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10月26日 修行編その10 さあ、これから山ごも•••、あれ、何で俺こんなボロボロ?

PM5:00



ここは西の山と町の境界にあたる、

うろな裾野駅周辺。

すでに辺りが暗くなって来ている中、

一人の『浮浪者』に警官達が職務質問を

行っていた。



「いいから署まで来なさい!」

「だから何度も言っている様に私は

西の山にトレーニングに行っていただけなんですよ。

何でこんなにボロボロなのか自分でも分からないんですけど•••」

「言っていることがめちゃくちゃだ!

•••もしかしてクスリか!!」

「何でそんなことになるんですか!

もう帰して下さいよ。

明日大事な勝負があるんです!!」

「何が勝負だ、怪しい奴め。

身分証もないみたいだし、

とにかく署に連行だ!」

「あー、自分を追い込む為に

財布も携帯も家に置いて来てしまったのが、

こんなことになるなんて!

司さん助けてーーー!!」



そのままパトカーに連れ込まれる

若い浮浪者。

警官達がそこまで警戒していたのは、

彼の肉体が山ごもりを通して

鍛え上げられたからでもあったのだが、

そんなこと絶賛混乱中の彼は知る由も

なかったのである。









PM5:30



義理の父同様に

取調室で尋問されていた

彼を救ったのは、

「清水、お前何やってるんだ!?

本番は明日だろ!!?

おい、お前ら、

こいつはうろな中学校の先生だ!

さっさと釈放しろ!!」

と怒鳴ってくれた立花さんだった。




立花さんの計らいで、

署内でシャワーを浴び、

彼の着替えを貸してもらうことができた。

あのまま帰っては身重の奥さんをびっくり

させてしまうこともあり、

師匠の計らいは大変ありがたかった。



さらにはそのままパトカーで家まで送ってくれる

という話もあったが、

流石にもうパトカーに乗るのは

嫌だったので、

丁重にお断りした。

その代わりに電話を貸してもらい、

直澄に迎えに来てもらったのだった。








「しかし何でそんなことになったんですか?

そりゃ天狗仮面主催の山ごもりは大変だったでしょうけど、

もうちょっと穏便に戻ってこられなかったんですか?」

「いや、俺がぼーっとしていたのも悪いんだよ。

というか3日間の記憶が何故だか殆どないんだ。

断片的に天狗くんに変な戦法を教わったり、

千里さんに騙されて怒った妖怪の集団に飛び込まされたり、

うちの生徒が分身して襲って来たり、

猫っぽい美形の兄妹にボコボコにされながら技を教えてもらったり、

•••何か結構色々身に付けた気がするんだけどなー。」

「•••渉兄さん、失礼ですけど、

本当に頭大丈夫ですか?」

「俺だって意味不明なこと言ってると分かってるんだよ!!

ただどんな修行したとか、

誰と会ったとか思い出そうとしようとすると

ボヤーンとしてしまうんだよ。

本番が終わったら天狗くんに聞いてみようかな。」




車内で運転する直澄を相手に

山ごもりの内容を思い出そうとするも、

滅茶苦茶な内容ばかりでまともに

思い出すことはできなかった。

何か思い出すきっかけは無いかと

思うが、元々持っていた

キャンピングセット入りのリュックサック

くらいしか手元にはないし•••




「そう言えばさっきから気になってたんですけど、

その首からかけているのは何なんですか?

お守り袋みたいですけど、

小梅先生にもらったんですか?」

「ああ、これか。

山ごもりの最後に誰かから

『おねーさんからの餞別よ。困ったら開けなさいな』

とか言われてもらった気がするんだが•••」

「•••浮気ですか?」

「んなわけあるか!!

でもその直後にその人から何かされて

『記憶はあいまいになるけど、

身につけた技はちゃんと身体が覚えているから

安心しなさいな。

明日頑張ってね。』とも

言われたような気が•••」



とにかく腑に落ちないことばかりである。


ただ悪いことばかりではなさそうで、

自分の身体から感じる力は

明らかに数日前から大幅に高まっていた。

これなら明日いい結果を期待出来そうである。






「まあでもともかく山ごもり自体は上手く行ったんですかね?」

「多分。

雨狼名も八咫鏡式の方は完成までは行かなかったけど進展があったし、

また別のバージョンも開発できた気がするんだ。」

「覚えていないのにやれるんですか?」

「•••雨狼名•響命斬(きょうめいざん)

うん、名前もやり方もちゃんと覚えている。

念のため明日の朝、

本番前に試してみたいんだけど、

付き合ってくれるか?」

「もちろんですよ。

山ごもりの成果を発揮して

俺を安心させてくださいよ。

•••その前に奥さんを安心させるのが

先だと思いますが。

心配してましたよ、小梅先生。」

「勝手ばかりして反省してる。

明日が終わったら、

結婚式に向けて

司さん至上主義で

頑張ることを誓うよ。」







直澄の指摘に苦笑しながら、

俺は家で長女と共に待っている司さんの顔を、

改めて頭に浮かべた。



この壮大でバカバカしい

父子喧嘩は勝つことが目的なのではなく、

あくまで彼女を

笑顔にさせるためのものなのである。





愛しい妻に最高の結婚式(おもいで)を。



俺はその原点を改めて自分の胸に刻みながら、

明日の決戦に向けて集中を高めていった。










修行の時はもう終わった。

あとは本番あるのみである。



うろなの力を結集して、

梅原勝也、

いざ尋常に勝負!!

シュウさん達の企画、『うろな町』計画に参加させていただく作品です。


長かった修行編もこれで終わりを迎えました。

続いて本番決闘編をお楽しみください。



山ごもり話は

流石に清水がちゃんと覚えていては

まずいということで、

千里さんが暗躍したということにさせていただきました。

ただ、いただいた多くのアイデアは

しっかり本番で使わせていただこうと思いますので、

三衣千月さん、

寺町朱穂さん、

銀月妃羅さん、

どうぞよろしくお願いします。

よろしければ清水が覚えていない山ごもりの裏話、

補足してもらえると嬉しいです。


また清水救出のため

綺羅ケンイチさんより

立花さんをお借りしました。

うろなの警察官の皆様は働き者です。



それでは当日朝から

決闘編始めたいと思います。

最後にあの方からも一言いただこうと思いますので、

お楽しみに。

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