39 乙女心の代償金
後半、具体的な描写はぼかしてありますが、残酷な描写・表現があります。苦手な人はご注意下さい。
領主──セヴィルース伯爵──が派遣した中隊がラーヌへ到着したのは、その日の午後、昼時を過ぎた辺りの事だった。
「んじゃ、これで全員だな。で、本当に俺は何もしなくて良いのか?」
ダニエルがその中隊を率いてきた中隊長に尋ねた。
「ええ。団長曰く、あなたに任せると、どんな小さな火種も大火になる上、被害・損害が甚大になるので、絶対に手を借りるなと厳命されました」
「マジか。相変わらず俺への評価が辛過ぎる上に、口が悪ぃな、あいつ」
ダニエルがぼやくように言った。中隊長は表情を崩す事なく、続ける。
「そして、こちらが我が君から、ダニエル殿へと預かった手紙です。必ず直接手渡しするようにと言付かって参りました」
「了解。確かに受け取ったぞ。ジョスラン殿によろしく言っといてくれ」
「申し訳ありませんが、私は我が君に直接お目通りのかなう身分ではありませんので、了承いたししかねます。
また、差し出がましいようですが、我が君の名を軽々しく口になさるのは、お控えになった方がよろしいかと存じます」
「はーっ、カタいねぇ! そんな事より、今夜あたり親睦を深めに、一緒に飲みに行かねぇか、おい」
「いえ、申し訳ありませんが、任務完了するまでは、そのお誘いをお受けする事は出来かねます故、誠に相済みませんが、またの機会にお願いいたします」
「またの機会っていつだよ?」
「この度のご連絡および、ご協力有り難うございました。また、何かございましたら、是非ご連絡いただければ幸いであります。
お手数お掛けしました。では、これにて失礼いたします。ダニエル殿のご健勝とご多幸を祈ります」
慇懃にそう告げ、一礼すると、中隊長はダニエルから引き取った《疾風の白刃》とチンピラ達を連れ、《旅人達の微睡み》亭を出ると、ラーヌの領兵団の兵舎へと向かった。
「……で、言われた通り、おとなしくするのか?」
引き取りに際して、ダニエルの数歩後ろで無言のまま直立していたダオルが、ダニエルに尋ねた。
「どう思う?」
ダニエルはニヤリと笑った。
「お前がそんな優等生なら、今みたいにはなってない。味方にしても、敵に回しても、厄介過ぎる。
故に常日頃から四方八方より警戒されているわけだからな」
「わかってるなら聞くなよ。さぁて、じゃ、ちょっと出掛けて来るわ」
「彼らに、行き先を聞かれたらどうする?」
「適当に遊びに行ったとでも、言っておいてくれ。それで納得する」
「……気の毒に」
ダオルが顔をしかめて言うと、ダニエルは大仰に肩をすくめた。
「知らなくて良い事は、知らない方が良いだろ? 若者には夢と希望とある程度の自由がないとな!
面倒なしがらみとか、鬱陶しい枷とか、嫌らしい大人の思惑なんぞとは、無縁で良いんだよ。心が汚れちまうからな。
俺はなぁ、子供の喧嘩に親が出るような展開が、一番大っ嫌ぃなんだ。反吐が出るだろ。
あいつらは嫌がるだろうが、あれらに積極的に関わると、俺を敵に回すぞってのは、喧伝しておいた方が良くねぇか?
