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アスペルガー京大博士エッセイ集

斬新!我が姉のインスタ

作者: 小島 剛

 昨今、フェイスブックやインスタグラムなど云いて、写真に簡単な説明文を入れ、皆に見せるというのが流行っている。人それぞれ色々見せたい物があるようで、大抵の人は写メで撮った写真を、のっけて見せびらかしている。子供の写真を撮ったり、ペットの写真を撮ったり、新しく買った商品の写真を撮ったりなど様々である。

 

 いろいろ自慢したい物が人それぞれあるものだなあ、と感心しないでもない。だが、どうにも不条理を感じざるを得ないのが食べ物のインスタで、これが実に多い。「どこそこの名店でなになにを食べた」などのことだ。


 私のフェイスブック上のタイムライン上にもそのような写真が散見される。それについて文句を垂れるわけではないが、次のような疑問がわく。

 「お待たせしましたー。〇〇の××煮ですー」

 「お待たせしましたー。〇〇の入った××炒めですー」

 などと言って料理を持ってこられたら、

 「わー、うまそー」

 と言ってすぐ食べないだろうか?


 それを現代の世に生きる世人は、

 「わー、うまそー」

 の次に何をするのかと思えば、自分の尻のポケットやハンドバッグの中から携帯電話を取り出し、ご丁寧に写メを撮ってから、さて、いただきます、とくる訳であろう。それも「インスタ映え」など云いて、味わう以前に見せびらかすことを前提で、ご丁寧に「イイ写真」をわざわざに撮ってから、これを食すのである。


 メシの食い方などヒトそれぞれであるから、これはこれで良しとしよう。だが、わが父を開祖とし、東京大空襲を生き延びたことをルーツとする児島家では、そのような悠長な行動形態は存在を許されようはずがない。戦後の飢え、DDT、「ギヴ・ミー・チョコレート」を実際に体験しているのだ。


 「お待たせしましたー、○○の××風ナニナニですー」

 「さーて、インスタに乗っけるから写真撮ろうかね」

 「あ、なにそれ、食べないの?じゃ、アタシ食べるね、バク」

 「……」


 となるのがオチだ。

 要するに、我が家では


 「お待たせしましたー、○○の××風ナニナニですー」

 「おっしゃー、来たでえ」

 「食えーーーー!!!」


 なのである。飯出た、即食らう。理にかなっているであろうが。世人のごとくワンテンポ遅れた行動など不要。


 そんなわけで私は今に至るもメシの写真は撮らないのであるが、姉も人の子、写メを送って寄すようになった。

 たいていは自分の息子、つまり私の甥っ子の写真でほのぼのしている。だが、最近妙な写真が来た。

 汚れた皿の写真が連続しているのである。その上に使った後の割り箸などが置いてある。

 「ん、何だこりゃと思ってキャプションを見ると」


 「近所の中華料理屋に行ったよー、おいしかった」


 とあるではないか。やりやがったな、と思った。物事は何につけても合理的に処理する姉のこと、「写メ撮り」と「食えーーーーー!!!」を同時にやったのだ。つまり、食った後の写真をわざわざにインスタに乗せて送ってよこしたのである。

 「……この発想はなかったなァー」

 と感心させられる。写真を見てみると満腹でご満悦の甥っ子の写真が。

 「さすがうちの姉、世間の斜め2段上行ってるな…」

 と思わざるを得なかった。

 凡庸なる世人にはこの発想はあるまい。


 だが、食い終わりの汚れた皿の写真がこちらのPCに退蔵されるのはやや耐え難い。

 

 「表現形態の斬新なること比類ないが、少しは人の迷惑も考えよ、わが姉」と思わざるを得なかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 素敵なお姉さんですね!
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