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『私は愛した人を殺します』ご感想ありがとうございました!

1話は短編版と全く同じものです。

夜、静かな王城の廊下に1人の靴音が響く。

白いマントを風になびかせ、優雅に歩いているのは、このグリフォノーラ王国の第一王子、アラン・グリフォノーラ。

そしてそれを中庭の木陰から用心深く見つめるのが暗殺者である私、ララ・マイラーだ。


「ターゲットを確認。これより作戦に移る」

「「「了解」」」


出来るだけ小さな声で仲間に指示を出す。

17歳という若さだが、これでも私は一個世帯を引っ張っていけるほどの実力者だ。


まあ、そんな天才児の私、実は前世を覚えているんです。てへっ!

だから、この今いる世界が乙女ゲームの世界だってことも知ってますよー!




前世の私は、それはそれは乙女ゲームという乙女ゲームをこよなく愛していたどこにでもいる普通(?)の女子高校生でありました。

特に王国をテーマにした乙女ゲームの攻略キャラ、第一王子のアラン・グリフォノーラという人物は、私の最愛の人といえるほど愛していました!

ですから、この世界が乙女ゲームの世界だと気付いた時、私は死ぬほど喜びました!泣きじゃくりました!



しかし、私が生まれてしまった家は、裏社会で有名な暗殺組織の長の家。しかも、ヒロインが選択を間違えた時に毎度、人を殺しに出てくる暗殺者は、うちの組織の連中なのですよ!?

どうせだったらヒロインに生まれて、アラン様とラブラブな毎日を過ごしたかった……………。



今、此処に私がいるってことは、ヒロインが選択を間違えた証拠。

ヒロインは王子ルートを選んだのですか。……憎たらしい!

アラン様ではなくてヒロインを殺したくなりました。はい。


というか、実を言いますと私、

「暗殺なんて面倒臭い。てか、したくない、とか思ってる?」

「はい、そうなんですよ〜」


よかった〜。気持ちを分かってくれる人がいた!

………………あれ?


ばっと後ろを振り返る。すぐ近くに整った顔の満面の笑みが………いえ、何も見ていません。

自分の体を見下ろす。何か巻き付いてる〜。腕ですね〜。頑丈なしっかりした腕ですね。ペチペチッ。…………あ、あれ?取れない。


「ははっ。その反応可愛いねぇ〜」


ど、どうしよう。………どうしよーーー!!


鼓動は、破裂してしまうのではないかと疑ってしまうくらい高なっており、顔からは血の気がサッと消える。


オワターー!!!


気付かぬ間に、私は後ろからアラン様にギュッと強く抱き締められ、吐息がかかるくらい近くで耳元に言葉を囁かれています。


「ねぇ、凄く鼓動が早くなってるよ?そんなにこれ、好き?」

「っ!もごもごもごー!(いちいち囁くなー!)」


あまりの破壊力に持っていた銃を落としてしまう。

叫ぼうとする私の口をアラン様の大きな手が塞ぐ。


「コラコラ、人来ちゃう………って来ちゃったじゃん」

「殿下?こんな時間にこんな所でどうなされましたか?」


遠くから誰かがかけてくる。

私の叫び声で駆けつけたのは、夜の見回りをしていたメイドだった。

アラン様は立ち上がると、私の手を引き立ち上がらせ、自らのマントに私を隠した。


「!?」

「俺に抱きついててね。それと、じっとしてて」


混乱する頭は使いものにならない。だめだこりゃ。

仕方なく、私は言われるがままアラン様に抱きつく。めっちゃいい臭いです。


発狂したい。


「あら?殿下、この方は?」

「!?」

「気にしないでくれ。俺の恋人だよ」

「こ、恋人……」


恋人………。

一瞬で顔が熱くなる。耳や首まで熱を感じるので、今、絶対茹でだこっぽくなっていると思う。


「うん、そう。皆には内緒、ね?」

「ひっ、は、はいぃ!」


短い悲鳴を残して足音が遠ざかっていく。




さっき、ちょっとアラン様の声が低くなって、威圧を感じた。怒ってる?怒ったアラン様はゲームでも見たことない。

知りたい。


ひょこっとマントから顔を出し、アラン様を見上げる。それに気付いたアラン様は、いつもと同じ優しい笑みを向けてくる。


「ん?どうしたの?」

「アラン様、怒ってる?」


小首を傾げながら尋ねると、アラン様は何か思いついたようで、いたずらっぽい笑顔が近づいてきた。


「ララが俺のものになってくれたら教えてあげる」

「は、はひ!?な、なんで私の名前を?」

「あれ?覚えてない?」


腰に腕を廻され、引き付けられる。

コツンとおでこがぶつかる。うわわーー!!!近いよ!!む、胸がぁぁぁ!!


「昔、よく一緒に遊んだじゃん」

「あわわわ」


混乱し過ぎて何も考えられなくなった私は、力が抜ける。

それをアラン様は支え、今度は柔らかそうな唇が近付いてくる。




前は、アラン様は画面の向こうにいた。

だから、こんなことをしてみたいなとか夢に見ていたけれど、…………リアルはヤバかった。


「ララ………」


パンッ


愛おしそうに彼が私の名前を読んだ直後、銃声が鳴った。

アラン様はそれをかわす。アラン様を狙ったということは、私の仲間だろう。


そんなことをボヤッと思っていると、突然、後ろから腕を引かれた。


「ララ!大丈夫?」

「ぐれぃらぁ〜」

「ラ、ララ!?ちっ、これじゃあ歩けそうにないな……」


体に力が入らない、舌も上手くまわらない私を、仲間のグレイが横抱きにする。

そのまま、ワイヤーで1番低い屋根に登り、他の仲間と合流する。


「今回は撤退だ」

「「了解」」

「ねぇ、俺のララ返してよ」


アラン様のさっきと同じ低い声が聞こえる。


「お前、こいつはお前を殺そうとする暗殺者だぞ?」



あ、そうだった。私は暗殺者で、アラン様を殺さなくてはいけない。

もう、夢見る女子高校生であってはいけないんだ。



「んー、殺されてはいないけど、俺はもう彼女に心を奪われてしまったよ?」


にこっとアラン様は笑う。


「アラン様」

「ん?なあに、ララ?」

「私は貴方を殺します。それが務めですから」


「………うん、そっか。楽しみにしてる」


一瞬、アラン様が寂しそうにみえたが、直ぐにいつもの優しい笑みになる。気のせいか。


「じゃあ、またね」

「はい、おやすみなさい」

閲覧ありがとうございました!

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