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20話目 初仕事

 獣人たちの食料事情に対して、碌な対策も考えることが出来ずに日が明けてしまう。

 ………すみません眠ってしまいました。

 

 ノック音が聞こえたので開けてみるとルドルフさんがいた。

 

「起きていたか誠、早速仕事だ俺についてこい。亜人の所に案内する。」


 俺は鎧を着こんでルドルフさんに付いて行くと、すれ違う人族の兵士がこちらを物珍しそうに見ている。

 西洋の甲冑の中に戦国時代の鎧、当世具足を着こんでいるのはやはり物珍しいようだ。


 カチャカチャと音を立てながら歩いていくと、重厚な扉を開けて地下階層に入る。

 まず地下に行けることに対しても驚嘆したが、それ以上に亜人たちの扱い方の方が冷酷であった為に、こちらの感情の方が大きかった。

 彼らは痩せこけており、手枷と足枷が架せられている。


 こちらを見る目は怯えていて、排泄物がかたずけられていないので、鼻がひん曲がってしまう程の異臭だ。

 ご飯も残飯の様なものだったので、スエノルさんが無理だと言ったのも納得である。

 また、俺の率いてきた亜人たちは多少肉付きが良いので一目見ればわかった。


「俺の隊にいた奴は出てこい、仕事だ。」


 俺がそう言うと、亜人30人くらいが出てくる。

 そして驚いたことに俺が悪魔の襲撃を受けた時、取り残された少年が自主練習を見ていた例の少年だった。


 しかし刀の少年は殺気立ってはいない。ふと疑問に思う、俺が殺気に慣れてしまったのだろうか?

 それとも、彼の殺気が無くなったのかは分からない。

 どっちにしろ気のせいだ、俺はこの世界の奴らとは違うと言い聞かせる。


 そして俺たちは外に出て魔物を狩ってくるようにルドルフさんが言う。

 ルドルフさんは別で仕事があるらしく、俺たちは魔物狩りに出かけた。


 砦の周りには森が多いので、そこが狩場なのらしい。

 森に入ると肌触りが違く、今までの通ってきた森とは違い、常に何かの視線に見られている気がする。

 空気がどんよりしていて気持ちの問題なのだろうか、体が重くなっていくのがわかった。


 暫く固まってしまっていると、敵の集団と出会う。

 敵の塊はオークの集団である。オークは2mほどの高さがあり肌は緑色、腹が出ていて肥満体型であり、顔が豚であるので、見るものすべてに不快感を与える見た目をしている。


 その醜い生物たちの集団20匹ぐらいは、こちらの様子を慎重にうかがっている。

 俺たちもオークとの戦闘は初めてなので、様子を見た。


 先に仕掛けてきたのはオークたちで、魔法を放ち土煙が舞ってしまう。

 そこでオークたちが突進してきて、亜人たちが吹っ飛んだ。

 

 吹っ飛んだ亜人たちは魔法の餌食となってしまい、俺はつい叫んでしまった。


「こいつら、知能があるぞ気をつけろ。そしていつも通りにやれ。」


 俺は咄嗟に作戦を思いつくことが出来ずに命令を出していた。そしてドワーフたちと何とか、突進してきたオークと戦って前線を維持している。


 こちらは前線の数が少ないので徐々に押されてきたのだったが、その時に獣人たちが遠距離攻撃をしていたオークを無事に倒してくれていたので、挟み撃ちに成功し、殲滅させることが出来た。

 中でも活躍していたのが刀を持った獣人の少年である。


 そして周りを見てみると、エルフ、ドワーフ、獣人が4・5人倒れていたので全体の数が15人ほどにまで減ってしまっていた。


 俺たちは死んだ者たちを火葬して弔い、オークの肉をそぎ落としていく。

 そしてオークの肉を焼いて、ここにいる亜人たち全員に食べさせる。血抜きをしていないので、やはり血生臭い。

 

 オークの肉はゴブリンより噛み応えがあって肉汁は凄かった。そしてこれも背徳的な味がした。

 そして俺はふと閃く、死体を燃やしたから煙が上がった、と言えばバレることなく肉を彼らに食べさせることが出来るであろうと。


 今回の闘いでも分かったが、戦闘には数が必要であると思い知らされた。

 そして俺たちは食べ残したオークの肉を持って砦へと戻る。


 砦に運んでいくと、上官らしき人物がご苦労であったと一言だけ言って、食料庫へと肉を持って行った。


 そして、獣人たちの事について何も言われることも無い。どうやら彼らは獣人たちの事に興味がない様子である。


 そして獣人たちを地下へと戻す。彼らがとても震えて扉へ入って行っている時に、刀の少年が俺に話しかけてくる。

 

