10 そして、合流
戦闘および残酷な描写・表現があります。
※右と左を間違えていたので、修正しました。
×十字路の右手から左手の通路に直進して行った
○十字路の左手から右手の通路に直進して行った
「……?」
通路の途中で不意に立ち止まり、首を傾げるレオナールに、アランは怪訝な顔になる。
「おい、どうした? レオ」
「なんでもないわ。何か聞こえたかと思ったけど、気のせいかも」
首を左右に振るレオナールに、アランは不安になる。
「なぁ、それ、どういう……」
レオナールは苦笑して、肩をすくめた。
「なんか遠くの方で、悲鳴というか、金属音というか、戦闘音が聞こえたような気がしたのよね。でも、もう聞こえないから違ったかも。
あれかしら、早く戦闘したいという期待と欲求が、幻聴聞かせたのかしらね。魔法がたとえなかったとしても、人間の感覚って時折信用ならないからコワイわぁ。
思ったより敵が出て来なくて、剣振ってガンガン斬り倒せなくて、ストレス溜まってるのかもねぇ」
「……勘弁してくれ」
げっそりとアランは呻いた。
「こんな所でお前に発狂されたら、絶対、非力な俺に止められるわけないんだから、人生、マジで終了するだろ」
「まぁ、あなたに肉壁とかは無理でしょうけど」
「肉壁とか言うな。お前、本気で言いそうだから恐いけど」
「だってアラン、あなたちょっと貧相過ぎるもの。もうちょっと横に筋肉つけないと、盾にもならないでしょ」
「ちょっ、おい!! なんで俺が盾にならなきゃならないんだよ!! 剣士が魔術師盾にしようとすんな!! 防御系の魔法持ってないけど、頼まれれば《炎の壁》なら唱えてやるから!!」
「《炎の壁》って普通に範囲攻撃魔法でしょ。位置指定だから、ノーコン魔術師のアランにでもちゃんと唱えられそうだけど、発動タイミング失敗して、敵がいないのに発動、とかいうドジはやらかしそうよね!」
「……なんで嬉しそうにそんな事言うんだ。俺、そこまで酷くないはずだぞ? それにもし、仮にそうなったとしても、実際火属性の敵以外には、ちゃんと『壁』というか盾代わりになるだろ?」
「アランは甘やかすより、ビシバシきつめに言った方が良いんじゃないかと思って」
「おい、どういう意味だ! 俺にそんな趣味嗜好はない!! ふざけんなっ!!」
怒鳴るアランを、悪い笑顔でニヤニヤと見るレオナール。
「別に良いのよ? そんな必死になって否定しなくても。あなたがどんな趣味してても、気にせず私は友達でいてあげるから」
「おまっ……!」
悔しそうにグッと唇を噛むアランの姿を見て、とても楽しそうに笑いながら、レオナールは言った。
「ふふ、私の寛大さに、土下座して地面に口付けて感謝すると良いわ!」
「誰がやるかボケ!!」
アランは低く唸るように叫ぶ。レオナールにからかわれ遊ばれているとわかっていて、つい感情的になってしまう己に自己嫌悪しつつ、睨んだ。
「まぁ、あまりイジメすぎて使い物にならなくなると困るから、この辺にしといてあげるわ」
「……地獄に落ちろ」
ぼやくアランに、高笑いするレオナール。
「だってアランってば、本当、反応が面白いんだもの。仕方ないわよね、ほら、敵が出て来なくて暇だから」
「お前、『探索』とか『調査』の意味わかってるか?」
「大丈夫! 私が忘れても、アランが覚えてるから問題なし。それに今のとこ全然変化なしだもの。あー退屈! 早く何でも良いから出て来ないかしら!!」
「不穏なこと言うな。言っておくが、今回の依頼はあくまで『調査』で『討伐』じゃないからな?」
「わかってるわよぉ。討伐でも素材収集でもないから、面倒な剥ぎ取りとか採取とかしなくて良いんですものね。
前々から思ってたのよ、ゴブリンの耳とか、コボルトの皮とか尻尾集めて来いとか言う人って、実は特殊性癖なんじゃないかって」
「おい、違うからな。皮はともかく、耳や尻尾は討伐数を確定するためにギルドに提出するだけで、依頼人が欲しがってるわけじゃないからな!
