24 魔術師は宿で思案する
レオナールとダニエルが、冒険者ギルド内の食堂で昼食を取っている時、アランは宿の部屋で、何度目かの《方形結界》の再詠唱を行い、お茶と干し肉と干した果物とナッツ類をテーブルに並べ、黙々と咀嚼していた。
時折、扉の外や窓の方角から声や音が聞こえて来るが、ほぼ無反応である。
(思ったよりしつこいな。いっそ《眠りの霧》でも掛けてやろうか。でも一応Bランクらしいから、魔法抵抗されると、その後がきついよな。
詠唱はエルフ語で時間短縮できるとは言え、《方形結界》クラスになるとちょっときびしいし。こんな事なら、対人非殺傷用に何か準備しておくべきだったかな。
さっきコボルト用に作っておいた催涙薬は全部使ったし、ドアノブに塗ったかぶれ薬は、投擲には向いてないからなぁ。手持ちの毒や薬や何かで、使えそうなものあったかな。
昨日レオが作ってたみたいな感じで、中に毒か薬仕込んで置いて、当たると散布されるみたいなやつ作れるかも。
ああ、ここに卵があれば良かったのに。あの殻、何気に中身仕込んだ投擲道具作るのに便利だよな。せめて部屋から出られると良いんだが)
陶器でも良いのだが、宿の備品を使うのは問題あるし、手持ちにはない。
扉のそばに一人、窓の外に一人、となるとあと最低一人、または魔術師たちが適切な処置をして復帰した場合、更に三人いるはずだが、残りは何処にいるのだろうか。
《方形結界》は比較的長い時間、物理・魔法による攻撃を弾いたり、無効化する事ができるが、発動している間、中で魔法を使用できないという弊害がある。
詠唱はできるのだが、方形結界の範囲外に効果を及ぼす事ができないため、反撃が出来なくなるのだ。
アランの目論見では、これだけ長い時間騒ぎがあれば、領兵団の衛兵が様子を見に来たり、それを恐れて男達がどこかに去ったり、何らかの動きがあると思っていたのだが、そうはならないようである。
(やっぱ賄賂とかでお目こぼしなのかな。やっぱ腐ってんな、ここの領兵。せめて冒険者の誰かに伝わったりして、間接的でも良いから、レオやダニエルのおっさんに伝わると良いんだが、この分じゃそれも期待出来そうにないからな。
それより、このままじゃ宿屋追い出される羽目になったりしないか、心配になって来た。
《方形結界》って初めて使ったんだが、移動しながら発動可能なのかね。部屋の中で動く分には、問題なさそうなんだが。誰も助けてくれないようなら、冒険者ギルドまで歩くしかねぇのかな。
でも、さすがに間近で攻撃受けながら歩くとか、勘弁して欲しいな。俺は荒事は本当苦手なのに。
やっぱこれ、レオが目をつけられて、それで俺のとこにも来たのかね。下手に部屋を空けて、荒らされるのも困るしな)
「はぁ、どうしたもんか」
部屋には窓が二つあるのだが、両方とも投石により、割られている。ひょいと窓の外を確認すると、来る途中には人通りのあった通りは、ほぼ無人であり、開いていた店は全て閉まっている。
投石していたのは戦士風の男だったが、アランが顔を出したのを見ると、即座に投げ槍を投擲してくる。
思わず顔を引っ込めたアランの眉間の位置で、それが弾かれるのを見てゾクッとした。
落下した槍が穂先を下にして、地面にザクリと刺さるのを、視線の端で確認し、軽い眩暈を覚えてしゃがみ込んだ。
「何だよ、あれ。俺がいったい何したって言うんだ」
幸いなのは、巻き込まれる人が少なさそう、という事くらいだろうか。しかし、宿の者はどうしているのか、少々気になった。
これほど好き放題しているという事は、宿の他の客やおかみや主人にも、危害を加えている可能性がある。
(読み間違えたかな)
アランは眉間に皺を寄せ、立ち上がった。テーブルの上を片付け、背嚢から必要そうな物や使えそうな物を探し、回収したミスリル合金を詰めた袋の中から、一番小さな欠片を選り出し、その先端が鋭く尖っている事に気付くと、砥石を取り出す。
