19話目 ザクセン砦到着!
死体の焼ける音臭いは鼻に残る。視界に残っているのは血の跡だけだ。
手を合わせて弔った後、俺たちはこの場所を去って行く。
何とかしてザクセン砦へと向かう。
周りは草原であったが、馬車の跡があったので迷う事は無かった。
しかし、歩いていくうちに獣人の少年が倒れてしまう。
「大丈夫か?」
返事は無いが息はしているので少年を背負う、いざとなれば盾になるだろうと思い進み始める。
女エルフは止まっていたので、行くぞと急かした。
歩き続けていたが周りの風景は何も変わらずに草原である。しかし、人にも魔物にも合う事は無かった。
この場所がいかに辺境なのかを表しているのであろう。
遂に日が落ちてしまうので、野営をする事にした。
食料が無く、お腹が鳴るが俺の水の表記魔法の札で何とか腹を満たす。
「野営をするから、見張りを先にしてもらっていいか? 暫くしたら起こしてくれ。」
俺はエルフに頼むとエルフは何もしゃべることも無く唯々頷くだけだ。やはり表情は変わらない。
そして俺は仮眠をとる事にしたのだが、次に目が合覚めたのは朝日が昇っている頃になっていた。
エルフに何で起こさなかったのか聞いてみたが、答える事は無く下を向いているだけである。
答えることはなさそうなので俺は行くぞと言い、少年を背負って進む。
少年はまだ目を覚ましたところを見ていないが、様態が安定しているので連れて行くことにした。
それにしても人がいるのに会話をすることが無いので、一人でいる時よりか一層悲しい。
この日も両脇に広がる草原を見ながら土の道を進むが、何も起こらず日が落ちる。
そうして臭いが気になって来たので汚れを落とす魔法、洗濯魔法を使う。
これにはエルフも気持ちよさそうな顔をしている。
そして浄化魔法で綺麗になったエルフは美人で、つい見惚れてしまった。
彼女は金髪ロングヘアーで通った鼻筋、キリっとした大きな釣り目の女性ではあるが俺は騙されない。
どうせ中身は100越えのBBAだと言い聞かせる。
先にエルフに寝るように言うと、少し驚きの表情を浮かべて居た物の直ぐに寝入る。
寝顔にムラムラしてしまう。だってチェリーな男子高校生なんだもん、仕方ないじゃん。巨乳な美人のお姉さんがいるんだもの。
俺はふと我に返ると昨日に大量に人が死んでいるのに、何でムラムラしているのか疑問に思う。
性欲に溺れて現実逃避をしたいのかは分からなかったが、俺の価値観がおかしくなり始めたのは事だけは分かった。
俺が、俺じゃなくなるようで身の毛がよだつ。
俺はこの日に眠ることが出来そうになかったので、今晩はずっと夜警をしていた。
そして、俺は眩しい朝日に思わず目を覆てしまう。
それと同時にエルフと獣人の少年が目を覚ます。
獣人の少年には所々こまめに水を飲ませていたので、脱水症状の心配は無かった。
しかし、歩かせようとさせた所、少年はこけてしまう。
俺は仕方なく、また少年を背負ったら、え? という声を上げたので
「何か問題があるのか?」
と聞くと、いいえと俯いて黙り込んだので、歩き始める。
少し歩き始めると少年はよだれを垂らしながら直ぐに眠ってしまう。
子供は暢気なものだが、子供は温かいので少し気持ちいいのでそこまでは気にしていなかった。
しかし暫く何も食べていないので、明らかに皆弱ってしまっている。
どうするものかと考えていると、ゴブリンが1匹が出てきた。ゴブリンは魔物ではなく餌に見えてしまう。
どんな味がするんだろうか、どう調理をしてやろうかと考えてお腹が鳴ってしまう。
少年をエルフに持たせて、俺は刀を抜き即座に切りかかる。
そしてゴブリンは「グゥギャァ」と死ぬ前に言って、絶命する。
俺は即座に解体を始める、やり方がわからなかったので取り敢えず脚と腕と切り落とそうとしたが何かに引っかかっているのだろうか、中々上手に切れない。
その間少年を寝かせて、エルフに枝を探しに行かせた。
やっとの思いでゴブリンの四肢を切り落としたその頃には、エルフが帰ってきており枝をくべて火をつけている。
着いた火でゴブリンの腕と脚を焼く、そしていい感じに火が通たところでゴブリンの肉にかぶりつく。
ゴブリンの肉は鉄の味であって、後味には背徳感があった。
少年もエルフも食べていたので少しは元気になり使い物になるだろう。
再び少年を背負って進み始めると、馬の音が聞こえてきた。
少年をエルフに任せて刀に手を掛けると、目の前には馬に乗ったルドルフさんがいる。
「誠、お前良く生き残ったな。取り敢えず、助けに来たから馬に乗れ。勿論亜人たちもな。」
そう言って馬の後ろに俺を乗せ、目の前に獣人の少年を乗せる。そしてエルフは隣の馬に乗っていた。
暫く馬を走らせるとザクセン砦に着く。
ザクセン砦はとにかく大きく、要塞の真ん中には5階建ての尖っている屋根を持った建物があり。
その建物から正方形に4階建ての建物が広がって行っており、一番外側には屋根がついていない城壁がそびえたっている。
壁は8mくらいあり、強固な要塞に見えた。そして要塞に入るとギルさんが待っていた。
「時間稼ぎご苦労であった。この後聞きたいことがあるので付いて来てもらう。」
文句も言う暇もなく、そう言われて俺は別の部屋へ呼ばれた。そして階段を昇って行くと会議室に着く。
失礼しますとギルさんが部屋に入ると、そこには太ったおじさん方が深々と座っていた。
俺が入るとギョロリとした目で俺の方を見てくる。
彼らは自己紹介もすることも無く偉そうに質問してきた。
「君、どのようにして悪魔をしのいだのかね?」
悪魔との戦いについてすべて話す。役に立たないなと言う顔をして
「そうか、ならもう良い戻っていいぞ。」
そして、これからも今回率いた亜人奴隷たちを指示しろとの命令が出た。
そして部屋へと案内される。
部屋はとても狭くベッドと机しか無い、そしてお風呂などもないので皆、結構匂うのだった。
目についたのはほとんどの兵士たちが痩せこけていることである。
暫くここに食料が届いておらず、皆栄養が足りないらしい。
食料を運ぼうとすると必ず悪魔の襲撃を受けて、補給が出来ていないのでザクセン砦は孤立無援状態であり、日々魔物の肉をそぎ落として飢えをしのいでいる。
今回俺たちが付いたのは奇跡のようなものだった。
その為俺たちは次の日から魔物を狩る事が主な任務となった。
俺たちには休める時間も無いらしいのでゆっくりと休むこともできない。
俺はメイドのスエノルさんのもとへと俺は行く。
スエノルさんはメイドさんたちが泊まる場所にいるらしく、ノックして訪れる。
はいー、と言ってドアを開けると
「まあ、誠さん!無事でよかったよ。それでどうしたんだい?。」
「出来れば俺の率いている亜人族にはきちんとご飯を与えてほしい。」
俺が頼み込んでみると顔が曇り、それは難しいんだごめんね、と言われた。
俺はそそくさと自分の部屋へ戻って、対策を考えるのだった。