だいたい、どういう性癖だよ!! 耳とか尻尾見て、それが何だってんだ!! そういう想像するお前の頭の方が、絶対おかしいだろ!!」
「あと思ってたのよね。純粋に金稼ぎとか生活に困ってとかいう理由以外で冒険者だなんてやくざな仕事したがる輩って、被虐趣味か嗜虐趣味のどちらかなんじゃないかしらって」
「おい、それ、思い切りブーメランだからな? 自分の事も言ってるからな!?」
「私の趣味や嗜好が、いわゆる『一般常識』から外れていて、人に嫌われるようなものだという自覚は一応あるわよ?
でも、わざわざ人に理解されようと努力するのも、好かれようとするのも、面倒で鬱陶しくて煩わしいわ。だいたい、たかが他人様が私たちに何をしてくれるって言うの?
補償も報酬も見返りもないのに無駄な労力かけたくないわ。好かれようと嫌われようと、さほど違いなんてないじゃない。
変に絡まれたりまとわりつかれたり、面倒な人付き合いしないで済むだけストレス無くて楽じゃない。
私からすると、アランは自分で自分をいじめて喜んでるとしか思えないわね!」
「……よりによってお前が、それを言うか」
ガックリと肩を落として、アランは呟く。
「細かいことは気にしない方が良いわよ? だいたい、人間社会でエルフがエルフの常識振りかざせば間違いなく秩序を乱す者だと認識されるし、エルフに限らずそれ以外の亜人もだいたい同じでしょ?
私は厳密にはエルフじゃないし、亜人の括りに入るかどうかも微妙だけど、根本から違う生き物が紛れ込んだら、それ以外から『おかしなやつ』認定受けるのは至極当然じゃない。
別に私は、私の都合や道理を通そうとは思ってないわ。合わせる気はさらさらないけど」
「……別に今更、お前にそんな事求めてないから、安心しろ。期待するだけ無駄だと知ってるからな。なるべく俺に迷惑かけずにいてくれたら有り難いと思うくらいだ」
「前から言ってるけど、嫌なら付いてこなくて良いのよ?」
「真顔で言うなよ! 俺がお前について行くのは、俺の勝手で都合だ。時折ついていけるか不安になったり愚痴りたくなるけど、村を出る時から多少は覚悟してたからな。
まぁ、予想や予定とはだいぶ違ってる気がしなくもないが、そんなもん、相方がお前じゃなくても想定通りになる事の方が稀だし、仕方ない。
実際に冒険者になる前から、お前が相方なのは大前提だったからな」
「アランって、時折、直球過ぎて困るわね」
「どういう意味だ?」
「……そんな事より、いつまで続くのかしら、この代わり映えしない一本道」
「この奥からゴブリンどもが来たんだから、この先に何かあるはずだよな」
「で、アラン。まだ、こっちの方角行きたくない?」
レオナールが尋ねると、アランは嫌そうに顔をしかめた。
「お前、本当、しつこいな。……でも、何故かさっきより、マシだな。できれば行きたくないとは思うけど、最初に感じたような忌避感は消えたような」
アランが答えると、レオナールは眉をひそめた。
「それって、もしかして、隠し通路とか? だってこの道、多少曲がりくねってはいるけど、ほぼ一本道でしょ?」
「隠し通路? まさか。そんな見落とし、するはずが……」
「ないって言い切れる?」
「……時折、壁に手を触れて確認してはいたんだがな。全て確認したかと言われると、正直」
「アランは嫌かもしれないけど、このダンジョン全て探索・調査するより、アランの『嫌な予感』を当てにした方が手っ取り早いし、確実だと思うの。たぶんそれ、『原因』かこのダンジョンの核か主だと思うから。
それに、他の冒険者グループの死体とか痕跡とかまだ見つからないってのが、気になるのよ。アラン、あなたはどう思う?」
真顔でレオナールに言われて、アランも真顔になる。
「……隠し通路ではない、と思う。きちんと測量してマッピングしたわけじゃないから、確実じゃないが……たぶん、この通路、僅かに湾曲している。右が外縁で、左が中心部、つまり」
「左手にぐるぐる回って行くと、中心部、あるいはアランが近付きたくない元凶のいる方角に向かう事になるって事ね!」
レオナールが嬉しそうに笑った。
「たぶん中心部にはいないんだと思うぞ。中心部にいるのなら、移動中に忌避感が強くなったり弱くなったりするのは変だからな」
「どっちしろ、近付けばアランが反応するんだから、問題ないわね」
こぼれんばかりの満面の笑みを浮かべるレオナールを見て、アランは深い溜息をついた。
「お前、今、俺のこと、『便利』だとか思ってるだろ?」
「だって『便利』じゃない。あー、本当、アランがいて良かった!! 何処に行けば良いかわからないより、確実だもの!