「ミスリル合金もこれで研げると良いんだが」
三角錐に近い形のそれを、革の手袋をはめて丁寧に慎重に、研ぐ。時折掲げて、断面を確認しながら、作業する。
「そう言えば、コボルトの巣で回収した鋼糸もあったな」
それを持ち帰った意味は特になかったし、使い途なども考えていなかったので、鉄くず扱いで売り払えば良いかとも思っていたのだが、折角なので使う事にする。
罠として張られていたのだから、これは研がなくても良いだろう。
本当は穴を空けたいところなのだが、ミスリル合金に穴を空ける事ができる道具など、持っているはずがない。
それが可能な魔法の心当たりもないため、研いで磨き終えたミスリル合金の破片を、息を吹きかけながら、丁寧に布で拭うと、尖っていない方に鋼糸を巻き付け始める。
「これ、すっぽ抜けたら恐いよなぁ。たぶん、糊では固定できないだろうしな」
アランが普段使っている糊は小麦を水で溶いて、火をかけて作ったものだが、日持ちしないので持ち歩いていないし、ここでは作れない。
尖っている部分に、何らかの薬や毒を塗るという事も出来なくはないが、それはやめておいた。
鋼糸のもう一方の先を、いつも持ち歩いている裁縫道具を開いて、中から使えそうな糸巻きを取り出し、そこに巻いて短くすると、グルグル回してみた。
小さくて軽いせいか、結構な勢いでビュンビュンと回るそれを、唸りながら眺め、回転が安定したと思われる頃に、前方へと投げてみた。
ガツッと激しい音がして跳ね返ってきたそれを、慌ててしゃがんで避けるが、その避けたそれも反対側の結界に当たって跳ね返る。
冷や汗を掻きながらその動きを注視し、ようやく勢いがなくなって落ちてきた頃には、再詠唱が必要な時間が経っていた。
「……あっぶねぇ……。《方形結界》の中で物投げるのは、ヤバすぎるな。
っていうか、これ、本当に使うなら、《鉄壁の盾》で使った方が良いか。でも、《鉄壁の盾》は効果時間短すぎるしな。
しかし、これ、どのくらいの威力があるんだろう。さすがに相手を殺す気はないんだが、レオと違って俺、運動神経ないから、魔法ならともかく、物を狙った場所に当てるとか、加減するとかまず無理だよな。
これ使うくらいなら、胡椒と唐辛子を粉末にして撒いた方が良いような気が」
とりあえず部屋の外にいる男をどうにかしよう、と考えた結果、《方形結界》ではなく《鉄壁の盾》を唱え、発動した直後に扉を解錠し、開く。
と、その時、ちょうど男が殴り倒され、昏倒する光景を目にして、思わず硬直した。
「……え?」
倒れたのは、先程見た大きな盾と槍を持った戦士である。殴り倒した方は、見知らぬ大柄な男だ。
慌てて杖を構えたアランに、大男が人好きのする笑顔を向ける。
「よぉ、災難だったな、坊主」
大男は褐色の肌に、金茶の短髪、淡褐色の瞳の、南国の戦士風と見える風体である。
背中に担いだ大剣は、ダニエルが使うそれよりも長く、刃も幅広く厚みがありそうだ。
男の身長はダニエル並で、上腕はアランの太ももくらいの太さである。
「えぇと、あなたは?」
「ああ、おれはダオル。南国、ラオリ諸島連合国の出身だ。宿で変な動きをしていた連中は、これで最後のはずだ」
「ああ、すみません、有り難うございます。ご迷惑をお掛けしました」
それを聞き、アランは慌てて頭を下げて礼を言った。
「いやいや、こんな事やらかして、いったい何を考えてるんだかな、こいつら」
そう言って、大男は倒れた男を軽々と抱き上げた。
「あの、すみません。たぶん、こいつらを指揮していた金髪碧眼の男がいたんじゃないかと思うんですが、見掛けませんでしたか?」
「ああ、あれってレオナールって坊主じゃなかったのか。そう言えばあいつ、ハーフエルフには見えなかったな」
「……レオを知ってるんですか?」
思わず身構えて距離を取るアランに、大男は苦笑した。
「ああ、ダニエルと知り合いでな」
しかし、気を緩めないアランに、更に続ける。
