2 気のいいドワーフ戦士は酒を愛する
おかみの話によると、今夜オルト村の宿屋に泊まるのは、アランとレオナールを含め、五人だという話である。残り三人は、未帰還のパーティーのメンバーではないらしく、別件だという。
一人は神官風の男で、一人は戦士と思しきドワーフの男、もう一人は小人族らしいのだが、ローブのフードを被ったまま早朝と深夜に出入りするため、年齢性別不詳。神官風の男は一昨日から部屋に閉じ籠もったきり食事以外に出てきておらず、ドワーフは何故か滞在中ずっと無償で村の農夫達の手伝いをしており、毎晩のように宴会をしているそうだ。
「……嫌な予感がする」
アランが呻くように言った。
「今度は何?」
「お前、疑問に思わないのか? なんか怪しい連中ばかりじゃないか」
「どこが? アランって心配性過ぎて、時折、被害妄想激しいんじゃないかしら」
困ったわね、と言わんばかりにレオナールが大げさに肩をすくめる。
「いやいや、どう考えてもおかしいだろ? 個室とは言え、三日間もこんな宿屋に閉じ籠もりきりとか、おかしいだろ?
あと、顔を隠してコソコソしてる小人族とか怪しさ全開だろ! それに、無償で一週間も農夫の手伝いしてるドワーフとか!!
どいつもこいつも怪しい胡散臭いやつらばかりだろうが!!」
「客観的に見れば、私達も怪しいと思うわ。村人も警戒して近付いて来ないし」
「それは主にお前が原因だ!」
「嫌ねぇ、アランも代わり映えしない安っぽい黒のローブなんか着て、十分怪しいわよ?」
「このローブはこう見えても付与魔法かかってて高いんだよ。これに替わる装備なんて入手できるのは王都くらいで、この辺りじゃ手に入らないくらいだ」
「あら。じゃあ、盗賊なんかに狙われたら困るわね」
「どうせそんな命知らずが現れたら、お前が問答無用で斬るんだろ?」
「たぶんそうなるわね」
「だから、その点については心配してない」
「……悲観主義者なわりに、妙なところで楽観的ね、アランって」
「お前の人格と性格に関してはあまり信頼してないが、お前の技量は信頼している。高ランク相手じゃなきゃ、たぶん問題ないだろ」
「あら、褒めてくれるの?」
「褒めてなんかいない。ただの事実だろ」
「ふふふ、アラン、そんなに照れなくても素直に絶賛しても良いのよ?」
「くだらない戯言やめろ、レオ。寒気がする」
アランは本気の顔でぶるりと震えた。
「それから、目的地の別荘は来る途中に見た丘の上のテラスとベランダのある邸宅だ。俺達がギルドに登録するちょっと前くらい、先々月の下旬頃にダンジョン化が発覚したらしい。
未帰還の内の1パーティーはガラの悪い連中だったらしくて、村人達に不評だ。帰って来なくても心配されてもないようだ。逃げ帰ったパーティーともう一方のパーティーは、良くもなく悪くもなくって感じだが、生きていれば良いが、との言もあったから、素行の悪い連中でもなさそうだ。
逃げ帰った連中は、帰る時は脅えた顔で何も言わずに一目散って感じだったらしい。絶対こいつら何らかの情報持ってると思うんだが、ギルドに報告はしてないっぽいな。面倒なやつらだ。
キャンセルするくらいなら知ってる情報吐けば良いのに。そしたら完了報酬は無理でも、情報分の金は貰えただろうに」
「で?」
「別荘は外側から見る分には、問題はなさそうだ。現在は施錠した上、門と正面入り口のドアノブを鎖で封印しているようだ。出入りできそうな窓は全て鎧戸が閉まっていて、あそこから出入りするとなると面倒そうだな。
