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10月13日その2 修行編その6 雨の砂浜、君はそこにいた

PM0:30



「ほらほら、先生、もっとガツガツ喰わないと。

午後からの特訓耐えられないよー♪」

「いや、でもこれ量すごすぎない、海さん。」

「何言ってんだよ。

どんなに鍛えたって、

良いもの食べてなきゃ、

身体はできないぞ。

この『海さん特製ムキムキランチ』を完食して、

渚のメカを使った特訓を受ければ、

パワーアップ間違い無しさ♪」

「はい、先生、飲み物どうぞ。」

「あ、ありがとう、汐ちゃん。

•••ねえ、このジュース、なんか変わった味が

するけど、何が入っているの?」

「えっとね、プロテイン?を主体に、

生薬?とか幻のマル秘食材も一杯入った

『ムキムキスペシャルドリンク』だって、

海お姉ちゃん言ってたよ。」

「そ、そっか•••

あんまり詳しく聞くと食欲なくなりそうだから、

黙っていただくよ•••」





上条家をどこか気が抜けた感じで後にした俺は、

雨の中、人がほとんどいない東の砂浜へと足を向けた。

そこで夏の間、海の家『ARIKA』として使われた建物で、

青空姉妹がお昼ご飯を用意して待っていてくれたのだった。





今回の特訓は今学期から中学校に通っている青空家4女、

発明家でもある青空渚の発案によるものである。

俺としては学校で何の気無しに

「青空って身体を鍛える道具とかって作ったことある?」

と聞いた所、

「•••面白い。」

とか言ってすでに作っていたトレーニングマシンを

改良してくれたとのこと。


手間をかけたのでお礼はどうしようかと話していたら、

お姉さんの海さんから

『どうせなら、アスリート用スペシャルメニューの

実験台になってくれよ♪』

という話が舞い込んで来て、

俺は特訓を受ける見返りとして、

何かすごそうな測定器で、

色々データを集められているのだった。

特訓後の身体の変化についても調べてどうなったか、

後で教えてもらえるらしいのだが•••。

すでに怪しさ満点のメニューを食べさせられているため、

正直不安が大きい。


ちなみに末娘の汐ちゃんも

「お手伝い&応援係」として参加してくれている。

忙しくお姉さん達の間を動き回るその姿を見ていると、

午前中から続いていた緊張も和らぎ、

ほっこりとしながら、

俺はお昼を食べ進めることができたのだった。








「ごちそうさまでした。」

「おそまつさま。

良い食いっぷりじゃん♪

渚、あとどれくらいで

始められそうだ?」

「•••いつでもいける。」

「そのブルーシートの下にマシンがあるのか?

この雨だし、屋内で出来るメニューだと助かるな。」

「•••残念ながら屋外用。

でも、大丈夫。

防水機能はバッチリだから。」



食後にお茶を飲みながらくつろいでいると、

いよいよ準備が完了したようだった。

さて結構大きいみたいだけど、

これどうやって外に運ぶのだろうか?

てか防水機能付きの屋外で使うトレーニングマシーンって

一体どんな奴なんだ?





「えっと、これって一人で運び出せる

重さなのか?」

「•••問題ない。

『師匠君一号』起動。」

「修行だ!修行だ!」

「マシンが喋った!!

てか歩いてる!!!」





屋外と聞いてどうやって準備するのか

若干不安だったのだが、

目の前で起こっていることは

想像を遥かに超えていた。



渚の声に反応してトレーニングマシンが

しゃべり出したかと思うと、

次の瞬間、ブルーシートを自ら取っ払って

歩き出したではないか!!





「えっと、一体こいつは何なんだ?」

「•••使用者モニタリング機能付き全自動修行マシーン、

『師匠君1号』。

•••きっと強くなれる」

「あはは、また面白いもの作ったな、渚♪」

「渚お姉ちゃん、すごい!」

「いや、すごすぎるだろ。」



流石飛び級天才少女。

ちょっとしたトレーニング器具を開発して

もらう気でいたら、

すごいロボットを作ってくれたみたいだ。




「•••先生のデータは全て師匠君に入力済み。

あとは竹刀もって彼と打ち合えば、

勝手に指導してくれる。

とりあえず一番丁寧な

『空姉モード』にしてあるので、

ウォームアップがてら使ってみて。」

「おお、サンキューな。

よし、ではいっちょやってみますか!」

「清水センセ、頑張れよ♪」

「頑張って!!」



姉妹のエールを受けて、

俺は改めて気合いを入れ直した。



正直午前中、上条父から言われた

『覚悟』って奴については

まだ全然掴めていないけど、

考え込んでいても仕方がない。

とにかく、動きながら考えよう!