「一緒に仕事していたんだが、ダニエルに呼ばれてこちらへ来た。王都からじゃなく、辺境から直接こっちへ来たんだが、ダニエルはここにいないのか?」
その言葉に、ようやくアランは構えを解いて、返答する。
「冒険者ギルドの鍛錬場で、レオと真剣で打ち合いやっています。もしかしたら、昼なので昼食取りがてら、休憩中かもしれませんが」
「で、お前はアラン、で合っているか?」
「はい、その通りです。はじめまして、アランと申します」
笑顔で名乗るアランに、大男も目を線のように細めて笑う。
「さっきも名乗ったが、おれはダオルだ。仕事が済むまでは暫くこの宿に滞在予定だ。よろしく」
「はい、よろしくお願いします」
「で、アラン。お前もこれからギルドへ行くつもりだったのか?」
「ええ、どうもこのままじゃ埒があかないので。時間稼ぎしても衛兵は来ないし、事態も進展しないようだと思ったので。
でも、良かったです。宿の人に迷惑掛けるのが心配だったから」
「ハッハッハッ、思ったより人数がいたので、時間が掛かってすまなかったな。
後は、外にいるやつを全員片付けるだけなんだが、さっきの金髪剣士を逃がしたから、あれが首謀者って事になると、既にいないかもな」
「あ、でも、その今、肩に担いでる男が、そいつのパーティーメンバーなので、関わっていた証拠にはなるかもしれません。
ただ、首謀者のベネディクトが貴族の庶子で、この町の老舗商家の孫らしいので、口を割るかどうか。ギルド上層部とも癒着しているそうですし」
「ふむ。一応ギルドと領兵団にも通告しておいて、身柄はこちらで預かっておくか。他に、同じパーティーのやつがいないか、確認して貰えないか?」
「はい。この町で顔を知っている冒険者は《蛇蠍の牙》と《疾風の白刃》だけなので、たぶんほとんどわからないと思います」
「いざとなれば、こちらで尋問して吐かせるから問題ない。この国で言うなら、おれは『蛮族』の類いで、故郷にいた時は、しょっちゅう小競り合いに借り出されていたからな」
「え? あの、若く見えるけど、ダニエルさんと同じく歴戦の戦士なんですか?」
「いくつに見えたのかは知らんが、戦士として実戦に出たのが十歳くらいで、今は三十過ぎたところだ。故郷では主に船の上で生活していて、切り込み役をやっていた。ランクはソロでAだ」
アランは思わず息を呑み、相手を凝視してしまう。
「それはすごい。でも、そんなに強かったなら、故郷でも大活躍だったのでは?」
「……嵐に遭遇して、船が難破した。しばらく漂流して、ようやく里へ戻ったら、既に壊滅していた」
重い告白を受けて、アランが硬直した。なんと言えば良いやら、悩むアランに、大男は大きく声を上げて笑った。
「まあ、18年前の昔の話だ。それ以来、自由民として各地を旅している。ダニエルと出会ったのは、この王国の辺境にある《魔の森》だ。いきなり生肉食わされそうになったのは、仰天したが。
いや、王国に生肉を食う習慣がなくて、本当に良かった」
「それは、すみません。あの人、俺達にも勧めて来た事あったんですが……」
無差別だったか、と溜息をついた。
「本気で旨いと思ってるようだから、悪気はなかったんだろうが、あれは困るな。
当時は共通語もあまり上手くなかったから、意味を取り違えたか、聞き間違いかと思ったが」
「という事は素を知ってるんですね」
「この国では英雄らしいな。あいつの噂や風評を聞く度に、笑いをこらえるのに苦労するが」
「英雄の本性なんて知らない方が良いですし、皆に知られたら幻滅どころか、排斥に走る過激な連中も出て来そうですよね。
でも、あの人、人外だからドラゴンでも倒せそうにないですが」
「魔人はともかく、魔族・魔神級じゃないと殺せそうにないな。あの速さや膂力も恐ろしいが、それ以上に体力が半端じゃない。
あの速さを長時間維持できるはずがないと見て、長期戦なんか仕掛けようものなら、まず間違いなく自滅する。
かと言ってまともに打ち合いに行くのは自殺行為だしな」