原因がわからないから、そもそも窓から出入りしたらダンジョンの中に行けるとは限らないし、何処にどう出るかわからない。使用人用の出入り口も施錠されていた。
ギルドの調査員は正面から入ったみたいだから、俺たちも同じところから入る方が無難だろう。深入りしなけりゃ撤退できるようだしな。鍵は現在は村長が管理しているらしいから、明日挨拶に行こう。頼むから村長の前ではおとなしくしてろよ?」
「その時の気分によるわね」
「……頼む。この依頼終わったら、飯奢ってやるから」
何か理不尽なものを感じつつ、呻くようにアランが言うと、レオナールが満面の笑みを浮かべた。
「わかったわ。アラン、あなた優しい良い人ね!」
「レオ、お前それ、俺が何か奢ってやるとか言った時しか言わないだろう」
「当たり前でしょ。オカネ出してくれる人は神様よ? お礼言うだけならタダだしね! まぁ、『優しい良い人』って『何の害も取り柄もない凡人』とほぼ同義語だけど」
「……お前はそういうやつだよ」
アランはがっくりと肩を落とす。
「あら、でもアランには感謝してるわよ? 便利で使い勝手良くて、文句や愚痴はうるさいし時折面倒で鬱陶しいけど、なんだかんだ言って面倒見良くて世話焼きだし。
私、その辺の有象無象とかバカの相手とかしてられないから、あなたと一緒だと本当楽で良いわ。無駄に敵対相手を斬らずに済むのも、あなたのおかげだしね。
人間って、魔獣より斬りにくいのよね。雑食なせいか、大きさの割に骨が多いせいか、わからないけど」
「……そうかい」
アランは嫌そうに顔をしかめた。
「わかってるだろうが、喧嘩売られても頼むから村の中で無闇矢鱈に剣振り回すなよ?」
「わかってるわよ。相手が抜かない限りは、抜かないわ」
「……いや、なるべく素手で頼む……」
「わかったわ! 素手で急所攻撃するだけにするから」
「わかってねぇよ! 全然わかってねぇだろ!! 頼むから、なるべく厄介事や暴力沙汰は起こすな! 種も蒔くな!! 絶対にわざと挑発とかすんなよ!! マジでやめろ!!」
「うふふ、大丈夫よぉ。明日になれば思う存分剣を振るえるんだから。武器や防具の手入れしたとこなのに、また汚すような事はしないわ。たぶん」
「たぶんじゃねぇええっ!! ふざけんな!! てめぇ焼くぞ!!」
「そう言えば今日は一度も攻撃魔法使わなかったものね、アラン。昼間のザコ魔獣、どれかアランにも残してあげるべきだったわよね。久々だからつい夢中になって斬っちゃって、私とした事がうっかりしてたわ」
「……お前と一緒にすんな」
額を押さえて溜息をつくアランに、レオナールは肩をすくめた。
「ところで夕食は?」
「ついさっき日が沈んだばっかりなのに、もう食う気か?」
呆れたような顔で見るアランに、レオナールは満面の笑みを浮かべる。
「やぁねぇ、剣士は身体が資本なのよ? 肉はいくら食べても足りないくらいよ?」
「お前、体格の割に良く食うよな」
「もっと筋肉がついても良いはずよねぇ。まだまだ成長期だから、これからかしら?」
「……知るか。だいたい、お前、血統的には本来剣士より魔法使いが向いてるはずだろう」
「力自慢の屈強なドワーフには負けるかもしれないけど、人間の標準的な戦士と比べても良い線いってると思うけど?」
「レオは見た目の割に脳筋だよな。頭悪いわけでもないし記憶力も悪くないのに、呪文覚える才能皆無って、理解しがたい」
「面倒くさいことは苦手なんだから仕方ないでしょ? じっと座って勉強するより、思い切り身体動かしてた方がスカッとして楽しいじゃない」