アラン、この世に生きて存在してくれて、本当に有り難う!!」
「なんか違う……こんな感謝のされ方、俺が期待してたのと違う……」
アランは呻くように呟いた。
◇◇◇◇◇
その頃、ダットとオーロンはどこまでも続く一本道を歩いていた。
「コボルトが出なくなったのは良いけど、暇だなぁ」
伸びをしながら言うダットに、オーロンは苦笑する。
「ご期待に添えそうだぞ、ダット。もう暫く進むと、十字路になっている。問題はどちらへ行くべきかわからないという事だな」
「あー、間違えたら戻らなくちゃならないからなぁ」
ダットがしかめ面になる。
「せめて何らかの手掛かりがあると良いのだが」
「あの転移陣のせいで、方向感覚とか現在位置とかさっぱりだもんね。やたら広いから、しらみ潰しに全部調べたら、どれだけ時間かかるかわからないし。
オーロン、あんた食糧どのくらいある? オイラ3日分しかないんだよね」
「……すまん。わしはダンジョンなどに潜るつもりではなかったから、持って来てない」
「は?」
オーロンの言葉に、ダットは固まった。
「ちょっ、なんでそれで落ち着いてんだよ! あんた、死にたいの!? ダンジョン入るのに食べ物持ち込まないとか自殺志願者!?」
「ちょっと入ってダットを見つけたらすぐ出るつもりだったからな。革の水入れも中身空っぽのまま補充していない」
「なっ……!」
ダットはクラリ、とめまいを覚えた。これはヤバイ、かなりマズイ、と思う。だが、何故かオーロンはケロリとしている。
「大丈夫だ。3日ほど何も食わなくても問題ない。里にいた事は一週間ばかり坑道に潜って、寝食忘れて採掘し続けた事もある。あの時は、さすがに死にかけたが」
「……は?」
ダットはひきつった顔になる。
「3日くらい飲み食いしなくても問題ない。普段からたくさん食いだめしておるしな」
オーロンはそう言ってカッカッと笑った。
(ドワーフってどんだけ頑健なんだ。……とんでもない種族だな)
ダットは恐れおののいた。もちろんそんな事ができるドワーフは、オーロンくらいである。
「ん?」
ダットか何か音が聞こえたような気がして立ち止まると、オーロンが真剣な表情になった。
「……新手か」
十字路の方から金属が振動したり擦れ合うような音や、ギャッギャッという鳴き声が聞こえて来る。
「……ゴブリン」
「音や気配から推測するに、さすがに48匹いることはなさそうだが」
オーロンが言うと、ダットは睨む。
「やめてよ。シャレにならないんだから。……あー、戦闘とかあんまりしたくないのに。ちょっと待ってて。偵察してくる」
だが、ゴブリン達が向かっているのはダットとオーロンのいる通路ではないようだ。そのままオーロンを待たせて、ダットが《隠形》で身を潜めて十字路の様子を伺うと、右手の通路からそのまま直進して行く。
計12匹のゴブリン達が、全て消えたのを確認して、オーロンのところへ戻った。
「どうやらこっちには来ないみたいだ。哨戒か何かかも。十字路の左手から右手の通路に直進して行ったよ。内訳は棍棒2、ショートソード3、槍2、弓矢3、杖2」
「杖持ちが2匹か、厄介だな。後ろから不意討ちで倒しておくか」
「え? オイラ達とは別方向なんだから、放っておけば良くない?」
「哨戒なら、また戻って来るだろう。正面から遭遇したら、もっと面倒だぞ。このまま直進したとして、もし突き当たりなら戻って来なくてはならないのだぞ? 倒せる時に倒しておいた方が良い」
「旦那って、見掛けによらず好戦的だね」
