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残念ナルシ鬼畜守銭奴オネエ剣士は我が道を行く!  作者: 深水晶
5章 古き墓場の鎮魂歌 ~古代王国の遺跡~
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49 合流

「というわけで亡霊でエレクレンヌ神聖王国の生き残り王族のメテよ」


 レオナールの言葉に唖然としている一行の前で、半透明のエルフなメテが右足を後ろに引いて右手を体に添え、左手を横に水平に差し出すお辞儀をした。


「ボクの名前は風の精霊(シ・エル)ラルバ(ノ・)地精霊(グレン・エル)グレオシスの祝福を受けし(ディ・ロア)小道の(・メ・ディ)小石(・メ・テ)、メテで良いよ。よろしく。

 死んだ時にローブのフードを被っていたら死んだ後も脱げなくなったので、こんな格好で失礼するけど許してね。ボクは悪いアンデッドじゃないから乱暴しないでね。

 《浄化》とか《悪霊退散》とか昇天しちゃうから絶対やめてね。お願いだよ」


 王族なのにやたら腰が低い。そのくせ口調が平民っぽい。所作こそは美しいが、何らかの魔術か魔法によって共通語に自動翻訳されているにしても、王族とは思えない口調と振る舞いである。


「アンデッドなのに生き残り……?」


 アランはそこが引っ掛かるようだ。


「まさか、エレクレンヌ神聖王国の生き残り、しかも王族のエルフの方にお目にかかれるとは!」


 少し前まで無言で震えながら口を開閉していたヴィクトールが、涙目で叫んだ。


「ぼくは知識神リヴェルフェレスの僕たる一神官、ヴィクトールと申します。その、《シグルドの霊廟》は何処にあるのでしょうか! ここにそれがあるという文献を見つけた研究者の手記を読んで、この遺跡を探索しに来たのです!!」


 ヴィクトールの言葉にメテは首をかしげた。


《シグルド? 聞いたことないなぁ。うちの一族のエルフ名はだいたい『風の精霊(シ・エル)ラルバ』か『地精霊グレン・エルグレオシス』で始まる名前が多くて、稀に『雷の精霊(イェラ・エル)イルガ』や『火の精霊(サファ・エル)アルバレア』や『水の精霊(リォラ・エル)エルクレイス』だ。

 シグルド……歴史は苦手なんだよね。人名に代名詞は使わないし省略せずに記述するから、偉い人の名前はやたら長くて仰々しいから眠くなるんだよね。

 あ、そうだ。確か初代がこの地に不時着した船の名前が風の精霊(シ・エル)ラルバ(ノ・)地精霊(グレン・エル)グレオシスの祝福を受けし(ディ・ロア)混沌神(・レェヴ・イシア)オルレースの下にありし(・デ・オル・ファレ)天翔る(・アル・ツェア)天馬(・ウード)で長いからシグルドって呼ぶおじいさんがいたなぁ》


「……船?」


 ヴィクトールは首をかしげた。


《君達はこの坂道を降りてきたんだよね。だったら見てきたはずだよ。オリハルコンをミスリル合金でコーティングした金属板を外壁にした流線型の飛行船!

 残念ながら王国にあれを修理できる者も似たものを造れる者もいなかったから朽ちるまま放棄されたけど、不時着時に修理工や技師が生き残っていたら皆母星に帰還して、この地にエルフの王国は誕生しなかっただろうね》


「では、第二百七十三代目国王の叔父、《放浪の魔術師》シグルドは実在しない?」


《白銀の鱗を持つ巨大な古竜と戦って第二百七十二代目国王は死んだけど、直系が絶えたから王の妹の遺児が第二百七十三代目になったって話じゃなかったかな。

 そもそも第二百七十二代目国王は弟王子のクーデターから逃れて来たらしいから、この地で『エレクレンヌ王国』を名乗るのはおかしいと思うよ。

 実際、国民の大半は原住民で四百年ほどかけて同朋を増やしたけど、結局第二百七十二代目以前の王族並みの魔力の質と量を持つエルフは生まれなかったから、船に残したエネルギー結晶を制御することも再利用することもできなかったからね》


「『エネルギー結晶』って魔結晶のことか?」


 アランが尋ねる。


《魔結晶? 今はそう呼ばれているんだ? どういう風に使われているの?》


「魔法や魔術の触媒や魔道具の動力だな。大きな物は国で何らかの大型術式を構成するために必要とされたり、収集家が屋敷に飾って眺めるために欲しがったりする」


《へぇ、大型術式! 見たいなぁ、どんなのかな、未来の魔術術式は!!》


「おそらくよほどのことがなければ見ることはできないだろう。ぼくも見たことはないし、ここにいる他の者もそうだろう。実物を目にすることができるのは王宮魔術師か国に認められた研究者、あるいは国に仕える文官や高位貴族だろう。

 もしかしたら光神神殿にもあるかもしれないが、ここには光神の信徒はいないから難しいだろう」


 ヴィクトールが言うのに、アランは首をひねった。


(ダニエルのおっさんの伝手なら……いや、面倒の方が多そうだな。そもそも亡霊(レイス)をそんなところへ連れ込むとか、下手すりゃ国家反逆罪で問答無用で首をはねられかねない)


 どう考えても非現実的な話である。アランはふわふわ浮いている亡霊をぼんやり見つめ、思考する。


(こういう時に一番に攻撃したがるレオと幼竜がおとなしいとはあの亡霊、侮れないな。警戒しておこう)


 数刻後には別の悩みや不安が生まれるとは知らずに、アランはそう考えた。

苦戦しました。

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