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10月2日 修行編その3 汗と涙の放課後道場!!

PM6:30


「もっと前に出ろ!

ただ逃げてるだけじゃ、

すぐに致命傷を負うぞ!!」

「ぐっ、はい!」


烈火の如き勢いで

正拳、裏拳、突きに回し蹴りと、

多種多様な打撃技を繰り出してくる立花さんに対して、

俺は腰が引けそうになるのを必死に堪えながら、

その攻撃を防御し続けていたのだった。








朝昼の訓練の疲れを気合で吹き飛ばし、

午後も空元気で授業を何とかこなした俺だったが、

放課後も各種会議に受験に向けた合田の個別指導、

明日の授業の準備等、

ゆっくりとしている暇はなかった。

放課後の訓練の時間と自宅での睡眠時間を十分に取るためにも、

集中力を高めてハイスピードでこれらの業務を

終わらせていかなければならない。



来年度は司さんが産休でいない以上、

次期生徒指導部長の木下先生とともに

生徒指導関係は全部引き継いでおく必要があるし、

訓練だけにかまけてはいられない。



俺にとって今一番大事なのは

教師として、

父親として、

一人の人間として独り立ちすることであり、

勝也に勝つというのはあくまでもそのための

通過儀礼に過ぎないのだから。

勿論この勝負は重要なミッションであり、

手を抜く気など毛頭ないが。



そんな風に忙しい中でどうしても後回しに

なってしまうのが部活の指導だが、

剣道部に関しては昼に引き続き直澄が来てくれるし、

身重の司さんも防具は付けないものの、

生徒の動きに目を光らせているから問題ないだろう。

萌ちゃんや横島が新たに入部した文芸部の方も

木下先生がちょくちょく覗いてくれているから大丈夫だろう。

・・・木下先生にぞっこんの横島が大喜びなのはまだしも、

河野や桜沢まで、

「木下先生の方が真面目に来てくれるからいい。」

って感じで俺をいらない子扱いするのはとても寂しいんだが。

萌ちゃんだけはたまに俺が来るのを喜んでくれるけど、

それって単にその日は合田の個別指導がないから、

合田と放課後デートする時間があるのが

楽しみなだけなんじゃないかと思えてきて、

マジで悲しい。



まあ、萌ちゃんと合田の仲に文句を言うこともできず、

それどころか萌ちゃんや合田ママお願いされて、

心の中で血涙を流しながら合田の家庭教師を

引き受けている鹿島に比べれば、

俺なんてまだマシなのかもしれないが。



でも、学校では俺に、

家では(というか合田ママは夜勤務でいないことも

多いから、基本萌ちゃん家に二人で直行らしいが)

鹿島にマンツーマンで指導を受けているおかげか、

最近合田めちゃくちゃ伸びて来ているからな。

今月は特訓のために、

週末はうろなスーパーの直樹さんにも

指導のヘルプをお願いしているから、

あいつの指導陣は実はうろなで望みうる

最高のものなのかも知れない。



1学期までのやんちゃのせいで、

内申点や評定に問題があるから、

うろな高校は色々難しいんだが、

奨学金のある私立っていうなら町外にはなるけど、

結構選択肢は多い気はする。

というか本人が調子に乗るとダメだから言わないが、

正直元々出来た国語に関してはすでに全国レベルに

達しているからな。

もしかしたら、

いや流石にそれは無理だと思うが、

俺の母校、海江田高等学校に手が届く可能性すら

感じないではないんだ。

あそこの奨学金は経済的な理由がある生徒には

授業料どころか生活費すら給付してくれる太っ腹な

ものだし、

その点に関しては口利きができないことはないからな。



でもそんなことになったら、

それこそまるで本田先輩の入学時みたいな劇的な話に

なってきちゃうんじゃ・・・。

まあ、そこまで合田が伸びるかは疑問だし、

そのレベルまで達したら真剣に考えてやろう。

取らぬ狸の皮算用より今は目の前の現実に立ち向かわねば。







そんなこんなで18時まで全力で仕事に取り組んだ俺は、

下校完了時刻と共に、

学校を飛び出し、

藤堂先生の道場へ向かったのである。



藤堂先生は整体院が終わってから来るため、

最初は早めに来てくれている立花さんによる、

「防御力強化用超近接組手」に突入するのが恒例となっている。

これは立花さんの攻撃をただ離れて避けるのではなく、

あえて非常に距離を詰めた状態で組手を行うことで、

相手の射程距離の中で致命傷を外しながら起死回生の機会を

待つという訓練法である。

藤堂先生と立花さんが二人でやるしかなかった組手の

バリエーションを増やすために考案したものらしいのだが、

二人がやっているのを見るとどう考えても

一撃必殺の殺し合いにしか見えなかった。

今は俺と二人との実力差がありすぎるので、

寸止めでやってもらっているのだが、

もう少しレベルが進めば当たれば骨が砕ける

本気の攻撃の相手をさせられるらしい・・・。

俺、五体満足で本番にたどり着けるのだろうか?





