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残念ナルシ鬼畜守銭奴オネエ剣士は我が道を行く!  作者: 深水晶
3章 コボルトの巣穴 ~ラーヌに忍び寄る影~
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40 終幕

 数日後、《ボナール商会》の商会長と副会長が代替わりした。

 それぞれ高齢と病のためという事だったが、ほぼ同時期だった事もあり、また直前に、その両名をほぼ同時に見掛けなくなったという噂もあり、商会内または親族内での陰謀などによる交代劇が噂された。


 また、それまで素行が悪く、悪名高かった《疾風の白刃》のパーティーメンバー全員が揃って、領兵団に傷害および家屋・店舗などの破壊等の理由により逮捕され、冒険者登録取り消し処分となった。

 ただし、彼らには才能があり、更正の余地もあるという事で、三ヶ月間の禁固刑の後、再教育を受けた後、解放される事となった。


 しかし、冒険者登録が許可される事はなく、例えば領兵団に入団するなどと言った理由以外で、武装を許可される事もないとの事だ。

 また、光神神殿所属の神官は、本人不在のまま査問会となり、追放処分を受けて、無所属となったらしい。


 他に、ラーヌに駐屯する領兵団の幹部や一部兵士による、賄賂や横流しなどの不祥事が発覚し、それらに関わった者達が大量に更迭・降格・減給・除隊などの処分を受け、より悪質だった幾人かが逮捕された。