PM2:00



およそ1時間、

小雨の降る中トレーニングを行った所で、

メンテナンスも兼ねて小休憩となった。



「はい、先生。タオルとあったかいミルクティーだよ。」

「お、汐ちゃん、ありがとう。

あー、生き返る!!

思った以上にハードだったよ。

汐ちゃんたちも、

雨の中手伝ってくれてありがとう。

身体冷えてない?」

「大丈夫だよ。

渚お姉ちゃんの作った高性能雨合羽着ているから、

ほとんど濡れてないし。

でも先生もすごいね。

渚お姉ちゃんが

『この機能も使うことになるなんて•••』って

驚いてたよ♪」

「いや、まあ、鍛錬の成果なんだろうけど、

見た目以上にすごいマシンだったよ、あれ。

渚お姉ちゃんは、やっぱりすごいね。」

「うん♪」






いや、マジ、『師匠君1号』、

師匠とか言うだけあって伊達じゃなかったよ。



基本的には人間を相手に剣道の稽古をするように、

竹刀をもったこちらの打ち込みを上手く捌いて、

「手首を返さない!」

「腰を落として!」

みたいなアドバイスをくれるんだけど、

こちらがある程度対応して来ると、

要求もだんだん高度になっていったんだ。



それで、

「そこの右肘、5cm高く!」

「間合いをあと1秒は早く詰めて!」

なんて細かくかつ難しい要求に答えていくと、

あら不思議。

小さな動きで最大限の威力を発揮出来る様になってたんだ。



勝負は一瞬とはいえ、勝負自体は最大2時間の長丁場。

体力の消耗を押さえながら、相手の隙に無駄なく、

対応する為の動き作りを、

俺の疲労度まで感知してデザインしてくれるというのは、

本当にすごかったよ。





モードも多彩で、

懇切丁寧な『空姉モード』に始まり、

合計8本の腕を用いた激しい実戦練習が加わる『海姉モード』、

動きを完璧にしていくために非常に厳しいチェックが入る『陸姉モード』に至るまで、

俺の習熟と共に、

マシンも上手く指導スタイルを変えてくれた。

(ちなみに『渚モード』が整備モード。

『汐モード』はお手伝いロボとして用いるための

モードらしい。芸が細かい•••)



