9 コボルトの巣の攻略2
戦闘および残酷な描写・表現があります。
ガイアリザードの背に揺られて、アランとダニエルは周辺を探索していた。街道を歩いた時ほどの速度での移動だったので、今回は気分が悪くなるような事もなく騎乗できたため、アランは内心ほっとしていた。
時折メモに周辺の植生や、気が付いた事、太陽やフェルティリテ山を見上げて、現在位置を推測したりする。
「騎獣に乗るのも、たまには良いな。のんびりできて」
ダニエルが楽しそうな声で言う。
「早くてもこれくらいの速度なら、俺もそれに同意できるんだが」
アランがメモから顔を上げて言うと、ダニエルは笑った。
「お前、鍛えればそこそこの戦士になれそうな骨格してるのにな。気性はもちろんだが、木剣もまともに持てない筋力体力だから、鍛えてやりたくてもどうすりゃ良いかサッパリだな。
毎日肉を食わせて走らせるくらいしか思い付かねぇわ」
「俺は魔術師になりたくてなったのに、どうしてレオもおっさんも、俺に戦士並みの体力要求するんだよ?」
「別にそういう事じゃねぇけど、お前、戦士とか剣士って、やっぱり身体がでかくて腕が長い方が有利だろ?
そうでなくても、やれない事はないが、身体能力は元々の骨格や体格も結構影響あるからな。
まぁ、炎天下に放り出すと、半日保たずにすぐ倒れるお前には、無理そうだが」
「わかってるなら言わないでくれ。そんなことより、ここら辺りが、ちょうどさっきの入口の裏側だな」
「ふぅん、コボルトの気配もないし、臭いもそんなにしないな」
「他に出入口がないなら、その方が都合が良い。一通り一周したら、枯れ枝を拾って帰ろう」
「アランの気性や性格は、両親どちらにも似てないよな?」
「祖父の弟に似ているという話を、祖父に聞いた事があったな。物静かで家で一人、黙々と手仕事をする人だったとかで、俺の家にあった籠や家具の大半は、その人の作だという話だ。
流行病で、俺が生まれる前に亡くなったそうだが」
「その内暇が出来たら、またお前の親父さんのとこに顔出して、酒でも飲みたいな。お前、酒はイケる口だっけ?」
「俺もレオも、飲食以外に酒を飲む習慣はないな。俺は特に、あの酔っ払いの醜態を見るに、自分がそうなりたくない気持ちが強くて、飲もうという気にはなれないし」
「えー、なんだよ、つまんねぇな。飲めるなら飲めば良いだろ。今度、俺が酒の良さを教えてやる!」
「いや、おっさんの醜態が一番見たくないんだが」
「ええ? 俺は酔っててもカッコイイだろ!」
「自分の酔いざまを一度見せてやりたいな、幻影魔法で行けるかな」
「お? 幻影魔法使えるようになったのか?」
「自力では無理だが、魔法陣に使う古代魔法語のストックにある。ただ、ちょっと準備に時間と金がかかるのがネックだが」
「ああ、魔法陣か。なら、それなら風魔法も魔法陣で使えるんじゃないのか?」
「効果範囲の指定がちょっと。自分のそばに誰もいない状態なら使えるんだが」
「あー、なるほどな。それじゃちょっと実戦には使いづらいよなぁ」
「範囲指定に、除外の魔法語が見つかれば良いんだが。レオに事前にそっちに近付くなと言って、聞いて貰える自信はないしな」
「……あいつ、なんであんな猪突猛進に育っちまったんだろう?」
「傍から見てたら、おっさんもレオとそう変わらないぞ? 見本が悪かったとしか思えない」
「え? 何だよ、俺がその悪い見本だとでも言うのか?」
「おっさんは、良くも悪くも、レオの見本だろ。あいつが初めてまともに接した最初の『大人』がおっさんなんだから」
「あいつの首輪にもっと早い段階で気付いていりゃな」
「……それ言ったら、一緒に遊んでた俺が、最初に気付かなくちゃ駄目だっただろ」
二人揃って深い溜息をつき、顔を見合わせた。
