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残念ナルシ鬼畜守銭奴オネエ剣士は我が道を行く!  作者: 深水晶
5章 古き墓場の鎮魂歌 ~古代王国の遺跡~
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51 撤退か探索続行か

死霊術士(ネクロマンサー)がいると厄介だな」


 アランの言葉にヴィクトールは頷いた。


「術者がおらずとも強い感情や執着があると浄化されていない遺骸がアンデッド化することはあるが、これほど多くの者が一度にアンデッドとなる可能性は非常に低い。

 人為的なものと考えて慎重に探索すべきだろう」


《既にド派手に()ってるから、術者がいるなら侵入者がいることはバレているだろうね》


 メテが淡々とした口調で言うのを聞いて、レオナールは大仰に肩をすくめる。


「だとしてもたぶん侵入経路はわからないはずよ。最初に私とルージュが飛び込んだ時は術?ごと破壊してすぐにアンデッドが大量に集まってきたからバレているでしょうけど、メテの部屋周辺とその他で特に差はなかったし、一度正面玄関から出ているもの。

 魔法や魔術のことはさっぱりわからないけど、術式?が壊れてもすぐ元通りになるって、術者かそれに近い人がいるからなんじゃないの?」


《王国の大半の術式などは一部を除いて体系化され国内の魔術師たちに公開されてて、その知識があれば誰にでも修復できるようになっているけど、王宮の施設にかかっている《自動修復》などは大元の術式を刻み込んだエネルギー結晶もとい魔術結晶で管理されているから、術者は必要ないはずだよ。

 じゃないとしょっちゅう呼び出されたり術式を管理する者を常時置かなきゃいけないから、楽できるところは楽するよ。みんな自分の研究が一番だから、余分な仕事はなるべくしたくないもん。


 確か中央棟の地下に魔術結晶のある管理施設があって、その補助と城の防衛のための術式を刻んだ魔術結晶が東西の塔にあると聞いたことがあるよ。

 でもいつでもどこでも魔術術式や結界を破壊したり無効化できるレオナールとルージュがいるなら、そっちは触らなくても問題ないと思う。

 うん千年前の術式で下手に触れると防衛機構やらなんやらで何が起きるかわからないからいじらなくても良いなら放置した方が楽だし》


「古代王国の魔術術式に興味はあるが、身の危険と引き換えにするほどじゃないからな。それについての書籍や文献があれば確保して後に研究したいと思うが」


 アランがしかめ面で言うと、メテは首をかしげる。


《城の重要施設や防衛のための術式とかは秘匿されてたから知らないけど、《自動修復》とか使用する魔力量次第で外部からの攻撃を防ぐ結界とかなら知ってるから資料をわざわざ探す必要はないよ。

 基礎の応用ではあるけど汎用魔術の範疇だもん。《修復》や《結界》よりも必要な魔力量や触媒が増えるくらいで暗記したものをちゃちゃっと描けば良いからさしたる手間でもないね》


「それはエルフの感覚でなのか、人族の基準や常識の範疇なのかどっちの意味で?」


 アランの言葉にメテはう〜んと唸る。


《ぼくの知る同僚の人族の魔術師は百二十歳くらいで僕より魔力量は少なかったけど、簡単なものなら彼でも半月ほどで構築できたよ。

 君くらいの魔力量なら技量次第だけどもう少し早くできるんじゃないかな》


「……これだからエルフは」


 アランは唸るように呟いて舌打ちした。もちろんメテにもレオナールにも聞こえているが、いずれも特に反応しなかった。レオナールは興味がないからだが、メテも慣れているのだろう。

