表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暗闘・プリンセスチェリー  作者: 伊藤むねお
6/65

居酒屋

 恵比寿は少し酔いが醒めたようである。

「主任には?」

「聞いてみたかってか?」

「はあ」

「阿呆。ンなことでけるわけないやろ」

「できませんよね。あの人、個人的な話題は徹底して無視するし怖いものナ。ほら、筒井もいたろ。来たばかりの神崎所長がラボにいた俺たちのところにきて、伊能君、バスケの同好会がなんとかといったらさ」

「覚えてますよう。返事もせずにさっさとどこかにいっちゃって。亘理課長、真っ青でしたよ」

「あれもあれでええの。伊能さんの善意や」

「主任。バスケ、うまいんですか」

 恵比寿が聞いた。

「なんてもんやない。インターハイを制覇したスーパースターだ。ゼミでその当時のスポーツ新聞を持っているやつがいてみせてもらったよ。一面にバンだ。けどこれもいうたらあかんぜ」

 へえ、と恵比寿と筒井は酔いがすっかり醒めた顔になった。

「ここに配属されたその日やったな。仕事の合間になにげなくその話をしたら、がんと一発やられたよ、あの目で。ここはそういう話をするところじゃない。それで一回戦敗退、あと終わり」

「うっへえ。痛烈」

「また踏切の話にもどるが、俺がひっかかったのは、その死んだ二人というのがマル暴の男どもだったということや。な? 仲間がかんかんになって押した人間が誰かと大騒ぎをするはずだろう?」

「何にもなかったんですか」

「らしい。してみると騒いだ連中も仲間のマル暴だったということになるやろ。せやろ?」

 恵比寿と筒井はうなずいた。

「集団?・・・なんか変ですよね」

 筒井が赤い顔を真顔にしていった。

「筒井、今のはほんまにこれやで」

 千崎は唇に人差し指を当てて見せた。

「そうだよ。赤門の坊や。口の軽いのはここじゃ村八分にされるよう」

「大岡山閥なんですね、主任とおふたりは。うちは他にも多いものな」

 おうそれはいい、と恵比寿は割り箸で塩辛の入った小鉢をぴんと叩いた。

「千崎先輩、それ作ろうじゃないですか」

「ええかもな。他にも亘理、柴本、ミセス国見に本多・・・七人か」

「もうひとり、エントロピー阿部。ピーちゃんで八人ですね。どうだい。赤門勢も閥を作れば」

「うちは少ないですからね。ええと、・・・」

 千崎は、そのやりとりを聞きながらまたひと口コップを煽ると、独り言のようにつぶやいた。

「お嬢が今晩首なし死体にぶつからなければええのやが・・・」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