「いや、でも、当時、お前はあいつを女だと思ってたわけだから、仕方ないだろ。まさか服を脱がしてみるわけにいかなっただろうし」
「でも、あいつが喋らない理由が性格じゃなく、首輪のせいだと知ってたら、俺だってもっと……!」
「あー、悪ぃ。振ったの俺だが、この話はナシな。……まぁ、今、現在の事だけ考えよう。なっ?」
なだめるように言うダニエルを、アランが真顔で睨むように見る。
「俺だって、責任感じてるんだよ。あいつとの付き合いは今年で5年で、首輪外れてからは2年弱だ。
それ以前と、以降の違い見てたら、あいつがあの頃、どうしてあんなに暗い顔してたのか、今ならわかるからな。あれは……諦めてたんだ」
「アラン」
そう言って、ダニエルはアランの頭を強めにグシャグシャと撫でた。
「お前のせいじゃない」
そう言われて、うっかり泣きそうになったアランが、ダニエルをギッと睨む。
「あんまり思い詰めるな。お前は『隷属の首輪』なんてものの存在なんか知らなかったし、魔術や魔法に興味があっても、それで何が出来るかなんて良く知らなかった。
知識のある俺が気付かなかったんだ。お前にわからなくても不思議じゃない。そんなことより、今日明日の事を考えた方が良い。
これは、お前にもレオにも言わないつもりだったんだが、シェリジエール家の傍系、あの元子爵の甥にあたる男が逆恨みで、何度かレオに刺客を送っている。
今のところ、全て捕まえて別件で牢に放り込んであるから、こいつらはいずれ全員処刑されるだろう」
「なっ……!」
目を見開くアランに、ダニエルは続けて告げる。
「そっちは、その甥が関わってる裏事業の証拠集めをしているから、近い内に汚職その他で正式に逮捕できる予定だ。
あと、こっちのが厄介なんだが、シーラの兄も人を使って暗殺依頼を複数出している。
こっちも今のところ、全て潰してるんだが、一人だけ逃がした」
「……まさか……っ!」
「そいつはいずれ俺が片付けるから、心配するな。けど、問題はだな、玄人だけじゃなく、金を使って素人まで使おうとすんだよな、あの腐れ外道。
前からちょっと危ないシスコンだとは思ってたんだが、こんな阿呆な事するやつだって知ってたら、もっと早くぶっ殺しておくんだった」
「え? ちょっ、おっさん、ぶっ殺すって、本気か?」
「エルフを人間の法律では裁けないからな。少なくとも現時点では、王国の法律に反する行為はしていない。
しかも本人は森の中の里に引きこもってる。シーラと話が出来る状態だったら良かったんだが、連絡取るのもままならないからな。
一度里へ直接行こうとしたんだが、結界で弾かれた。だから、そっちはちょっと時間が掛かりそうだ」
「……つまり、レオの周囲に気を配れって事だよな?」
「ああ。直接の危険なら、レオが自分で見つけるだろうが、それ以外に関してはお前の方が適任そうだしな。
クロードにさせようと思ってたんだが、あいつ、時折とんでもないボケかますからなぁ。一応あいつにも手紙は出しておいたが」
「って言うか、おっさん、そんな大事なこと、俺達に隠しておくつもりだったのかよ?」
「悪ぃ。子供に余計な心配させたくなくてな。全部俺の方で止めて解決できりゃ良かったんだが、ちょっと油断して調子こいてたかもな。
俺、お前らには笑ってて欲しいんだよ。本来なら、今が一番楽しい時期だろ? だから、それを心底楽しめるよう、環境を整えてやるつもりだった。
どんだけかかるか、わからねぇけど、全部終わったら、お前らのとこ顔出すから、その時は、何か適当な魔獣か魔物を狩りに行こう。
ダンジョン潜るのも良いよな。希望・要望あるなら、そっちに合わせても良い。俺も、王都で面倒な人付き合いすんの、時折イラッと来るからな。ストレス解消にちょうど良い」
「……まぁ、おっさんには、そっちの方が合ってるだろうな。まさか王都で本性丸出しで剣振れないだろうし」