「はい、また一本入った!

清水、本当だったら

これで今日も全身骨折で死亡だ!!

梅原先生のお義父さんは

きっと藤堂さん並のバケモン

なんだから、

そんな弱腰じゃ、

相手の迫力だけで動けなくなるぞ!!!

旦那として、

父親として、

情けなくないのか!!!!」

「まだまだいけます!

次お願いします!!」

「よっしゃ、今日はあと3回は

死んで貰う!

何とかまずは5分持たせろ!!

それだけあればどんなバケモノ相手でも必ず一度は

反撃のチャンスがある!!!

毎日のように藤堂さんとやっている

俺が保証してやらあ!!!!」

「オッス!!!」



今はまだ藤堂先生どころか

立花さんにも瞬殺されてしまうが、

その藤堂先生と日々立ち合っている、

そして先輩旦那兼パパである立花さんの激励は、

すでにフラフラの俺にもう一度活を入れてくれた。

どんな強者に対しても決して引かない心と

死中に活を求める構え、

それをこの訓練の中で何とか身に付けようと

俺は再度拳劇の嵐の中に飛び込んでいったのだった。







PM7:15



「•••頼もう」

「おー、やっとる、やっとる。

兄貴、さっさと来て準備せな!

清水さん、葛西さんの料理持ってきたから、

一旦休憩せえへんか?」

「弥彦の兄ちゃんと葵のお嬢ちゃんが来たか。

清水、じゃあ、俺の担当、

今日はここまだ。

最後は6分持ったから、

次は10分目標で頑張れよ。」

「あ、ありがとうございます。

立花さんは今日も食べて行かないんですか?」

「俺には伊織と可愛い3人が待ってるからな。」

「そう言えば3人目のお子さん産まれたんでしたね。

おめでとうございます。

遅くまで付き合わせてすみませんでした。」

「まあ、新米パパの力になれるっていうのは、

先輩として嬉しいんだ。

じゃあ、弥彦の兄ちゃん、後はよろしく。」

「うむ。」

「ウチもいるから大丈夫!

お疲れさん!!」



7時を過ぎて建設業の仕事を終えた伏見さんたちが

戻って来た所で立花さんとの訓練は終了となった。

家庭のある人に仕事帰りに付き合ってもらうのは

実に心苦しかったのだが、

奥さんの伊織さんから

「梅原先生の結婚式を素敵なものにするためでしたら、

うちの慎ちゃん、いくらでも使ってくださいね。」

とのありがたいお言葉があり、

こうして夕食の時間前まで付き合ってくれているのだ。

俺も将来は自分より若いパパの手伝いを

進んでやっていきたいものだ。





「ほら、先生、早く食べてまい。

訓練中に食べるための消化にいいメニューっていうても、

多少は消化に時間かかるんやから。

今日も兄貴のしごきはキツいで!」

「ははは、今日もよろしくね、葵さん。

じゃあ、いただきます。

•••弥彦さん、こちらをじっと見てどうかしたんですか?」

「•••うまそうだな。」

「兄貴はさっきさんざん食わせてもらったやんか!

終わったら、何か用意したるから、

今のうちに準備してまい!!」

「分かった。」



こちらを物欲しそうに見ていた弥彦さんは

葵さんの叱責を聞いて、

名残惜しそうながらも準備に戻って行った。

こっちも早く食べてしまわないと。

帰ったら司さんが夕食作ってくれているとはいえ、

この夜の訓練は途中で栄養補給をしないと

もたないからな。

勝負に耐えられる身体を作るのも

この夜の修行の大きな目的だし、

しっかり食べてから臨むとしよう。




「いただきます。」



俺は両手を会わせると、

葛西シェフとパティシエール一条による、

『チャレンジャー清水のためのムキムキフルコース』

をしっかりと噛みながら食べ進めていったのだった






PM8:20



「ふー、ようやく来れた。

星野ちゃんも渉君のためなんだから、

もう少し早く解放してよ。」

「藤堂先生、それとこれとは話が別です!

