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5月29日 その1 猫で釣る

PM4:00


今日も予定通り北小で

小林拓人先生に会うために

梅原先生と二人でうろな北線に

乗っていた。


帰宅ラッシュというには

まだ早いが、結構な人が乗っている。

人波の中で立ちっぱなしというのも

楽ではないが、いいこともある。

そう合法的に梅原先生に

くっついていられるのだ。

うーん、ナイス•スメル。


そんな俺の邪念には一向に気づかず、

窓から町並みを見ていた梅原先生が

ふと呟いた。


「戸津アニマルクリニック•••」


先生の視線の先を確認すると

動物病院らしき看板が目に入った。

町の情報誌で見たこともあるが

確かペットショップも近くに

あるんだっけ。


「梅原先生、動物好きなんですか?」

「え、何で知ってるんだ?」


先生は俺の声にはっとして

実に驚いた様子でこちらに向きなおった。


「いや、動物病院の看板を読んでいたから

そうなのかなーっと思っただけですが。」


いや、本当は先生が歩いている時に

散歩中の犬をじっと見ていることとか、

先生の住んでいるマンション、

ペット禁止のはずなのに、

何故か梅原先生の机に

『ねこのおきもち』という

猫の情報誌がおいて

あったりするのとかを

じっくり観察していたからだが。


「そうなんだ。

うちは父が動物嫌いだから

ペットの類いは一切禁止だったんだが、

いつか飼ってみたくてな。

ただ、今のマンションはペット禁止だが

住み良い所で、

そのためにわざわざ引っ越しするという

のも躊躇(ためら)われてな。

そもそも飼ったこともない奴が

一人で飼ってもその子が

可哀想な気もして。

本当は是非猫を飼ってみたいんだが、

だいぶ先の話になるだろうな。」


梅原先生は飼うことを想像して実に楽しそうに

それでいて飼えない現状に対して寂しそうな

表情をして笑った。


お、この食いつき具合は

想像以上だな。

よほど猫を飼ってみたいんだろう。

ふむふむ、それならば一つ

以前から考えていたことを提案して

みようか。

これは先生との距離を縮める大チャンスかも

しれないぞ。


「じゃあ、先生今週末にでも都合が

よければ一緒にさっきの動物病院の

近くにあるペットショップに

いってみませんか?」

「だから私は飼えないといってるだろう。」

「違います、飼うのは私ですよ。」


俺の申し出に対し、梅原先生は

一瞬不満な顔を見せたが、

その後の俺の発言を聞いて

実に驚き、そして不思議そうな顔をした。


「お前がペットを飼うのか?」

「うちの実家はずっと猫を飼ってるんですよ。

大学に行くために家を出て以来ほとんど

会えてはいないんですが、

小さい頃から一緒にいることもあって、

すごくかわいいんですよね。

学生時代は下宿先がペット禁止だったもんで

手元で飼うことはできなかったんですが、

やっぱり寂しいのもあって、

このうろな町に来た時は

ペットOKの物件を探したんですよ。

それで最近ようやく生活も落ち着いて

きたからいよいよ飼おうかなーって

思っていた所にさっきの先生の

発言があったので。

どうですか?」


先生は俺の話をとても興味深そうに

聞いていた。

ただまだためらいがあるようで

いくつか更に聞いて来た?


「猫を飼うのって結構お金が

いるんだろう?

初任のくせに大丈夫か?」

「学生時代から色々ためているから

大丈夫ですよ。それに他に使う

予定もないですから。」


「猫ちゃん一人で家に置いておいたら

可哀想じゃないか?」

「部屋の中に色々遊び場所を作って

やればいいですし、餌もおいておけば

勝手に食べますから。

それでもストレスが溜まるようだったら、

トイレのしつけさえきちんと

しておけば、首輪を付けて、

半分外猫にしてしまうのも

手ですからね。」


「そもそも何で私を誘ったんだ?」

「いや飼うことは考えてたんですが

どういう猫にするかとかって

全く考えていなかったので。

飼ってたからって猫の種類が

分かる訳ではないですからね。

梅原先生猫好きなんだったら

色々知っているかなっと。」


「そうか。それなら

役に立つこともあるか。

うん、今週末は土曜の午前中に

部活の稽古を見てやらないといけないが、

それ以外は空いている。

金曜日にでもお前の都合のいい時を教えてくれ。

ふふふ、かわいい子がいるといいな。」


俺に全ての質問を軽くいなされ、

さらに自分がついていく正当性も

示された梅原先生は

喜色満面の顔でそう言って来た。


ナイスヒット。

見事に釣れたなー。

かわいいのはあなたですよ、

マイ仔猫ちゃん。


これから猫をダシに

梅原先生を家に何度も招き、

さらに距離を縮めていって、

最終的には•••。

ぐふふ。


純粋に楽しみにする梅原先生と

下衆な計画を胸に秘めた俺は、

その本心がどこまでもずれたたまま、

北小の最寄り駅で電車を降りた。




シュウさん達の企画、『うろな町』計画に参加させていただく作品です。

他の作品も以下のURLや「うろな町作品一覧」リンクからどうぞ♪


昨日は帰るのも遅くグロッキーで寝てしまったので

本日ちょこちょこと昨日と今日の業務日誌を

更新していこうと思います。



清水家に新たな仲間が増えそうです。

特にどんな猫にするのか

考えていないのでみなさんご提案があれば是非。


とにあさんの「時雨」より

戸津アニマルクリニックの存在をお借りしました。

週末久島さんの実家に伺わせますので

色々絡んでもらえると嬉しいです。


次は旦那さんとほどほど真面目なお話をする予定です。


コラボ作品URL

時雨

http://ncode.syosetu.com/n7606bq/

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