25話目 交流
本当に昨日はすみませんでした。
書き終わるまで失踪することは無いので、心配ないです。
俺は回復するまで毎日スエノルさんが面倒を見てくれていたので、食べるものはお腹いっぱいに食べれなかったが、生き残れる程度にはエネルギーを摂取できた。
この世界に来てから碌なご飯をたべていな気がするものの、嬉しいことに食べ物は、野菜スープとパンで久しぶりに人に帰ってきた味がした。
最初の方はスエノルさんに緊張したが、今はそんなに緊張する事は無い。
因みに何でそんなにスエノルさんが変わったのか聞いてみたら、ここの食べ物が少ないので痩せたらしい。
スエノルさんがお見舞い、もとい介護に来てくれると、いつもお話をしている。
「ところで誠さん、あんたトイレとかはどうしているんだい?」
「洗濯魔法で掃除をしています。」
「なんだいソレ?」
俺は洗濯魔法の説明をする。
「ああ、王都にも同じようなもんがったね。確か、洗浄石とか言ってたかな。」
仕組みは分からないらしいが、魔力を使う事は無く、聞いた感じだと洗濯魔法の上位互換であるようだ。
さらに価格が安いから皆持っているらしい。
今の流れって、そ、そんな魔法を使えるの? 凄いって言うパターンじゃないのかな?
この世界に来てから、褒められることも無いし、左遷されるしなんかよく知らない人にボコボコにさせられるしで踏んだり蹴ったりである。
しかし、何で一般の兵士でも出来る仕事をスエノルさんがこんなにも俺の面倒を見てくれるか不思議に思う。
「少し気になることがあるんですが、何でスエノルさんはこんなにも尽くしてくれるんですか?」
俺は気になってしまったので単刀直入に聞くと、暫くだんまりを決め込んだ。
その姿に不安になってしまう。もしこれ、スエノルさんがそんな事が無かったら滅茶苦茶恥ずかしいじゃんと。
祈りを捧げるようにスエノルさんの見て、俺のキラキラした美しい目に負けたのか、ため息をついて話し始める。
「それはねえ、あまりいたかなかったんだけど、私には夫と一人息子がいてね。
夫は鍛冶屋をやっていていたのさ、だけどある日貴族様の反感を買っちゃって殺されたんだ。」
重い話が始まりそうだったので俺はつばを飲み込んで、話に集中する。
「その時に息子は10歳でね、食うに困っている私をギルさんが拾ってくれたんだよ。
そして農民出身である私が、王城で働いていたのさ。」
「そして息子は順調に育っていってね、17歳の時に戦争へ行って死んじまったんだよ。
しかもここの砦でね。」
俺の口の中には唾液がたまっていくがそんなことは気にもせずとも話し始める。
「そして息子はねえ、丁度あんたに似てたからね少し息子に重ねちまったんだよ。
だから色々とお節介を焼いているのさ、嫌だねえ。」
そう自傷気味に乾いた笑いをしていた。俺は申し訳ない気持ちに苛まれる。
「なあに暗い顔してんだい。別に昔の事だよ、そんなに気にもしていないさ。
きちんと生き残りな、今はつらくてもその内きっと良くなるよ。」
それでも俺を心配してくれているらしい。
久しぶりの生身の人間の暖かさに心が締め付けられる。
「それと私、これからいつも通りの仕事をしないといけないから、これからは他の人が来ることになったのさ。
すまないねえ。それじゃあ、頑張りなよ。死ぬんじゃないよ!」
スエノルさんはこの部屋から去って行く。
彼女は普通の業務に戻っていると言っていたのだが、有給でも使っていたのだろうか。
スエノルさんもいなくなってしまうので、部屋の中が寂しくなる。
俺はこういう時には、表記魔法を書いていく。最近は一日に30枚ほどかけるようになった。
そして疲れたら眠ると言う生活サイクルを送っていた。今日も疲れたので、どんなメイドさんが来るのかなって思いながら目を瞑る。
