狐の愛 声劇台本
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舞台 山の中のお社
登場人物 少年 14歳
狐の女 約300歳
女 19歳(少年の6年後。狐と同役)
登場人物表
少年♂:
狐の女(兼役女)♀:
少年ナレーション 今の時代、どこにでもいるようないじめられっこ。友達もいない僕は自殺を決意し、山の中に入った。縄に首を掛けようとした僕を止めたのは、巫女さんのような恰好をした、狐の耳がついた不思議な女性だった
少 狐の姉ちゃん!遊びに来たよ!!
狐 お主、また来たのか。来ても特に面白いものはないだろうといつも言っておるじゃろ
少 いいんだよ。狐の姉ちゃんに会いに来てるんだから
狐 そう言ってもう二年経つのかのう、お主、本当に飽きないもんじゃのお
少 もうそんなだっけ?
狐 ちょうど今片付けをしていたところでな。お主との写真が出てきてのお
少 本当?確か狐の姉ちゃんと会ってすぐ撮ったんだよね?
狐 まさか本当に撮れるとは思わなかったのお。わらわ、仮にも神仏の類なんじゃが
少 いいじゃん綺麗に撮れてるよ。狐の姉ちゃん
狐 わらわは常に美しいのじゃ。そこをはき違えるでない
少 はいはい。ところで、なんで片付けなんてしてたの?いっつも参拝客なんて俺しかいないから別にいいって汚いまんまじゃん
狐 まったく、細かいことよく覚えておる。実はな、そろそろこの社を去って父上のところに帰ろうかと思っててのう。準備をしとったのじゃ
少 え?
狐 社に来るのもお前さんだけじゃからのお。神仏としての力が弱まっとるし、父上からも帰ってきて結婚でもしろと言われとるのじゃ
少 そんな、嫌だよ!そしたら俺、また独りぼっちになっちゃうじゃないか
狐 そんなこと言われてもの、友達作れとしか言えん
少 無理だよ。俺、小学校どころか中学でもいじめられてんだよ。俺の話相手狐の姉ちゃんしかいないんだよ。それに……
狐 それに?
少 二年も一緒にいるのに、狐の姉ちゃんの本当の名前聞いてないんだよ。社に書いてある名前も狐大明神とかくっそ適当な名前だし
狐 適当は余計じゃ。それに、それは前も言ったじゃろ。わらわたち妖怪とも神ともつかぬものは、本当の名前は家族にしか教えられないとな
少 じゃあ、俺、狐の姉ちゃんの家族になる!
狐 ん?……はあ!?
少 狐の姉ちゃんが俺の家族になればいいんでしょ?俺と家族になろうよ!
狐 お主、意味が分かって言っておるのか?
少 俺には狐の姉ちゃんしかいないんだよ。家族にすら相手されてないのに、狐の姉ちゃんまでいなくなったら……
狐 はあ、とはいえの、わらわ、別にお主と結婚したところで力が戻るわけじゃないしのお
少 じゃあ、どうすればいいの?
狐 そうじゃのお……そうじゃ!お主、これから参拝客を増やしてくれぬかの?
少 え?
狐 かつてのように参拝客が増えれば、わらわの力も戻るじゃろう。わらわのために参拝客を呼んでくれるかの?
少 何言ってるんだよ!俺皆に嫌われてるんだよ。無理だよ
狐 そうじゃのお。確かに今のままだと言葉に説得力が無い
少 説得力?
狐 人をこの社に連れてこれるよう丸め込める力、まあ要は勉強して頭良くなれってことじゃ
少 なんだよそれ。俺が落ちこぼれなの知ってるだろ
狐 わらわを娶りたいという男が、そんな弱腰でいいのかのお
少 うう……わかったよ。どうすればいいの?
狐 とりあえず、人間が頭を良くするには、良き学校に入る事じゃ。そうじゃのお。開明高校とかどうかの?
少 えー!開明高校って一番頭いいとこじゃん!
狐 わらわを、娶りたいんじゃろ。今が四月じゃからお主の受験まであと一年か。今から頑張ればなんとかなるじゃろ。なあに、わらわたちの寿命は長い。父上にも頼んでやるから、頑張りなさい
少 わかったよ。良い高校はいって、勉強して人を連れてこれるようになるから、それまで待ってて
狐 ああ約束じゃ
少ナ それから一年。決意を固めて、勉強を続けた俺は見事開明高校に合格して、狐の姉ちゃんに報告に来た。そのはずだった。
少 狐の姉ちゃん!やったよ!俺!合格したよ!……え?
狐 遅かったのお
少 なんでそんな荷物背負ってるの?
狐 タイムリミットじゃ。わらわの力もそろそろ限界でのお。父上からせかされた
少 そんな!これからなのに!!
狐 まあでも合格したなら大丈夫じゃ。開明高校ほど頭のいいところはいじめもないらしいし、きっとお主にも友達ができるじゃろ
少 ……ねえ、まさかそれが狙いだったの?初めから俺が狐の姉ちゃんと別れられるようにあんなこと言ったの?
狐 ……随分と察しが良くなったのお。勉強の成果が出ておるわ
少 誤魔化さないで!こんなのあんまりだよ!俺、狐の姉ちゃんのためだけに頑張ってきたのに……いかないで、頼むよ
狐 すまない。でもな、分かっておくれ。わらわとお主が一緒になることは出来ないんじゃ
少 なんで
狐 わらわの寿命が長い話はしたな。でも、具体的に何歳かは今まで言ってなかったじゃろ?わらわはおおよそ三百歳じゃ。お主とは年の取り方が違う。わらわは、お主においていかれたくはない
少 なんで、じゃあなんで黙ってたんだよ
狐 恥ずかしい話じゃが、……お主に絆されてしまったのじゃ
少 どういうこと?
狐 愛しておる。お主の幸せを願うほどにな
少 俺も、俺も狐の姉ちゃんの事……
狐 言うな。言われたら、終われなくなる。でも、これだけは約束しよう。お主はきっと、幸せになれる。誰かのために努力することを知ったのじゃから
少 なんだよそれ。わかんないよ
狐 今は分からなくてよい。それじゃあの
少 まって!最後に狐の姉ちゃんの名前を教えて!
狐 それは教えられぬ。未来の夫に捧げるものじゃからな。その代わり、お主が本当に幸せになれる時会いに行く、それまで幸せになれるように、生きてくれるかの?
少 わかったよ。絶対、会いに来てね
少ナ それから何年か過ぎた。俺はというと結局、狐の姉ちゃんの言うとおり、友達もでき、充実した毎日を送っている。狐の姉ちゃんのことも忘れかけていた。でも、何かが足りない。そんな日々を送っていたそんなある日
女 先輩!もしよろしければ私と付き合ってください!
少 え、えっと……
女 きゃ!
少 どうしたの?
女 今足もとにふわふわしたものが!
少 ああ、狐だ。この辺田舎だから出るんだよね……あれ?狐……?
女 どうしました?
少 あは、はははははは
女 先輩?
少 まさか、こんなダイレクトに来るとは……
女 あの、笑いすぎでは?
少 ああ、ごめんごめん。いいよ。付き合おう。
女 本当ですか!?
少 ああ、俺らはどうやら、狐大明神に祝福されてるみたいだからね……そういう事でいいんだよね。狐の姉ちゃん