「お前とは意見合いそうにねぇな。俺は痛い思いしたり、血を見たり、汗を流すのは正直苦手だ。
貴族に生まれなきゃ王宮魔術師にはなれないし、裕福な地主や商家に生まれたわけじゃないから独り立ちもできないし、農家の三男じゃ魔法の才能あっても、流れの魔術師か冒険者になるくらいしか道がない」
「急にどうしたの? 冒険者になるために村を出たのを後悔してるわけ?」
「村を出たのは後悔してねぇよ。正直鬱屈してたし、あの村じゃ体力も筋力もない俺は穀潰し扱いだろうしな。冒険者としてなら、力の振るい所もある」
アランは首をゆっくり左右に振った。
「でも、俺は基本臆病な質なんだよ。叶うものなら、なるべくやる事なす事、全て事前に情報収集してよく吟味して取捨選択して、準備を十二分にして、慎重に着実に行ける依頼を選んで、問題なく速やかに確実に仕事したい」
「ふんふん、それで?」
「だが、お前と一緒だとそれが全部無駄になる」
「あら?」
しかめ面で言うアランに、レオナールは心外とばかりに大仰に肩をすくめる。
「私のせいだとでも言うつもり?」
「ここに来る事になったのも、お前のせいだろうが!」
「やぁね、アランったら」
レオナールはくすくす笑う。
「好きこのんでついてきたくせに、そんな事言っても信憑性ないわよ?」
レオナールの言葉に、アランは絶句した。
「おまっ……そういうこと言うか?! 俺がお前のやらかす事に、毎回どれだけ尻拭いさせられて奔走してるか、わかってて言ってんのか!? おい!!」
「ねぇ、アラン」
レオナールはニヤリと唇にだけ笑みを浮かべる。
「私、あなたにつきあってくれだなんて言ったこと一度もないし、尻拭いしてくれと頼んだ覚えもないわよ? あなたが自発的にやった事に対して、私に恩に着せようって言うなら、別に要らないんだけど?」
目が笑っていない、冷酷でありながら穏やかなヒヤリとした口調で、そう告げるレオナールに、アランは思わず息を呑んだ。
「付き合いだけは無駄に長いから、私の嫌がる事はわかってるわよねぇ? アラン」
「……わかってるよ。お前がどんな形であれ、何かを強制されるのも、制限されるのも、死ぬほど嫌がってるってのは。そういう意味で言ったんじゃねぇよ。
文句はあるし、愚痴も言いたくなるけど、お前を放っておけないのは、俺の勝手だしな。
幼なじみで一番の遊び友達だったお前が、何かやらかして知らない何処かで野垂れ死ぬような事があれば、死んでも悔やみきれないからな。
それに魔術の師匠であるシーラおばさんにも頼まれてるんだ。お前が無理無茶無謀な事やらかしたり、自暴自棄になって自殺まがいの暴走したりしないようにな」
アランは真顔で言った。レオナールは目をパチクリさせて、肩をすくめた。
「私、自分のこと大好きだから、好きこのんで自殺や自爆しようとは思わないわよ?」
「でも、なんでか知らんが、時折ものすごく信じがたいくらい致命的にバカな事やらかすだろうが。そんな大バカ野郎を放置できるか。
それに俺も存分に自分の力を振るってみたいという気持ちはあったしな。村では非力だのひ弱だとバカにされたが、ここでは有能だと認めて貰えるしな」
僅かに微笑むアランに、レオナールはニマニマ人の悪い笑みを浮かべる。
「それに密かに女の子にもモテてるし、中高年のおばさん達にも評判良いものね! この前、八百屋のマノアおばさんに『娘の婿になってくれ』とか言われてたでしょ?」
「はぁ? あんなもん社交辞令だろ。いちいち本気にしてられっか。だいたいマノアさんの娘って8歳じゃねぇか。結婚できる年齢になる15歳になる頃、俺達22歳だぞ?」
