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残念ナルシ鬼畜守銭奴オネエ剣士は我が道を行く!  作者: 深水晶
3章 コボルトの巣穴 ~ラーヌに忍び寄る影~
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38 剣士は逃走を諦める

 小柄で痩身、中性的な容貌の銀髪蒼眼の白ローブの少女が、ジットリと睨み付けている。

 この世の全てが己の敵だと言わんばかりに、警戒心バリバリである。アランが大きく溜息をついた。


「で? おっさん、何て言って、この子を騙くらかしたんだ?」


「え、何だよ、アラン。そのいかにも俺が悪いみたいな言い方。騙してはないぞ。まぁ、わざと伏せた内容があったのは事実だが。

 だって本当の事正直に言ったら、断られて逃げられるだろう? 手付金先に渡しておけば、あとは良いように運ぶだろうと思っただけだ」


「手付金?」


 ダニエルの言葉にアランが疑問に思いながら、ルヴィリアの方へ視線を向けると、不機嫌そうな表情で、ボソリと呟くように言った。


「仕方ないでしょ。お金はほぼ全額持ち出して来たけど、衣類は全部置いてきちゃったんだもの。こっちで生活するなら、必要でしょ。

 お金って入って来る時は控えめなのに、出て行く時はあっという間なの! 私のせいじゃないわ! 持って来たお金の大半は借家代に消えちゃったのよ。

 別に自力で稼げないわけじゃないわよ。でもこの町って、稼ぎはショボいくせに、ショバ代やらみかじめ料やら仲介料やらいう名目で、やたらと経費がかかるのよ」


「えっ……、それ、騙されてないか?」


 アランが言うと、ルヴィリアが大きく目を見開いた。


「何ですって?」


「ああ、いや、俺もこの町の事は良く知らないから、もしかしたらあんたの言う通りなのかもしれないが、だとしたら、この町で新しく商売始めた連中のほとんどが借金まみれって事になるんじゃないか?

 でも、そういった話は聞いた事なかったから、どうなんだろうと不思議に思っただけだ」


 アランの言葉に、ルヴィリアがしばし呆然とし、クルリとダニエルの方を見た。


「いや、俺もラーヌの事は良く知らねぇよ。そういうのは、元からここに住んでるやつに聞くべきだろ?

 なんなら、幻術なしの今の状態で、宿のおかみか主人に聞いてみればどうだ? 実年齢より幼く見えるから、快く教えて貰えるだろう」


「……そうする」


 ルヴィリアは不機嫌そうながら、頷いた。そんな少女にニヤリと笑いながら、ダニエルが言った。


「あ、それと、その借家、俺が交渉して買い取っても良いぞ? 実物見てから判断させて貰うけどな」


「本当!?」


 途端に、キラリと瞳を輝かせ、満面の笑みを浮かべた。


「……あれはお金大好き、って顔に書いてあるわね」


「おい、余計な事言うな」


 レオナールがボソリと呟き、アランが慌てて相方の脇腹を小突いて、低く小さな声で返す。

 幸いルヴィリアには聞こえなかったらしく、目をキラキラと輝かせ、ウットリとした笑みを浮かべている。


「あまり広いとは言い難いし、古くてぼろいけど、こじんまりした庭があって、余裕が出来たら薬草とか植えて育てたいとか思ってたのよね。

 できればいくつか改修したい箇所もあるし、家具なんかも揃えたいと思ってたのよね。あと、これが一番大事なんだけど……」


「おい、なんか借家買い取る以上の内容に、勝手に改変されてないか?」


 ダニエルが額に冷や汗を浮かべた。


「人間の脳って面白いわよね。妄想も現実と思えちゃう辺り、すごいわよね」


 レオナールが半ば感心したように言うと、アランは首を左右に振った。


「いや、そういうもんじゃないだろう。でも、あれ、きっと人の話聞かないタイプだな。

 たまにああいうおばちゃんいるよな、見た目普通そうなのに」


「他人の金を使う事や、出してもらう事に躊躇ってものがないのが、末恐ろしいわ」


「お前はああなっちゃ駄目だからな、レオ」


 真顔で言うアランに、レオナールは頷いた。


「大丈夫よ、安心して。相手から差し出して来たら貰うけど、言われない内から請求した事はないわよ、今のところ」


「本当かよ?」


「本当だってば。私が何も言わなくても、相手が勝手に、どうぞこれで許して下さいって財布差し出して来るのよ。どうも金を出したら、私に許して貰えるって勘違いしてるみたい。

 どうせ、その場で別れたら、相手の顔なんて覚えてないのにね。もちろん貰える物は貰うし、金はあるに越した事ないから嬉しいけど。

 いちいち誰にどれだけ貰ったとか、わざわざ覚えてないからムダなのに、不思議よね」


「お前、本当、それ、心当たりないのか?」


「うーん、ワインか何かを頭から掛けられて、下ろし立ての服を汚されてムカついたから、弁償代払わせた事があったからかしらねぇ?

