない心の奥底に尊く感じる俺がいた。
そんな事を考えていたら、集合する時間が近づいてきたので準備をする。
勿論、兜鎧のフル装備だ。
準備が出来たので俺は気を引き締めて向かう。
それにしても亜人族たちがどれ程のレベルになっているかが楽しみである。
俺は1人でこの前の集合したところへと行き、ギルさん達と合流した。
やはりルドルフさんが言ったように、今回は少数で行くらしい。
なので今回は人族のみの編成で向かっていくようだ。
「よし全員揃ったな、では行くぞ。」