「対人で本気出す事ほとんどないから、あれが最高速だと思ってたら、更にその上がありますからね。
あの人の本気を見たら、普段はどれだけ分厚い皮を被ってるんだと思いますし。
でも、その剣見る限りでは、あなたの膂力も相当では?」
「俺は両手で握るが、あいつはあれを片手でも使えるからな。さすがにあのクラスの剣を片手で握る自信はない。
しかも身体が軟らかくて、バランス感覚も良い。見えない速さで一直線に来る剣撃も恐ろしいが、攻撃が何処からどう来るかわからないのも恐ろしい」
二人で一階に降りると、食堂付近にロープで拘束された男達が、転がっていた。どの男もほぼ無傷に見えるが、全員気絶している。
これはすごいな、と思う。レオナールと比較してはいけないと思うのだが、つい比べてしまった。
(レオに殴られた連中は、大抵ボロボロだからな。弱いやつだと一撃で済むから、比較的軽傷だけど、そこそこ強いと、かえって酷い目に遭わされるからな。
まぁ、だから一度やられても、再度絡んで来たり、報復に走る連中が多いんだが)
「どうだ?」
一人一人、顔を確認するが、記憶にある顔はない。アランが首を左右に振ると、「そうか」と頷いた。
「ああ、あんた、無事だったかい」
宿のおかみが声を掛けて来た。
「すみません、ご迷惑をお掛けして」
「いやいや、あんたも災難だね。こいつら、ラーヌでも札付きのチンピラどもでね。
普段はスラムにいるんだが、金で動く連中だから、時折こうやって問題起こすのさ。
領兵団に通報しても、ボナール商会なんかの裏方が保釈金や賄賂で解放して、そのままトンズラして、また繰り返しさ」
「と、いうことは、普段からしょっちゅう《疾風の白刃》の連中はこういう事をやらかしてるって事か。
それで捕まらないって事は、やっぱり賄賂とか、そういう事、なんだろうな」
「ああ、領兵団も冒険者ギルドも、金を持ってるやつの味方さ。ただ、Sランクのダニエルさんの宿泊中に、こんな事をやらかすとは思っちゃいなかったけど」
「大丈夫。安心してくれ、そいつらは二度と解放される事はない」
ダオルはそう言って、ニッコリ笑った。
「そりゃ、良かった! こいつらには本当、迷惑してたんだよ」
おかみが安堵した顔で、心底嬉しそうに言った。
「しかし、こんな人数どうするんですか? ダニエルさんの取ってる部屋でも、置いておけないでしょう。場所はあるんですか?」
「ラーヌでの活動用に、家を借りるか買おうとは思っていたが、さすがにすぐには用意できないし、とりあえずすぐに使える貸倉庫を借りようとは思っている。
その前に、連中が目を覚まさないよう眠りの魔法を使ってくれないか? 睡眠薬を流し込むのでも良いが、この人数にそれをやるのはかなりの苦行だ」
「了解しました。では、少し離れて下さい」
ダオルは肩にかついでいた男を、転がっている男達のそばに置き、距離を取った。
おかみも言われた通りに離れた。それを確認して、アランは《眠りの霧》を詠唱、発動する。
「《眠りの霧》」
元々気絶していた事もあり、全員に掛かったようである。
「しかし、これを運ぶのも大変じゃないですか?」
「ああ、荷馬車か何か借りないと無理だな」
その言葉に、アランがポンと手を打った。
「そうだ、厩舎に俺達が乗って来た幌馬車があります。今は荷を下ろしてあるので、拘束して転がすだけなら、しばらく置いておけると思います。
ただ、場所が厩舎なので、誰でも入れるという難点がありますけど」
「幌を下ろして置いても、外部から人が入れるからな。普通の幌馬車には、奴隷や囚人を運ぶ馬車のような拘束具は付いてないだろうから、仕方ない」
「あんた達が良ければ空き部屋や、うちの倉庫に閉じ込めて置く事もできるよ」
おかみの言葉に、アランもダオルも驚いた。
「いや、でも、それじゃ業務に支障がでないか?」
「いやいや、これでこいつらの起こすトラブルと決別できるなら、願ったり叶ったりだよ。