 なお、兵士の過半数が訓告・厳重注意を食らい、今後の引き締めのため、二隊に分けて交代で全員二週間の講習と三ヶ月の軍事演習を受ける事になったらしい。

 それ以外にも、いくつかの不正取引や犯罪まがいの所業を行っていた悪徳商会が取り潰され、逮捕されたという話である。


「それって、あれか、あのベネディクトってやつ、領兵団に入団しなかったら、飼い殺しって事か?」


 アランが首を傾げて言った。


「新しい商会長は、あいつの叔父に当たる人物らしいが、ベネディクトとその母親の事を毛嫌いしているらしいからな。

 母親の方は、先日、修道院に入ったらしいぞ」


 ダニエルが笑顔で答えた。


「おっさん、やけに詳しいな」


 アランが胡乱げな目でダニエルを見た。ダニエルはスッキリつやつやした顔で答える。


「今、ラーヌの町中、この手の話題で溢れ返ってるぞ。なにせ、町で一番の商会だからな。

 醜聞だってのも多少はあるだろうが、この町の住人にとっては死活問題だからな。

 次に権力を握るのが誰か、あるいは自分がそれに成り代われるかどうかは、重要だ。波に乗り遅れると、大変だからな。

 で、次の予定はどうするって?」


「一応鍛冶屋で、ロランより高い相場でミスリル合金を売る事が出来たから、しばらく資金稼ぎする必要はなさそうだ。

 レオが大瑠璃尾羽鳥を狩りに行きたいとか言ってるぞ。おっさんの都合はどうなんだ?」


「たぶん問題ないと思うんだが、今日一日は待機だな。あ、急遽予定が入ったら、フォロー頼むぞ、アラン」


「おい、守れない約束なら最初からするなよ」


「守るつもりはあるんだぞ。俺も依頼とか仕事とかそういうの関係なく、魔鳥・魔獣をのんびり狩るのも楽しいと思うし。

 でも、そろそろ、補佐のやつが切れそうなんだよなぁ。だけど、俺いなくても仕事は回ってるわけだし、特に問題ねぇと思うんだよなぁ」


「そうかよ。でもあいつ、ものすごく期待してるみたいだから、今度破られたらおっさん、二度とレオの信頼は得られないかもな」


「マジか?」


「俺が冗談や嘘でこんな事言うとでも?」


 真顔で言うアランに、ダニエルはうわぁという顔になった。


「それはヤバイな。わかった、今夜辺り魔道具で定時連絡来るはずだが、その前にとっとと済まそう!」


「一日待機とか言ってなかったか?」


 アランが首を傾げると、ダニエルはハハハと笑った。


「ダオルに見つかるとうるさいから、バレない内にこっそり出るとするか。

 お前ら、確か幌馬車買ってたよな。俺、このまま先に出るから、後で荷物回収して来てくれ。宿のおかみと店主には話しておく」


「それ、夜逃げみたいだな」


 アランが呆れた顔になった。


「ただいま、今、戻ったわ」


 日課の狩りから戻ったレオナールが、修繕された宿の入り口から現れた。


「おう、レオ。詳しくはアランに話を聞いてくれ。俺は、先に町を出て待ってるから。待ち合わせは北門を出たところな! 街道脇で待ってるから」


「え? 何、どうしたの、師匠」


「大瑠璃尾羽鳥狩りに行くんだろ? ダオルや、今回新しく就任した大隊長とかに見つかると面倒な事になるからな。

 あいつらが仕事している間にこっそり出る」


「それ、門を出る時にバレないの?」

 レオナールが首を傾げると、ダニエルがニッコリ笑って答える。


「大丈夫、俺は門を出ないから!」


「それ、別の意味で問題なんじゃ」


 アランが渋面になった。



   ◇◇◇◇◇



「何それ、私関係なくない?」


 ルヴィリアが仏頂面で言った。


「だってまだ、冒険者登録してないし、申請許可待ち中でしょ。行きたかったら、あんた達二人で行けば良い話でしょ」


「ついでだから、事前に戦力確認と。必要なら連携その他を練習しておいた方が良いだろう。

 幸い、ラーヌ北東の森は盗賊でもいない限り、一般人でも歩けるくらいで、それほど強い魔獣は出ないらしい。

 予備の毛布とテントとかがあるから、今回はそれを使ってくれ。

 俺達が一年前に使ってたやつで、俺達には小さいけど一人なら十分使えるはずだ」


「え、何、決定事項なの?」


「うん? ルヴィリア、お前、おっさんと契約したんだろう? 契約解除するなら、受け取った支度金とか違約金払う必要があるんじゃないのか。

 違うのか?」


 アランが怪訝そうに尋ね、ルヴィリアが蒼白になった。


「なっ……なんで、よりによって、あんた達と野営しなくちゃならないの!?」


「ダニエルのおっさんは先に行ったから、あまり待たせるとどうなってもしらねぇぞ。あと、レオと幼竜が乗り気みたいだからな。

 俺は預かった金で宿の精算とか、ギルドその他へ挨拶とかして来るから、その間に、レオと荷造りや馬車への積み込みしておいてくれ。

 あ、ダオルさんに、おっさんの行方聞かれても知らないって答えておいてくれってさ。じゃ、頼んだ」


「えっ!? 何それ! 普通重労働とか、か弱い女の子にやらせないでしょう!?」


「大丈夫だ、問題ない。たぶん俺よりは筋力も体力もありそうだからな。《重量軽減》はともかく《浮遊》くらいは使えるだろう?」


「使えないわよ! 私が使えるのは幻術と精神魔法と闇魔法だけなんだから」


「闇魔法ってどんなのが使えるんだ?」


「一定時間視界を暗くしたり、魔法毒をかけたり、夢を見せたり、過去を思い出させたりよ。

 ほとんど本業の補助にしか使ってないから、荷物運びには向いてないわよ」


「そうか。でも、重い荷物はレオが運ぶから問題ない。俺の荷物とおっさんの部屋の荷物なら、持てるから安心しろ」


 そう告げて、アランは立ち去った。


「ちょっと! この頭おかしい変態と二人きりにしないでよ!!」


「失礼ね」


 レオナールは肩をすくめた。



   ◇◇◇◇◇



 レオナール、アラン、ルヴィリア、ルージュは正規の手段で北門を通り、街道を北進してダニエルと合流すると、馬車をガイアリザードから外して森の入口付近に隠し、荷物を載せ替え森に入った。


 まともな戦闘経験がないというルヴィリア──これまで逃走したり《変装》《隠蔽》などを駆使して隠れたり人込みにまぎれたりして荒事や戦闘を避けてきた──に何ができるかを確認したり、ダニエル指導の下、戦闘訓練や角兎などの低ランク魔獣相手に実戦を繰り返した。