おかげでここ2週間で身に付けた自分の動きや身体の使い方を

改めて見直すことが出来た。

他の修行は相手あってのもので、

なかなか自分自身を深く見つめ返す時間は取れなかったもんな。

このタイミングでこの特訓を入れたのは大正解だったようだ。






しかしながら、ここに来て俺は大きな壁にぶち当たっていた。

今回の修行を通して自分が今までの苛酷な修行で身に付けたものを

整理できたのだが、

そうすることによって逆に、

とてもこのままでは勝也には敵わないであろうことが

明示化されてしまってきているのである。



今までの修行でタカさん、抜田先生、魚沼先生、立花さんに藤堂先生と

勝也にも勝るとも劣らないはずのすごい人達と修行させてもらっているおかげで、

そういう相手に対して気後れするということは殆どなくなってきてはいるんだ。

ただし、何も考えずに思い切ってぶつかっていった時期が過ぎ、

相手をどうやって倒せばいいかという戦法を具体的に考える段になってしまったことで、

相手の力量と自分の力量の差が露になってきて、

その差を埋めるために必要な過程•時間の長さを

痛感してしまっている自分もいるんだ。



分かってはいたことである。

全国制覇も経験している剣道界の生ける鬼神に、

いかに正式な剣道の試合ではないとはいえ、

一撃入れるなんていうのは、

本来であれば数年かけて達成を目指さなくてはいけない

目標なのである。



それをいかに苛酷かつ密度の濃い修行であったとはいえ、

たかだか1か月に満たない期間ではどうしてもやれることに

限界があるのである。

このままでは間に合わないが、

そう焦った所で状況が改善する訳ではない。

分かっているだけに余計心苦しかった。

あとは•••






「上条のおじさんが言ってった

『覚悟』の問題だよな。」

「ほえ?どうしたの、先生?」

「ああ、こっちの話。

タオルとコップありがとう。」

「はーい。海お姉ちゃんの所持っていくね♪」



自然と口に出てしまっていたらしい。

汐ちゃんに反応されて我に返った。



全く何をやっているんだか。

『必殺と信頼の覚悟』か•••

司さんとお腹の子達のためなら

誰であろうとはったおすという覚悟は

あったはずなんだがな。

つまりはもっと相手を見ろってことなのかな。



相手と自分が一体になったような一撃ねー。

うーん、やはりまだしっくりこない。

相手を調べ尽くして勝負っていうのなら、

連携担当としてもそうだし、

その前からずっとやってたんだけど。

無間封頼殺なんてぶっちゃけ、

いかに相手の望みを知るかが勝負だし。



梅原勝也の望み•••か。

剣士として彼が戦っている映像は、

嫌って程見たけど、

彼は父親として、

一人の男性として、

どんな人物なのだろう。

その辺りについて、

俺としたことが調べが不十分だった気がする。

ある程度は司さんに聞けば分かるだろうけど、

あとは•••







「そういえば、先生。」

「なんだい、海さん。」

「今度の勝負なんだけどさ、

あたし、良い作戦思いついたんだ♪

ちょっと聞いてみないかい?」

「へえ、どんなのですか?」

「何を隠そう、実はね、ごにょにょごにょ•••」

「ふむふむ、•••あはは、

海さん、それふざけ過ぎですよ!」

「そうかなー。

可愛い一人娘をかけての勝負っていうのなら、

こういうの意外と効くかもしれないよ。

達人って言っても人の親だからね。」

「•••言われてみると、確かに。

仮に劇的な効果はなくても、

かく乱にはなるだろうし•••。」





俺は海さんのふざけた作戦を

笑い飛ばしかけながらも、

先ほどまでの思考とも相まって、

やってみる価値を改めて見いだしたのだった。






そうだ、相手はあの司さんのお父さんなのである。

基本生徒の前ではしゃんとしているけど、

本当は泣き虫で、いじっぱりな所があって、

でもそのそこにはどこまでも

深い優しさがあるから、

今日もあんなに憔悴して

『彼女』のことを思いやって。



あんな素敵な人に育ったのには、

俺の対戦相手、

梅原勝也が密接に関係しているはずなんだ。

俺が相手をするのは愛する奥さんのお父さん。

である以上、単なる殺意なんて

向けられるはずは無い。



でもじゃあ、全力じゃなくて、いいのだろうか?

そんなはずはない。

そんな中途半端、彼は許さないだろうし、

•••俺もそんな姿を大好きな人のお父さんに、

これから産まれて来る子ども達のおじいちゃんに、

見せたくはない。

敵わなくても良い訳じゃない。

でも同時にただ相手を

打ち倒せば言い訳じゃないんだ。





俺は勝ちたい。

でも勝つことが目的じゃないんだ。

本当にしたいの自分が大事な一人娘を

任せるに足る人間であることを示すこと。

娘を守る壁としての、

父親の役割は終わりなんだと示してやりたい。

彼女にはもう俺という剣であり、

盾がいるのだから。

今あんたがすべきことは本当は俺とチャンバラかますことではなくて、

司さんに一言、

「おめでとう」と言ってやることなのだと

思い知らせてやる。

俺もいつかは通るのであろう、

娘を持つ親の辛い通過儀礼をきっちりと

あの頑固親父に味わわせてやるんだ。

そのためにならあんたがいくらすごかろうが、

全部受け止めて、

弾き返してやる。

俺がそれだけの男だってことを

みせてやろうじゃないか!!






いつのまにか、

必殺の覚悟なんてのとは遥か遠い

話に思考が飛んでいってしまった。



でも、何故だろう。

これで間違っていない気がする。

そう俺の勝負の目的は勝つこと自体には

ないんだ。

『その先』のためにこの勝負はあるのだから。

だとしたら俺がやるべきことは。







「先生!汐!!逃げて!!!

マシンが『母さんお怒りモード』になって暴走してるの!!!!」

「へ?」

「お仕置きよーーー!!!」



ドン!!!



