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残念ナルシ鬼畜守銭奴オネエ剣士は我が道を行く!  作者: 深水晶
5章 古き墓場の鎮魂歌 ~古代王国の遺跡~
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46 剣士と幼竜は探索(迷子)中

「じゃあ、行きましょう」


 そう言って後先深く考えずにそこそこの数の敵が手近にいるところへ飛び込んでみようくらいの考えで、レオナールはルージュと共に軽く助走をつけて飛び降りた。

 若干飛距離が足りなかったので宙返りを入れたのだが、


「……あら」


 目測を誤ったのかそもそも無茶だったのか、石造りの建物の一部を破壊し瓦礫と共に落ちた。何とか無事に着陸したところでドスンと地響きを立ててルージュが降ってくる。

 そんな一人と一匹の前で瓦礫が宙に浮かび、建物の一角に空いた大穴に集まり、時計の針を巻き戻すかのように元の姿へと戻っていく。


「ずいぶん便利ね。それにしてもここ、もろいわね。古いからかしら」


えっ(きゅっ)? 違うよ(きゅっ)身体強化(きゅきゅ)しているからだよ(きゅうきゅう)!」


 首を大きく左右に振るルージュ。レオナールは肩をすくめた。


「そう言われても私は身体強化しているつもりがないもの。自由に使えるなら、もっと上手く色々なものを斬れるはずよ。

 そんなことよりあなたのお(うち)も壊れた時にあんな風に直ると良いわよね。今のところじゃ狭いから、この建物くらいの大きさがあれば十分かしら」


うん(きゅう)? やだ(きゅっ)狭いの無理(きゅうきゅうきゅう)もっと(きゅ)広いところ(きゅ)がいい(きゅう)!」


 ルージュは尻尾で不満げにバシンバシンと床を叩きつける。細かな欠片が飛散するが、それもすぐに修復される。


「えっ、これでも狭いの? ねぇルージュ、あなたに屋根って必要? いっそ露天の方がすがすがしくて良いんじゃない? 街中では無理だからその辺の森を占拠するとかすれば良いわよね」


ナニそれ(きゅきゅっ)ぼくに(きゅ)おうちは(きゅ)必要ないっていうの(きゅきゅきゅうきゅう)! ひどいよ(きゅっきゅきゅう)! おうちほしいよ(きゅきゅきゅきゅう)!」


 ルージュはイヤイヤとばかりに左右に首を振りつつ大きく跳ね、尻尾を振り下ろす。舞い散る欠片が大きくなり、床や壁の修復される速度が上がっていく。


「え? ダメなの? じゃあいっそ適当な山に自分で作った方が早くないかしら。でなければ独り立ちして人里離れたところで探した方が良いでしょう。

 アランが言うには、シュレディール王国の西南、エルドラルト共和国の南の森の奥にドラゴンの棲息地と言われている山岳地帯があるらしいわ」


 レオナールがそう言うと、ルージュは嬉しそうに首を上下に振って、尻尾を左右に揺らした。


なるほど(きゅうきゅう)! それはいいかも(きゅきゅきゅうきゅう)!」


「ふーん、じゃあ、そのうち一緒に探しに行きましょうか」


了解(きゅうきゅう)! 約束だよ(きゅきゅきゅう)


 楽しげに尻尾を揺らすルージュに、レオナールは頷いた。


 そこは天井に顔料や金などで美しい絵が描かれた大きな広間だった。奇妙に歪んだような低く重い鐘の音が四回、響き渡る。

 その余韻が消えると、金属製の装備が擦り合う音や石造りの床を走る複数の足音が聞こえてくる。彼らの周囲に全身板金鎧(フルプレート)骸骨(スケルトン)兵士達が集まってきた。


 半分近くが槍と丸盾、三分の二ほどが細剣(レイピア)左手用短剣(マン・ゴーシュ)、残りが片手(ハンド)弩弓(クロスボウ)を装備し、構えている。


「ところでルージュ、あなた何故話せるようになったの?」


骨の(きゅ)おじちゃん(きゅ)の魔力で(きゅうきゅう)お腹いっぱい(きゅきゅ)になったからだよ(きゅきゅうきゅう)! きみもそうでしょ(きゅきゅう)?」


「よくわからないけど、最高ってことね!」


 レオナールはニンマリ笑って、駆け出しながら抜刀する。


生まれて初めて(きゅきゅきゅ)お腹いっぱいで(きゅきゅ)絶好調だよ(きゅきゅきゅう)!」


 これまでにないくらい軽い身体と思い通りに動く四肢に、レオナールもルージュも喜びを隠せない。


「楽しい、楽しい、楽しい! すっごく楽しい!!」

ひゃっほう(きゅきゅきゅう)!」


 骸骨兵士達は善戦したが、それほど時間をかけずに一人と一匹に蹂躙されて動かない骨となった。



   ◇◇◇◇◇



 満足するまで骨を叩き折りつつ城内を走り回った結果、迷子になった。


「そろそろお腹が空いたわね」


「骨の《きゅ》おじちゃん(きゅ)の魔力が(きゅうきゅう)ここにも(きゅ)いっぱいあるのに(きゅきゅう)?」


「あなたは魔力を食べるからそうでしょうけど、私は肉を食べないと無理よ」


おかしいな(きゅっきゅう)魔力だけで(きゅ)十分だと思うけど(きゅっきゅきゅう)


「私は魔力を吸収するだけで生活したことはないもの。食事はいつも足りなかったけど、丸一日食事を全くせずに過ごしたことはないわ。だって空腹は耐えられないし、拒絶しようとしても飲食させようとする人がいたから」


 レオナールは名前を忘れたかつての従僕とアランの姿を思い浮かべ、肩をすくめた。


なるほど(きゅうきゅう)絶食は(きゅ)しない方がいいよ(きゅっきゅう)! つらいからね(きゅっきゅう)!」


「そうね、絶食したことはないけど同感だわ」


 そう言ってレオナールが剣片手に近くの扉を開くと、客間らしき部屋だった。これまで通って来た全ての扉は開け放たれ、中にいたアンデッドは全て掃討済みである。


《こ、殺さないでぇっ!!》


 剣を振り上げたレオナールの前で半透明のエルフ、つまり亡霊が五体投地して泣き叫んだ。


「知らなかったわ。会話ができるアンデッドもいたのね」


アンデッドは(きゅ)全て滅殺(きゅきゅう)滅ぼさない理由(きゅっきゅ)ってあるの(きゅうきゅう)?」


 首をかしげる一人と一匹に、


《やめて!! 殺さないで! 何でもするからぁ!!》


 ぷるぷる震えながら叫ぶエルフの亡霊。


「私はどっちでもいいんだけど、とりあえず聞くだけ聞いてみましょうか」


 レオナールはそう答えた。

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