表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暗闘・プリンセスチェリー  作者: 伊藤むねお
PR
37/65

結界と化粧

二十二時、榊が大勢の先輩刑事らと共に本部にもどってきた。

「お疲れ。どうだった」

「はい。今日だけでもこれだけ取れました。ご覧下さい」

 榊の声が弾んでいた。


[証言A](男性、二十八才、会社員)。

 事件のあった電車です。豊洲から池袋まで行きます。いつも大体はあの時間です。乗るときは先頭車両の真ん中に乗るんです。丁度弁護士さんが倒れていた辺りですよね。事件のあった日ですが来た電車を見るともう座席にかなり人がいました。なにか有明などでイベントがあってその為かと思いました。まあ、ところどころは隙間があったので座ろうと思えばそこでもよかったんですが、うしろをみたら、そっちの方はがらがらと空いてたもんで一番後ろの扉から入ってそっちに座りました。気兼ねしながら人の間にケツを入れるよりはね。どの道すぐに両側には誰か座るんだけど先住者の優越感が束の間だけ味わえるんで。座らせてアゲルなんて。若い女の子が乗ってきたらぐっと空けてやったりして(笑い)。みんなワリカシそうなんじゃありませんか。事件のことですか? なにも特にはいうことがないので名乗り出ませんでした。

 ・質問(篠原)有明といいましたがディズニーランドとは思いませんでしたか。

 そんなに深い意味でいったわけではないのですが、仮に子どもとか子ども連れとかが一杯だったらそう思ったかもしれません。なんか、そうじゃなかったですね。大人でしたよ、たいてい。だからそういったのかも。


[証言B](男性、三十六歳、会社員)。

 まちがいなくコロシが有った電車ですよ。豊洲から飯田橋まで行くのですが八割方はあの電車のあの場所です。大抵は座れるのですがあの日は少し乗客が多かったですね。まばらに空席はありましたが同僚とふたりでしたので後ろに回りました。有明なんかでイベントがあればそういうこともあります。乗っていた人にはこれといって記憶がありません。

 ・質問(井ノ原)まばらというのは?

 ところどころ空いている状景です。


[証言C](女性、二十五才、会社員)。

 辰巳から乗って桜田門でおりました。一緒に乗った友人から次の日に聞きましたので事件のあった電車だったことは知ってました。いつもはもう少し早いのですが乗るときはほとんど先頭車両の中央です。空いてるから。知ってますか? 新木場駅ってJRや臨海線への乗り換えが後ろでしょ。だから先頭は空いてるのよ。でも運転室ぺったりの場所は事故のときに危なそうでしょう。だから心持ち離れて中央なの。で、あの日も楽に座れると思ってたら座席はあらかた塞がってたので次の車両に移りました。そこは大分まだ座席が空いてましたから。とくにはなにも気がつきませんでした。

 ・質問(山脇)塞がっていたその状況と塞いでいた連中になにか不自然なものはなかったですか。

 いえ、それはなかったと思います。


「証言D](女性、二十九才、会社員)。

 月島から東池袋までゆきます。いつも先頭車両です。いつも座りません。がらがらに空いていれば別ですけれど人とくっつくのがいやですから。端が空いていれば別ですけど。でもみんな同じように思うみたいでそこはまず空いてないから。それで真ん中辺りのドアから乗ろうとしたのですが、端の吊革に掴まって赤い顔をした二人連れが大声で話していたので、ずっとうしろの方にいきました。だっていやじゃないですか。酔ってるんですよ。お酒臭かったし。

 ・質問(宮田)ふたりはどういう人ですか。

 典型的なサラリーマンという感じだったわね。似たような黒っぽいスーツとコートを着て。年は三十代だったように思いますけど、よく見たわけでもありませんので顔などは覚えてません。


[証言E](男性、五十五才、会社員)。

 銀座一丁目から和光市までです。いつも先頭電車の中央あたりです。もう座席は空いてませんが、永田町で座れる可能性が高いからです。座りたいですよ。地下鉄というのはみんな各駅だからね、和光市までなんか駅いくつかな、結構あるからね。ええ、事件のあった電車です。あれから家に帰るのに苦労しましたよ。殺された人の事務所があるビル知ってますよ。私の職場なんかすぐそばだから。顔は知らないな。あの日は一丁目のホームに下りたら四、五人ほど若い学生風の男がもう並んでましたね。思えばその弁護士さんはあの中にいたのかもね。だから一番うしろの扉に移動しました。電車の中でもちゃんとした位置にいないと永田町だって座れないからね。

 ・質問(岩田)中央付近で立って大声で話している酔った人をみてませんか。

 いえ、気がつきませんでした。そこから乗れば気がついたかもしれませんが。ま、いてもわたしは気にしませんよ。それにしても、いつもの場所に乗ってたらどうなったんでしょうね。怖いですな。


[証言F](女性、三十六才、楽器店店員)。

 有楽町から川越までゆきます。永田町で座れることが多いのでいつも先頭車両です。一番前の扉付近はもう一杯ですから、少し下がって中央の扉から乗るんです。でも、そこももう吊革も塞がっていて。吊革に掴まっていないと前の人がおりても座る権利がありませんから、あきらめて一番後ろの扉から乗りました。事件のことは永田町で下ろされてから知りましたが、特にお役に立つようなことも知りませんでしたので申告しませんでした。

 ・質問(時田)酔っぱらいや学生の集団などには気がつきませんでしたか。

 酔っぱらいはいましたね。サラリーマン風の人じゃなかったかしらねえ。扉が開いた途端に酒臭くて、そう、後ろに移ったのはそれもあったわね。


[証言G](男性、十五才、中学生)。

 新富町から護国寺までゆくつもりでした。塾の関係でいつもこの時間ですが、大抵は先頭車両に乗ります。でも、なんというか結界が張ってあるみたいで入りづらくて二両目に乗ってしまいました。

 ・質問(小野塚)SF愛好なのですね。

 はい。扉の窓越しにべたりと人相の悪い人がふたりも見えて。なんだか気味が悪くてうしろの車両にまわってしまいました。

 ・質問(同右)その人相言えますか。

 若い男性で趣味の悪いサングラスを掛けて、あ、それから化粧してたんじゃないかな。

 ・質問(同右)化粧? 男がかい?

 ええ、なんか変装してるって感じで。こんな三十センチくらいの距離からみたから。ゲロゲロっていう感じで。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