「ぐわ!!」



思考をまとめていたら、

学校では聞いたことの無い、

渚の大声が響き渡り、

その直後大きな衝撃が俺の脳を揺さぶり、

身体を雨の振る屋外へと弾きとばした。





「先生!大丈夫か!?」

「いててて、海さん、無事?

一体何があったの?」

「•••いや、渚が工具取りに行っている間に

適当にいじくっていたら、

いきなりあんなことに♪」

「笑ってごまかせるようなことじゃないでしょ!!

というか、あれ、どうやってとめるの?」

「•••通常なら音声で止まるんだけど、

お仕置き用の『母さんお怒りモード』は

基本対象者が気を失うまで止まらない。

一応非常停止ボタンは

前面に付いているんだけど•••」

「なんちゅう恐ろしい機能を•••

あんな8本腕全てに竹刀を持った、

やばい状態の懐に潜り込むのは不可能だよな•••

さすがにあえてボコボコにされるのは

ごめん被りたいんだが。」



体当たりのショックで、

くらくらする頭を振りながら、

何とか打開策を見つけようと

頭をフル回転させていたちょうどその時、

俺とマシンの丁度真ん中の所に、

工具箱を持った汐ちゃんが不運にも

ドアを開けて出てきてしまったのだった。




「渚お姉ちゃん、言ってた工具、

別の所にあったよ♪

•••ってみんな真剣な顔してどうしたの?」

「「「逃げろーー!!!」」」

「えっ」

「お仕置きよーー!」






やばい。

導線上に彼女が現れたものだから、

マシンが反応しちまった!!

このままだとマシンの突撃に

汐ちゃんが巻き込まれる!!!




うなりをあげて突進してくる『師匠君』に対して

状況を理解出来ず、

立ちすくむ汐ちゃん。

海さん、渚が身を挺して割り込もうと

駆け寄るが、

マシンの方が早い。

俺はさっきの体当たりの影響か、

ふらついて立ち上がることもままならない。

このままでは•••






このままではやばい、

そう思った瞬間だった。



『全く世話の焼ける夫婦にゃ。』



頭に聞き覚えの無い少女の声が響いたと思うと、

汐ちゃんの目の前に、

『両手を大きく広げた司さんが立ちふさがる』

光景が、俺の目に飛び込んできた。




それと同時に俺の頭の中で

ギアがガチリと切り替わる音がした。







距離5m。

マシンの動きは『海姉モード』の1.5倍。

マシンアームのパターンは特訓時と同様。

有効打を避けて非常停止ボタンに

辿り着く為のルートが、






見えた。





脳が揺れていようが関係ない。

彼女を守るためならば、

全ての理屈を覆して、

あらゆる危険を掌握してやる。

行くぜ。







気づいたら駆け出していた。



間一髪汐ちゃんとマシンの間に

滑り込んだ際に、

『司さんの姿』がどこにもないことに

一瞬フリーズしたが、

すぐに作業に復帰する。



8本の竹刀を振り下ろしてくる『師匠君』。

その嵐の如き乱打を、

紙一重で躱しきり、

その胴体に肉薄して停止ボタンに手をかけた。

その時『師匠君』が

あたかも驚いた表情を浮かべている、

そんな感じがした。




プシューーー!!




「「「と、止まった!」」」」

マシンが動きを止めたことに

ホッとしてへたり込む3人と、

「どうしたの、みんな?」

と未だ状況が良く分からずに、

姉達に抱きしめられている汐ちゃんの姿が

実に対照的であった。



俺、さっき何をやったんだろう?

てか、その前に司さんの姿が

見えた気がするけど、

あれ、一体なんなんだ?

うわー、折角色々掴みかけていたのに、

全部吹き飛んだ!



呆然としてながら混乱を継続する俺の姿を

誰かが笑っている気がしたのは

気のせいだろうか?



雨の砂浜。

俺を助けた誰かの名を、

俺は『知らない』。



ただいつか砂浜で見た、

オレンジ色の水着の鮮やかさだけが、

何故か頭に焼き付いて離れなかった。












PM5:00




あの後、

海さんに涙ながらに詰め寄る

渚を汐ちゃんと共に宥め、

店内を片付けたあと、

急いで家まで戻ってきた。



あの騒ぎで色々考えていたことは

飛んでしまったが、

取りあえず司さんに謝ろうということだけは、

頭にあり、

玄関を開けてから何て言おうと

シュミレートしながら、

走っていたものだから、

玄関先に、

「うなー。」

「あ、帰ってきた。」

一人と一匹の影が玄関先で

傘をさして佇んでいるのを

見つけた時には心底驚いてしまった。






「つ、司さん、何で外で待ってるんですか!?

