6.もふもふしよう
小さな町で俺たちを待ち伏せしていた国王側近の男にウオを保護してもらえないかと頼んだ
この町に入った時から町人たちはウオを人を殺すような目で見ながらこそこそと陰口をしていた
ここにウオを保護してもらおうと思っていたがこの様子ではウオの身が危ないと思い、王国で俺たちが戻るまで保護してもらおうと考えた
しかし、側近はそれを拒んだ
側近はウオを見ると悪巧みをしているかのような笑みを浮かべながら
「そちらの少年は非常に魔力が高い、もしかすると王国最強の最上級魔術師より…いやそれ以上の魔術師だ」
「彼を今日から勇者御一行魔術師として向かい入れることにした、これは決定事項である」
等と、小さな少年をこれから恐ろしい魔王の巣で魔物たちの血肉を肉体に浴びてこいと側近はまるでこれで世界が救われると言っているかのような顔で俺たちを見下す
…そんなことはない、小さな子どもにそんな血生臭いことをさせて世界が救われたとしても
ウオは永遠に今まで奪ってきた魔物たちの血肉の匂いを己の体から漂わせ、魔物というなの生物を殺したという罪悪感に圧し殺されるかもしれない
何故、ただ魔力が高いというだけで小さな子どもを行かせてしまう…何故、俺はこの非道なただ権力があるだけの男の言うことに従ってしまうのだろう…
「…くそっ!」
町の宿の中、俺の横で安らかに眠るウオの隣で己の愚かさを呪った
◇◇◇◇◇◇
「みてみてー!ナナセくんからもらったの!」
「なんだなんだ?なにをもらったんだ?」
「あら?あのナナセがプレゼント??ウオちゃんと大切にしなさいよー」
僕たちはいま、まちのお家でフカフカベッドでねたあとまちからでてまたまたながーいながーいみちをあるいてまーす!
あるいているとナナセくんが僕にペンダントという首にかざる小さくてキレイなくさりで出来たわっか
をくれました
わっかの先には僕の手にすっぽりと入るくらいの大きさのピカピカ光る白い貝がらが一枚ありました
「この貝殻の色合いと輝きがウオの髪にそっくりだったからつい買ってしまった…」
とナナセくんは僕にこのペンダントをくれました
もーこの時の僕はお顔真っ赤っかですよ!
ナナセくんみたいに格好いい人になりたいなー
「大好きなナナセからもらったんだろ?
大切にしなよ?」
「うん!」
ギウロさんに頭グリグリされていた時だった
ギウロさんのうしろにもこもこの大きなわんわんが歩いていた
「わんわん!!」
わんわんだー!おっきいなぁ
でも、わんわんは森のなかに入っていっちゃった
もふもふしたいなーダメダメ森はきけん!でも…もふもふもふもふ…もふ
「まってー!」
もふもふのゆうわくに負けた僕はわんわんのあとを追うように森のなかに入った
「こら!まて!!」
後ろからギウロさんのどなり声が凄かったけど
◇◇◇◇◇◇◇
ギウロの話によると
ウオは突然何かを見つけたかのように森のなかに入ってしまったらしい、さらにこの森は群れで生息する魔物が多く潜むと有名な森だ
急いで探すべく、俺たちは森のなかに入った時だった
リリットが歩きながらあることを呟いたのだ
「呪い…」
「なんだ?」
「ううん、なんでもない」
「何かあるだろ、言え」
いつもの言うことはズバズバ言うリリットが珍しく言葉を濁らせていた
俺が言うように命令すると彼女は下を向きながら話す
「うん…わかったウオさ、もしかしたら呪いがかかってるのかもしれない」
「ボウズに呪い?」
ギウロがシワを寄せながらリリットに問いかけると彼女は目線を横にずらしながら答える
「そう、ずっと不思議だったの…どんな場面でも陽気にしてて、体は確かに小さいけど喋り方がそれよりも幼すぎるし、この前の町でも周りから嫌な目で見られてるのに手なんか振ってて…それで私ウオになにかついていると思って調べてみたの」
「聖女の加護か?」
勇者御一行の聖女であるリリットには聖女の加護を身に付けられている
人にかけられた呪いがどのようなものか、誰が付けたのかを認識することができるそしてそれを解くこともできるものだ
「ウオには何故かウオの血筋では無いけどウオのよく知る女がかけた呪いが付いていたの」
「よく知る女?」
…誰か身内の女が裏切ったのか?
「その呪いが…」
「おい!ウオだ!!」
リリットの声が掻き消されるほどの大声でレオは目の前にあるものを指を指しながら叫ぶ
目線をそちらに向けるとそこには地面に座っているウオの姿があった
「ウオ!」
「もう…心配したんだら…」
「そうだぞみ…」
俺たちがウオに歩み寄り、初めて知る
ウオの周囲にある異常な何かを
「僕ね、今わんわんのもふもふをもふもふしてるのーナナセくんもリリットさんもレオさんもギウロさんもいっしょにやろー」
陽気な声で俺たちを誘うウオ
彼の手には獣の毛皮があったが、それだけではなかった
毛だけではない、その獣は頭がウオの隣でダラダラと血を流しながらこちらを血走った瞳で見つめていた
そう、彼の周囲にはこの森に生息している四足魔物たちの残骸が土、花、草を赤黒く染めながら散らばっていたが彼の周囲から透き通った水の塊が浮遊しながら現れた
その水は魔物の残骸に覆い被さるとみるみるうちに残骸は溶け、水となっていった
「あ、わんわんたち帰っちゃった」
どんどん魔物たちが水となっているなか彼の残念そうな声とリリットの小言が聞こえた
「…辛いこと、怖いことを全てうれしいものに変える呪いよ」