「本性丸出しって。俺はいつでも本性・本音全開だろ?」
「ああ、そうだな。良くも悪くも、そうだろうな。だから迷惑な事されても、おっさんだから仕方ないと思えるし」
「うん? 迷惑な事って、何かやらかしたか?」
不思議そうな顔で尋ねるダニエルに、アランが渋面になる。
「……いや、期待してないから。おっさんにそんな機能付いてないのは、重々承知している」
「え? なんか怒ってる?」
怪訝そうに言うダニエルに、アランは首を大きく左右に振った。
「そんな事より、コボルトの巣だ。さっさと確認終えて、レオのところへ戻ろう。幼竜が一緒だから、滅多なことはないと思うが」
「そうだな。一応念のため門を出たところで引き離したけど、目的地バレてたら、追いつく可能性はゼロじゃないからな」
ダニエルの言葉に、アランが目を剥いた。
「は!? あれ、暗殺者を引き離すためだったのかよ!?」
「レオは気付いてなかったから素だと思うけどな。都合が良いから乗っかった。いちいち背後気にしながら、とか面倒臭ぇからな」
「……そうか……てっきりおっさんが早く行きたいだけだと思ってたが、そういう事なら仕方ない」
「ま、ちんたら歩くのも面倒ってのもあったがな!」
「…………」
アランが無言で睨んだ。
「あ、いやいや、あんなのがついて来てなきゃ、そこまで強行軍はやらかさなかったぞ、たぶん」
慌ててダニエルが付け足したが、信用できるはずがなかった。
「おっさんは、本当、油断できないよな。あんたが敵に回ったら、どうやって対処すべきかわからねぇよ。素と計算と入り交じってやがるからな」
アランが言うと、ダニエルは肩をすくめた。
「えー? 何だよ、それ。それじゃ俺がまるで腹黒みたいだろ。俺はいつも自然体だぞ?」
「そうは言うが、たまにニッコリ笑いながら、人を谷底に突き落とすような真似するじゃないか。
あれも一応素なんだろうが、おっさんの行動原理や感情・思考は読めそうにないぞ」
「谷底に突き落とすって、そんなひどい事したか?」
「少なくとも、おっさんを無条件に信用したら痛い目を見るって、俺は学習したからな」
アランは肩をすくめて言う。
「いや、でも、俺、一応、お前らのことは可愛がってるつもりなんだが?」
「わかってるよ。わかってるけど、おっさんの愛情表現や特別奉仕なつもりの行為で喜ぶやつは、そうそういないって事は自覚しろよな」
「えー、マジかよ?」
あからさまにガッカリした顔になるダニエルに、思わずアランは額を押さえた。
「まぁ、そのトシで今更自覚しろとか、無理だったよな。悪かった」
溜息ついてアランが言うと、ダニエルは困惑するように頬を掻いた。
「うーん、どれがマズイのかサッパリなんだが」
「大丈夫。おっさんにそういう事期待しないから」
アランに笑わない目で言われたダニエルの顔が、少し引きつった。
「お、おう。なんかすまん」
反射的に謝った。
◇◇◇◇◇
「けっこう進めたわね。砂岩部分は全部貫通したし、ここからは礫岩と石灰岩と花崗岩かしら? アランがいたら判別つくんだろうけど、ちょっと自信ないわね。
ルージュ、ここからちょっと硬くなるけど、頑張ってね!」
「きゅきゅう!」
コボルトの中でも勇気のある者が必死にちょこまか、矢を射って来るが、全てその鱗で弾き返して、物ともしない。
レオナールはその後ろにいるため、全く安全である。時折、回り込もうとする者もいるが、そういうのにはルージュが尻尾や腕を振るうため、近付こうとするコボルトはいなくなった。
一応レオナールはいつでも剣を抜けるよう準備していてはいたのだが、敵が全くこちらへ来ないので、背後や、本来の通路奥から来る者がないか、注意を払う事にした。
ふと、何かの気配──音はしなかったが、知らない臭いを嗅いだような気がした──を感じて、抜刀し、振り下ろした。
