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暗闘・プリンセスチェリー  作者: 伊藤むねお
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刺客

(これまでやっきた刺客の内で五人ほどが鬘などを使って変装していた。それで、もしやと思うのだが、鳥井、どう思う)

(劇団、俳優、女優・・・なるほど。それは確かめておいた方がよさそうだな)

 劇団員確保に伊能が加わり、その姿を見せて山崎か他の団員の反応をみるのだ。鳥井も伊能以上に人の反応を観る才能がある。

 木枯らしが吹く頃になると必ずやってくる刺客。


 上京してからの十五年間、つまり仙台の晩秋で遠山と接触した翌年からずうっと、伊能は刺客に襲われてきた。刺客は一人のときもあれば数人の場合もあった。伊能はその都度襲撃をかわし、時には刺客を返り討ちにしてきた。つまり、十五年間、伊能は命を賭けたゲームに、最近はそう思うことにしていた、勝ち続けて生きている。

 伊能は十五年前に遠山と接触し、貴重な情報を遠山に与えて警察は勝った。伊能は報復は警察にではなく俺に来るだろうと思った。それが正解だった。

 ひとつの疑問がある。伊能も背後から拳銃で撃たれたらどうしようもない。暴力団でも違法拳銃を持っている。しかし、黒幕は十五年、銃を使わない刺客を送ってきた。刺客は凶悪犯罪だが、なんとなくフェアが大事なような黒幕だと。それもまた伊織の想像だが・・・

 そのことは無二の友となった鳥井だけには告げた。

 遠山や佐野は伊能に毎年刺客がやっていることを知らない。なぜなら伊能が報せていないからである。伊能は遠山に電話をした時から報復がやってくるかもしれないという予感があった。もしも来るのならその始末は自分の手でつけると決心していた。自分のことを秘して欲しいと頼む以上それが当然と考えた。二十歳前の青年の決心としてはありうべからざるものだが、伊能はそのことを悲壮には思わなかった。

 やってやる。こい!

 シューズの紐を締め直してコートに最初の一歩を踏み出すときのあの壮快な血の騒ぎを覚える。

 犯罪情報が集まる警察の中枢にいる遠山もそれを知らなかった。伊能が教えてくれなかったからというだけではない。この奇怪な暗闘がひとつも警察のDBに記録されていない。

 ターゲットとなった伊能が襲撃現場から素早く姿を消す。やむなく警察から事情を聞かれも、伊能は命拾いをした幸運な人であり、乗客であり見学者にすぎなかった、という判断でDBに記されることはなかったのである。

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