「マコトさん、オネガ、イガアリマス。」


 片言の人族の言葉で話しかけてくるので、かなり深刻な頼みごとなのだろう。


「聞き取りにくいから、獣人の言葉でいい。それでお願いってなんだ?」


「実は、この女の子を一緒に連れて行ってほしい。」


 そう言って、獣人の女の子を連れてくる。

 確かに数の補充をしたかったのだが、弱った子供を引き取る理由は無く、どうするか考えこんでいると彼らが似ていることに気づく。


「お前たちは兄弟なのか?」


{はい、僕の妹です。}


 兄が強いなら妹も使えるだろうと考えて検討してみると伝えた。少年の顔はパッと明るくなる。

 基本彼は笑わずいるがよだれを垂らしたり、今日活躍したので頼みごとをしてくる辺り子供らしくて、好感が持てた。


 俺は他の亜人たちに目を向けてみると、傷だらけであったり、四肢がなかったりとうちの亜人たちが明らかに浮いていた。

 俺はそのままこの場所を後にして、洗濯魔法を自分にかける。


 そして俺はギルさんの部屋へと向かい、ノックをして部屋へ入る。

 ギルさんはまた書類を書いていた。要件を単刀直入に言う。

 

「私の亜人奴隷の数を増やすことはできないでしょうか?」


「無理だ。ここの亜人奴隷は我々の所有物ではない。」


 何故なのかと聞いてみたら、皆亜人奴隷を盾に使うかららしい。

 亜人奴隷を餌や囮に使えば、人族の損害が減っているので、ここ数十年ずっとやって来ていることなのだそうだ。


「では、子供の奴隷だったらどうでしょうか?最悪1人だけでもいいです。」


 俺は何とかして数が欲しいので、食い下がる。

 そしてギルさんは考え込むと、気まずい空気が流れてくる。


「私の頼みごとを聞いてくれたらそれでいいだろう。」


「頼み事とは?」


「簡単だ、亜人を使ってもよいので私を護衛してくれればそれでいい。詳しい内容は言えないがな。」


 俺は詳しい内容が言えないと言う所に引っ掛かるので、考え直してみますと言おうとしたら


「これは機密情報だからな、断ったら亜人奴隷は返してもらう。勿論仕事は継続してもらうぞ。」


 脅して来たので俺は分かりました、受けましょうとしか言えなかった。

 こうして俺は亜人奴隷の子供1人をギルさんの頼みでもらえるようになった。掌の上で踊ろされているみたいで複雑な気分になる。

 奴隷の事に関してはギルさんが直接上に言ってくれるらしい。


「期限は後々言うから準備だけはしておけ。」


 俺は部屋を後にするのだった。俺は数が揃わないので生き残るための最善の方法を巡らせる。

 その結果は亜人奴隷たちと仲良くなる事であった。

 できれば、指示しなくても動いてくれるレベルになってくれたら楽だなと思う。


 このように1日が終わり次の日になったので、俺は再び大量の洗濯魔法の札を持って亜人奴隷たちを連れて行く。

 勿論、刀の少年の妹も連れて行くことにした。

 話はもう既にとっているらしく、もめることも無かった。

 

 そうして場外へと出ると、亜人たちの臭いがきつかったので洗濯魔法を消毒するかのように掛ける。


 更に俺は亜人たちに名前を名乗らせる、最初に名乗り出たのは刀の少年であるロイであった。

 そして妹の方はメイと言うらしい。

 他の亜人たちも名乗っていた。これからは名前で呼ぶことにして、コミュニケーションをよくとっていこうと思った。


  獣人の少年ロイは心を開いているみたいだったので、仲良くなることが不可能ではないだろうと感じる。

 ロイをよくよく見てみると、犬の獣人であることが分かった。勿論、メイも犬の獣人である。他にも兎や熊、狐らしき獣人がいた。

 

 何で異世界小説読んでて獣人の種族に気づかないのかなと思う、目が腐っているのかな。今度眼科へ行こう。

 あ、ここ異世界で病院はあるけど眼科は無かったわ。

 

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