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閑話休題 天使君視点 1話目

師匠視点


 


 ここでワシらの志を任せられる人を探し始めて早60年たった。

 何故この部屋なのかというと、天人族に見つからないようにする為に要らない本ばかり集められかつ、人が良く来るところを選んだ。


 因みにこの寂しさを紛らわす本はゲリラ戦に参加していた一人の魔術師が作ったのだが、作り終わった後に魔術を使いすぎて死んでしまった。


 この部屋にはよく人が来るがほとんどの物は精神が壊れるか、怠けるかで寂しさを紛らわす本を見つけられず。中々地下に来るものはいなかった。


 地下に来るには寂しさを紛らわす本を読んでからじゃないと開かない。


 そして地下室に来たのは全員転移者であった。

 そしてワシらはこの本を使った者の記憶や人格がわかるが、なんともまあ皆、清々しいほどの屑であった。


 何の努力のしない者や他人を平気で傷つけるものなど、問題のあるものがこの部屋に着くのだが皆ステータスが低く、音を上げるのが速いので諦めも早い。

 そして力を手に入れる目的は自分の私利私欲の皆しょうもない理由であり、文句しか言わなかったのである。


 まあ冷遇がされているそうだったから心が荒むのがわからなくもなかった。


 そんな中一人の青年が入って来た、彼はひたむきに努力をしている青年であったが、また同じような人間が来たのだと思った。


 しかし何日も徹夜で勉強している様子は他のものとは明らかに違った。そして彼は今まで見てきた中で1番才能のない者である。


 魔法が使えず、体力も筋力もなくこの世界の子供ぐらいの強さであった事に驚いた。そして腐ることが無いのは素直に感心した。


 そして寂しさを紛らわす本を使ったので心を覗いてみると、立花 誠の心の中は虚無であり何もなかったのである。だが所々断片的に性格が見えたが何もわからなかった。


 ワシは不安に思っていたがそんな事は無く彼はひたむきに努力をしていた。


 どんなに厳しく訓練しても弱音を吐かず言うことを聞いていたのだ。


 なぜ彼がこんなに厳しい訓練に耐えられるのか考えてみた所。長い間彼を見続け少しわかったのだが、彼の心の中を支配していたのは死であった。

 つまり死にたくないから頑張っていたのである。


 ワシは死にたくないからと言って努力する人間は1番長続きをすると思っている。

 これはワシが鍛え始めたのもこの世界で生き抜くためだったからだ。


 なので彼の心の奥底では努力しなければ死ぬことをわかっているのだ。

 そして彼はその自分の怠慢な気持ちに恐怖が打ち勝っているからこれほどの努力を出来ている。


 誠にワシの技術を教え込んでいるときはとても楽しかった。彼はドンドンと吸収していくからな。

 こんな感情になれたのは久しぶりであり、気ずいたら心の中に入り込んでいた。


 やはりひたむきに努力をしている人間には引き込まれてしまうな。


 そして何より短い時間ではあったが次第に孫の様に思えていた。それぐらい情が湧いてしまったようだ。


 誠の行く末を見守りたいとは思ったがどうやらそろそろ魔力が尽きて、今回で最後になりそうだ、わしの夢はもういいが彼には幸せになってほしいなと思った。


 『爺さんもおいたもんだぜ。わざと口調を若者風にしてよ。』


 『それは別人格と思わせるためじゃ。

 途中で気づかれたら術が解けてしまうのはお前も知っているであろう。

 そしてお前も年老いているじゃろ。だが、年にはかなわんな』


 『だがいいのか爺さん、天人族を倒さなくて。』


 『確かにワシの夢をかなえられないのは悲しいが、若い青年に押し付けるのは酷であろう。さらにもう時間もない。』


 『……………わかった。』


 沈黙が続く。言いたいこともあるだろうが納得はしてくれたようだ。


 『すまないな、こうするしかないんじゃ。なので刀・鎧・絵本を与えようと思う。』


 『良いのかあの絵本は思い出が詰まっているんじゃないのか?』


 『大切にしてくれているようじゃからな。いいんじゃ。大切にしてくれたほうがこの本も喜ぶだろう。』


 時々絵本を眺めていることもあった。


 誠の心は読めないが根が良いのは確かだ。

 悪用はされないだろうと思い。装備を託す。そして腐ってもいないのであろう。


 『そろそろ老人たちは去る時じゃな。今までご苦労であった。』


 『ふん、爺さんこそな。』


 それが最後の会話だった。最後に誠はワシらのお願いを断っており彼らしいと感じられた。


 この装備をどう使うかは彼次第だから、どう運命を切り開いていくかが楽しみである。


 そしてドアが吹き飛び、ここでワシの意識は消えた。

 次に目が覚めることは無かったが、最後にお疲れさまでしたと聞こえた気がした。皆すまないな。

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