お客さんがいたんですから、

しっかり仕事してください!!

遅くなってすいません•••、

ねえ、葵さん。」

「なんや、美里姉さん?」



8時を過ぎた所で、

整体院の営業を終え、

夕食なども取った藤堂さん達が

道場にやってきた。



「絶対に力を抜くなよ。

死ぬぞ。」

「ぐ、あ、お、が、ぐぐぐ。」



その時点で俺は伏弥彦さんと向かい合い、

まるで力比べをするような体勢で

手と手を合わせて正対していた。

もちろん俺が弥彦さんと力比べなど

できるはずもない。

これは俺が多少無理をして

ぎりぎり耐えられる力を弥彦さんがかけることで、

俺の両腕の筋肉と踏ん張る足の力を

同時に鍛えているのである。



この1時間近く、

俺は弥彦さんの知り合いである、

鬼ヶ島さんという人が用意した複数の怪し気な訓練道具と

弥彦さん自身の怪力を用いた、

「鬼のウェイトトレーニング」というものに

取り組んでいるのだった。



すでに俺の身体は汗でびっしょりであり、

肌は真っ赤に紅潮し、

全身の血管が浮き上がった、

まさに限界すれすれの状態であった。

ほんの少しでも力を抜けば

その瞬間複数の骨と筋肉が弾け飛ぶ気がしていた。



「普通の人間にあんなのやらせて大丈夫なの?」

「平気、平気、ちゃんと『壊れない様に』監視しながら

やってるから。

鬼ヶ島のおっちゃんがかつて

人間の仲間を強大な妖怪と戦うために

鍛えたトレーニング法らしいし、

バケモノみたいな相手とやるためには

一番の方法やで!

とはいえ、そろそろ先生も多分

限界やろね。

兄貴、ゆっくり力緩めたりー!」

「•••分かった。」

「ぐ、あ、お、終わった。」

「おっと。よく頑張ったな。」



葵さんの声で、本日のトレーニングが終了し、

倒れ込む俺を弥彦さんが支えてくれた。

葛西さん達のフルコースを食べて回復したはずの

身体からすでにエネルギーが殆ど失われてしまった気がする。





「まあでも毎日毎日ようこんな死ぬような

苦しみに耐えとると思うわ。

愛の力は偉大やね。

ね、大将♪」

「俺に聞かないでくれよ。」

「ふふふ。」



向こうで何か楽しそうに話しているのさえ

うつろにしか感じられない。

毎日のことだけど、

本当にこの後

「最後のメニュー」をこなすことなどできるのだろうか?



「よし、じゃあ、最後に向けて渉くんの身体を

ほぐしてあげないとな。

渉くん、とりあえず一度シャワー浴びてきな。

星野ちゃん、俺は『鬼ごっこ』に向けて

準備をするから、今日も任せるよ。」

「藤堂さんも無理はしないでくださいね。

任せてください。

ちゃんと走れる様にしておきますから。」



そう促した藤堂先生の声によって、

改めてみんな動き出した。

俺もさっさと汗を流してこよう。



俺は疲れた身体を引きずりながらも、

もう一度闘志を奮い立たせ、

振るえる足に力を入れて立ち上がったのだった。






PM8:40



「いやー、すごいですね。

本当に身体からだるさが引きましたよ。」

「だったら良かったです。

任された以上は期待に応えたいですから。」



星野さんの施術のおかげで

何とか走れるような状態になった俺は

替えのトレーニングウェアに着替えて

藤堂さんの到着を待った。

この最終訓練をもって俺の修行ローテーションは終了となる。

そう考えると少しは気楽になれそうだが、

そうではない。

明らかにこれが一番苛酷、というか

『恐ろしい』ものだからだ。





「待たせたな。」

「藤堂先生、いつ見ても怖いですね、それ。」



腕に専用の数珠を付け、

俺がストレッチをしながら待っていると、

いつもの道着姿に加えて、

世にも恐ろしい鬼の面を被った藤堂先生が現れた。



「今、俺は藤堂義幸ではない。

一匹の『鬼』だ。

清水渉!

覚悟はいいか!!」

「上等です!!」

「いくぞ!

逃げられるものなら逃げてみろ!!