「っ!」
そこには、飛び退いて剣を避ける、黒衣の小柄で細身な男の姿があった。
「あら?」
レオナールが首を傾げた。
「あなた、昨夜見掛けた、師匠と斬り合いしてた暗殺者さん?」
男は答えず、ダガーを振りかぶった。レオナールは剣の角度を変えて、それを止め、押し切った。大きく背後に飛ぶ男。手応えが軽かったから、自分で飛んだのだろう。
レオナールがニヤリと唇に笑みを浮かべた。
「ふぅん、ま、良いわ。ちょうど暇してたの。暇つぶしに付き合ってちょうだい?」
そして、レオナールの顔から表情が消えた。男が暗器を投擲するが、無造作にそれを払い、腰を沈めたかと思うと、床を強く蹴りつけ、男を射程距離に収めると、腹を殴りつけるように剣を横に薙ぐ。
今度も少し浅かったが、かすめる事には成功したようだ。微かに血の臭いを嗅いで、レオナールは口元に笑みを浮かべた。
「あなたの血の色を見せてちょうだい?」
男が舌打ちし、飛びすさり、投擲する。最初のそれを顔を傾げる事で皮一枚で避け、次のを剣身で、更に次を柄で弾くと、地面を踏み込み、飛び上がって避けると、そのまま剣を男の頭部目掛けて振り下ろす。
「!?」
男が更に背後へ飛び退き、何かを踏みつけた。それはアランが焚いた薬であり、新たな空気を取り込んだ事で、小さくなりかけていた火が大きくなった。残っていた薬剤が一気に燃え上がり、煙に混じる。
それを見たレオナールは肩をすくめた。男はゲホゲホと咳き込み、涙を流しながら、更に背後に下がろうとしたが、そこも煙と薬剤がまだ残っていたため、更に咳き込む羽目になった。
「あらあら、ふふっ」
笑いながら、レオナールは男の腹を硬く厚い靴底で蹴りつけ、倒す。そして、暴れる男の足を掴んで宙吊りにして、煙の中から引っ張り出した。
抵抗し、ダガーを振るおうとする男の肩を踏みつけ、骨を砕いた。
「っ!!」
更に剣の柄を使い、膝や肘の骨を砕き、ダガーを手放させた。それから、入念に武装解除に取り掛かる。
が、面倒になって、途中で黒衣を剥ぐ事にした。頭に巻いた布に、剣を突き刺し縫い止めて、大振りのダガーで切り裂いて行く。
「とりあえず裸に剥いちゃえば、武装解除も出来るわよね。後で売れる物は、武器屋かくず鉄屋に売っちゃえば良いし」
男が抵抗する度に、殴りつけたり蹴ったりして、黒衣とその下の胴着を脱がすと、その剥いだ服で手足を縛り、拘束した。
「よいしょ、っと。ルージュ、しばらくここを離れるけど、頼むわね」
幼竜に声を掛けると、男を担ぎ上げた。その時、入口の方から気配を感じて立ち止まると、カンテラを持ったアランとダニエルと目が合った。
「おい、何をしてるんだ!? レオ!!」
アランが驚愕した声で怒鳴り、ダニエルがあちゃーという顔をした。
「なぁ、レオ、それ、もしかして、《黒》か?」
ダニエルが尋ねる。一瞬誰の事かと思ったが、そう言えば、この暗殺者の呼び名がそれだったと思い出して、頷いた。
それは、灯りの中で見ると、少女のように美しい顔立ちと、見事な銀髪紫眼の小柄な青年だった。
とてもこれが、あの暗殺者と同一人物だとは思えない容貌だったが、拘束に使っているのは、着ていた黒衣である。一応、黒衣の下に着ていたズボンは穿かせたままなので、上半身のみ裸である。
「これ、どうしたら良いかしら? 斬ってもかまわないなら、そうするけど」
「あー、それ、俺が持って帰るわ。賞金とか報奨金はお前にやるよ」
「え? 本当?」
レオナールがきょとんとした顔で言った。
「ああ、たぶん俺が持って行って突き出した方が、良いだろう。こいつの首に掛かっている金が金だからな。
ここの領兵はちょっと信用できないから、俺が始末をつける。金はギルド経由で手紙つけて、ロランへ送る。
お前らだけでコボルト討伐、できそうか?」
ダニエルの言葉に、アランとレオナールが答える。
