第二話 其の六 上位魔族との攻防・前
ほとんど無防備にダラリと立つラルド。
攻撃に備え、斬り込む隙を狙うロッシュ。
それでも、先手を取ったのはラルドだった!
ゴウン!
重い金属音が響く!
電光石火の勢いで繰り出されたラルドの拳を、ギョウブは辛うじて盾で受け止めていた。しかし、盾は大きくへこみ、ギョウブも体勢を崩す。
「お?」
攻撃を防がれた事に心底、意外といった表情のラルド。そこへロッシュが斬りかかる!
ギィン!
またも激しい金属音!
無手にもかかわらず、ラルドはロッシュの剣撃を止めていた。
「おおおおおっ!」
「お?お?」
初手は止められたが、構うものかと次々に剣を振るうロッシュ!術式を使う余裕も隙も無かったが、【電撃剣】の能力を発動させ、身体能力を上昇させる。
体に雷を纏わせながら、徐々に鋭さを増していくロッシュの攻撃に、ラルドは驚き、そして笑った!
「こっちからも行くぞ…」
受けに廻っていたラルドが反撃を始める。
受け!捌き!かわし!弾き!
突き!薙ぎ!斬り上げ!斬り込む!
嵐のような剣撃と拳撃の渦の中で、それでもロッシュとラルドはお互いに有効打を入れる事が出来ずにいた。
「っ!」
ラルドの一撃をわずかに捌き損ね、ロッシュがほんの少し体勢を崩した。
その隙を逃がすまいとラルドが迫る!が、その動きが、ガクンと止まる。いつの間にかリシュリンによって操作された魔界の植物が、ラルドの足首に絡み付いていた。
「あ?」
ラルドが動きを止めた次の瞬間、獲物を締め上げる大蛇のごとく、ラルドの足首から這い上がってくる植物!
「鬱陶しい!」
締め付けてくる植物を引きちぎるラルド。その意識が、一瞬だけそちらに逸れる。
その隙を突いて、ギョウブが砲弾のごとく突撃してきた!
ロッシュとラルドが攻防を繰り広げていた時、へこんだ盾を捨てて、ギョウブは一撃で仕止めるべく狙いを定め続けていた。
そして、ラルドがリシュリンの植物に気を取られたその時、溜めていた力を解放し、蹴り足で床を破壊しながらラルドへ突進する!
ラルドの腹に大穴を空けんと迫るギョウブの一撃を、それでも右手でいなし、体を捻って辛うじてかわす!
「ぐっ!」
だが完全にはいなし切れず、右手はズタズタなり、胸の肉を抉られる。
「んの野郎!」
交差したため、ラルドに背中を向ける形になったギョウブに攻撃をすべく、左手を振りかぶる!
そこへ、さらなる追撃をかける者がいた!気配を消し、上空に糸で待機していたシィランである!
無音で忍び寄るその両手には、黒刃のダガーが握られ、鋭い爪を持つ四本の複腕がラルドの首を狙い、六方向から振るわれた!
思ったより長くなったので、話を分けます