『鬼ごっこ』開始だ!!!」

「鬼さん、こちら!!!」

「二人とも気を付けてくださいね。」



お決まりのかけ声と共に

全力で走り出す俺と

それを恐ろしいスピードと

迫力で追って来る藤堂先生の姿をした鬼。

優しく声をかける星野さんとは対照的に

俺たちは完全にマジであった。



これは決してジョギングやランニングなどという

生易しいものではない。

藤堂先生の身につけている鬼の面は、

その人の持つ力を限界まで引き出し、

子として設定された相手を追い回すのだ。

もしその鬼につかまってしまうと、

子役は代償として体力と精神力をその面に

「喰われて」しまうのである。

「喰われる」なんて大げさに思うかも

しれないが、

実際にどうなるかというと

全身の力を吸い上げられたあげくに、

「鬼に食べられる」イメージを

頭に叩き込まれるのである。

精神の弱い人間がやられると本当に

ショック死する危険すらあるらしい。

正直やる前は完全に半信半疑だったが、

初回にイメージだけとはいえ、

自分の身体がバラバラにされる体験をしたことで、

これは真剣にやらないとマジでやばいと

無理矢理実感させられてしまった。



俺は目標として試合時間に相当する2時間、

この恐ろしい鬼から逃げるために

うろな全体を、

他の人に迷惑をかけない北の森や

西の山を中心に

逃げ回らなければいけないのだ。

これが鬼ヶ島さんの秘蔵の危険アイテム、

『鬼ごっこの面』を用いた超ハードな鬼ごっこの正体である。





修行としては

本当なら本気の藤堂先生と戦えれば、

彼と同じ、またはそれ以上のバケモノである

勝也と戦う非常にいい練習になるのだが、

未だ立花さんとさえ手加減をしてもらわなければ

組み手が成立しない状況ではそれも難しい。

大体俺と藤堂先生が顔見知りである以上、

一切手加減抜きの本気で戦うというのは、

実際には実に困難なのである。



それで先ほどのウェイトトレーニングでも使った

鬼ヶ島さんの不思議な道具を用いて、

本気を出した藤堂先生から何とか逃げる

訓練をしているのである。

これにより切迫した状況におけるスピード、

回避能力、ダメージからの復帰能力が

飛躍的に高まることが期待されており、

実際この数日間使ってみて。

自分の動きが大きく変化して来ているのを

感じている所である。

•••正直毎日30分も経たないうちに捕まり、

何度も「喰われて」しまっていることで、

大分心にダメージが蓄積してはいるのだが、

短期間で大きく成長するためには仕方がない。

今日も俺はうろな最強の鬼から必死に

逃げているのである。







「喰ってヤル!!」

「ヒー!ハアハアハア!!」

「良く避けたな!!

では数えるぞ、1、2、3、•••」

「うあーーー!!!」



俺は身体を捻って何とか鬼の掌底を躱すと、

方向を変えて改めて駆け出した。

鬼は一度至近距離に接近して攻撃をした時に、

その成否に関わらず10秒の猶予をくれる

ようになっており、

子はその間に距離をあけておくのである。

ただしもし攻撃を食らってしまったら、

腕に付けた数珠のおかげで、

身体に直接的なダメージ自体が伝わらない代りに、

身体から力がごっそり奪い取られ、

しかもそのショックは身体に残ってしまうので、

大きな肉体的•精神的ダメージを

何とか立て直して逃げなくてはいけないのである。

怪我をせずに鍛錬を続けるための配慮らしいのだが、

普通なら大けがするようなダメージを脳が認識しつづける重圧に加え、

ずっと全力で走っていることによる疲れも相まって

もう頭がおかしくなりそうである。





「はあはあはあはあはあ。」

「10!!

行くぞ!!!」



まともに息を整える時間も

与えられず再開される逃走劇。

少しずつこの修行を続けられる時間は

伸びているのだが、

まだまだ30分逃げ切れたことすらない。

ただ今どれくらい逃げているか考える余裕など

持てるはずはなく、

俺はただただ死の恐怖と痛みから逃れるために

必死で足を動かし、

頭を働かせながら、

次の襲撃に備えていくのだった。









PM9:35



ピンポーン



「はーい。」

「うなー。」



全身に一切力の入らない状態で

「何か」に負ぶさっていると、

懐かしい声が聞こえて来た。



「あ、藤堂先生。

毎日すいません。」

「いやいや、渉くん頑張ってますから。

今日は40分近く逃げられていましたし。

簡単に施術はしましたから、

後は風呂に入れて、

飯を食わしてやってください。

では私は帰りますね。」

「夜遅くまで本当に

ありがとうございました。

帰りも気を付けてください。」

「そちらこそ大事な身体ですから

気を付けてくださいね。

妊婦さん用のマッサージとか

星野ちゃんが勉強しているみたいだから、

また整体院にもよってみてよ。」





誰かの話し声と共に、

恐らく床に横たえられる俺。

頭の部分だけ柔らかくあったかいのは、

司さんの膝の上なんだろうか?