「そりゃそうだけど、あれ、かなり本気入ってるわよ?」
「お前、本当、人の機微とか、本音と建て前とか、様式美とか、そういうの理解できないよな。他人の言葉を額面通り受け取ってたら、詐欺師だの悪徳商人だのの良いカモだぞ?」
「あなたも人のこと言えないでしょ。私は野生の勘があるから大丈夫」
「いや、それ、全然大丈夫じゃないからな」
「それより、食堂へ行きましょうよ。お腹が空いたわ」
「……ちょっと早いけど、まぁ、いいか」
レオナールの催促に、アランは頷いて腰を上げた。二人で一階の酒場兼食堂へ向かう。階段脇に宿屋の受付があり、右手奥が酒場となっている。
階段を降りた辺りで、宴会でもしているような賑やかな歓声が聞こえてくる。アランは眉間に皺を寄せて立ち止まるが、レオナールはそのまま酒場へと向かう。
「おい、レオ」
アランは舌打ちして、レオナールの背を追った。
「……ああ、嫌な予感がする」
ぼやきながら。
◇◇◇◇◇
エールの入ったマグと、焼いた肉の大盛り、申し訳程度の野菜のスープなどを並べたテーブルを、五人農夫と一人のドワーフが囲んで騒いでいた。
「あっはっは! さ、オーロンさん、いくらでも飲んでくれ!」
赤ら顔の中年の農夫が酒に酔って大声で機嫌良さげに、傍らのドワーフの男の背中をバシバシ叩きながら言う。
「うむ、奢りで酒が飲めるというのだから、言われるまでもなく有り難くいただこう。太陽と光の神アラフェストと、農耕神サナトールと、酒の神フォトラナンに感謝の祈りを!」
カッカッと笑う、上半身裸になった日に灼けた筋骨逞しいドワーフの男。
「いやいや、こちとら、畑の開墾から屋根や柵の修理まで色々無償でやって貰って、本当に感謝しとるんだ。どんどん飲んでくれ。樽を飲み干してくれても構わんよ」
「おお、本当か。それは有り難い! いやぁ、本当、素晴らしい。この村のエールは、最高だ! これまでわしが飲んだどのエールよりも!!
王都でまずいエールを飲まされた時は悲観したものだが、ここまでの代物を飲めるとは、この村まで足を伸ばした甲斐があったと言うものだ!
この地を統べ、人々を慈しむ全ての神に感謝を! ああ、生きていて良かった!!」
「ハハハハ、あんたは本当、大袈裟だな、オーロンさん。そんなに喜んでくれるというなら、こちらも奢り甲斐があるというもんだな! 気持ち良く飲める酒ほど美味いものはない」
「オーロンさん、オレぁ、ドワーフを見たのはあんたが初めてだが、あんたほど気持ちの良い旅人に会ったのは初めてだ。ドワーフってのぁ、皆あんたみたいにお人好しで快活で酒好きなのかい?」
「うーむ、ドワーフと一口に言っても千差万別であるな。そこら辺は、人間も亜人も変わるところはないだろうよ。善人も悪人も、そのいずれでもない者もいる。
しかし、だから良いのだ。皆が一通り同じようではつまらぬものだ。同じ事柄も、違う者が見れば、感じるものはそれぞれ異なる。だからこそ、同じ人間、同じ国の中で、同じエールと呼ばれる酒の味も、千差万別であるのだから!」
「結局最後は酒の話になるんかい! ま、あんたらしいっちゃあんたらしいな!!」
「心底酒が好きなんだなぁ。ワシも好きな方だと思うが、あんたにゃ負けるよ。ガッハッハ」
「ま、酒は不味いよりは美味い方が良いのは、間違いないな!」
「その通りだとも! だが、不味い酒も、美味い酒の有難味を知る事ができるという点において、無駄ではないな!