「そういうわけではないが、可能であるならば後顧の憂いは取り除いておきたい性分でな。それに武器装備の魔物はなるべく早期に始末しておきたいと思っておる。
無手の魔物ならば放置するが、武器持ちやスキルや魔術を使う魔物は厄介だ。下手に扱いに習熟されたり成長されれば、後々倒すのに苦労する。早めに駆除した方が手間がない」
「ダンジョンの魔物も成長するの?」
「うむ。……かつて、そうやって成長し、放置された古いダンジョンから溢れて、近隣の村々を滅ぼした例もあると言う。おそらくこのダンジョンの調査が完了すれば、駆除やボス討伐依頼などが出される事になるのだろう。
この村は良い村だが、ダンジョン経営には向いておらん。なにより、ここはセヴィルース伯爵領の食料庫。冒険者が集まる町になれば、多くの畑や醸造所は潰され、冒険者向けの施設や店が建つ事になる。
だが、先を見れば領内でも有数の生産を誇るこの村を潰すのは、大いなる損失だ。一度潰した畑や醸造所などは、二度と復活しないからな。土は放置すれば痩せるし、人の技術はそれを知る者が死ねば廃れ潰えるものだ。
もし、ここの領主が目先の利益に目がくらんで、このダンジョンを残す判断をするようならば、いずれこの村も近隣も緩やかな滅びを迎える事になるだろう」
「オイラ、そんな難しいことはわかんないよ。オーロンの旦那に言わせたら、目先の利益しか見えないって事になるんだろうけど」
「美味い麦とエールを育てるのは、一朝一夕にできるものではない。それを育てる人と土壌が必要だ──というのはどうだ?」
「……やっぱりわからないよ」
ダットが肩をすくめると、オーロンはううむ、と唸った。
◇◇◇◇◇
「……アラン」
先を進んでいたレオナールが、振り返る。
「どうした?」
アランは壁に手を触れ、曲がり具合や傾斜を確認しながら歩いているところだった。
「何か来るわ。……たぶんゴブリンね」
レオナールの言葉に、アランは表情を引き締めた。
「まだ、距離があるから、もう少し進んだら準備して」
「了解」
「あと、さっきより数が多いみたい。杖持ちも混じってるかも」
「抵抗されるかもしれないが、《眠りの霧》を使った方が良いかもしれないな。敵が近付いても、突撃しないでくれるか?」
「わかったわ」
それからしばらく進み、ゴブリンのグループを視認したところで、アランは立ち止まり、杖を構えて詠唱を開始する。
「汝、暗く優しい眠りの霧に包まれ、風の精霊ラルバの歌を聴き、夜の女神シルヴァレアの腕に抱かれ、混沌たるオルレースの下、深き眠りにまどろみたまえ、《眠りの霧》」
《眠りの霧》が発動し、ゴブリン12匹が、発生したガスに包まれ、拡散する。杖持ち1匹を除いたゴブリン11匹がくずおれ、眠り込む。それを見て、レオナールが駆け出した。
両手で握り振り上げたバスタードソードの刃を、何か魔法を詠唱しようとする杖持ちの頭部目掛けて、強く叩きつける。鈍い音を立てて頭部を砕かれ、倒れるゴブリン。
そのまま停止することなく、するりとターンして、近くで眠る杖持ちの心臓に剣を突き立て、捻る。悲鳴を上げて仰け反り、痙攣するのを尻目に、悲鳴で目覚めた弓持ちに、横殴りの一撃を加えて、距離を取る。
それを確認して、杖を握っているのとは逆の左拳を頭上に掲げたアランが、《炎の旋風》を発動させる。
魔法の炎で焼かれ、悶え転がるゴブリン達。火が消えると、レオナールが生き残りに次々とトドメを刺し、戦闘は終了した。