倉庫は出入りが多いから、鍵のかけられる空き部屋の方が良いだろうね。部屋の動かせる備品を取っ払えば、ベッドやチェスト類はそのままでも、転がすだけなら、結構広く使えるはずだよ。
意外とテーブルや椅子は場所を取るもんだからね」
「では、使用する部屋の宿代も払おう」
ダオルが言うと、おかみは首を左右に振った。
「いや、お代はいいよ。感謝の気持ちさ。その代わりと言っちゃなんだが、徹底的にやっておくれよ。
こいつらがいなくなれば、それだけでも、町がスッキリするよ」
よほど、このチンピラどもは嫌われているようである。ダオルは頷き、それではという事で、男達を空き部屋に運ぶ事になった。
力仕事には向かないアランは、おかみと共に空き部屋の備品を、宿の物置に運ぶ作業を手伝った。
途中、窓の外を一応確認したが、先程までいた戦士の姿はもちろん、人影は全く見当たらなかった。
「でも、本当に良かったのか? 昼時にこんな騒ぎになって、客も寄りつかず、営業妨害になったんじゃないのか」
「別に、これが初めてじゃないからねぇ。あんたが悪くないのは、わかってるさ。あいつらは、新顔を見掛けると、連中に従うようになるまで、そいつにつきまとうのさ。
おかげで町のあちこちの中小の店や宿が、被害にあってる。高級店やボナール商会の息がかかった店、取引店なんかには被害は出ないがね」
「それはまた、露骨過ぎるな」
「まぁねぇ。うちはボナール商会みたいな大店とは取引ないから、恩恵は全くないし、他の大半の店や宿がそうさ。
おおっぴらに言ったりはしないが、蛇蠍のように嫌われてるね。あいつらに比べたら、倉庫の食料を食い散らかすネズミの方が可愛いくらいだ」
それは酷い、とアランは眉間に皺を寄せた。
「これまで、それが問題になったり、対策を立てようとしたり、なんらかの処置をしようとする人は現れなかったのか?」
「そりゃ、皆無ではなかったさ。けど、それは大抵Cランク以下の冒険者だったり、それほど金持ちじゃない一般人や、小さな店や宿だったからね。
どうにかしようと立ち上がった連中は、今は一人もこの町にはいないよ。死んだり、行方知れずになったり、他の町へ逃げたりね。
だから、わたしも含め、腹は立つが、黙って飲み込む連中が多かったんだ。
でも、ダニエルさんが来たからね。ラーヌでも評判だよ。あの人がどこやらの何やらを捕まえたとか、そいつがきっちり罰を受けて処刑されたとか、そういう噂を聞く度に、爽快な気分になったもんだよ。
まさか、この町に来るとは思わなかったがね」
なるほど、とアランは頷いた。ダニエルの実態的には、正義感とかそういう理由ではなく、気が向いたからとか、たまたま人に頼まれて暇だったからとか、どうせそういうしょうもない理由なのだろうが、知らなければそう見えても不思議じゃない。
そして、今回の件もそういった事とは関係なく、きっとおそらくは、皆の期待通りの展開になるのだろう。
その理由は、大衆が期待したりそう望むような理由ではなく、たまたまこの町にレオナールとアランが仕事に来て、たまたまダニエルがこの町で彼らと遭遇し、レオナールとアランが絡まれたのをきっかけに。
(ちょうど良い暇潰しが出来たとか、言いかねないもんな、あの人)
もちろん彼が、レオナールとアランを彼なりに可愛がっているから、というのも動く理由の一つにはなりそうだが、たぶん本人はそうは言わないだろうと思う。
ウル村の一件でも、そうだったのだから。アランはこっそり溜息をついた。
サブタイトルが微妙に合ってない気がしますが、一応これで。
一連のエピソードを本編に入れたのは失敗だったかなとも思いつつ。
もうちょい続きます。
次の章はダンジョンになる予定ですが、まだまだ先になりそうです。
今月中にいけるか微妙です。
以下を修正。
×何処からどう来るか振るわれるか
○何処からどう来るか
改行ミスと前話の誤字(逆の意味になってた)などを修正。