 あれ、ロランで初めて自分で稼いだ金で買った服だったと思うけど」


「あー、それ、なんか記憶あるぞ。あの時、夕食中断させられて、お前ものすごくキレてただろ。

 一口も手をつけてないシチューとソテーの皿をひっくり返されたせいだと思うが」


「そこまで詳しくは覚えてないわね。覚えてないって事は、たいした事なかったんだと思うけど」


「……覚えてないって便利な魔法の呪文だよな」


 アランは深い溜息をついた。


「とにかくだな! ルヴィリア、必要経費なら出してもかまわないが、不要なものには出さないからな! そこまで酔狂じゃないぞ」


 ダニエルがキッパリ言い切ると、ルヴィリアは夢から醒めたような顔になった。


「……そう言えば、昨夜の条件、あなたが目を掛けてる青年二人の支援を暫くして欲しいって話だったけど、この人達、私とそう変わらない年齢な上に、たぶん冒険者か何かよね?

 私、せっかくここで落ち着けそうだと思ってたんだけど、まさか四六時中彼らについて回れとか言わないわよね?」


 ルヴィリアの言葉に、レオナールがプッと吹き出し、アランが渋面になった。


「おい、おっさん。まさか必要最低限の話もしてないのか?」


 その質問に、ダニエルが笑顔で答えた。


「ああ、ルヴィリア。一応言っておくが、こいつらロランを本拠地にしてる冒険者だから、その借家は俺らの仮の拠点として使わせて貰おうと思うが、お前の家にはならないぞ」


「なんですってぇ!? ちょっと、それ、どういう事よっ!!」


「報酬は払うし、希望するなら平民としての籍も用意してやる。初年度の人頭税も負担して良い。

 代わりに冒険者登録して、こいつらとパーティー組んでもらう」


「きっ、聞いてないんだけど!?」


「おう、今初めて言った。良く考えたら、俺の伝手で現在冒険者登録していなくて、Fランク冒険者になれそうなやつっていなかったんだわ、ハハッ」


「おい、おっさん、俺達も初耳なんだが」


「一応レオには先に言ったが、」


「おい、レオ!」


 アランがギロリとレオナールを睨む。レオナールは肩をすくめた。


「つい昨日の話だし、本命は盾になる戦士で、最悪でも戦闘時に挑発とか支援ができる遊撃役って話だったわよ。

 でも、それ、使えるの? 少なくとも盾は無理よね?」


 レオナールが言うと、ダニエルが頷いた。


「運動能力に関しては、アランよりはマシって程度だが、幻術と精神魔法が得意なようだからな。

 あと闇魔法も使うんだよな? 人相手だとある程度魔法抵抗あるやつには、幻術と精神魔法は効きづらいが、低ランクの魔獣・魔物相手なら問題ない。

 攻撃魔法はあまり持ってないみたいだが、代わりに投擲が使えるし、白兵よりそっちの方が使い物になるだろう。アランの盾にはならないが、《認識阻害》や《知覚減衰》があるからな。

 効きさえすれば、かなり強味になる魔法だ」


「なるほど」


 アランが頷いた。


「えっ、ちょっと、よりによって、こいつらと組ませるつもり!? あ、えと、黒髪の人はまだ良いわよ、少しは常識ありそうだし。

 でも、こいつ、金髪の方! どう見てもおかしいでしょ、こいつ!! こんなのと一緒に行動するなんて、どんな目に遭わされるか、わかったものじゃないわ!?

 だってこんな華奢でか弱い乙女に、面と向かって、斬れるかどうか試したいとか抜かしたのよ!?

 こんなド腐れ×××野郎といたら、命がいくつあっても足りないわっ!!」


 ルヴィリアが大きな声で甲高く叫んだ。


「下品ね」


 レオナールが眉をひそめて言うと、ルヴィリアが心外な、と言わんばかりの表情になった。


「あんたにだけは言われたくないわよ、このキ○ガイ! 絶対、あんた、何回か人殺してるし、数え切れないくらい斬ってるわよね!?