ラーヌだけの問題じゃなくて、王都や他の地域の連中にも、さ」
「お前が腹黒くておとなげないのは、今更だったな。じゃあ、これだけ言っておく。殺すなよ」
「ハハッ、俺を誰だと思ってんの? このくらいの雑魚相手に、殺したりしねぇよ。それに、生かしておいた方が後々役立つからな。
あ、そうだ。アネット婆さん呼んでおいてくれ。回復魔法使えるなら、他でもかまわねぇんだが、口を封じるのが面倒だからな」
笑って言うダニエルに、ダオルが深い溜息をついた。
「……これが王国一の英雄とか、本当、シュレディール王国の国民が気の毒過ぎる」
◇◇◇◇◇
翌日、レオナールとアランは、ダオル、ルヴィリアと共に冒険者ギルドへと赴いた。
「というわけで、最後に主要通路の天井に《岩の砲弾》を打って崩し、出入り口はレッドドラゴンの幼竜とガイアリザードの体当たりで破壊して塞いだから、魔獣・魔物の住処になったり、盗賊や荒くれ者などの拠点になる可能性は低いだろう。
以上が報告だ。簡単な周辺地図や、コボルトの巣の地図などの補足も報告書の最後の二枚に記してあるので、必要なら確認してくれ。
数が多かったので、討伐部位は持ち帰らなかったが、かまわなかったか?」
「討伐部位があれば、討伐数に応じて報奨金が出る場合もあるんだが、良かったのか?」
ジャコブが尋ねると、アランは肩をすくめた。
「どうせコボルトの報奨金なんか、出ても銅貨数枚くらいだろう? いくら荷物はガイアリザードや幼竜で運べるって言っても、300匹前後の尻尾を切り取って持ち帰るのは、だるいしな。
今回はミスリルゴーレムの残骸があるから、そちらを優先した方が良い。重さはたいしたことないが、かさばり過ぎる」
「まぁ、その通りだな。たぶんうちだと銅貨2~3枚ってとこだ。でも、ミスリルの塊と比べたら、低ランクの討伐部位はどれもカスだろ。
しかし、いくら魔術師がいるとは言え、普通Fランクの新人はミスリルゴーレムなんぞ倒せないぞ? 無事に逃げ帰って来られるかも微妙だ」
「《炎の壁》二発分で倒せるから、魔術師がいないパーティーはきついと思うが、まともな前衛がいる魔術師を含むパーティーなら、何とかなるかもしれない」
「いや、普通のFランクパーティーだと、ストーンゴーレム相手でも一撃で瀕死だからな。魔術師の話じゃないぞ、前衛の戦士の話だからな」
「レオは攻撃受けないからなぁ。今回は、幼竜が《炎の壁》の詠唱完了まで足止めしてくれたし」
アランが言うと、ジャコブだけでなく、ダオルやルヴィリアまで驚いた顔になった。
「えっ、ちょっと! そのレッドドラゴンの幼竜って、どんだけ器用で賢いのよ!!
仮にもドラゴンのくせして、そんなにも従順で細かな指示にも従うわけ!?」
ルヴィリアが大きな声で叫ぶ。ダオルは何も言わないが、ただでさえ真顔だと強面なのが、凶悪なまでのしかめ面になっている。
ジャコブは懐疑的な表情だ。
「幼竜に関しては、俺じゃなくてレオの管轄なんだが、お前、あいつに指示出したのか?」
アランが傍らのレオナールに尋ねると、レオナールは肩をすくめた。
「知らないわ。必要そうな時は指示を出す事もあるけど、あの子、いつも自分で好きに動いてるもの。けっこう賢いのよね。
残念ながら人の使う共通語は話せないから、あの子の言いたい事全てはわからないけど、私の言葉をちゃんと理解してるみたいだし、もしかしたら、私より頭良いかも。
一度教えた事はすぐ覚えるし、自分でどんどん改良するのよね」
「……伝承によると、共通語や古代魔法語を話したり、魔法を使うドラゴンもいるらしいからな」
アランが半ば呻くような声で言った。
「なぁ、アラン、レオナール。それ、真偽の方はともかく、人には話さない方が良いと思うぞ」
ジャコブが低い声で言った。
「え?」
キョトンとしたアランに、ジャコブは渋面で告げる。
「それが本当だとしたら、その幼竜をさらおうと考える連中も現れかねないからな」
「えっ、だって、幼竜とは言え、レッドドラゴンだぞ?