ガチャン



そんな音と共に誰かが

離れて行く感じがする。



そうか俺は今日も最後捕まって

やられてしまったんだな。

子が完全に動けなくなるとあの鬼の面は

力を一旦失うから、

元に戻った藤堂先生がうちまで

運んでくれたのだろう。

夜遅くまで本当に有り難い話だ。





「うななー。」

「こらこら、梅雨。

あんまりのっかかってやるな。

全くこんなボロボロになるまで

毎日やりおって。

仕事に支障を来していない所は流石だが、

それにしてもやりすぎではないか。

もちろん父上に勝つなんてのは

並大抵のことでは不可能だとは思うが•••」



額に添えられる手の体温が気持ちいい。

目を開けるのさえしんどいが、

そこに愛する妻の顔があるのだと

思うと本当に心が安らぐ。

でも心配かけて本当にごめんなさい。





「まったく困ったおじいちゃんと

お父さんだな。」

「あ、あと至らない夫ですいません。」

「なんだ、起きてたのか。

一応ご飯もお風呂もすぐいけるようにしているが、

どっちにする?

というかそもそも動けそうか?」

「まだ無理です。

あと俺は司さんがいいです。」

「バカもの。」



そういいながらもそのまま頭を撫でてくれる司さん。



心配かけて申し訳ないけど、

何とかお義父さんに認めてもらって

彼女には幸せな結婚式をあげさせてあげたいんだ。

そのためにならこれくらいの無茶はなんてことない。





「父ちゃんは負けないぞ•••」

「ふふふ、全くしょうがない奴だ。

お前達もそう思うだろ。」



司さんが俺の手を自分のお腹に当てると

まるでママの言葉に応える様に

胎動が返って来る。

その微かな振動が

俺に再び立ち上がる力を与えてくれるのだ。





「うなー。」

俺の腹の上で丸まって

うちの長女もどこか楽しそうな声をあげる。

それはまるで、

「それはそれでいいじゃない。」

と言ってくれているようで何かホッコリする。

そてそれじゃあ、そろそろ起き上がって、

ちゃんと寝る準備をするとしますか。



秋も深まった夜更けの玄関。

俺の修行漬けの一日は、

愛する「4人」の家族に見守られ、

こうして終わりを迎えたのだった。

シュウさん達の企画、『うろな町』計画に参加させていただく作品です。


ようやく修行編の平日ローテーションを書き終わることができました。

毎日こんなことしてますので、

まだ10月話を書いていない方は是非

清水のアホな姿を登場させてやってください。



綺羅ケンイチさん、

うろな町、六等星のビストロより葛西さん、一条さんのお名前と新メニューを、

うろなの雪の里より藤堂先生、星野さん、立花さん、伏見兄妹と

主要キャラを総出演させてもらい、

さらには原稿のチェックもしていただき

本当にありがとうございました。

かなり常識外な訓練をお願いしておりますが、

バケモノ退治のためよろしくお願いします。



またその修行道具提供先として

零崎虚識さんより鬼ヶ島さんをお借りしました。

夏の陣で伏見さん達と協力しているのを見て

このようなネタを使わせていただきましたが、

よろしかったでしょうか?



また日常部分に

氷月 深夜さんから河野さん桜沢さんを、

アッキさんより横島楓さんをお借りしました。

うちの萌ちゃんと横島さんに文芸部にはいってもらった

というネタを作ってしまいましたが、

大丈夫ですかね。

本編終了後の番外編のフラグのつもりで書いたので、

できればご許可いただきたいのですが、

問題があるようでしたらおっしゃってくださいね。

番外編では木下•横島、合田•萌の二組のカップルの

その後を書かせていただく予定です。


それでは続きは特訓になります。

流石に全部を一つずつ書いていると

終わらなさそうなので、

いくつかまとめて書かせていただくと思いますが、

どうぞよろしくお願いします。

最初は芦屋伊織さん達陰陽師さんたちに

お願いすると思います。

どうぞお楽しみに。

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