そうしてバンっと勢い良くドアが開く音がして、俺は目が覚めた。
誰かなって思ってい見てみたら、ルドルフだった。
朝からもじゃもじゃおじさんを見て少し沈む、そしてルドルフは口を開く。
「今日からお前さんの世話係になったんだが、俺も仕事があるからなお前の亜人奴隷にやらせる事になった。すまねえな。
取り敢えず適当に亜人族を選んできたから後はそいつらに頼めよ。」
「それは分かったんだけど、亜人族をここに連れてきても大丈夫なんですか?」
「ああ、お前さんは知らないだろうが、ここの兵士たちはお前さんが率いる部隊に怖れているからな。」
俺はどういう事ですかとさらに質問を続ける。
「まあそりゃ、筋骨隆々で厳ついガタイのいい奴らがいつも魔物を大量に狩ってきて、それを纏めてるのが良く分からない鬼もような姿をした奴だぞ。
まあそりゃあ、普通の兵士はビビッて手を出さないよな。」
そんな風に見えていたのかと思が確かに亜人族達は、奴隷にされて虐待をされていたからか、顔に傷があったりするものも多い。
「お偉いさん方もお前さん達が良く働いてくれていつから特例でいいってことになっていたぞ。」
それじゃあなと言ってルドルフさんは去って行く。
彼が連れてきた亜人達は、エルフのマリナと獣人のロイ、メイそしてドワーフのドナウドであった。
それにしても上の方はもっと俺たちを働かせる気でいるのだろう。
ブラック企業だなあ。
そしてエルフのマリナが話し始める。
「回復するまで私たちが、誠さんの世話をすることになったので何でもおしゃって下さいね。」
俺はうん、よろしくと伝えるとメイが話しかけてきた。
「誠さんはさー、いつもは何をしているのー?」
俺は表記魔法を書いていると言って、札を見せると目をキラキラと輝かせて札を眺めていた。
そこで書いてみる? と聞いてみたら物凄い勢いでしっぽを振り始めてうんと言っていた。
他の三人も、興味深そうにこちらを見ていたので一緒にやるかと聞いてみる。
彼らは頷き俺のベッドへと寄ってくる、しかし6畳くらいの部屋に5人くらい人がいると窮屈に感じる。
そして表記魔法の説明をしていると、彼らは前のめりで説明を聞いていたのでとても興味があったのだろう。
けれど俺はとても重要なことを忘れてしまった。これには4つの言語を使うという事だ。
そこで俺は恐る恐る聞いてみた。
「君たちは、魔人族、人族、鬼人族の文字を書けるのか?」
全員首を振っていた、まあ、当たり前だよなあ。けれど皆やる気はあるようだ。
言ったからにはやらないといけないなと言う責任もあったので、きちんと丁寧に教える。
最初の方は苦戦しているようだったが、マリナの上達が早かった。
本で読んだ通りにエルフは魔法を得意とする為、知能指数が高いとの事であったので納得である。
その次に早いのがロイとメイで、やはり子供であるせいなのか吸収が速い。
しかし残念なことに、ドナウドはあまり上達スピードが速くは無かったのだが、俺が神様の所で勉強した時以上に早く理解していた。
多分この世界の異世界人には、頭がいい人が多いのだろう。いや、そう信じたいね。
そうしないと俺が出来ない人間になっちゃうからね。
そしてお腹がすいたら、マリナ達がご飯を運んできてくれていた。
不思議な事にマリナ達もご飯をもらっていたので、心置きなく談笑しながら箸を進めた。
この1週間この生活を続けていたのだが、皆メキメキと成長している事に驚いてしまう。
マリナに関してはすべての言語の8割くらいをマスターしているのだが、未だに札を書くことはできない。
鹿彼女は天才であろう。
次の日、脚もほとんど回復してきている時に、兵士がノックを俺の部屋へと入り
「明日から通常の仕事に戻れとの、命令をしておりましたのでお伝えに参りました。」
それだけ言って、逃げるかのようにこの部屋を出て行った。