 そんな殺人・戦闘狂相手に、どうやって身を守れってのよ!! この変態××野郎に近付かない以上の護身はないでしょう!?」


 キャンキャン叫ぶルヴィリアに、レオナールが両耳を手で塞いで、顔をしかめた。


「なんか、これ、うるさい。小人族も相当だったけど、それ以上にうるさい上に、やけに頭に響く声だわ。アラン、何とか黙らせてよ」


「無茶振りすんなよ、レオ。だいたい、お前がバカな事言うからだろう。叫ばれるのが嫌なら、自分で謝れ。

 じゃないと、顔を合わせる度にこれだぞ?」


「私が謝れば、どうにかなるの?」


「知らねぇよ、俺に聞くなよ。なあ、レオ。お前、そろそろ暴力と力尽く以外の手段で、物事解決すること覚えろよな。

 人の言葉って、半分はそのためにあるようなもんなんだからな」


 これはアランの説教が始まりそうだ、と悟ったレオナールが席を立ち、クルリと背を向けようとした。


「おい、待て。逃げるな、レオ。せめて彼女に謝ってからにしろ」


 アランがすかさずレオナールの上衣の裾を掴んで引き留めた。レオナールはやれやれと言わんばかりに肩をすくめ、溜息をついて、向き直る。


「ごめんなさいね、ちょっとしたいたずら心と悪気はあったけど、軽い興味と好奇心で、どうしても斬りたいわけじゃないから、もうやらないわ。

 悪かったわね。安心して良いわよ」


 口調だけは神妙に、胸を張って、眉根を若干寄せて言ったレオナールの言葉に、アランがパカリと口を開き、ルヴィリアの眉間に深い皺が寄る。

 ダニエルがあちゃーという顔になった。


「地獄に落ちろっ! クソ×××野郎!!」


 ルヴィリアが叫んで、駆け出した。一直線に宿の外へ向かう少女の背を見送って、ダニエルが立ち上がる。


「んじゃ、俺、ちょっと追い掛けて宥めて来るわ」


 そう言って、少女の後を追った。レオナールはどう、やったわよ、とばかりにアランを振り返る。


「……お前、本気でバカだろう……」


 アランがポツリと呟いた。


「え? 言われた通り、謝ったわよ?」


「あれの何処が謝罪だよ。あの言い方じゃ、挑発してるか、喧嘩売ってるとしか思えないだろう」


「そうなの? 難しいわね」


 レオナールが首を傾げた。アランが渋面になった。


「おい、レオ。俺がお前に謝る時、あんな言い方してないだろ?」


「それは個人によるんじゃない? 私なりに謝ったつもりだけど」


「お前が謝ったつもりでも、それが相手に通じないなら、謝った事にはならないんだよ!

 結局のところ、謝罪されて許すかどうかは、相手の判断なんだから」


「面倒臭いわね」


 ふぅ、と溜息をつくレオナールに、アランはクラリと頭痛を覚えた。しかし、これはどうにかしないとまずいだろうと判断した。


「よぉし、わかった。俺がお前に、他人様に対する誠意ある謝罪の仕方をみっちり教育してやる」


「え? 何、アラン。私、何かあなたを怒らせるような事した?」


「俺はな、レオ。正直、善良とは言い難いし、自分の利害に関係なければ、他人の事なんかどうでも良いと思うし、必要ないと思えば場合によっては切り捨てるから、冷酷だの冷淡とか言われるのも仕方ないし、結構倫理観は緩い方だと思っている。