 約束通り、ダニエルが無事大瑠璃尾羽鳥を狩る事に成功したのだが、それをアランが捌いて下ごしらえ中に、ダニエル所有の魔道具に連絡が届いた。


「あちゃー、なるべく現在位置を捕捉されないよう移動しまくったんだがなぁ」


 呻きながら、届いた手紙の封を開け中身に目を通すと、着ていたコートの胸の内ポケットにそれを仕舞った。


「悪ぃ、俺もう戻らないとマズイらしい。このまま王都に帰還するから、お前らは今夜はここで野営して、明日朝一でラーヌへ戻れ。

 ダオルが以前ルヴィリアの借りてた家にいるから、詳しい話を聞いてくれ。ルヴィリアの冒険者登録はロランのが都合良いだろう。

 籍の取得手続きだけラーヌで済ませれば、ロランで入市税は取られないはずだ。他の経費や税はダオルが持ってるから出して貰える」


「師匠、例の報奨金は?」


「忘れてた。ラーヌのギルド受付で話せば受け取れる手筈になっている。ロランで受け取りたい場合はそう言え。

 あ、たぶんコボルトの報酬と前回のゴブリンの追加報酬も受け取れるぞ」


「本当?」

「本当か?」


 レオナールとアランの声が被った。


「ああ、ラーヌでもロランでも受け取れるはずだ。でも無駄遣いすんなよ」


「師匠じゃあるまいし」


「大丈夫だ。俺が見張るから問題ない」


 レオナールはアランを睨んだ。


「何よ、それ」


「お前は時折理解し難い使い方するからな。後から悔やむより、常に見張っていた方が手っ取り早い」


 キッパリ言い放つアランを、レオナールは嫌そうに見た。



   ◇◇◇◇◇



 支払われた報酬は、コボルト討伐および調査が追加報酬込みで大銀貨3枚と銀貨2枚、ゴブリン討伐の追加報酬が金貨3枚であった。


「コボルトの報酬、ショボいわね」


 レオナールがボソリと言った。


「なんなら、ランク不問の報酬良さそうな依頼何か受けて行くか? お前らならオススメいくつかあるんだが」


「それは良い。オススメの鍛冶屋や店の情報教えてくれた方が有り難い」


「なぁ、アラン。お前、何故冒険者になろうと思ったんだ?」


「冒険者としてなら、俺にも出来る事があるとわかったし、レオナールもなりたがったからな。

 でも可能な限り、確実に安全に着実に行きたい。懐もようやくちょっと暖まったからな。

 ところでまた情報屋に会いたいんだが、例の飲食店以外だと何処で連絡が取れる?」


「正直言うと、あの店で待ち伏せるのが一番確実で間違いないんだが、本来の連絡方法教えるか。

 東通りの古物店の店主に俺の紹介だと言って、アントニオと連絡が取りたいと告げれば良い。

 午前中は確実に寝てるし、午後も不定期に出かけたりしてるから、必ずしもすぐに連絡取れるとは限らないが」


「わかった、有り難う」


 そしてレオナールとアランはギルドを出た。


「で、どうするの?」


「お前、ダンジョン行きたいんだろう? しばらく周辺の情報集めたり、使えそうな魔法が書かれた本なんかを売ってたりしないか、探してみるから、お前も装備新調したり研ぎに出すならすれば良い。

 ただし、必ずルヴィリアかダオルさんと一緒に行動しろ。既に頼んであるから、快く引き受けてくれるはずだ」


「快く、ねぇ?」


 褐色の戦士はともかく、白ローブの少女はそうは思えない。最初が悪かった上に、元々レオナールは女性受けが悪いため──もちろん普段の言動と性格のせいである──一対一でまともに会話した事がないような気がする。


「ただ、ルヴィリアは今、アネットさんの家だから、今日はダオルさんに頼めば良いだろう。予定は聞いてあるから問題ない。さ、行くぞ」


「何処へ?」


「ダオルさんのところに決まってるだろ」


 アランの返答に、レオナールは肩をすくめた。


3章・完

なくても良さげな後日談かも。

次はダンジョン探索です。


以下修正

×ただし

○しかし


×でも

○だけど

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