世の中に無駄なものは何一つない。全ては神の恵みと慈愛と、地に生きる者達の努力と働きによって生まれるものだ。
美味い酒を臓腑に流し込む時、今、この瞬間のために生きておるのだと痛感する。
ああ、生きるという事は、本当に素晴らしいな! オルト村の麦とエールと人々に祝福あれ!! このまま一生この村でエールを飲みながら過ごしたいものだ」
「おいおい、あんた、それで良いのか、オーロン。あんたの本業は戦士なんだろう?」
「わしはこの世にある全ての美味い酒を飲むために生きておる! 飽きるまでこの村のエールを浴びるように飲んで過ごすのは間違いないだろう。斧を振るって稼ぐ日銭など、そのために必要というだけのものだ。
この世に、酒を飲むこと以上に素晴らしいものがあるだろうか? いや、ない!」
宣言通り浴びるようなペースでエールを飲むドワーフは、実に満足そうで、幸せそうである。エールを口に流し込む度、嬉しそうに目を細めている。
その傍らを、軽装の美貌の金髪碧眼の戦士が足早に通り過ぎる。
「うむ? 今のは……」
首を傾げ、その背を見やるドワーフに、農夫の一人が肩をすくめる。
「あぁ、領主様のご依頼での件で今日、ロランの町から来たっていう冒険者の片割れだな。
その猪型魔獣を倒した剣士だって噂だが、関わり合いにならない方が良さげな輩らしいな」
農夫の一人が、声をひそめ眉間に皺を寄せ、小声で言う。
「何? 村人に害を為す無頼の輩か?」
ドワーフが剣呑な表情になる。
「いやいや、まだ何もしちゃいねぇが、村の入り口から宿屋の受付まで、これ見よがしに血だらけの魔獣の首を弄びながら練り歩いたって話だ。
そんな輩がまともな筈がないって村中噂になってるらしい。うちのが言ってた」
「……ふむ、なるほど」
ドワーフは緊張を解かぬまま、僅かに表情を緩め、首肯した。
「冒険者には無学な荒くれ者が多いとは言え、確かにそれは、まっとうで良識的な人間のする事だとは思えぬな。
しかし、領主様のご依頼とな? いったいこの平和な村で何を? あんな輩が来るという事は、ただ事ではあるまい」
「ああ、そりゃ、ワシらには関係のない話だが、この村で一番見晴らしの良い丘の上に、ひどく立派な三階建てのお屋敷があるだろう?
あれが領主様の別荘でな。一応管理しておる老齢の使用人がいたんだが、長らく利用された事がなく半ば放置されてたのが、先々月の末、ご子息が気まぐれに訪れたいと、その連絡に二人ほど寄越したんだな。
すると、庭先に管理人の死体が見つかった上、中に入った一人がゴブリンらしき魔物に大怪我を負わされ、慌てて逃げて来たが、瀕死の重傷でな。
村長の家へ運び込まれて村のオババが懸命に治療したが、あえなく死亡したんだ。
そっから大騒ぎだ。残った一人が、泡食ってロランの町のギルドに駆け込んでな。屋敷に魔物が出たとだけ告げて、領主様の元へ逃げ帰った。
その後、正式に領主様から、お屋敷の調査依頼が出されたんだが……先に受けた3組が失敗したとかで、な」
「……なるほど、それで本日、4組目が来た、というわけか」
「さっきの剣士の片割れは、人当たり良く話術も巧みで、愛想も良くて気前も良いと、顔を合わせた連中の評判は悪くないようだが、あれの片割れというのがな。いまいち信用ならん」
ドワーフが件の剣士を見やると、いつの間にかその向かいに黒ローブの男が腰掛けていた。
「ん? 先程まであそこには誰も座ってはおらんかったはずだな?」
首を傾げるドワーフに、一番若い農夫が答える。
「ああ、オレらが話してる間に、こちらを避けるよう、やけに遠回りで、静かにゆっくり歩いて行ったな。
盗賊のように足音消して気配を殺してってわけじゃないんだろうが、こっちがじっと見てなきゃ気付かなくてもおかしくなかったかもなぁ」
「ふむ」
ドワーフは眉をひそめた。視線の先にいる二人の男は、十代半ばから後半くらいの見目良い若者で、服装・髪型や所作などを見る限りでは、そこそこ育ちが良さげに見えるが、容姿・年齢とその内実は一致しないものである。
「……留意しておくべきだな」
一人頷くドワーフの男のマグに、農夫達が新しいエールを注ぐ。
「そんな事より、飲もうや、オーロンさん!」
「そうそう、料理は出来たて、エールは樽から注いだばっかりのやつが一番美味いからな!」
「うむ、全くその通りだな!」
ドワーフは男達から視線を逸らし、椅子に座り直すと、マグを掲げ、飲み干した。
もう一人も出したかったけど、長くなったので、ここまで。
次か、そのまた次くらいからダンジョン探索予定。
冒頭シーンまで、十話以内で収まるか微妙です。すみません。