 それでもな、やって良い事と、駄目な事の区別くらいはついてるつもりだし、お前もそうだと信じたかったんだが、違うみたいだからな。

 この際、きっちり教育してやらないと、何がどうなるかわからないから、この辺りで締めて矯正しておかないと、まずいよな」


 アランは唇だけに笑みを浮かべ、ギロリとレオナールを睨みながら言い、腕を掴んだ。


「じゃ、部屋へ行こうか、レオ」


「え? なにかあまり良くない予感がするんだけど」


「そうか。人の機微に疎いお前でも、わかっているよな。大丈夫、非力な俺が、お前に危害なんか加えられるはずがないだろう。

 安心して着いて来い。最終的には俺に感謝したくなるはずだから、問題ない。

 お前に《眠りの霧》が効くなら、もっと手っ取り早い方法があるが、仕方ない。ほら、とっとと歩け」


「ちょっと、アラン。何か顔とか口調とか、恐いわよ? ゾワッとするんだけど。ほら、鳥肌が」


「ああ、後で聞いてやるから、話は後な。今、睡眠薬や痺れ薬の手持ちがないんだよ」


「……ねぇ、どうして睡眠薬や痺れ薬の話が出て来るの?」


 レオナールの質問に、アランはニッコリ微笑んだ。


「あまり手間を掛けさせるなよ」


 理由はわからなかったが、逆らってはいけないような気がして、レオナールはとりあえずアランに従う事にした。



   ◇◇◇◇◇



「普通は謝罪したり、礼を言う場合、その理由なんかも言った方が良いと思うんだが、お前の場合、余計な事は言わない方がマシみたいだから、謝る時は『ごめんなさい』、礼を言う時は『ありがとう』で行け。

 っていうかレオ、お前、俺に謝る時はもう少しマシな言い方出来るのに、どうしてああいう言い方になった?」


「アランが謝れと言うから、私なりに謝っただけなんだけど。

 だって《認識阻害》と《知覚減衰》に興味あるのは間違いないけど、別に対象があれである必要はなかったのは確かだもの」


「……お前が自分から望んだわけじゃないのに、俺が謝らせたのが間違いだって事か?」


「面倒くさいし、どうでも良いけど、今は特に斬りたいとは思わないもの。ちょっとした気の迷いだったみたいね。たまにはそういう事もあるわよね」


「自分が悪かったとは、全く思ってないし、何か感じる事もないみたいだな」


「それは当然でしょ。仕方ないわよね。でも、まさか師匠があれと組ませるつもりだとはね。役に立つかしら?」


「レオ、人相手にあれとかそれとかこれとか言わない方が良いぞ。侮辱と取られかねないからな。

 人の場合は、せめてあの人、その人、この人だ。もっとも、そっちもあまり使わない方が好ましいが」


「そうなの?」


「使うなら、あなた、彼、彼女の方が適切だ」


「でも、アランや他の人も使ってるわよね?」


「そうか? それ対象の行為とか何かについてじゃなく言ってたか?