雨なんですから、中にいて下さいよ!

身体冷えますから!!」

「渉、今朝はすまなかった。

この通りだ。」



動揺しながらも司さんを家の中へ

押し込もうとした時、

彼女が深々と頭を下げ出したので、

俺の混乱は更に大きくなった。



「ええっ!

いや、頭あげて下さいよ。

俺が無神経なのが悪かったんですから。」

「いや、でも夢に出てきたアイツに叱られたんだ。

『あっしのことであんまり

悲しまないでほしいにゃ。

何があってもあっしはあっしにゃ。

マゾ清水はちゃんと分かってくれる

奴にゃろ?』って。

大事なのは私がアイツを

信じてやることなのに・・・。

色々分からないことは多いけど、

その不安をお前に当たり散らすなんてのは、

問題外だ。

本当にすまん。」





一人で寝込んでいる間に何かがあったのだろうか。

その顔は申し訳なさで一杯だが、

同時に朝会った時よりも

顔色がずっと良くなっていた。

司さんの元にも

『彼女』は現れたのだろうか?



「•••いや、正直俺も何だか記憶にもやがかかってしまったみたいで

はっきりしたこと言えなくて

申し訳ないんですけど。

でも良いことだけじゃなくて、

哀しいことも分かち合えるのが、

夫婦であり、家族ですから。

だから頭を上げてください。

梅雨もただいま。」

「うなー。」

「うー、本当に面目ない。

お前こそ、身体が冷えただろう。

風呂を入れているから、

入ってこい。」

「•••仲直りのしるしに

一緒に入りません?」

「バカ。

•••分かったよ。」

「よっしゃ♪梅雨も入るか?」

「うななー♪」



何か良く分からないが、

仲直り出来た上に、

久しぶりのラブラブお風呂タイムゲット。







それにしても師匠君を止めたあの動き、

とっさのことだったけど、

すごく良い感じだった気がする。

俺のしゃべりのスタイルをそのまま

戦いに応用出来ていたような•••



来週の修行で確認してみようか。

もしかしたら対勝也戦用の必殺奥義の

原型になるかもしれない。

お、突破口が開けて来た気がするぞ!






無邪気に喜んでいた俺はそのまま

風呂場に向かおうとしていたのだが、

うちの長女が玄関先で鳴いているのが

聞こえてきて、

その足をストップさせた。





「うななー。」

「誰か、いるのか?

•••誰もいないだろ。

さてさっさと入るぞ。」

「うなー。」



不思議な行動をとる長女を中に入れて

改めてお風呂へと向かう俺。





今日の俺を突き動かしたのは

まぎれも無く俺自身のはずであるが、

そのきっかけを誰かが作ってくれた気もする。

それが一体誰なのか。

今の俺には分からない。

俺に分かるのは君がそこにいたことだけ。





雨の砂浜、

夏のあの日色とりどりの色彩で

華やいだ時も今は昔。

全てはただの幻か。



いや、そこには確かに何かがあった。

それが何かを知るのは、

勘の鋭いうちの長女だけなのかもしれない。



今はそれでいい。



何かを失うことは決して終わりではない。

新たな始まりでもあるのだから。


シュウさん達の企画、『うろな町』計画に参加させていただく作品です。


予定よりも大分難産になってしまいました。

でも清水は何か突破口を見つけたみたいです。

誰かの助けも借りて。


小藍さんから、

海さん、渚ちゃん、汐ちゃんお借りしました。

勝手にモードとか考えちゃいましたけど、

大丈夫ですかね。

問題がありましたら、

ご連絡お願いします。



また寺町朱穂さんから「彼女」も。

こういう経緯もあって

稲荷山くんにはいつも以上に優しくなった

梅原でした。

この決闘でも良いところでもう一回

助けてもらおうと考えているのですが、

いかがですかね。

まずかったら修正しますので、

よろしくお願いします。


次回はリズちゃんたちに特訓をお願いします。

急がねば(汗)

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