「……思ったより上手く行ったな」
アランがほっと息をつく。レオナールは大仰に肩をすくめる。
「私は物足りなかったけどね。まぁ、合図やタイミングは今みたいな感じで良いと思うわ。やっぱり訓練や練習より実践のが、身になるし確実よね!」
「その意見には絶対賛同しないぞ」
アランは嫌そうな顔をする。レオナールはニヤリと笑う。
「アランはやれば出来る子なんだから、私が実践で鍛えてあげるわよ?」
「……やめろ。シャレに聞こえない」
「本気だもの」
ふふん、と言われて、アランはゲッソリした。
「勘弁してくれ」
レオナールが機嫌良さげに笑う。そこへ、
「もしや、レオナール殿とアラン殿か?」
どこかで聞いたような声に、二人が振り返ると、ゴブリン達が現れた方角から、オーロンとダットが連れ立って現れた。武器を構えているところを見ると、ゴブリンを追って来たのだろうか。自分達を襲撃に来た、という事ではないだろうな、とアランは考える。
途端にレオナールの顔が不機嫌になった。
「……何故、こんなところに?」
アランが尋ねると、オーロンは苦笑し、ダットは苦い顔になる。
「うむ、ダットが誤って魔法陣を踏んでな。この先のドーム状の広間に飛ばされた。わしはダットを捜索・救出に来たのだが、現在地が不明でな。出来れば、脱出路を教示いただきたい」
アランは眉をひそめた。
「誤って魔法陣を? いったい、どこにそんなものが」
アランが聞くと、オーロンは困ったような笑みを浮かべた。
「うむ、屋敷二階の主寝室だな。ダットの足跡を魔法陣の上に見つけたので、追って来たのだが、すぐに村へ戻るつもりであったので、ダンジョン探索用の用意をしておらん。3日くらいなら飲食なしでも問題ないが、なるべく早く村へ戻りたい」
それを聞いてアランの顔が明るくなった。
「そうか、それは大変だな。レオ、そういうわけだから、一時報告も兼ねて一度村へ戻ろう。なっ、そうしよう。それが良い!」
アランの言葉と態度に、オーロンとダットが怪訝そうな顔になり、レオナールが嫌そうな顔になる。
「うん? いや、邪魔して申し訳ないと思うのだが、アラン殿はそれで良いのか?」
不思議そうに、オーロンが尋ねた。ダットも口は開かずとも同意見である。探索の邪魔しやがって、くらいの事は思われて仕方ないと考えていたので、意外である。
「邸内に帰るだけなら、一本道だから、ここを真っ直ぐ行けば問題ないわ」
仏頂面で言うレオナールに、
「いやいや、邸内地下も結構面倒だから、俺達が案内した方が良いだろう。人命に係わる事だから仕方ないよな! ほらほら、ここで議論してたら、また新手が来るかもしれないだろ。さ、行こうか」
嬉しそうに笑いながら言うアラン。苦虫を噛み潰したような顔のレオナールを引きずるように、アランはこれまで歩いてきた通路をスタスタと逆戻りする。それに慌ててオーロンとダットが続く。
「案内して貰えるのは有り難いが、本当に良かったのか?」
「人命救助は何をおいても重要視するべきことだ。情けは人のためならず、義を見てせざるは勇無きなり。人として為すべきことを成すだけのこと。いやぁ気分良いなぁ、ハハハッ」
機嫌良すぎて浮かれているようにすら見えるアランに、不機嫌過ぎて鬼気迫る空気を醸し出すレオナール。困惑するオーロンとダットは顔を見合わせる。
こいつら変だ、とダットは思い、オーロンは本当に良かったのかと悩んだ。
冒頭シーンまで行きませんでした。
たぶん次回。いけると良いなぁ、とか思います。