 いずれにせよ、誤解の元になる場合もあるから、使わない方が良いだろうな。俺も気をつける。

 それで、話を戻すがさっきの場合の謝罪は、『ちょっとしたいたずら心と悪気』だの、『軽い興味と好奇心』がどうのとかは言わなくて良い。

 お前の心の中にしまっとけ。言わなくて良い事は言わない方が良い。

 だから『ごめんなさい。どうしても斬りたいわけじゃないから、もう二度とやらない。本当にごめんなさい』あたりにしておけば、より適切だった。


 お前の語彙にない事や、思ってもない事を言えとは言わない。そんな謝罪や礼に意味も意義もないからな。

 思いつかないなら『ごめんなさい』と頭を下げるだけで、だいぶ心象が変わる。

 彼女とどのくらいの期間パーティー組む事になるかわからないが、今の状態のままじゃまずいからな」


「アラン、もしかして彼女とパーティー組んでも良いと考えてるの?」


「どのくらいの技量なのか、実際に実戦で使えるレベルなのかは確認しないとわからないが、おっさんの目にかなうなら、問題ないんじゃないかと思うからな。

 本当は盾が欲しいところだが、最悪ガイアリザードに任せるとしても、《認識阻害》と《知覚減衰》が便利で有効な魔法なのは間違いない。

 効かない相手に対する方策は《鉄壁の盾》で対処すれば、今までより格段に戦闘が楽になるはずだからな。

 魔法は使えば使うほど、詠唱が速くなったり熟練するのは間違いないし、しばらくはランクを上げるつもりはないから、その間に慣れて貰えば良い。

 もちろん盾役や、その他のパーティーメンバーも捜すつもりだが」


「てっきりアランの事だから断ると思ってたわ」


「どういう意味だ。確かに多少問題はありそうだが、仲間として使えそうなら歓迎するぞ。場合や状況によっては、文句は言うかもしれないが」


「あのドワーフがダメで彼女が大丈夫な理由っていったい何? 違いがわからないわ」


「決まってるだろう。あのドワーフは、悪気なくトラブルを呼び込み、理解も反省もしないタイプだ。

 自分が悪かったとは思わない上に、自分の力量の限界がわかってないから、際限がない。

 あれは自分の正義を声高に主張するやつより質が悪い。自分が異物だと自覚して、自分が正しいと思う事をやるからな。

 しかも、何をやらかすか予測がつかない。


 その点、彼女は俗物というか、ある程度理解と常識の範疇に収まっているからな。

 確かにうるさいし騒がしいのは間違いないが、金に弱そうだから、最初は手探りになるだろうが、制御可能なレベルだろう。

 感情も読みやすそうだし、言いたい事ははっきり言うタイプだから、内に溜め込む事もない。

 予測のつきにくい、理解し難い人物よりはマシだ。それにあの分じゃ、たぶんあまり保たないだろう」


「保たないと思うけど、仲間にするの?」


「しばらく保てば十分だ。いないよりはマシだろうしな」


「本当に?」


 レオナールが首を傾げると、アランは苦笑した。


「実際に使ってるところや、戦闘見ないと断言はできないし、確証もないけどな。そんなに期待はしないが、おっさんが勧めるなら悪くはないはずだ。

 正直、パーティーに女の子が混じるとか、トラブルの元になるような気がしなくはないが、本人の前では言えないが、口を開かなければ性別不詳に見えるから、人前、特に冒険者の前でだけ気を付ければ問題ない」


「アランとしてはどうなの? 面倒だとは思わないわけ」


「同じパーティーにレオがいても入ってくれて使えるなら、年齢性別を問うつもりはないが、人格者が入ってくれるとは思えないから、性格・人格に特に問題なければ、それで良い。

 少なくとも普通の範疇には収まりそうだし」


「あれで?」


「あんなもんだろ。若干金に振り回され過ぎな気はするが、年齢的にも流れの自由民で孤児という立場からしても、あれくらい普通だろ。

 変なやつだとは思うが、異常ではない」


「私とは違って?」


 笑って言ったレオナールに、アランが真顔になる。


「レオ」


 咎めるような声。


「何?」


「他のやつは色々言うと思うがな、レオ。俺はお前が異常だとは思ってないぞ。特異だとは思うけどな。

 お前は今、良くも悪くも、今まで経験しなかった新しい事に触れて、日々学習中だ。

 今できないからと言って、将来できないとは思わない。実際、昔はできなかった事ができるようになってるのは事実だからな。


 俺はレオを完全に理解できてるとは言い難いし、これからそうなる自信も正直ないが、お前が困った時や、助けが欲しい時には、必ず助力したいと思っている。

 お前の抱える問題の全てを解決してやるとは言えないが、どんな手段を使っても最悪な状態よりは、いくらかマシな状態にはしてやるから、頼りにならないかもしれないが、一応言うだけ言ってみろ。

 たぶんお前一人で判断するよりはマシだから」


 レオナールは一瞬キョトンとした顔になり、それから苦笑した。


「そうね、その時はそうするわ」


 レオナールがそう答えると、アランは頷いた。


「おっさんがいない時は俺が保護者代わりだからな」


「えーっ、何それ。それほど誕生日が違うわけでもないのに、良く言うわね?」


「たった十数日でも俺がお前より早く生まれたのは間違いないだろ? 文句があるなら、俺の年齢超えてみろ」


「師匠みたいな事言わないでよ」


「おっさんも似たような事言ったのか?」


「そうよ。そういうの屁理屈って言うのよね?」


「屁理屈の範疇になるかどうかは知らないが、年齢や誕生日に関してはただの事実だ。それより、レオ」


「何?」


「お前に足りない語彙と、その使い方について解説してやる」


 レオナールがハッとして立ち上がり、ドアノブを捻ろうとするが、回らない。


「前もって《施錠》をかけた。レオ、こっちへ来て座れ。じゃないと《方形結界》かけるぞ」


「それ、かけたらどうなるの?」


「結界の内側から外に、あるいは外部から内への物理的攻撃は全て弾かれるから、結界の外にあるものは壊せない。移動はできるけどな」


 良い笑顔で言うアランに、レオナールは逃走を諦めた。

ちょっと《疾風の白刃》関連引っ張り過ぎました。

あと3話で今章完了予定です。不要そうなところはガッツリカットしまくりますが。


以下を修正。


×駄目だかなら

○駄目だからな


×サポート

○支援


×ハーフリング

○小人族


×持たない

○保たない


×持てば

○保てば


×みないと

○見ないと

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