あいつ、どういうわけかレオの言う事は素直に聞き従っているが、他のやつの言葉なんか聞いているかどうかも怪しいぞ。少なくとも今朝は俺の言う事には従わず無視しやがったからな。
あいつが従うのも、甘えてみせるのも、レオ相手だけだ。
あいつに体当たりされたら、どんなやつでも吹っ飛ばされて、全身骨折だぞ。
その辺のチンピラや盗賊なんぞ、命があれば不幸中の幸いってとこだな」
「ところが、ドラゴンなんてのは、眉唾だという連中もいるからな」
ジャコブが溜息ついて言うと、アランは眉をひそめた。
「あいつがドラゴンか否かなんて、見ればすぐわかるだろう?」
「それがわからないのもいるんだよ。あるいは、見ても理解したくない、あるいは出来ない連中がな。だから、くれぐれも気を付けろ。
今回は念のために、個室取っておいて良かったよ。あんな事の後だから、十分過ぎるくらい注意した方が良い」
「え、何? あんた達、何かやらかしたの?」
ルヴィリアが嫌そうな顔で言った。アランは溜息をついて、肩をすくめた。
レオナールは相変わらず話を全く聞いてないし、答えたり反応したりする気配もない。
ジャコブは苦笑し、ダオルは黙って見つめるだけだ。
「ちょっとな。とりあえず一通り済んで後始末だけだが、それは俺達には関係ない。
適当に処理してくれるって話だから、安心したいところなんだが、な」
「それ、宿の入り口に大穴が出来てたのと関係ある?」
ルヴィリアがレオナールとアランを睨むような顔で、尋ねた。
「おい、アラン! お前、もしかして……っ」
ジャコブが慌てたような顔になった。
「俺じゃないぞ、やったのは幼竜だ。一応止めたんだぞ、聞きはしなかったが」
アランが慌てて答えると、ジャコブが渋面になった。
「じゃあ、レオナールか?」
「いや、あれは幼竜がレオナールのそばに駆け寄ったせい、だと思う」
「だと思う? どういう意味だ」
「誰も指示は出してないが、レオが使い慣れた武器じゃなくて、攻めあぐねてたのを見て、駆け付けたんだと思う。
入り口壊して中に入ると、一直線にレオの所へ向かったからな。ついでに相手を跳ね飛ばしたが。あれはたぶん事故だった、と思う」
「おい、アラン」
ジャコブが仏頂面になった。
「思う、思うって、それ、半ば現実逃避してないか、おい。お前、本気でそう思ってるのか?」
「……そう思いたいんだ、勘弁してくれ。あの幼竜に関しては、正直俺だって頭痛い事ばかりなんだよ!
できれば存在そのものも認めたくないが、目の前にいるんだから、仕方ない。
でも、かなうものなら、あれを勘定に入れたくないし、せめて俺の指示に従うなら良いが、よりによってレオの言う事しか聞かない上に、自己判断して勝手に行動するとか、どうすりゃ良いんだ!!
しかも、あいつの戦闘スタイル、レオそっくりの猪突猛進なんだぞ!?
そりゃ、もしかしたら、レオよりは頭良いかもしれないが、だからといって、それの何が救いになるって言うんだよ!!