 声の印象では若いようだが長命種のエルフでなおかつ年を取ることのないアンデッドである。


「その、メテ殿、聞いても良いだろうか。あなたの生前の人族は今の人族より長命だったのだろうか? それとも暦が違うのか?」


 ヴィクトールが興味深げに、しかし自分を抑えるように自身の胸を押さえながら尋ねた。


《今の人族の寿命も暦も知らないから、その質問に答えるのは難しいかな。でもほら、人族って魔力量の違いで最大寿命が大きく違うでしょ。

 短い人は三十年ほどだし、王宮務めの魔術師なら百年から二百前後。暦の違いに至ってはなにを基準とするかで大きく変わるよね。

 王国の一日は魔力量が石ころくらいの人族なら途中で睡眠や休憩が必要になるらしいから、人族が作った暦とは違う可能性が高いかもね。

 麦の苗を植えてから収穫するまでの期間を基準にするなら三ヶ月くらいになるけど、そもそも品種や生育環境が違ってたら比較対象にならないよね。

 どうやって比較・検証する?》


「……そうか、ここは地下だから日の出・日の入りを基準にすることは不可能だ。外で暮らしたことがなく交流もないなら、相違があってもすり合わせする必要もない。

 古代王国の人族と今の人族が同じ種族で体質も同じなら、王国の一日は我々の暦より長いのだろうな」


《王国の時間と暦は振り子の魔道具を基準にしていたよ。城の各所にあって音で現在時刻を教えてくれる。とはいえ、あまり頻繁に鳴るとうるさすぎるから、鳴るのは始業と終業の二回だけ。

 個人で懐中時計を持っている人もいたけど、ボクは持ってないんだよね。生前は身の回りの世話をしてくれる使用人がいたし、死んでからは時間や暦に縛られる必要はなくなったし》


「研究対象は農業だったのにか?」


 アランが怪訝そうに尋ねると、メテは頷いた。


《ボクの仕事は研究とそれに必要となる魔動機の管理・開発だから、研究施設で実際に農業していたのは別の人たちだったからね。

 ボクにとっての一日は使用人に起こされて身支度して朝食を取ってから、迎えに来た使用人に私室へ連れて行かれて夕食を取って寝間着に着替えてベッドで就寝するまでだったんだ。

 それがなくなったから時間はわからなくなったけど、時間に縛られる必要もなくなったからあまり気にしたことがないんだよね。

 ボクが生きていた時間より亡霊になってからの方が長いし》


「暦や時間を気にしない亡霊と暦や時間に縛られる俺たちとでは感覚も常識も違うのは当然だな。それよりも万が一を考えて撤退するか、危険を冒してでも探索を続けるか決めた方が良い」


 アランの言葉に、ヴィクトールの眉間に皺が寄る。


「せっかくここまで来て収穫無しに撤退するなんて。確かに死霊術士(ネクロマンサー)がいたら厄介だが、何も情報がない状態では判断がつかない。

 安全な場所に転移陣を設置してあるというのなら、慎重に探索をすれば良いのではないか?」


 それを聞いてアランは渋面になる。オーロンもダオルも判断がつかないようで答えが出せない。ダットはどっちでも良いから早く決めてくれと道具の手入れをしている。


死霊術士(ネクロマンサー)ってそんなに強いの?」


 レオナールが不思議そうに尋ねた。アランは嫌な予感を覚えて慌てて制止しようとするが、


「強いかどうかはピンキリだが、経験を積んだ死霊術士(ネクロマンサー)が厄介で狡猾なのは間違いない。死霊術は古今東西何処の国でも禁忌とされ、それを行使する者はいかなる理由があろうと大罪人として処刑される。

 だから死なずに生きている死霊術士(ネクロマンサー)はその所業が発覚せぬよう立ち回れるか、発覚後も切り抜け逃げ延びることができたかだ。

 生者にしても不死者(アンデッド)にしても、正攻法でどうにかできるものではないだろうな」


 オーロンの返答にレオナールはニンマリ笑った。


ところで(・・・・)アラン、あなたが今行きたくない方向はどっち?」


|(こいつ、なんでこういう時は察しが良いんだ!!)


 アランは心の中で絶叫した。

久々更新です。すみません。

うん十年ぶりにエアコン買い替えて設置しました。

経年劣化で室外機がショートしたため、壊れてないのも含めて古いエアコンは順次買い替えになりました。

計五台分なのでまず半分です。


次から探索いきたいです。

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