「最初からそのつもりだったんだ。できないはずがない」
「できないはずないでしょ? バカにしないで欲しいわね」
その答えに、ダニエルはニヤリと笑う。
「わかった。んじゃ、先にラーヌへ戻ってるぞ。夕飯は一緒に食おう。なんか適当なとこねぇか、調べておく」
「それ、師匠の奢り?」
レオナールが尋ねると、ダニエルが苦笑しつつも、頷いた。
「おう。とびっきり高くて旨いとこ紹介して貰うからな」
「有り難うございます、ダニエルさん」
アランが深々と頭を下げると、ダニエルは肩をすくめた。
「ま、コボルト相手だけど、一応気を付けてな。たぶん、大丈夫なんだろうが」
「罠とか全部壊して行くつもりだからな」
アランが良い笑顔で言った。
「師匠、逃げないでよ」
レオナールが言うと、ダニエルは笑った。
「心配すんな」
そして、レオナールから男を引き取って、立ち去った。
「なぁ、レオ。大丈夫か?」
アランが心配そうに声を掛けた。
「え? 大丈夫よ。あいつ、アランの焚いた薬の煙吸って、涙流しながら咳き込んでたわ」
「あー、アレ吸ったのか。なら、しばらくおとなしいだろう。あれ、洗浄しないと抜けるのにちょっと時間がかかるからな」
「私としては真面目に斬り合っても良かったんだけど」
「え? だって、あいつ強いんだろ?」
「そうね。でも、師匠より弱かったわよ」
「あの人と比べたら、誰だってそうだろ。……っていうか、斬り合ったのか?」
「斬り合ったという程、斬ってないと思うけど」
「怪我とかしてないか!?」
慌てるアランに、レオナールは苦笑した。
「大丈夫。どこも怪我してないわ。にしても、師匠と斬り合い出来るレベルの割に、たいした事なかったような。変ね?」
首を傾げるレオナールに、
「灯りがなかったとか? ほら、あいつ人間だったろ?」
「ああ、なるほど」
アランの指摘にレオナールが頷いた。
「何か動きが鈍いというか、昨夜見た時と比べて、動きが遅い上に、ためらいがあるように見えたのよね。
あれ、もしかして良く見えてなかったのかしら」
「たぶんそうだろ。人間レベルの夜目が利くってのは、ハーフエルフのそれとは、比べものにならないからな」
「そっか。なら、もっとそれを上手く利用できていれば、殺せたのかしら」
ふふっと笑うレオナールに、アランが渋面になる。
「おい、レオ」
「だって大金貨300枚の賞金首よ? 滅多に遭遇する事ないじゃない」
「金はお前の懐に入るんだから、別に良いだろ」
「お金とこれは別よ。強い敵を斬るのは楽しいじゃない。わかっていれば、遠慮しなかったのに」
残念そうに言うレオナールに、アランは頭痛を覚えた。
「そんな事より、今はコボルト討伐優先だろ? 依頼完了前に怪我でもしたら、どうするんだ」
「ああ、それもそうね。あの暗殺者も、空気読めないわよね。夜にでも来てくれたら良かったのに」
溜息つきながら言うレオナールに、アランは額を押さえながら言う。
「とりあえず、お前に怪我がなくて本当に良かったよ」
「そうね。依頼を完遂できなかったら困るものね。アラン一人で討伐はちょっときびしそうだもの。
その場合、ここまで来てラーヌに帰る羽目になってたわね」
「あんまり考えなしの行動するなよ、レオ」
「えー? でも、相手から攻撃してきた場合はどうすれば良いの?」
不思議そうに尋ねるレオナールに、アランが渋面で答える。
「俺達や幼竜がそばにいるんだから、助けを求めるとか、逃げるとか、あるだろ?」
「そんなのつまらないじゃない」
アランの眉間に深い皺が寄った。
「つまらないとか、そういう問題じゃない。万一の場合を考えろ」
レオナールは肩をすくめた。
コボルトの巣の攻略になってないけど、一応サブタイ。
以下を修正
×しかも、少なくとも現時点では
○少なくとも現時点では