どうせ俺の言う事なんか聞きゃしないし、レオが俺の指示に必ずしも従うわけじゃないから、下手すると俺を置いてきぼりで一人と一匹で突撃するに決まってるんだ! クソっ!!」
怒濤のように嘆き叫ぶアランに、ジャコブが一瞬唖然とした顔になり、その隣のレオナールに視線を移したが、素知らぬ顔である。
次いで、二人の背後に立つダオルに視線を向けると、ダオルは無言で首を左右に振った。
更に救いを求めるような表情で、アランを挟んで逆の隣に座るルヴィリアに視線を向けたが、ルヴィリアは大きく溜息をついて瞑目し、ポンとアランの肩を叩いた。
途端に、アランがハッと正気に返った。
「ああ、すまない。少々取り乱した」
頭を下げて言うアランに、少々?とレオナールを除く全員が内心首を傾げたが、暗黙の了解でそれには触れずに流す事にしたようである。
代わりに生暖かい視線を向けているが。
「おい、レオ。頼むから、あの幼竜に、町中では問題起こさないように言ってくれ」
「ねぇ、アラン。確かにあの子、私の言う事は聞いてくれるけど、その都度言わないと、たぶんわからないわよ?」
レオナールの言葉に、アランが一瞬硬直した。
「素直な良い子だから、一度言えばわかってくれるけどね」
レオナールがそう付け足すと、アランが渋面になった。
「そうだな。その点はお前より賢いよな」
「そうね。きっとあの子、私が覚えてない事も覚えてそうだわ。本当、人の言葉が話せたら良いのに。そしたら、今よりもっと便利よね」
「……そうだな、嫌味が全く通じないお前よりはな」
若干眉を下げて、アランが小さく呟いた。
◇◇◇◇◇
「そう言えば、おっさんは何やってるんだ? 昨日の午後から姿見ないけど」
冒険者ギルドを出たところでアランが言うと、ダオルが答えた。
「遊びに行くと言って出掛けてそれきりだな」
それを聞いて、アランは大仰に肩をすくめた。
「相変わらずテキトーでマイペースだな、あのおっさん。俺はこれから必要なもの買いに行こうと思うけど、どうする?
出来ればレオには、護衛兼荷物持ちで着いてきて欲しいんだが」
「別に良いわよ。今日のところは特に予定もないし」
アランの言葉に、レオナールが頷きながら答える。
「私はどうしようかしら。本業の方の仕事にしに出掛けても良いけど、なんかやる気出ないのよね。買い物したくてもあまり手持ちはないし」
それは使いすぎなのではないのだろうか、とアランは思ったが、レオナール相手ならば説教するところだが、関知するところではないため、特に反応しなかった。
「おれも荷物持ち手伝おうか?」
「それは助かるが、ダオルさんは何かする事ないのか? 何か仕事があるなら、そちらを優先して貰ってかまわないんだが」
「なくは無いが、急ぎでもない。それに、護衛と荷物持ちは多い方が良いだろう」
ダオルの返答に、アランは頷き、ダオルにも着いてきて貰う事にした。
「私は借家に戻れば良いのかしら。まだ暫くは使ってても良いのよね?」
ルヴィリアが言うと、ダオルが頷いて言った。
「ああ、交渉・契約が完了するまでは問題ない。特に何もないとは思うが、身辺には気を付けろ。
念のため、《旅人達の微睡み》亭で《偽装》《隠蔽》を掛けてから移動した方が良いだろう」
「わかったわ。ご忠告有り難う。でも《旅人達の微睡み》亭だとちょっと遠回りなのよね。
適当な店か人気のなさそうな場所で掛けてからにするわ」
「大丈夫か?」
アランが尋ねると、ルヴィリアは胸を張ってフフンとばかりの顔で答える。
「ご心配なく。別に面倒事や厄介事には、不慣れってわけじゃないのよ。
腕っ節に自信があるってわけじゃないけど、逃げ隠れするのは得意で慣れてるの。
ウザいやつに付きまとわれた事も、一度や二度じゃないしね」
「そうか。気を付けて帰れよ。知り合いの遺体はあんまり見たいもんじゃないからな」
アランが言うと、ルヴィリアは顔をしかめた。
「余計なお世話よ! じゃあね」
そう言うと、ルヴィリアは一番近い路地を折れ、足早に歩き去った。
「アランって、時折お節介よね。それとも、一応可愛い女の子だから?」
レオナールが揶揄するように言うと、アランは軽く肩をすくめた。
「そういうわけじゃねぇよ。おっさんが戻って来る前に、彼女が死体になったら、最悪俺達が確認する羽目になるだろう?
面倒臭いし、まだ知り合いって程の仲でもないから、惨殺死体確認しろとか言われても、それが本人かどうかわかるはずねぇだろ。
顔だって宿でチラッとしか見てないんだから」
「ああ、それは確かに困るわよね。でも、わざわざ私たちに確認しろって言って来るかしら?
