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勇者伝承魔王伝  作者: 善信
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第一話 其の三 能天気達の現状確認

少し馬鹿馬鹿しい雰囲気の今回です。

「…と、まぁ、そういう訳なんだ」

ロッシュの前に座る四人は黙って耳をかたむけていた。現状を説明するために、はじめから語ったが、どうやら理解してもらえたようである。

ちなみに現在、誰がどうなっているかといえば、


ロッシュの幼なじみで親友、多彩な武器を操る戦士の青年ギョウブは、全身を重厚な鎧で覆った下半身が馬の姿の人馬族に。


風の術式を得意とし、大気や魔力の流れす術に組み込む凄腕魔術師の少女アセリアは、炎の魔術を扱う赤い髪の魔族の女性に。


自然を友とし植物などを使役する少女、自然魔術師ドルイドのリシュリンは、魔獣の骨などを加工したであろう仮面や杖を持った小柄な死霊魔術師ネクロマンサーに。


罠の解除やアイテム鑑定も行える盗賊にして暗殺者のスキルを持つ、猫をイメージさせる女性のシィランは、妖艶ながら背中に黒と黄色の斑模様が印象的な四本の複腕を持った土蜘蛛と呼ばれる妖族の女に。


見事なくらい人間離れした面々になった一行は、合わせたように全員がため息をついた。

「…しかし、この体もだが、俺達が戦っていたのが弱小『魔王』とはな…」

兜で見えないが、なんとも言えない表情をしているであろうギョウブが呟く。


「しかもワタクシ達まで魔族の肉体ですもの、ああ、困りましたわ…」

あまり人間変わらない見た目ではあるが、アセリアは困った困ったと呟きながら、身悶えするように体を左右に振る。その度に、豊かな胸の双丘がたゆんたゆんと揺れるが、口調とは裏腹に表情には喜びがうっすら滲んでいた。


(…そういえば、人間の体の時にアセリアは胸の小ささをリシュリンにからかわれてたっけ)

アセリアの様子に思いあたる所があったロッシュは、そのリシュリンに目を向ける。

「ん…。これか…。むっ…」

怪しげな仮面を外そうと四苦八苦していたリシュリンが、ようやく止め金部分を見つけたらしく、もぞもぞと仮面を取る。


「ぷはっ…」

「おおっ…」

仮面の下から表れたリシュリンの姿に皆が思わず声をあげる。

魔族特有の病的とも言える白すぎる肌に、左の頬から首筋にかけて刺青のような刻印はあるが、癖っ毛のようにくるくると巻かれている銀髪や、ぱっちりとした目付きは愛らしい少女としか言いようがない。


「あらら、前も可愛らしかったけど、今も可愛らしくなったねぇ」

リシュリンやアセリアにとって姉のような存在のシィランが、思わずリシュリンを抱きしめる。

さらにアセリアも抱き寄せるシィランの、妹達を愛でるような表情は姿形が変わってもまったく同じものだった。


「…みんな、姿は変わったけど大丈夫そうで良かったよ」

「…残念ながら、そうでもないようだ」

ロッシュの言葉にギョウブが含みを持った言葉で返す。

「なにかあったのか?」

「うむ…人馬族の肉体というのにまだ慣れないというのもあるが…それより、ロッシュは仮面の下の姿を確認しなくていいのか?」


言われてロッシュはハッとした。弱小とはいえ『魔王』である。どんな怪物じみた姿をしているか、わかったものではない。

「確かに…確認しなきゃな」

「うむ、俺も…」

ロッシュは仮面を、ギョウブは兜を外しはじめる。


少し緊張しながらロッシュが仮面を外すと、いつの間にかこちらを注視していた女性陣から「おおっ…」という反応が返ってきた。

「ロッシュさん、これを…」

どこにあったのか、アセリアから渡された手鏡を恐る恐る覗きこむ。と、そこに写っていたのは、リシュリンとは別の意味で魔族特有と言える青い肌。さらに額から伸びる一本の角はあるが、なんとも優しげな雰囲気を持つ青年といった姿だった。


「おお…とりあえずは普通で良かった…」

「というか、普通すぎですわ…」

「『魔王』にしては迫力無さすぎ…」

「うん…だから仮面なんか着けてたのかな…」

パッと見、優男なこの外見では『魔王』としての威厳に欠けるというのも理解できる。


「それで、ギョウブの方はどうなの?」

シィランの言葉に、全員の視線がギョウブに向かう。

「…ふぅ」

外した兜の下から表れたのは、肩位まであるサラサラした金髪を揺らす、中性的な整った顔つきだった。

「へぇ、結構いい男じゃない」

「いや、それがな…」

なにやら煮え切らない感じで、ギョウブはそのまま鎧も外しにかかる。


やがて、胴体部分の鎧を外したその時、

ぶるん!といった音が聞こえそうな勢いで弾んだ二つの柔らかそうな球体が、インナーの下からでもわかるくらい、ギョウブの胸で自己主張していた。

「どうやらこの人馬族、女だったらしい…」


「……………………………ええええっ!!!」

一瞬の沈黙。しかし、次の瞬間、ロッシュ達の驚愕の声が玉座の間に響いた!

「な、なんですの、その胸は!ほ、本物ですのっ?」

「ああ、本物だ」

動揺するアセリアに、自身の胸を揉みながらギョウブが答える。

「む、胸を揉むのはおやめなさい!はしたないですわよ!」

「そうはいうがな…男にとって自由にしていい胸があれば、とりあえず揉むのは本能なんだ。なぁ、ロッシュ?」

「え?あ、うん…」

急に話を振られて、思わず頷くロッシュ。

「な、なんです!ロッシュさんまで!」

「おお…すごい…」

「いやぁ、これは負けたわねぇ」

「リシュリンさん!シィランさん!」

いつの間にかギョウブの胸を揉んでいたリシュリンとシィランに、アセリアの矛先が向く。


「まぁまぁ、そう狼狽えないで。試しに揉んでみたら?」

「え、あっ…」

シィランに手を引かれ、そのままギョウブの胸に触れる。

「わ…す、すごい…」

手のひらから伝わるなんとも心地好い感触に、思わずアセリアも感嘆の声を漏らしてしまった。

「いやぁ、これだけ気持ちいい揉み心地はめったにないねぇ。ある意味凶器だわぁ」

「ズルいぞ…ギョウブ…」

「ん…そんな事を言われても…なぁ…」

「あらあら…まぁまぁ…」

ひたすらギョウブの胸を揉む女性陣。

(なんだろう、この状況…)

まさか混ぜてくれとも言えず、ロッシュは一人、疎外感を味わうのであった。

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