だって、私たちと彼女のつながりなんか知ってるの、ジャコブや師匠や宿の人だけでしょう。
どうせ身元不明で適当に処理されるから、問題ないわ。実際、冒険者登録もまだだもの」
「それもそうか。じゃあ、別にどうでも良いか。後はあれだな、後味悪くなるだけの話だ」
レオナールとアランの会話に、ダオルが僅かにピクリと眉を上げたが、口は開かず、無言で彼らの会話を聞いていた。
「で、宿の裏通りだったかしら?」
「ああ。薬屋と雑貨屋、あと出来たら鍛冶屋かな。他は急ぎじゃないから、いつでも良い」
「了解」
レオナールとアランが並んで歩き、ダオルがそれに数歩遅れて続く。
ダオルはわずかに思案する顔になったが、声には出さず、周囲に注意を払いながら歩いて行く。
◇◇◇◇◇
「えっ、ちょっと、何これ……っ!」
ルヴィリアが思わず悲鳴のような声で叫んだ。
「おう、お帰り。思ったより早かったな」
ダニエルが背中を向けたまま、左手を挙げてヒラヒラと振った。
慌てて駆け寄ったルヴィリアが、大振りのダガーを右手に握って作業にいそしむダニエルに駆け寄った。
「ちょっと! 人の家の庭を、勝手に汚さないでよね!?」
「いやいや、もうお前の家じゃないからな」
ダニエルの言葉に、ルヴィリアが愕然とした表情になった。
「……何ですってぇ!?」
「あ、別にしばらくここで住んでても良いぞ。ちょっとうるさいかもしれないが、すぐ終わらせるから。
あー、たぶん今夜中には終わると思うから、安心しろ」
「あ、あ、安心しろって、ちょっ、やだっ、やめてよ! あのねっ、ここ、狭くてボロいけど、一応私、気に入ったから契約したんだけどっ!!」
ルヴィリアが泣きそうな顔でダニエルの腕にしがみつき、ガクガクと揺さぶった。
「おいおい、利き手はやめろよ、利き手は。手元が狂ったらどうする気だ」
「この腹黒×××が! 乙女の小さい夢を、希望を、どうしてくれんのよ!! クソ××が!!」
「年頃の女が臆面もなく、そういう言葉を大声で口にしない方が良いと思うぞ。嫁に貰ってくれる男がいなくなるぞ?
アネット婆さんみたいに、一生行かず後家で過ごしたいなら、それでも良いけどな」
「本人の目の前で、相変わらず失礼な男だね。だから、恋人の一人もまともに捕まえられないんだよ」
「うるせーな。それは今、関係ねぇだろ。それより、ほら、回復魔法頼む」
「本当、人を人とも思わぬ男だね。私ゃあんたの召使いじゃないんだよ」
「だから、報酬は払うって言ってるだろ。
……っていうか、こいつら、別に《混沌神の信奉者》と繋がりがあるわけじゃなかったんだなぁ。折角、手掛かりあるかと思って張り切ったのに」
「あんたもずいぶん面倒な事に関わってるみたいだね」
「んー、なんか色々成り行きでな」
「あんたが成り行きや行き当たりばったり以外で、何かする事があるのかい?」
「失礼な。色々あるよ、当たり前だろ」
「どうだかねぇ。どうせ怪しいところは、虱潰しに潰せば良いと思ってやしないかい?」
アネットの言葉に、ダニエルは大仰に肩をすくめ、少女を振り払うと、右手のダガーの汚れを拭った。
「それはあるけど、手掛かりがろくにないから仕方ない。全部終わる頃には、キレイになってるだろ」
「壊しすぎて、大穴だらけになってそうな気がするけどね」
「無視しないでよぉーっ!! 死ねっ! この腹黒鬼畜ド腐れ野郎っ!!」
「あー、わかった、わかった。で、俺にどうしろって?」
「乙女の心を著しく傷付け悲しませた、慰謝料を払って貰うわ! とりあえず金貨30枚くらいで!!」
「……お前の乙女心って、金で買えるんだな」
ダニエルが呆れたように言った。
ルヴィリア嫌われそうだな、と思いつつ。
一応メインではなくサポートキャラの予定ですが。




